浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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距離のある恋は難しい

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なんかこう…面白くない飲み会ってあるじゃん。
今夜のが、本当にそれ!
「ごめん、明日、朝早くて」
そういう言葉で切り上げてきた。
そんな飲み会に参加したものだからさ、気分を変えたいというか。
自分の好みの店に行こう、もう明日なんか知るもんか!そんな気分であった。
「くぅ~」
これよ、これ、私の好きなのは、季節を感じるこだわりに、美味しいお酒、たまんない!
「あの~」
隣にいたお客さんに話しかけられた。
「えっ?あっ、はい」
「何をお飲みになられているんですか?」
なんでもあまりにも美味しそうに飲むもんだから、自分も同じものを頼みたくなったそうだ。
「これは前にお店の人に教えてもらったんですけどもね」
飲みやすいよ、すぐに無くなっちゃうお酒だよ。
「本当にそうなんですよね、だから飲みすぎには注意してくださいよ」
「あぁ、そうですね、そうします」
男性は柔和な笑顔で笑ってた。
このお店は知る人ぞ知るような店だ、最寄りの駅からちょっと歩かなければならないし、でもその価値がある。
さっきみたいな付き合いの飲み会、というかあれは出会い目的であったので、料理もお酒も二の次みたいな感じだったところとは違うのだ。
(お豆腐も美味しいです)
豆からたぶん違う、というかお取り寄せかなと思う豆腐も素敵。
この辺では食べられない味だ。
美味しいと幸せが交互にやってくる。
わかってます、食べ物でストレス解消すると、後が怖いということは、それがわかっても、今日は今日だけは許してください。
隣のお客さんにも日本酒がやってきた。
私は、さぁ、飲んでみてください、そして幸せを分かち合いましょう。そんな気持ちで、ドキドキしながら、口をつけるのを待っていた。
ぐいっと行くと…
「これは…美味しいな」
「でしょ、この味をわかってくれて本当によかった」
大酒飲みのような発言だが、そんなことはない、私はいつでも嗜む程度、というかそうじゃないと、料理の味がわからなくなるので。
「このお店は来るの初めてなんですよ、出張で来てましてね、出張先の人に、どこかいいお店知りませんかって聞いたら、ここを教えてくれて」
「教えてくれた人はわかってる、なかなかこれがわかる人は少ない」
「と思います。正直一口でビックリするほど美味しいってあまりないじゃありませんか」
「大人になればなるほど、特にね」
「そうなんですよね。どうせ食べるならば、飲むならば、美味しいものの方がいいなって思ってて」
「それならばこのお店はピッタリですよ」
あぁ、いい気分だ。
この気持ちならば、帰れる。
「もう帰っちゃうんですか?」
「ええ」
「寂しいな」
「ふっふっ、ありがとう、では出張頑張ってね」
そういって手を振って帰ることにした。
鼻歌も混じりで、スキップするように歩いていると。
「あの~すいません」
「あれ?どうしましたか?」
「しばらく出張でこっちにいるので、また会えませんか?」
「ではあのお店で会いましょうか」
「いいんですか?」
「あのお店は美味しいですからね」
「良かったら、連絡先を…」
「あれ?」
いかん。
「ない」
「えっ?」
「あっ、トイレだ。ごめん、忘れたみたい」
慌てて戻る。
チャージしたばっかなので、紛失したら、これからしばらく節約メニューになってしまう。
そして私の悪いところ。
「その~先日はすいません」
スマホは見つかった、じゃあ、帰ろうと、お兄さんを忘れて家に帰ってました。
「スマホが見つかって良かった、さすがに忘れられたのは悲しいですが」
「本当にすいません」
「いいえ、いいんですよ。でもお酒入ってからじゃまた忘れると困るから」
まずは連絡先交換となりました。
お兄さん、こっちに支社がある大きい会社の本社の人だったよ。
社名も、聞いたことあるってやつだった。
というか、先日あの会社特集組まれてなかった?
ただまあそういうのは、お酒の前には忘れてもらってですね。
「出張多いと大変ですね」
「でも各地の美味しいものが食べれるので」
食に興味なさそうな顔をしているのだが、思った以上に食いしん坊だった。
「あぁ、それならば今の時期は、あれも美味しいですよ」
知られざる名産物、特産物の話をしていたら。
「すいません、メモとっていいですかね?」
「いいよ、良かったら、食べていってよ」
「そうしたいですね」
思った以上にガチ勢であった。
「でも私はそこまでお兄さんみたいに食べ物にはこだわらないんで」
「何をいってるんですか、ハズレないじゃありませんか」
「それは美味しいお店を知ってるだけですよ」
料理にこだわってくれている人たちがいるからであって、私自身の力ではないのである。
お兄さんの出張は終わるが、そこから連絡先を交換しているので、定期的にメッセージを送るようにはなった。
そして最近は特別限定純米酒が買えることになったので、そちらをお兄さんに送ったところ、お返しにお菓子をいただいたのだが…
箱を開けると、オルゴールが鳴り出す。
この曲は…なんで私が好きな曲知ってるんだろう?
だから一曲が終わるまで聞いてしまった。
思えば、ここまでよくやって来たわねと、苦笑いが出てしまうような思い出がつまったメロディなのだ。


「ありがとう、あなたもこの曲は好きなんですか?」
「いえ、僕はよく知りませんでした。ただあなたが以前、この曲に、思いをはせていたので。曲名とかわからなくて、探すのはちょっと大変だったかな」
「その気持ちはとても嬉しいわ」

そう返事をもらったとき、僕はとんでもないことをしてしまったような気もした。
僕の知らない彼女の思い出というものがあって、それに触れてしまったのではないかと、返信からもいつもの彼女ではないという感じがしたのだ。

僕は彼女という人が好きで、その思いは日々強くなっていってた。
距離のある恋はとても難しい。
それを今、痛感している。
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