浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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夢を追いかける応援メニュー

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執務室にはテーブルとイスのセットがあるが、それは領主が用意したものだ。
「休憩しませんか?」
「ええ…では」
病み上がりの奥さんを、領主は気遣う。
「暖かくしてなきゃダメだよ」
「本当にそうですね、自分がこんなにも寒さに弱いとは思わなかった」
「それは僕もだよ…こっちには慣れた?」
「住めば都とあう話もありますし」
「そうかもしれないけども、出来れば好きになってほしいじゃない?」
メイドがやってきてお茶を用意してくれる。
(昨日あんなことがあったのに、プロだわ…)
「あの…」
「なんですか?奥様」
「昨日は大丈夫だったの?」
「昨日?あぁ、そうですね、色々ありましたからね」
何があったかというと、領主に文句があるといってやって来た人間がいたが、理由がうちの奥さんが出ていったのは領主のせいとか言い出したので、メイドさんがキレたのであるが、キレる前に。
「ふっふっ、私、これから怒りますので」
宣言してきた。
その後に、文句をいいに来た男に掴みかかり。
「酒の臭いさせながら、うちに来るとはいい度胸だな!」
豹変。
文句をいいに来た男びびる。
「酒飲む暇があったら、その分働けっていってるんだよ、あっ?」
「う、うるせぇよ」
「声が小せえぞ、あれか?言える相手にしか言えないだせぇのか?悪かったな、それに見えなかったわ、誰か縄持って来い、縛り上げて、吊るしてやる」
そこでハイ!と縄を他のメイドが持ってきた辺りで、文句をいいに来た男は逃げ帰っていった。
「そういうところが雑魚なんだよ!」
叫んだ後に。
「失礼いたしました」
人妻ロンスカメイドはこういう人だとそこで初めて知った。
通りで、何かあったら、執事長と共に領主のそばに控えて引かないのがわかった。



「愛というのはどちらかが死を迎えたのならば終わりになるのだろうか」
「何を言い出すんですか?」
「気になったんだよ」
「相手が亡くなっても、人生はそこで終わりではありませんから、誰かいい人を見つけたらいいんじゃありませんか?」
「それは…確かに、そうなんだけどもさ」
そういう答えではないらしい。
「それとも私にワンワン泣けと?」
「君を泣かせてしまったら、僕はどうしたらいいんだろうかね」
「そこで話を終わらせないでくださいよ、でもどうして気になったんですか?」
「先日仕事で、それこそ、相手と長い別れになってもそのまま一人でおられる方がいて、ただその人はすごくモテるもんだからね」
「気になったと」
「そう」
「あなたもモテるのでは?」
「そうかな」
「まあ、あなたの場合は美人が好きだからな…」
「それは否定しない。逆に君はどうなの?」
「いい男は確かにいい男なんだろうけども…」
「歯切れが悪いな」
「そうね、一言で言えば現実感がないのよね」
「現実感がない?」
「私の人生にはいないっていうのかな、今も私は夢を見ているような気分になるときはあるわ。あまりにも実家にいたときと違いすぎて」
「それはそのうち慣れるんじゃないかな」
「心はあの寒い部屋にまだいるのかもしれない」
「それなら迎えに行くよ」
「来ないでほしいわ、あんな姿は見られたくはないもの」
「何があったのさ」
「私の周囲にいたのは心ない人たちだったのよね、なんとか出ようと、何故か思えたときに、動いたら、不思議なことにそこから離れることが出来た。よく考えてもあれはあの時だけしかなかったタイミングなのよね」
「へぇ、それは面白いね」
「面白いかしら、一つでも失敗したら、人生変わってたかもしれないのに」
「ごめん」
「あなたを傷つける気も不快にさせるつもりも私はないわ、ごめんなさいね、この話はこれで終わりよ」
「まだ君のために焼けるものが残ってたんだなって」
「その結論になるのはちょっと怖いわ」
「そう?」
「そうよ、そういうこととは無縁、むしろ執事長が一手にと思っていたのだけども、そうじゃないのよね」
「それぐらいはさ、自分の手でやらなきゃ」
「そこが不思議、あなたを変えたのは何?」
