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上手く行きすぎても怖くなるのも人生です
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「こちらのご利益は子宝にあり…」
と説明を領主は受けると。
「それは…とても興味ありますね」
「あぁ、そうでしたね。領主様はご新婚だとか」
「そうなんですよ~ね~」
領主ってもっとキリッとしたイメージがあったんだけども、いきなり砕けた感じになったぞ。
「縁ありまして、夫婦になりました。そうなるとですね…」
「あぁ、まあ、そうなりますよね」
そこで祈願してから、視察を続けるのだった。
「ただいま~」
「おかえりなさいませ」
領主の妻はスカートをつまんで一礼をする。
「堅苦しいな…まあ、そういうところも好きなんなんだけどもね、ただいま」
「はい、お帰りなさい」
「ゴホン、旦那様、まずはお着替えの方から」
「ああ、ごめん、ごめん」
「まずはあたたかいお茶でもご準備を」
「奥様、それは私がやりますから」
「そう?」
この領主夫妻、金継ぎ夫と灰かぶり妻、略称としては金灰夫婦は立場はあるものとして、生まれてるわけではないので、基本的に全部自分でやろうとするところがある。
二人の私室にはそのような設備はあるのだが、家のものからすると、楽になるということは仕事が無くなる危機とも感じるらしい。
(そんなことはないんだけどもな)
そうは思っても、こればかりはそれまでの歴史と、今までの仕事が絡んでくるので、これを導入するからといって、明日から来なくていいよというわけにはいかない。
実際にそれをやってしまったために、暴動が起きたりすることもあるので、動向としては節約はしたいがそれを恐れているという感じだろうか。
ただ何かあったら自分でやれるというのもメリットがある、仕事に対して理解してくれるというものであった。
「いつも思うのだけども、どうして私が淹れるより美味しいのかしらね」
寒いので先に召し上がってくださいと、妻は一足早くいただくときに、そういった。
「そうですか?」
「茶葉の開きが見えているんじゃないかしら」
「そうしたら、私はどこかの王宮にスカウトされるんじゃないんですかね」
「奥が深い世界ね」
「こういったものは気温や湿度に影響されますから、このお屋敷では美味しく淹れれる自信はありますけど、他のところに行くとなると」
「私は自分のお茶では試すんだけどもね、同じお湯の温度で、時間は計ったり、色が変わってきたからと思っても、いつも同じ調子では難しいのよね。それを考えると、誰でも手軽に飲める食べれる技術というのはすごいものがあると思う」
「二人とも面白い話をしているね」
領主もリラックス出来るような服装で現れる。
「もっと美味しいものを手軽に、安く食べれたり、飲めれないものでしょうかね」
「面白いことを考えているね、そうなったら、ホッケのお寿司とかも食べたいときに食べれるのかな」
「ホッケ好きなんですか?」
「生は美味しいんだけどもさ」
「酸化が早いですもんね」
ピンクの切り身がすぐに褪せます。
「食べたことあるんだ」
「なんか一時期食卓に、その時安かったかららしくて…、特に夜になると」
半額の気配。
「でも夕方ならばまだしも、夜だとね、お腹がいっぱいになるので、それじゃあ、朝にでもと思いますと、味が変わるから、今ならば何かしら、それこそ焼き魚にしてもいいかもしれません」
「あっ、そうか、むしろ焼き魚が定番だから、そういう場合は、焼いちゃえばいいのか」
「酢飯も持ちますからね、別に保存すれば、翌朝は酢飯のご飯とホッケの焼き魚で食べれるってやつでしょうか」
「…本当に君のところは大変だというか」
「気に入らないことが起きますと、癇癪起こすような人間が台所にいるんですよね。しかも料理はあまり上手ではなかった」
「君は中々のものなのにね」
「もうそこまでは…むしろ旦那様の方がお上手ではありませんか?」
「僕のは苦学生料理だから」
「よく生きてましたよね」
「本当だよね」
栄養バランスとか何もないメニューを食べてました。
「それに比べたら、君の話を聞く限り、月にいくらで暮らしていたのさって話が踊るんだけども」
「よく体を壊さなかって思いますよ」
婚姻に辺り健康診断は受けて、みんなパスしている。
「あそこで血液検査とかでダメだったら、婚姻の話は出なかったんじゃないかな」
「よくうちに来てくれた!」
手を握られて言われた。
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。君はほんの少し違っただけで僕は会えなかったんだなと感じるたびに愛しくなる。まっ、もしもそんなならば、僕は運命をねじ曲げるけどもね」
(本当にねじ曲げそうだな)
「そこまでしなくても…」
「嫌だね。そこは君が嫌だって言われてもするんだよ、それは僕が決めたことだ」
「意外と俺様なんですね」
「譲れないものはあるよ」
「それはわかりますが、もっと有益なことにそういうのは使ってくださいよ」
「例えば?」
「例えばですか?」
「ああ、そうだ、今日の視察なんだけどもね」
祈願詣の字が大きな袋。
「これは?」
「中味は飴ちゃん」
「飴ちゃんですか、何味ですか?」
「蜜柑、というか、陳皮だ」
「甘味は…甘草定番ですね」
「砂糖より甘いんだよな、これ」
150倍の甘さって甘すぎませんかね?
