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良い匂いがする泥人形
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「視線が気になるね」
「そういうときは泥人形を出すといいかな」
「ままごとの準備もできてますよ」
勇者くんのパーティは勇者以外は女性である。
「人形を好みの女性と思い、話しかける姿というのは…」
「かもしれませんが、身を守るためには必要なことですからね」
「それも、そうだな」
「むしろこれが出来てなかったらと思うとゾッとするよ」
「そうだろうね、治安が悪いところをほぼ無傷で、毎回越えれるのって、これがとても大きいし」
泥人形はいい匂いがするらしい。
「俺には全然わからないが」
スンスン
「そりゃあ勇者くんは対象じゃないし」
たぶん彼には永遠にわからない匂いだろう。
「メッ」
「あぁ、メメミヤさん。…もうこんな時間か、集中して時間がわからなくなるぐらいになってたよ」
これからも体を動かすための練習である。
「メッ!」
まだメメミヤの言葉はわからないが喜んでいる…感じがした。
それは当たってる。
ザッザッ
本日はダンジョンの中を歩くが、ダンジョンの中だというのに、青空はあるし、歩く道は砂地。メメミヤが前を歩くことで、砂地に道はできる、それを歩くが、その後ろから、メメミヤが作った砂の道は、両脇から砂が崩れて埋もれていく。
ダンジョンなんてこんなのばっかりだ。
そして彼女はその道を歩くのも慣れている。
(こういう道をよく通っていたな)
それこそ五人で、先頭を交代してながら、獣道と呼ばれる道を歩き、次の町、または必要な糧を得るために歩いていた。
「あの枝がちょうどいいんじゃない」
「じゃあ、さっさと切っちゃおうか」
手を保護した状態で、枝の下から手を伸ばし、捕まえて、枝の下にいたものからその枝を渡され、切断していく。
「この枝の、何に使うんだろ」
「あぁ、それな、魔物避けだな、ここまで奥地の植物だと、魔物に荒らされないように生命力が強いんだよ」
忌避をする何かが含まれていて、それを経験的に利用している。
「本当は、もっと細かく切断してもって帰りたいんだがな」
丈夫な袋に太い枝のまま入れていく。
「あっはっはっ、それだと安く買い叩かれちゃうよ、こういう大きい枝だから、見栄えがするでしょ、だから高く買ってくれるし、このぐらいの枝だと、育つのに五年はかかるからさ」
細い枝だと、その忌避効果も早く抜けてしまうようだった。
「じゃあ、戻りますか」
「この辺まで来ると、他の人が採集している訳じゃないから、覚えておくといいと思うよ」
そこで道のりを簡単にメモして、宿に戻ったら、きちんと地図、日本語で書き付けておこうということになった。
「日本語でメモしてたのか」
「そうそう、してたね、理由は日本語の読み書きをさているのが勇者くんと私だけだったし、あのパーティは勇者くんがいなければ解散しているわけだしさ」
「そんなに盗み見る奴がいるのか?」
「いるって言ったね」
どこにもずる賢い奴はいるんだよ。
えっ?私はどうかって、私はね…
そこで勇者を見ていた。
「勇者くんがモテたおかげで助かりました」
「向こうの基準でモテる顔なのか」
「貴族とかそういう感じなのかな、ええっと大抵はみな武装しているから、そういうことが出来そうにもないのは、お偉いさんみたいな」
「でも実際はお前もだが、大分動けているんだろ?」
「加護の力だと思う、こっちで学生してたときに欲しかったぐらい体力の回復は早いんだよ」
「へぇ~」
「おかしいとは思ったんだよね、自分の限界は知ってるじゃん、もうそろそろ疲れが出てもおかしくはない、そうなったらどうしようかのギリギリで生活してたからな」
理由としては食事も最初の頃は大したものをとれてはいなかった。
「だからあっちの世界って、健康寿命や、平均寿命方面はこっちと比べられないぐらいだったからね」
「よく戻ってきた、誉めてやるぞ」
「あぁ、ありがとう、そういってくれてすごくうれしいよ」
「そうか…明日はちょっと早くに来い」
