浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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死ぬときは怖くないように…あなたを思い出してもいいですか?

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「ごめんください」
挨拶したら、挨拶したすぐそばにいたので、心の準備ができてないもの同士でびっくりした。
「お疲れ様です」
「お疲れ様ですって、余所余所しい感じは傷つきます」
「ご無事でしたか」
「お陰さまで、あなたのお陰です」
「私は何もしてませんよ」
「そうですか?」
おおっと傭兵さんと商いを任されている女性さん、なんか距離が変わってるぞ。
「さすがにもうダメかと今回は思ったんですが、勇気を出してよかった」
あっ…つまりその…頼み込んだのか…
「夢の続きを是非とももう一度」
「いや、それはないです」
「なんでですか」
「なんでもです」
「心が通じあったと思ったのに」
「あなたが変なことを言うからですよ」
死ぬときに怖くないように…その時はあなたを思い出してもいいですか?
「そんな弱音吐いたら、絶対に帰ってくるようにおまじないとかしてもらったわけですし」
掌に指で星を表す、丸を書いてもらいました。
その丸は再び元の場所に戻るという意味がある。
「いつもならば気落ちしてしまいそうなところでも、そのせいか凄い元気で」
あいつ、絶対おかしいって!
えっ?何?女なの?あいつが?
絶好調すぎて怖いよ。
「勢いよすぎて、何しろ竜の首を2つ落とせたぐらいですから」
竜の首は大将首ってことね。


「…この調子で次も頼むぞ」
あまりの勢いに契約類を結ぶ上役が、困惑してたぐらいである。
「はい、がんばります」
そのままお土産、何にしようかなって思って、鼻唄混じりで移動したあとに。
「あいつはあそこまで感情的なやつだったのか」
知らなかったぞ。
「これ、失恋でもした日にはとんでもないことになるんじゃないですかね」
「それは不味い、かなり不味い」
「ですよね。でもそういう感じの女性なんですか?」
「それはない、そんなことをしたら、仕事の信頼を失うから、むしろあいつからの誘いを頑なに拒んでいるのはそこもあると思う」
やっとの思いで掴んだので。
「でもそのぐらいしっかりしてないと困るしな」
「そういう点では評価は無茶苦茶高くありませんか?」
「代わりが勤まる人間、女性で探してきてくれるか?」
「無理ですね」
「だから正直、どうしてもまとまって欲しい話ではあるがな」
「まあ、傭兵としての腕はいいけども、女性相手になるとどうなんだ?って話なんですよね」
「そう!それ!今まで浮いた話を聞いたことがないから…でもあれだろう、全くない訳じゃないんだろう?」
「そうですね、上手くいかなかったぐらいで、でもあそこまでこう…感情を見せるっていうんですか?それは本当にないなって」
「だから怖いんだよ、いい方に行けばいいんだが、そうもいってられないのがさ」
悪い方向に言った場合の軌道修正もこちらの仕事になるので。
「神仏に祈りでも捧げますか?」
「縁結びとかか?なんて頼むんだ?」
「そりゃあ、それぞれが上手くいきますようにでいいんじゃないですかね、二人の間でなくても、どちらも里には必要ですし」
「まあ、そうだな、そこは頼んでおくか」
なにもしないよりはいいぐらいの気持ちだそうです。


「なんか近くありません?」
「そうですかね」
もじもじもじ…
「私は何かあなたにしましたか?」
「もう命を守ってもらったようなものですよ、自分はあなたのものだから」
「自分のお命はちゃんと自分で握っててください」
「ぎゅっとですか?」
「落としちゃダメでしょ!」
「そうですね、落としたら…あなたの元には帰ってこれませんね」
「なんでそうなんですか」
「あなたが私の心を射止めてしまったんですから」
「射止めたつもりはありませんよ」
「じゃあなんで、あんなことを?嫌いな人間にはしないはずでしょ?」
「死の前にはみんな平等でしょ?それこそ一人では怖いですから」
「そうですね。だから里のものでも、もうこの仕事は嫌だという人間もいます」
「でしょうね。あなたはなんで傭兵を?」
「向いているからでしょうね、誉められたからかもしれません、はっはっ、最初はそんな理由です」
「そうですか」
「うちの里はあまり食べるものを作るには向いてないところなので、祖父母の代では嫁を迎えようにも、あそこにはやれない。なんて言われていたようなんですよ」
命が安くて、自暴自棄になったように傭兵業に参加したら、あれ?全然辛くない?むしろ美味しいご飯食べれる?もしかして、すんごい向いてるのか?
「一財産築いた人間が一人生まれたら、それならば俺も俺もとそうやってどんどん傭兵に、まあ、これが初代の世代みたいなもんですかね」
でもそれを支えていたのは夜目が利いていたからがとても大きかった。嫁を迎えて、子供の世代になると、その夜目がない子供たちも増えていって、夜目が向いてない子供世代はやはり夜目がない親世代と比べると成果が残しにくい。
「だから薬の栽培方法とか知りたがるんですね」
「はい、あなたのところはそういったものも扱っていますから」
しかもどこかとしか組まないタイプでもない。
「私がこういったことも扱うようになったのはたまたまですからね」
扱うには学もいる。
「あなたは勤勉であるとも聞いてますよ」
「それぐらいしか生きる術がないからですよ」
それはそれで大変なので、ふるいをかけられるような仕事である。
「でもそういう人がいるからこそじゃありませんか」
「それはあなたもでしょ?」
「ですね」
ニコニコしているのである。
「やっぱりあなたはいいな、話していると特にそう思います」
「近いですよ」
「そうですかね、まだ距離はあると思ってるんですよね」
そこで視線がどこを見に来ているかわかる、気になるところを一通り巡回し終わると、目を細めた。

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