「だから酸味と合わせるレシピが定番なんでしょうね」
と思い妻が袋をよく見ると。
「あっ、気づいた」
「ええ、まあ、この飴を配られているところは、そういうご利益を願っている場所なんですね」
「そうだね」
「…」
「そういうご利益を願って、僕はもらってきたのは確かにあるんだけども、君は食べてくれる?」
「本当にあなたは面白い人だな」
「そう?」
「そうですよ、逆にお聞きしますが、どこぞにご子息、ご令嬢はおられないんですか?」
「その子達がいたら、僕は家族のために生きていると思う」
「そうですか…」
「何?歯切れが悪いね」
「そうですね。私は家族の話になりますと、やはり神経質になりますから」
「そうか…」
「自分が母親になるというのは考えてないところはありますね」
そういって彼女は飴を口にした。
「えっ?いいの?」
これには領主も驚いた。
「それは前にもお話はしたとは思いますが…」
「まっ、そ、それはそうだね、うん」
「なんであなたの方が動揺するんですか…」
「ええ、だって…その…ね…」
「本当に嫁に来るとは、嫁に来てからも、あぁもう、実家ではないんだなと感じることはあるし、実家のために何かをしなくてもいいんだなと思うと、ホッとします」
「そうか…大変だったね。こんな僕の言葉の一つじゃ救われないだろうけどもさ」
「いいえ、ありがたいですよ」
「そう?」
「ええ、ただ自分が婿を取る立場、ないし旦那側だったら、こういう嫁さんはちょっと…って話はなかったことにするでしょう」
「そうなの?」
「そうですよ。厄介すぎる」
「でも親代わりを勤めてくれるみなさんはいるし」
「あれはラッキーすぎるんですよ。みなさんは人がいい、本来ならば親代わりは一人ぐらいなんですがね、あんなにいるということは、いかに厄介なのか」
「でもさ、何人かの君の親代わり、家族代りの人と話をしたけども、あれはどっちかっていうと、誰かがやると角が立つから、じゃあ、みんなでやろうかってなってると思う」
「それが本当にそうなら、なんて平和なんでしょうね」
「そこは…きちんと話をした方がいい気がするよ。後ね、遅れたけども、娘さんを僕にくださいもやってきた」
「へ?」
「いやいや、本当に、たぶんこれから会う親代わり、家族代りの人にはみんなするんじゃないかな」
「何をしているんですか、旦那様」
「この間やったら、大ウケだったんだよ」
うちには娘がいないから、いや~まさか自分が、例のやつをやられるとは思わなかったよ。
「今度一緒に飲もうか、婿殿って言われてる」
「いつの間にか仲良くなってる!」
「こういうのは仲がいい方がいいんじゃないか?」
「それは…そうですけどもね」
「ただ君の実の親にはしないけども」
「…そうしてください。いえ、むしろ、絶対にあの人たちを前にしては、そういうことはしないでください」
「僕は君を傷つけるものは許さないと決めている」
「そこまで決めないでくださいよ」
「そこはダメでしょ」
「私にも非があるかもしれないし」
「そういう場合もあるかもしれないけどもさ、でも君は自分から何かをする人ではないから」
「そこは厳正に見てください」
「君はさ、恨まれた方がマシだからって、本当に思ってるところがあるよね」
「そうですかね」
「そうだよ、なんでそうなのかは知らないけども、こう…人間関係が臆病というか、ひねくれているんだよね」
「そうでしょうか?」
「人間どこか歪みがあるもんだよ、あるのはわかるけども、君のは見ているだけで痛々しい時がある」
ごめんなさいを心の中で連呼しているんだろうなのを感じるらしい。
「ある時から、そうなりましたね」
「そうか」
「怒鳴られる方が悪いのだと」
「それは違うと思うよ、もしも君が悪いというのならば、君が離れた後、縁談話を進めるために実家を離れたじゃない?その後から今までの間に、いい噂が流れてくるものなんだけども、そういうのは全く聞かないしさ、それが証明ではないのかな」