「ええ、そうするわ、やっぱりクリスマスイブだと混むっていってたからね」
「そうだな」
「クリスマスをお祝いするっていうのも10年、いえ、11年ぶりね」
「これからはずっと祝えばいいさ」
「そうしたいものだね。あぁ、勇者くんたちもクリスマスはお祝いするみたいだからさ、食材とかは送っておいた」
「なんて言ってた?」
「勇者くんは何を今さらって感じで、むしろ彼女達の方が騒いでたな」
勇者は彼女が三人います。
「だから、その~ちゃんと人生をお考えでしたら、しっかりやっておいた方がいいよとはお伝えしておりまして、何かは用意しているようです」
「俺も人生は考えているんだがな」
「そう、それでいいのよ」
「…お前はどうなんだ?」
「どうね…今は理想の自分とほど遠くなってしまったから」
「そこのズレに葛藤しているってことか」
「しているね、もうそんな未来は来ないのに、まだ過ってしまう自分がいる」
「俺はそれでもいいと思ってる」
「そう」
「そういうのが人生だ、たまたま上手くいった俺から言われるのはシャクかもしれないが」
「いえ、あなたが葛藤しているのは、学生時代に見ているわよ」
「そうだったな、お前らは、そうだった」
この男が気を許す相手は彼女ともう一人、小学校からの友人がいます。
その人は男です。
「他の人からすると、あなたの人生は順風満帆で、頭もいいし、今は顔もいいというのかし、そしてセミリタイヤするぐらいのお金も持っているけども、自分から望んでるものに関しては…進路がまずあなたを苦しませていたじゃない」
「それ以外は許さなかったからな、まあ、楽だったが」
「それが楽だったって、そこに受かるために、いろんなものを犠牲にしてきた人もいるんだけどもね」
「そうだな、今みたいな言い方は嫌いか?」
「う~ん、複雑ね。だって、昔、そんなあなたに叫んでた人はいたから」
「あったな」
それは自分にこそ相応しいのに、なんでなのよ。
「あそこから、代わりに私と付き合いなさい、そうして妻として養いなさいというのを見てしまいましたら、大変っすねって言葉しか出ません」
「断ってもそういうのは定期的に現れるんだよな」
「自分の好きではない相手から、好意を抱かれるのは、大変なんだなと」
「そうだな」
この辺があるので、彼は彼女に対していつでも遠巻きに見ているような態度なのである。
「お前は浮いた話はなかったのか」
「ないね、勇者パーティにいるし、仲間、協力関係を築いている女性陣はけっこうな確率で、勇者くん狙いというかね、だから地元が一緒で、パーティを支えている私ももれなくそうだろうなって感じだったな、実際はそんなことはないんだけどもね、やっぱりその地域にもよるが、女性だけで行動するには危ないところはあったし」
それこそ先ほどの魔物の忌避効果がある枝の採取の地域なんかはそうで。
「女性が、読み書きをできるというのが極端に少ない地域だった、だからそういうのが出来る女は生意気であり、口答えするものってね」
だが、そういう読み書きが出来る人材がいなければ、勇者の仕事なんて成り立つわけがない。
「そういうところは、やはり現地出身の仲間は詳しいよ、あっちに行くときは注意した方がいいとかね、たださ、途中から私たちのせいなのか、その仲間達も能力に目覚めて来たんだよね」
いい匂いがする泥人形もその一つである。
「わりと旅慣れた子でね、話上手だから、情報の聞き出し方なんかも、勉強させてもらったよ、ただそういう子だからさ、酒場なんかでは誘われてたんだよね」
それが嫌だった。
どうか私を見ないでください。
代わりにこの子を見てください。
「最初は、まあ、こういう能力の怖いところだね、よくわからないことが起きたから始まる」
椅子に泥人形が乗ると、さっきまで仲間を誘っていた男たちが、まるでその誘いをノリよく盛り上げる美人かのように騒ぎ出す。
「いいね、いいね!」
「そう来なくっちゃ」
「私たちからは泥人形にしか見えない、それをもう夢でも見せられているのかなぐらいの感覚で、みんな騒ぎ出したんだよね」
仲間の能力だとも気づかなかったので、そのままその場から去った。
「そういう感じで誘われるたびに泥人形が出てくるし、その時にいない、いるで、誰の力なのか、また私たちには影響、そういう誘いの回避や、逃げる時間を稼ぐって感じだったよ」
