浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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性格の悪い呪い

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魅了を生存政略にしている生き物は多い、それこそ猫なんかは身近だろうが、ダンジョンの中にはもっと極悪なのがいる。
「それこそ自分の家族とか恋人とかに化けてくるタイプがいるんだよ」
さすがにそんな危険地帯は、戦闘許可証持ちとはいえ、新人には歩かせることはできない。
「メッ」
あれは腹が立つわね。
「メメミヤさんは会ったこと…あぁ」
「どうしましたか?」
「ちょっと前にね、サメを主役にした映画が、サメどころか、一部で流行したんだけだもさ」
「パニックホラーとか?」
「メッ」
フィギュアスケートよ。
「タイトルはフィギュアスケートサメシングルっていうんだけども、そのミミックが主演のサメに化けて、現れちゃってさ。うん、ちょうどファンのサメに同行してもらったのが災いさたって感じかな、それでミミックはサメに化けるということを覚えてしまったんだ」
「メメミヤさんが同行した場合、そのサメミックは現れると」
「かもね。ただサメミックはサメを魅了できないから」
はぁ?イッキュウ様(サメシングルの主演のサメ)はそんな顔してないわよ。
もっと男前よ!
「なんかこう、サメミックは模倣はしてくるんだけども、サメは騙せないんだよね」
「じゃあ、何を騙すんですか?」
「サメ愛好家かな」
ダンジョンにサメを同行してもらうということは、サメの愛好家であることが多く。
「俺にはサメに剣を向けることはできない」
そう落ち込む人の隣で、同行したサメはイラッとして、サメミックを殴りに行きだした。
「だからあんまり被害がないんだよね、なんか優先順位がそのパーティーで強そうな存在、そこを魅了しちゃえば、自滅する、争うとか思ってる感じなんでさ」
「それは的確に魅了するっていうのを覚えたら厄介ですね」
「そこまで頭はよくないんだよね。罠系って頭良さそうに見えるんだけどもさ。サメはこんな感じで笑い話になれるけど、人はそうはならない、愛する人の姿で、自分に敵意を向けてくる、そんな相手と戦って、勝つってことはつまりさ、それで家族のそばに戻れなくなった人もいる」
「それは大変ですね」
「そっ、ダンジョンに潜れるといいお金になるんだよ、老若男女それぞれにチャンスがあるけども、そういう危険があるからこそなんだ。ただね、最近不況だからね、勝手にダンジョンに入ろうとしてしまう人もいる」
それでパトロール対象のダンジョンもある。
「KCJが警備を依頼されているものがメインなので、そこはあまり危険じゃないよ。ただ最奥まではパトロールはしないから、そっちに隠れられるとちょっと辛いかな」
「メッ」
「…」
「どうしたんですな?」
「入場届けの数と、メメミヤさんがかぎとっている匂いの数が合わないってさ」
「それは…私たちのお仕事ですか」
「お仕事ですね、ただ君はまだ研修中だから、前には俺が出る。メメミヤさん、もしなんかあったら、すぐに彼女を連れて、支部まで戻れるように」
「メッ」
「では行こうか、ただのパトロールで終わるか、わくわくしない冒険の始まりになるのか、どっちだろうね」


「でどっちなんだ?」
「わくわくしない方だったね」
不法侵入者を発見しました。
「あっ、それとその帰りに私にかかっている加護かな、いや、呪いかな、何かわかったよ」
「それは解けるんだろうな?」
「わからんよ」
支部に戻ると、サンタとレッドノーズたちがいて、レッドノーズがじっと彼女を見るのである。
「サッ」
「メッ?」
「サッ」
「メッ!メッ?」