「あれだけ自信を持って言ってたのだから、もっと出来るものだと思ってた」
「ほら…」
「それもすごく辛いんですよね。生まれ育ったところももうすぐ冬になるのかな、困窮は人を変えてしまうから」
「こんなことを言ってはなんだけども、君はもう僕の妻だしね」
「そうなんですがね」
「後ろ髪惹かれるのはわかる」
「まだ親代わりの人たちがいますから、何か難癖や要求はないとは思いますが…」
「それも恐れていたよね、ただそんなことをしたら、そこで終わるけども」
「誰か実家の代わりに…善政とはいいませんが、きちんと取り仕切ってくれる人がいればいいのですが、それも期待できませんし」
「難しいのはもっと悪くないと、これ以上の問題を起こしてくれないと、変えることが出来ないって点か」
「そうですね。緩やかに悪くなる、私は離れて、逃げて、そこが心苦しいのかましれません」
「人間はそう弱くはないよ」
「強くもないじゃないですか」
「そうだね」
「ごめんなさい、感情的になりました」
「君はもっと感情を出してもいいとは思うんだけどもね、感情が出そうになると、無理やり、出さないように、落ち着けようとしているからさ、心配なんだよね」
「なんです?母体としてですか?」
「そんなことは言ってはいないよ。これも聞きたいことではあるけどもね、僕の方にもしも原因があったら?君はどうするんですか?」
「一緒にいてもいいですか?」
「えっ?」
「そこは考えてなかったわけではないので、というか、問われたかともあります」
「えっ?そうなの?それは知らなかった」
「そうしたら旦那様は私のものになる」
「……」
「あっ、すいません」
「情熱的だな…えっ?もう一回言ってよ」
「言いませんよ」
「何、そのすごい思い、どっから来ちゃった感じなの?いや~僕は愛されているわ、だってもしもそうなら、僕は孤独な時間が増えるわけじゃん?あれ?ごめん、僕の方も混乱しています」
しばらくお待ちください…
「その時はよろしくお願いします」
もう領主は妻にそういうしかなかった。
「なんか無難な答えしか出なくてごめんね」
「いえ、すいません、私もなんか、よくわからない感じですし」
「でも…そんなことを考えてくれてたんだね」
「政略結婚ですよ、私たち」
「それはわかってる、わかってるけどもさ、そこまで考えるとなると、ちょっと怖いでしょ。上手く行くことばかりが人生ではない」
「上手く行きすぎても怖くなるのも人生ですよ」
「わかる」
「でしょ」
「俺としては例えどんな結果だとしても、同意してくれるというだけで、人生の勝者だよ。あの瞬間、頭の上にある鐘がカランコン鳴った」
「ずいぶんと鳴りの悪い鐘ですね、そこは天上の音とか、頑張って鳴らしたら糸が切れそうとか」
「そこまで行くと風情がない」
「でも旦那様の勢いは、それぐらいかな」
もしも現在の妻との間に子供が無事に生まれた場合、今日は祝日します、いえ、毎年祝日にしますとか言ってしまうことが予想される。
「まあ、ワケがわからないことになっているだろうは、今からでも想像はできる」
「やっぱり」
「そりゃあもう、そうでしょうよ、祭りですよ、フェスティバルが開催されるに決まってる」
「そういう旦那様は第三者としては楽しく見れる」
「そこは関係者として見ちゃってよ」
「そうなると、まずは止めないといけないからな」
「とりあえず、これに関してはどっちかだと思ってるよ」
「どっちかでしょうが、旦那様の方に何も問題がないのではあれば…」
「それは約束はしないよ」
「約束してくれるまでいい続けますよ」
「そこは平行線になりそうだ。後は寝室で続きを話そうか」
ちょっとね、今日は疲れたの、癒しが、癒しが必要なんですよ。わかりますか?