もうそこもマメな記録からである。
さっき起きてることで、見えていることだけはまずしっかりと書き出し。
「仲間ともその後は話をするんだよ、あれを見てどう思ったかってやつ」
気持ち悪いという意見が多かったのだが。
「でもあれがあれば、代わりに人形が引き受けてくれますよね」
そこで、あれ?もしかしたら…
「で、実際に彼女が声をかけられると100%の確率、仲間とかになると、いくらか確率は落ちるんだけどもさ」
勇者くんが仲間に何をするんですか?ときっぱりと声を出して、中に入ろうとしたら。
「勇者くん、その時さ、殴られたわけ、そうしたら、泥人形がさ」
香り出したらしい。
それを見て、笑っていた奴が、みんな香りによって同じ表情に変わった。
「ホラー映画だな」
「ホラー映画だと思う、そういう時の表情、ええっとさ、さっきまでガハッハッ笑っていた人達とか、そういう人の顔がさ、スイッチでも入ったかなのように、無表情というか、作られた顔になるんだよな」
気持ち悪いと感じるのは異世界の人たちも共通で、嘲笑してなかった人たちは我関せずとさっと酒場から出ていったし。
「ただそれは仲間がやったことではない、勇者がやったことであり、勇者に失礼なことをしまからこそ、そうなったって話になってた」
そこら辺から、勇者パーティに失礼を働く人たちはびっくりするほど減った。
「勝手に勘違いしてくれたわけか」
「最初はどうするかなって話してたんだよ、でもやりやすくなったから、それならばそれでってことだね、どうも私たちと一緒に過ごすと、そういう心の願望が能力に出ちゃうっぽい、これは私たちこっちの世界出身者にはでなくて、向こうの世界出身者にのみ現れる特徴なんだよね」
そして今のところ祝福としては現れない、今まで感じたことがある痛みが、そのまま発現して、他人に効果を及ぼしてしまうタイプ。
「でも私たちはそれに助けられたんだ、よい匂いがする泥人形のおかげで、誘ってくる人たちから安全に逃げることができるようになった、それまでは上手く断るにはどうしたらいいかみたいな話にはなってたから、その話がまるでなくなったんだ」
でもなんで今なんだろうって思ったの。
こういうのがあれば、私は苦しまなくて良かったのに。
「あの子は戸惑ってたけどもね」
「それだけ嫌な思いをしてたんだろうな」
「そう思う、あの子が協力してくれるのは、私たちはそういう人たちではないからが大きかったからね、というか、学生時代に転移しているから、そういう酒場文化は馴染みなんかないじゃん」
お酒というのは規制されているところもあれば、ないところもありました。
しかし、どこも許可制で酒は扱っている。
「何かを買い物する、ほしいものがある場合でも、均一化された大量製品とかないから、本当に大変だった」
記録用の紙がまず大変でした。
「ノート欲しかったな、同じような値段でも紙の質が、そこで同じ人が作ったものは、あれは良かったから、同じ人が作ったものならばそこまでハズレはしないだろうという考えも、手作業故のバラツキに泣かされましたよ」
下手すると保存が長期間出来ないものとかもあった。
「今はあいつもこっちで買い物したものを使ってるんだろう?」
「そう、KCJの許可とって、異世界に向かう人は、購買に商品卸している会社、商人さんによってはビジネスチャンスだから懇意にしたいんだよね」
以前登場した異世界でパーティを組んでいるリーダーなんかは、仲間のために手帳を定期的に購入していたりするのだが、そういう買い方をしているために、担当の商人さんも、いい手帳をがっつり蓄えてくれる。
そこで揃えてくれた、リーダーの仲間、魔法を使える彼などは、そのたびにドーパミンが出まくっている。
「私も自分でもまさか手帳、紙で喜ぶとは本当に思わなかったもん」
紙が凄く書きやすいです。
「後さ、こっちって照明も明るいんだなって」
この辺は魔法を使える彼も、夜間作業をするためにリーダーが工事を手配して、作業環境を作ったら、同じことをいってた。
「不便を知ってしまったから、いちいち感動するようになったよ」
「人生、それぐらいでいいんじゃないか」