「元からそういう部分はあったんじゃないかな」
「それは少し似合わないって思ってしまうのは私だけかしら」
「そうかな」
「そうよ。まあ、勝手な思い込みではあるけども、あなたにはあまりそういうのは…と思ってしまうことはあります」
「でもさ、君はわりとそのままの俺を見てくれている気はする」
「受け入れるかどうかは別だけどもね」
「そこは受け止めてよ」
「え~」
「どうしてさ」
「わからないわ、だってあなたは気難しい人だから」
「それは認めます」
「でもそれでいいのよ」
「そういうところなんだよな」
「何よ」
「いや、なんでも。逆に君はどうなの?」
「私?」
「我慢しているじゃん」
「我慢じゃないわよ~現実的な妥協」
「それを我慢っていう」
「ある程度は目標を達するまではわき目をふらずにしっかりとやるってことは必要、本当はもっと器用ならば長い時間はかからないんだけどもね、才能ある人には敵わないわね」
「それは本気で、本気で言ってるか」
「そういうのはもうあなたにはわかるでしょ」
「わかるから、言わない。っていう手を使われるようになるんだよな」
「そりゃあね、そのぐらいは逃げさせてよ」
「ああん!もう!好き!」
「どこにその要素が」
「全てだよ、君を構成する要素がすべてが好きなんだよ」
「本当に旦那様はわからないは人だな、物好きというのはこういうことをいうのね」
「そういえばわからないことがあるから聞いていい?」
「ご飯でさ、なんで夢を追いかける応援メニューに牡蠣なの?」
小腹が空いたときに作ったもの、その際にそういう話を領主の妻はいったのだが、領主はその答えを聞きそびれてしまった。
「ダジャレよね、夢というか、スターだから、あれ牡蠣の、オイスターソースを使っているから、追いスターなのよ」
「ああ!そういうことか」
「この時期は大きな試験が重なっているから、ついそういう感じで作りたくなったわ」
「学生時代にそんな料理作ってもらったら惚れちゃうよね」
「旦那様が学生時代ですと私は…」
「すいません」
この二人は年の差があります。結婚したときはこの世界では晩婚と言われる年齢です。
「人参なんかを星形にして、添えたりするとちょうどいいんですけどもね」
その他の部分は汁物にしましょう。
「受験か」
「緊急などは…」
「したよ、当たり前じゃないか」
「そうなんですか?」
「僕をなんだと」
「特に受験では困らなかったのではないかと」
「それもね、毎日勉強してたからだよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ、勉強しないでなんとかなるのは…」
思い浮かぶ同級生の顔。
「現実に存在するけどもさ」
「やっぱりいるんだ」
「なんかこう、頭の出来がですね」
「旦那様がそういうってことは、本当にすごい人たちなんですね」
「ただ一癖どころか…なんだよな」
「でもそういうものでは?」
「そうなんだけどもね。うちは家族仲はいいじゃない?でもそういうタイプじゃないのもいたからな」
「ああ…それは…」
「うちの母がたまたま試験前に俺と一緒にいたからさ、声をかけたんだよね。頑張ってとか、その後に試験が終わったらお父さんとご飯食べに行きましょうっていったあとにさ」
へぇ、親っていうのはあんなことをいうものなんだ。
「って驚いてたんだよね。俺は驚いたことに驚いたんだけども、それは顔には、いや、ひきつってたけどもさ」
「あぁ、それは…その、いますから、親子の関係性を求めずに、優秀である結果のみを求める人は」
「君の家もそうなのかい?」
「私はあの人たちには嫌われてたから」
「そうか…」
「ええ、愛されたいわけではなかったが、それでもまあ…愛を求めた方がいいのかなとかね、考えたりはしましたよ。意味のないことではありましたが」
「それが意味がないと思っていたら、誰かを好きにはなれないよね」
「そうですがね、でもね、出てしまった結論が試さなければ良かったとかそういうのだからな」
「それはとても悲しいね」
「ええ、本当に、なんで夢を見てしまったのか」
「夢を見ることは悪くはないよ」
「そうはいいますが、一人で夢を見続けるには…はたしてそれが正しいのか、信じることは難しかった」
「これはバランスが難しい、君がもしも全く現実を省みないのならば俺は出会えなかったしな、正直色んなことがあった君が好きだから」
「うわ」