「さすがにそれはわかりません」
「そんなに拒絶しないでよ」
相変わらずお二人は仲がいいようです。
と説明を領主は受けると。
「それは…とても興味ありますね」
「あぁ、そうでしたね。領主様はご新婚だとか」
「そうなんですよ~ね~」
領主ってもっとキリッとしたイメージがあったんだけども、いきなり砕けた感じになったぞ。
「縁ありまして、夫婦になりました。そうなるとですね…」
「あぁ、まあ、そうなりますよね」
そこで祈願してから、視察を続けるのだった。
「ただいま~」
「おかえりなさいませ」
領主の妻はスカートをつまんで一礼をする。
「堅苦しいな…まあ、そういうところも好きなんなんだけどもね、ただいま」
「はい、お帰りなさい」
「ゴホン、旦那様、まずはお着替えの方から」
「ああ、ごめん、ごめん」
「まずはあたたかいお茶でもご準備を」
「奥様、それは私がやりますから」
「そう?」
この領主夫妻、金継ぎ夫と灰かぶり妻、略称としては金灰夫婦は立場はあるものとして、生まれてるわけではないので、基本的に全部自分でやろうとするところがある。
二人の私室にはそのような設備はあるのだが、家のものからすると、楽になるということは仕事が無くなる危機とも感じるらしい。
(そんなことはないんだけどもな)
そうは思っても、こればかりはそれまでの歴史と、今までの仕事が絡んでくるので、これを導入するからといって、明日から来なくていいよというわけにはいかない。
実際にそれをやってしまったために、暴動が起きたりすることもあるので、動向としては節約はしたいがそれを恐れているという感じだろうか。
ただ何かあったら自分でやれるというのもメリットがある、仕事に対して理解してくれるというものであった。
「いつも思うのだけども、どうして私が淹れるより美味しいのかしらね」
寒いので先に召し上がってくださいと、妻は一足早くいただくときに、そういった。
「そうですか?」
「茶葉の開きが見えているんじゃないかしら」
「そうしたら、私はどこかの王宮にスカウトされるんじゃないんですかね」
「奥が深い世界ね」
「こういったものは気温や湿度に影響されますから、このお屋敷では美味しく淹れれる自信はありますけど、他のところに行くとなると」
「私は自分のお茶では試すんだけどもね、同じお湯の温度で、時間は計ったり、色が変わってきたからと思っても、いつも同じ調子では難しいのよね。それを考えると、誰でも手軽に飲める食べれる技術というのはすごいものがあると思う」
「二人とも面白い話をしているね」
領主もリラックス出来るような服装で現れる。
「もっと美味しいものを手軽に、安く食べれたり、飲めれないものでしょうかね」
「面白いことを考えているね、そうなったら、ホッケのお寿司とかも食べたいときに食べれるのかな」
「ホッケ好きなんですか?」
「生は美味しいんだけどもさ」
「酸化が早いですもんね」
ピンクの切り身がすぐに褪せます。
「食べたことあるんだ」
「なんか一時期食卓に、その時安かったかららしくて…、特に夜になると」
半額の気配。
「でも夕方ならばまだしも、夜だとね、お腹がいっぱいになるので、それじゃあ、朝にでもと思いますと、味が変わるから、今ならば何かしら、それこそ焼き魚にしてもいいかもしれません」
「あっ、そうか、むしろ焼き魚が定番だから、そういう場合は、焼いちゃえばいいのか」
「酢飯も持ちますからね、別に保存すれば、翌朝は酢飯のご飯とホッケの焼き魚で食べれるってやつでしょうか」
「…本当に君のところは大変だというか」
「気に入らないことが起きますと、癇癪起こすような人間が台所にいるんですよね。しかも料理はあまり上手ではなかった」
「君は中々のものなのにね」
「もうそこまでは…むしろ旦那様の方がお上手ではありませんか?」
「僕のは苦学生料理だから」
「よく生きてましたよね」
「本当だよね」
栄養バランスとか何もないメニューを食べてました。
「それに比べたら、君の話を聞く限り、月にいくらで暮らしていたのさって話が踊るんだけども」
「よく体を壊さなかって思いますよ」
婚姻に辺り健康診断は受けて、みんなパスしている。
「あそこで血液検査とかでダメだったら、婚姻の話は出なかったんじゃないかな」
「よくうちに来てくれた!」
手を握られて言われた。
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。君はほんの少し違っただけで僕は会えなかったんだなと感じるたびに愛しくなる。まっ、もしもそんなならば、僕は運命をねじ曲げるけどもね」
(本当にねじ曲げそうだな)
「そこまでしなくても…」
「嫌だね。そこは君が嫌だって言われてもするんだよ、それは僕が決めたことだ」
「意外と俺様なんですね」
「譲れないものはあるよ」
「それはわかりますが、もっと有益なことにそういうのは使ってくださいよ」
「例えば?」
「例えばですか?」
「ああ、そうだ、今日の視察なんだけどもね」
祈願詣の字が大きな袋。
「これは?」
「中味は飴ちゃん」
「飴ちゃんですか、何味ですか?」
「蜜柑、というか、陳皮だ」
「甘味は…甘草定番ですね」
「砂糖より甘いんだよな、これ」
150倍の甘さって甘すぎませんかね?