「そうだね、そうするよ」
少し寒くなった気がした。
気のせいかな、と思ったが、店のスタッフも暖房の設定を変えたので、やっぱり気温が下がってきたようだった。
「そういうときは泥人形を出すといいかな」
「ままごとの準備もできてますよ」
勇者くんのパーティは勇者以外は女性である。
「人形を好みの女性と思い、話しかける姿というのは…」
「かもしれませんが、身を守るためには必要なことですからね」
「それも、そうだな」
「むしろこれが出来てなかったらと思うとゾッとするよ」
「そうだろうね、治安が悪いところをほぼ無傷で、毎回越えれるのって、これがとても大きいし」
泥人形はいい匂いがするらしい。
「俺には全然わからないが」
スンスン
「そりゃあ勇者くんは対象じゃないし」
たぶん彼には永遠にわからない匂いだろう。
「メッ」
「あぁ、メメミヤさん。…もうこんな時間か、集中して時間がわからなくなるぐらいになってたよ」
これからも体を動かすための練習である。
「メッ!」
まだメメミヤの言葉はわからないが喜んでいる…感じがした。
それは当たってる。
ザッザッ
本日はダンジョンの中を歩くが、ダンジョンの中だというのに、青空はあるし、歩く道は砂地。メメミヤが前を歩くことで、砂地に道はできる、それを歩くが、その後ろから、メメミヤが作った砂の道は、両脇から砂が崩れて埋もれていく。
ダンジョンなんてこんなのばっかりだ。
そして彼女はその道を歩くのも慣れている。
(こういう道をよく通っていたな)
それこそ五人で、先頭を交代してながら、獣道と呼ばれる道を歩き、次の町、または必要な糧を得るために歩いていた。
「あの枝がちょうどいいんじゃない」
「じゃあ、さっさと切っちゃおうか」
手を保護した状態で、枝の下から手を伸ばし、捕まえて、枝の下にいたものからその枝を渡され、切断していく。
「この枝の、何に使うんだろ」
「あぁ、それな、魔物避けだな、ここまで奥地の植物だと、魔物に荒らされないように生命力が強いんだよ」
忌避をする何かが含まれていて、それを経験的に利用している。
「本当は、もっと細かく切断してもって帰りたいんだがな」
丈夫な袋に太い枝のまま入れていく。
「あっはっはっ、それだと安く買い叩かれちゃうよ、こういう大きい枝だから、見栄えがするでしょ、だから高く買ってくれるし、このぐらいの枝だと、育つのに五年はかかるからさ」
細い枝だと、その忌避効果も早く抜けてしまうようだった。
「じゃあ、戻りますか」
「この辺まで来ると、他の人が採集している訳じゃないから、覚えておくといいと思うよ」
そこで道のりを簡単にメモして、宿に戻ったら、きちんと地図、日本語で書き付けておこうということになった。
「日本語でメモしてたのか」
「そうそう、してたね、理由は日本語の読み書きをさているのが勇者くんと私だけだったし、あのパーティは勇者くんがいなければ解散しているわけだしさ」
「そんなに盗み見る奴がいるのか?」
「いるって言ったね」
どこにもずる賢い奴はいるんだよ。
えっ?私はどうかって、私はね…
そこで勇者を見ていた。
「勇者くんがモテたおかげで助かりました」
「向こうの基準でモテる顔なのか」
「貴族とかそういう感じなのかな、ええっと大抵はみな武装しているから、そういうことが出来そうにもないのは、お偉いさんみたいな」
「でも実際はお前もだが、大分動けているんだろ?」
「加護の力だと思う、こっちで学生してたときに欲しかったぐらい体力の回復は早いんだよ」
「へぇ~」
「おかしいとは思ったんだよね、自分の限界は知ってるじゃん、もうそろそろ疲れが出てもおかしくはない、そうなったらどうしようかのギリギリで生活してたからな」
理由としては食事も最初の頃は大したものをとれてはいなかった。
「だからあっちの世界って、健康寿命や、平均寿命方面はこっちと比べられないぐらいだったからね」
「よく戻ってきた、誉めてやるぞ」
「あぁ、ありがとう、そういってくれてすごくうれしいよ」
「そうか…明日はちょっと早くに来い」
「ええ、そうするわ、やっぱりクリスマスイブだと混むっていってたからね」
「そうだな」
「クリスマスをお祝いするっていうのも10年、いえ、11年ぶりね」