「短歌かな?」
サッメッサッメッメッは美しい文系。
「なるほど、57577ではなく、サメサメメという形…いや、ええっと話を戻すよ」
「どうぞ」
「なんかさ、私にかかっているもの、呪いが一個あってさ、たぶん勇者君にもどうようのものがかかってるのではないかと推測されるので、今度勇者くんにも検査あるみたいで」
「それはどんな…お前を死に追いやる、苦しめるものではないだろうな?」
「そういうのじゃない、でも、もっと性格の悪い呪いだね。私たちより前にも異世界転移被害者が、私が転移した世界にもいたじゃない?」
「その足跡をたどっていたとはいってたな」
「そうそう、それでその中の無念、未練がある魂かな、あれがその後、異世界転移してきた人たちを呪っているそうだよ」
「逆恨みもいいところだな」
「確認されたのは、私たちが死ぬと、新しく異世界転移被害者を生まれるってやつだ」
「つまり死と同時に、新しい犠牲者が選ばれるってことか」
「そうそう、それで私たちはたまたまクリアできたというか、戻ってきたから、イレギュラーだったみたい、戻れないことを前提に組み込まれた呪いだから、私たちみたいに戻って、これでまだ幸せならばそのまま、また異世界転移もあったかもしれないけども、元の世界で家族とは上手くいってない、苦労はしているとカウントされているから、呪いがわかりづらい、ええっとこういうのって呪いが満足しているっていう状態になってるんだよね」
「ろくでもない話だな」
「世界の壁を越えると、勝手が変わるから、こっちの魔法とか不思議な力が消えてしまう、また逆もあるそうなんだよね。それもあって私は効果は出てないが呪いのキャリアってことね」
「俺はそんなの気にせんぞ」
「そうしてくれると助かるよ、これを最初に知ってたら、帰還するか、そのまま戻るか、もうそこから迷うところだったし。わかる前にメメミヤさんがいてくれて良かったよ」
私の妹ちゃんに呪いを、ほぉ~そいつはまだ魂は残っているのかしら?
「頼もしいよ」
「俺も何とかできるならばな」
「私を守ってくれるの?」
「非力だが、守りたいね」
「それはありがとう、嬉しいよ」
「それでだ、生活は変わったりするのか?」
「ないね、メメミヤさんがうっすらな呪いの気配かぎ取っちゃったからさ、織ってくると迎撃するっていってたし」
もしも向こうに行く機会があれは、呪いの元であるまだ無念の中にいるだろう人霊をしばき倒すつもりらしい。


「これが本当に難しい、理由としては転移被害者同士の揉め事だからね」
KCJは転移被害者の受け皿なので、そういう問題は困るのが本音。
「ただそれならば加害者も許さないという方針は一貫している」
彼女と勇者くんにかけられた、死と共に新しい異世界転移召喚が行われる呪いは、この二人が最初の二人ではないと思われる。
「理由は呪いが非常に良くできた形になっているからだね」
呪いというのは感情的なものである。
わかりやすいものほど、激情的だ。
「それに比べると、この呪いは強かなんだよ、あれだ、性格の悪さが滲み出ているっていうのかな」
自分はもう戻れないんだな。
そう思ったときに、何をするか。
「前向きに最後まであきらめないって考えてくれればいいよ、でもね、それは理想だし、そう選ぶのは本当に少数なんだよね。だからそういうケア活動とかしないと、二次災害、新しい被害者が生まれてしまうものなんだよ」
そう考えれない人間がいた。
あぁ、なんで自分はこうなのだろうか。
ここで自分は終わりなのだろうか。
もっと生きたかった。
美味しいものも食べたかった。
暖かいところにいたかった。
あぁ、なんで自分はここにいるのだろうか。
「そこに幸せそうな人が目にうつるとね、ダメなんだよ」
なんで?
なんでさ。
それはないよね。
僕はそう思ったんだ。


「メッ」
「どうしたの?メメミヤさん?」
KCJの職員が話しかけた瞬間、メメミヤは宙を舞い、何かをはたいた。
バン!
少なくとも職員の目には何も見えてない、その事で思い当たる節と言えば。
「呪い?」
「メッ」
「うわ、異世界由来の奴か」
「メッ」
そうね。
「これ、扱い本当に難しいんだよね」
定番の供養というやり方もあるが…
「それだと彼女の人生がそのために費やされることになるからな」
「メッ」
何かがくるたびに私が叩き落とすのもいいんだけども。
「メメミヤさんたちが、異世界にゾロゾロいって、この呪いの元を辿るのも方法のひとつなんだけどもね」
「メッ」
それも悪くないわね。
(メメミヤさんがいると、他のサメも協力してくれるからな)
どうしてかっていうと、メメミヤさんは、サメの基準からすると大変美人ザメなのである。
支部に戻った際に、レッドノーズたちはまずメメミヤさんを見た、おぉなんと美しいのかと、妻帯のサメがいない集団である。
そりゃあ、ドキドキしていた。
そんなメメミヤさんと一緒にいる人間を見て、その人間が喜ぶことをすれば、評価が上がるんじゃないかというサメが、彼女にかかった呪いの話を教えてくれたのだ。
「サッ」
どのサメもそんなことが出来るわけじゃないよ、そういう呪いを見たことがなければわからないし。
レッドノーズはいつも同じメンバーではない、クリスマスシーズンでもなければ、交代制で、休んでいるサメがKCJの食堂に入り浸ってたりする。