「だから酸味と合わせるレシピが定番なんでしょうね」
と思い妻が袋をよく見ると。
「あっ、気づいた」
「ええ、まあ、この飴を配られているところは、そういうご利益を願っている場所なんですね」
「そうだね」
「…」
「そういうご利益を願って、僕はもらってきたのは確かにあるんだけども、君は食べてくれる?」
「本当にあなたは面白い人だな」
「そう?」
「そうですよ、逆にお聞きしますが、どこぞにご子息、ご令嬢はおられないんですか?」
「その子達がいたら、僕は家族のために生きていると思う」
「そうですか…」
「何?歯切れが悪いね」
「そうですね。私は家族の話になりますと、やはり神経質になりますから」
「そうか…」
「自分が母親になるというのは考えてないところはありますね」
そういって彼女は飴を口にした。
「えっ?いいの?」
これには領主も驚いた。
「それは前にもお話はしたとは思いますが…」
「まっ、そ、それはそうだね、うん」
「なんであなたの方が動揺するんですか…」
「ええ、だって…その…ね…」
「本当に嫁に来るとは、嫁に来てからも、あぁもう、実家ではないんだなと感じることはあるし、実家のために何かをしなくてもいいんだなと思うと、ホッとします」
「そうか…大変だったね。こんな僕の言葉の一つじゃ救われないだろうけどもさ」
「いいえ、ありがたいですよ」
「そう?」
「ええ、ただ自分が婿を取る立場、ないし旦那側だったら、こういう嫁さんはちょっと…って話はなかったことにするでしょう」
「そうなの?」
「そうですよ。厄介すぎる」
「でも親代わりを勤めてくれるみなさんはいるし」
「あれはラッキーすぎるんですよ。みなさんは人がいい、本来ならば親代わりは一人ぐらいなんですがね、あんなにいるということは、いかに厄介なのか」
「でもさ、何人かの君の親代わり、家族代りの人と話をしたけども、あれはどっちかっていうと、誰かがやると角が立つから、じゃあ、みんなでやろうかってなってると思う」
「それが本当にそうなら、なんて平和なんでしょうね」
「そこは…きちんと話をした方がいい気がするよ。後ね、遅れたけども、娘さんを僕にくださいもやってきた」
「へ?」
「いやいや、本当に、たぶんこれから会う親代わり、家族代りの人にはみんなするんじゃないかな」
「何をしているんですか、旦那様」
「この間やったら、大ウケだったんだよ」
うちには娘がいないから、いや~まさか自分が、例のやつをやられるとは思わなかったよ。
「今度一緒に飲もうか、婿殿って言われてる」
「いつの間にか仲良くなってる!」
「こういうのは仲がいい方がいいんじゃないか?」
「それは…そうですけどもね」
「ただ君の実の親にはしないけども」
「…そうしてください。いえ、むしろ、絶対にあの人たちを前にしては、そういうことはしないでください」
「僕は君を傷つけるものは許さないと決めている」
「そこまで決めないでくださいよ」
「そこはダメでしょ」
「私にも非があるかもしれないし」
「そういう場合もあるかもしれないけどもさ、でも君は自分から何かをする人ではないから」
「そこは厳正に見てください」
「君はさ、恨まれた方がマシだからって、本当に思ってるところがあるよね」
「そうですかね」
「そうだよ、なんでそうなのかは知らないけども、こう…人間関係が臆病というか、ひねくれているんだよね」
「そうでしょうか?」
「人間どこか歪みがあるもんだよ、あるのはわかるけども、君のは見ているだけで痛々しい時がある」
ごめんなさいを心の中で連呼しているんだろうなのを感じるらしい。
「ある時から、そうなりましたね」
「そうか」
「怒鳴られる方が悪いのだと」
「それは違うと思うよ、もしも君が悪いというのならば、君が離れた後、縁談話を進めるために実家を離れたじゃない?その後から今までの間に、いい噂が流れてくるものなんだけども、そういうのは全く聞かないしさ、それが証明ではないのかな」