「これからはずっと祝えばいいさ」
「そうしたいものだね。あぁ、勇者くんたちもクリスマスはお祝いするみたいだからさ、食材とかは送っておいた」
「なんて言ってた?」
「勇者くんは何を今さらって感じで、むしろ彼女達の方が騒いでたな」
勇者は彼女が三人います。
「だから、その~ちゃんと人生をお考えでしたら、しっかりやっておいた方がいいよとはお伝えしておりまして、何かは用意しているようです」
「俺も人生は考えているんだがな」
「そう、それでいいのよ」
「…お前はどうなんだ?」
「どうね…今は理想の自分とほど遠くなってしまったから」
「そこのズレに葛藤しているってことか」
「しているね、もうそんな未来は来ないのに、まだ過ってしまう自分がいる」
「俺はそれでもいいと思ってる」
「そう」
「そういうのが人生だ、たまたま上手くいった俺から言われるのはシャクかもしれないが」
「いえ、あなたが葛藤しているのは、学生時代に見ているわよ」
「そうだったな、お前らは、そうだった」
この男が気を許す相手は彼女ともう一人、小学校からの友人がいます。
その人は男です。
「他の人からすると、あなたの人生は順風満帆で、頭もいいし、今は顔もいいというのかし、そしてセミリタイヤするぐらいのお金も持っているけども、自分から望んでるものに関しては…進路がまずあなたを苦しませていたじゃない」
「それ以外は許さなかったからな、まあ、楽だったが」
「それが楽だったって、そこに受かるために、いろんなものを犠牲にしてきた人もいるんだけどもね」
「そうだな、今みたいな言い方は嫌いか?」
「う~ん、複雑ね。だって、昔、そんなあなたに叫んでた人はいたから」
「あったな」
それは自分にこそ相応しいのに、なんでなのよ。
「あそこから、代わりに私と付き合いなさい、そうして妻として養いなさいというのを見てしまいましたら、大変っすねって言葉しか出ません」
「断ってもそういうのは定期的に現れるんだよな」
「自分の好きではない相手から、好意を抱かれるのは、大変なんだなと」
「そうだな」
この辺があるので、彼は彼女に対していつでも遠巻きに見ているような態度なのである。
「お前は浮いた話はなかったのか」
「ないね、勇者パーティにいるし、仲間、協力関係を築いている女性陣はけっこうな確率で、勇者くん狙いというかね、だから地元が一緒で、パーティを支えている私ももれなくそうだろうなって感じだったな、実際はそんなことはないんだけどもね、やっぱりその地域にもよるが、女性だけで行動するには危ないところはあったし」
それこそ先ほどの魔物の忌避効果がある枝の採取の地域なんかはそうで。
「女性が、読み書きをできるというのが極端に少ない地域だった、だからそういうのが出来る女は生意気であり、口答えするものってね」
だが、そういう読み書きが出来る人材がいなければ、勇者の仕事なんて成り立つわけがない。
「そういうところは、やはり現地出身の仲間は詳しいよ、あっちに行くときは注意した方がいいとかね、たださ、途中から私たちのせいなのか、その仲間達も能力に目覚めて来たんだよね」
いい匂いがする泥人形もその一つである。
「わりと旅慣れた子でね、話上手だから、情報の聞き出し方なんかも、勉強させてもらったよ、ただそういう子だからさ、酒場なんかでは誘われてたんだよね」
それが嫌だった。
どうか私を見ないでください。
代わりにこの子を見てください。
「最初は、まあ、こういう能力の怖いところだね、よくわからないことが起きたから始まる」
椅子に泥人形が乗ると、さっきまで仲間を誘っていた男たちが、まるでその誘いをノリよく盛り上げる美人かのように騒ぎ出す。
「いいね、いいね!」
「そう来なくっちゃ」
「私たちからは泥人形にしか見えない、それをもう夢でも見せられているのかなぐらいの感覚で、みんな騒ぎ出したんだよね」
仲間の能力だとも気づかなかったので、そのままその場から去った。
「そういう感じで誘われるたびに泥人形が出てくるし、その時にいない、いるで、誰の力なのか、また私たちには影響、そういう誘いの回避や、逃げる時間を稼ぐって感じだったよ」
もうそこもマメな記録からである。