「俺もうわって思ってる、君は出来れば過去なんて何もなく、平穏無事の方がいいと思っている人間だから、そこにさ、そういうのも飲み込んでほしいみたいなことを言われたら…やっぱりダメというか、空気よめぅていうか」
「色々な意見はあっていいとは思いますよ、そういうことが起きた人間である私を、気持ち悪いと思うのもしょうがないとね。だからこそ私の選択も否定しないでほしいが、そういうわけにもいかないようなんでね、そっちに苦労しますよ」
「考え方が古いというか、固いんだよな」
「しょうがないですよ、私も何もなければ変わらない日常が続けばいいというタイプですから、だからでしょうね、自分がそうなってしまったこと、生き方を変えてしまわなければならないことを受け入れられないの」
「なんでさ」
「わがままで、自分の意思で変えたのではないからでしょ、変えなけらばならない、その過程でやかましいわ!って言いたくなる目にあってたりするんですよ。そうなるとね、なんでこんなことにとか、もうやりたくないなとか、面倒くさい、そうなってしまった自分は好きではない、もっと才能があればそんなことにはならなかったとか、そういうフローが始まるんですよ」
「そこまで言われると、なんで君がもっと才能があればに逃げる理由が見えるけどもさ、君も才気溢れる人間の一人だし。まっ、ただ欲しい能力ではなかったんだろうなって」
「そう!そこ、まさにそれ、ただ最近は、もしもそんなのあったら、この世がめちゃくちゃになってたんじゃないかなって、ほら、言われるがままに物事を成し遂げる優秀すぎる子供がいたらさ、親の欲望の肥大化はありそうなんですよね。そこまで考え付くとね、あっ、それは嫌だなって気づくんですよ。そんなのはごめんだ、あれはもっと狭い世界で生きて欲しいなと」
「狭い世界?」
「頭が固く生きて欲しいというか、そうなったらもうあきらめるしかない、新しい方法などは考えてはいけないぐらいの」
「それは…まさか」
「でも近い状態なんじゃないかな、最後に話したとき、いえ、あれは話し合いでもないか、妄想なのかな、こう…話を聞いているとまだ自分が若いと思ってる、そして才能があって、将来性が抜群な自分として振る舞っている。だからこそ、こんなはずではなかった、自分はまだいけるはずだし、そこに水をかけるこいつはなんだ、自分の子か?みたいな」
「聞けば聞くほど」
「家庭環境が悪いところは本当に悪いんですよ、良好な家族仲というのを知らないままでいう。それこそ、旦那様のご学友さんのようにね」
「あいつはとんでもなく頭がいいんだよ、それを認めてやればいいのに、呼吸器が弱くて、そこがねダメなんだっていってた」
息が出来なくんだよ、咳が止まらなくなる、気道が腫れてくるってやつ。
「俺らはむしろそいつがそうなったら、薬だ、うがいさせろ、気管確保とか慣れてたぐらいになったからな」
きちんと対処すると数分でケロッとする。
「一度そいつの家族がな、いたとかになったんだが、またかって顔をするだけでなにもしなかったんだよ」
さすがに教師が注意をした。
「その方は今もお元気なのですか?」
「元気だよ、主席卒業だけども、その体の弱さがあって、体の負担がかからない仕事と、たまに厄介ごとが起きると知恵を貸してほしいと言われるような退屈とは程遠い生き方になってるな」
そして彼の求めた報酬が。
家族とは会わないようにすること、もしも家族がごねた場合は自分の味方になってくれることなどを盛り込んだ。
「それはお仕事の依頼来るんですか?」
「来るよ、今じゃそれで力を貸してくれるから安いって話にはなってるけどもさ」
「私が助力を求めたらどうなりますかね」
「何か解決、いや、したいことはあるよね」
「そうですね、私の頭では思い浮かびませんでしたから」
「なるほど、それで糸玉をたどりたいと」
「そこに出口があるのならば…でも出口なんてないか、諦めて、受け入れてしまえばいいのでしょう」
「君はそれでいいの?」
「よくはありませんけどもね」
「ならさ…」
「釣り合いとれる支払いができませんからね、そのぐらい変えてくださるのでしたら、私はその分払いませんと」
「払わないと問題が起きると?」
「でしょうね、そういうのは相場だと決まってますよ」
問題を解くのは得意な人間に任せればいい。ただこれは人間らしい答えが必要となる。
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