「あれだけ自信を持って言ってたのだから、もっと出来るものだと思ってた」
「ほら…」
「それもすごく辛いんですよね。生まれ育ったところももうすぐ冬になるのかな、困窮は人を変えてしまうから」
「こんなことを言ってはなんだけども、君はもう僕の妻だしね」
「そうなんですがね」
「後ろ髪惹かれるのはわかる」
「まだ親代わりの人たちがいますから、何か難癖や要求はないとは思いますが…」
「それも恐れていたよね、ただそんなことをしたら、そこで終わるけども」
「誰か実家の代わりに…善政とはいいませんが、きちんと取り仕切ってくれる人がいればいいのですが、それも期待できませんし」
「難しいのはもっと悪くないと、これ以上の問題を起こしてくれないと、変えることが出来ないって点か」
「そうですね。緩やかに悪くなる、私は離れて、逃げて、そこが心苦しいのかましれません」
「人間はそう弱くはないよ」
「強くもないじゃないですか」
「そうだね」
「ごめんなさい、感情的になりました」
「君はもっと感情を出してもいいとは思うんだけどもね、感情が出そうになると、無理やり、出さないように、落ち着けようとしているからさ、心配なんだよね」
「なんです?母体としてですか?」
「そんなことは言ってはいないよ。これも聞きたいことではあるけどもね、僕の方にもしも原因があったら?君はどうするんですか?」
「一緒にいてもいいですか?」
「えっ?」
「そこは考えてなかったわけではないので、というか、問われたかともあります」
「えっ?そうなの?それは知らなかった」
「そうしたら旦那様は私のものになる」
「……」
「あっ、すいません」
「情熱的だな…えっ?もう一回言ってよ」
「言いませんよ」
「何、そのすごい思い、どっから来ちゃった感じなの?いや~僕は愛されているわ、だってもしもそうなら、僕は孤独な時間が増えるわけじゃん?あれ?ごめん、僕の方も混乱しています」
しばらくお待ちください…
「その時はよろしくお願いします」
もう領主は妻にそういうしかなかった。
「なんか無難な答えしか出なくてごめんね」
「いえ、すいません、私もなんか、よくわからない感じですし」
「でも…そんなことを考えてくれてたんだね」
「政略結婚ですよ、私たち」
「それはわかってる、わかってるけどもさ、そこまで考えるとなると、ちょっと怖いでしょ。上手く行くことばかりが人生ではない」
「上手く行きすぎても怖くなるのも人生ですよ」
「わかる」
「でしょ」
「俺としては例えどんな結果だとしても、同意してくれるというだけで、人生の勝者だよ。あの瞬間、頭の上にある鐘がカランコン鳴った」
「ずいぶんと鳴りの悪い鐘ですね、そこは天上の音とか、頑張って鳴らしたら糸が切れそうとか」
「そこまで行くと風情がない」
「でも旦那様の勢いは、それぐらいかな」
もしも現在の妻との間に子供が無事に生まれた場合、今日は祝日します、いえ、毎年祝日にしますとか言ってしまうことが予想される。
「まあ、ワケがわからないことになっているだろうは、今からでも想像はできる」
「やっぱり」
「そりゃあもう、そうでしょうよ、祭りですよ、フェスティバルが開催されるに決まってる」
「そういう旦那様は第三者としては楽しく見れる」
「そこは関係者として見ちゃってよ」
「そうなると、まずは止めないといけないからな」
「とりあえず、これに関してはどっちかだと思ってるよ」
「どっちかでしょうが、旦那様の方に何も問題がないのではあれば…」
「それは約束はしないよ」
「約束してくれるまでいい続けますよ」
「そこは平行線になりそうだ。後は寝室で続きを話そうか」
ちょっとね、今日は疲れたの、癒しが、癒しが必要なんですよ。わかりますか?
「さすがにそれはわかりません」
「そんなに拒絶しないでよ」
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