さっき起きてることで、見えていることだけはまずしっかりと書き出し。
「仲間ともその後は話をするんだよ、あれを見てどう思ったかってやつ」
気持ち悪いという意見が多かったのだが。
「でもあれがあれば、代わりに人形が引き受けてくれますよね」
そこで、あれ?もしかしたら…
「で、実際に彼女が声をかけられると100%の確率、仲間とかになると、いくらか確率は落ちるんだけどもさ」
勇者くんが仲間に何をするんですか?ときっぱりと声を出して、中に入ろうとしたら。
「勇者くん、その時さ、殴られたわけ、そうしたら、泥人形がさ」
香り出したらしい。
それを見て、笑っていた奴が、みんな香りによって同じ表情に変わった。
「ホラー映画だな」
「ホラー映画だと思う、そういう時の表情、ええっとさ、さっきまでガハッハッ笑っていた人達とか、そういう人の顔がさ、スイッチでも入ったかなのように、無表情というか、作られた顔になるんだよな」
気持ち悪いと感じるのは異世界の人たちも共通で、嘲笑してなかった人たちは我関せずとさっと酒場から出ていったし。
「ただそれは仲間がやったことではない、勇者がやったことであり、勇者に失礼なことをしまからこそ、そうなったって話になってた」
そこら辺から、勇者パーティに失礼を働く人たちはびっくりするほど減った。
「勝手に勘違いしてくれたわけか」
「最初はどうするかなって話してたんだよ、でもやりやすくなったから、それならばそれでってことだね、どうも私たちと一緒に過ごすと、そういう心の願望が能力に出ちゃうっぽい、これは私たちこっちの世界出身者にはでなくて、向こうの世界出身者にのみ現れる特徴なんだよね」
そして今のところ祝福としては現れない、今まで感じたことがある痛みが、そのまま発現して、他人に効果を及ぼしてしまうタイプ。
「でも私たちはそれに助けられたんだ、よい匂いがする泥人形のおかげで、誘ってくる人たちから安全に逃げることができるようになった、それまでは上手く断るにはどうしたらいいかみたいな話にはなってたから、その話がまるでなくなったんだ」
でもなんで今なんだろうって思ったの。
こういうのがあれば、私は苦しまなくて良かったのに。
「あの子は戸惑ってたけどもね」
「それだけ嫌な思いをしてたんだろうな」
「そう思う、あの子が協力してくれるのは、私たちはそういう人たちではないからが大きかったからね、というか、学生時代に転移しているから、そういう酒場文化は馴染みなんかないじゃん」
お酒というのは規制されているところもあれば、ないところもありました。
しかし、どこも許可制で酒は扱っている。
「何かを買い物する、ほしいものがある場合でも、均一化された大量製品とかないから、本当に大変だった」
記録用の紙がまず大変でした。
「ノート欲しかったな、同じような値段でも紙の質が、そこで同じ人が作ったものは、あれは良かったから、同じ人が作ったものならばそこまでハズレはしないだろうという考えも、手作業故のバラツキに泣かされましたよ」
下手すると保存が長期間出来ないものとかもあった。
「今はあいつもこっちで買い物したものを使ってるんだろう?」
「そう、KCJの許可とって、異世界に向かう人は、購買に商品卸している会社、商人さんによってはビジネスチャンスだから懇意にしたいんだよね」
以前登場した異世界でパーティを組んでいるリーダーなんかは、仲間のために手帳を定期的に購入していたりするのだが、そういう買い方をしているために、担当の商人さんも、いい手帳をがっつり蓄えてくれる。
そこで揃えてくれた、リーダーの仲間、魔法を使える彼などは、そのたびにドーパミンが出まくっている。
「私も自分でもまさか手帳、紙で喜ぶとは本当に思わなかったもん」
紙が凄く書きやすいです。
「後さ、こっちって照明も明るいんだなって」
この辺は魔法を使える彼も、夜間作業をするためにリーダーが工事を手配して、作業環境を作ったら、同じことをいってた。
「不便を知ってしまったから、いちいち感動するようになったよ」
「人生、それぐらいでいいんじゃないか」
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