「そういう意味では判明することはラッキーなんだけども、その後なんだよな」
「対処方法の問題か」
「そうそう、気分もあまりよろしくないでしょ」
「でもどうして二人にかかるんだ?」
「あぁ、これはね、最初は一人だったみたいよ」
異世界に喚ばれたのは一人である。
その一人がどう生きたか、知る術はない。
「ただそれが積み重なってしまった」
何人だけじゃない、正確な数などわからないだろう。
「死しても元の世界に戻ることはかなわなかったのか」
「そうみたいだね、でもあちらの世界で供養されているわけでもないから」
帰りたいよ。
「それでちょっと怖いことが、こちらの世界と向こうの世界というのは時間の流れが違うからね、わりとここ最近の人たちが、向こうで、何十年とか、百年はいかないだろうが、過ごしているってやつね。それこそ私とは違い、体内時計が早いっていうのかな、その分肉体の衰えはあるけども、魂だっけ、精神でもいいんだけども、そっちは研鑽されるってやつね」
その状態だと魔法、ないし他のスキルが目覚める、目覚めやすいようだ。
「ただ時は普通の人より早いから、まずはその時を通常の時間に戻すのが最初らしい、けどもその状態になってから、すぐにそこまで思い付ける人はいないそうだよ」
「ん?これだとあいつのスキルは」
「いいところに気づいたね、そう、勇者くんの能力、あの能力って、このまずはこなさなければならない優先順位がわかる、見えてるんでさ」
たまたまこの二人は、体内時計が遅い状態で召喚されている。が、それを補うスキル、勇者のこれと。かかっているであろう加護を努力で補った彼女がいると、徐々に力関係を変えてくる。
「一人、異世界に倒れた奴が、恨みで自分の故郷から似たような年齢や立場の人間を召喚するのをずっと繰り返していたけども、ある時それ+偶然なのだろうが、本来の異世界転移が行われたら、異世界転移が同時に二人になってしまった。転移の加護というのはそれぞれあるのだけども、おおよそ世界を生き抜くには一人分は足りないんだけども、二人になったら、会わせ技っていうのかな、シナジー効果が出ちゃったんだよね、それが誤算だよね」
「本来の想定とズレているってことか」
「そうそう、ズレまくっている。たぶんさ、最初に呪った人ってさ、やがては、こちらの世界の人間全てが転移しますようにぐらいの気持ちで、あの呪いを始めたんだろうがね、まさかこうなるとは思わなかったって、愕然としているのではないだろうか」
「いい気味だな」
「私からするとその感想も言えないわ、実際に巻き込まれなきゃ今頃…」
「それはいい方に考えすぎだ」
「そうかな」
「思った以上に世界は残酷だぞ」
「知ってる」
「知ってるなら…」
「あっちはあっちでスゴかったからな、生き残ることばかり考えていたからさ、慌ただしかったよ」
「そうか、お帰り」
「ただいま」
「俺は何度だっていうぞ」
「そうだね、それは嬉しいよ」
「そうか?」
「ええ、だってもう私にはそういう人はいなくなっちゃったんたから」
「生きているのにな」
「でもいらないんだよ」
「これで困ったら、お前にお金貸してくれって懇願してきたらどうするんだ?」
「その時やっと諦めることが出来るんじゃないかな」
「そうか、その時が来なければいいも思っている気持ちと、さっさとやって捨てられろの二パターン気持ちがある」
「勇者くんの家のように生命保険をもうもらっているっていう状態ならば、何も言えない、断るのが楽みたいだけどもさ、私の方は、まだ家族だろうから、助けてあげたらっていう人がいるんだよね」
「…人の苦労も知らないで」
「人の苦労がわかる人間ってこの世にいるのかしら」
「お前がそういうと、心が痛いよ」
「あんまり深く感じ取らない方がいいよ、それこそ無意味だから」
「クリスマスは約束だからな」
「いいよ、どうせ暇だし」
「ならついでに付き合うか?」
「そういうのはここでいうことじゃないでしょ」
「…」
「ごめんね、私はこういう人なのよ」
「知ってる」
「そう」
パラパラと雨の音がする。
これが静かになると雪に変わるという。
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