浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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冷たいへぇ~は刃物を首筋に当てられたかのような類似の効果があります

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この話でいう、金灰夫婦、その二人が成婚した前後から領地の調査をしていた役人がいる。
もちろん調査は公平に行われるべき何で、こっそり、だがその役人の見た目からいうならば「のっそり」と調べられた。
その『のっそり役人』はいつもは大変辛口とイヤミで採点するのだが、そんなのっそり役人からしてもかなりいい、悪くない、むしろ他もこのぐらい細かく、厳しく息をしてほしいと言わせた。
そんなのっそり役人は顔を出して、領主夫妻に評点を伝えたのは、調査という地味で孤独な作業から異動になったことが決定したからである。
異動先は、これまでとはかなり違った、それこそ今までのコネクションを使わせないため、残業のないゆるゆる生活、そんな毎日を過ごしていた。
そんな中で、自分宛に封書が届く。
ため息をついた後に中を見てみる。
「どうでした?」
同じような封書を持ってる後輩が声をかけてくる。
「あれっすか、その顔、やっぱり悪かったっすか?」
「ギリギリセーフってところだよ」
「あぁ、そうですよね。あんだけ麺類とか食べていたら、そうなっちゃいますよね」
とか言われたが、のっそり役人の本音は違う。
「ただその話が出来る人がいませんから、こうして領主にお会いしたくなりました」
「そうでしたか」
「あの後輩には、どういう話しかわかるように説明しても、もっと私は時間を有意義なものに使いたいのですよ」
ありゃぁ、理解出来ないよと見切りをつけているってことか。
「それにご領主ならばこの話の意味は確実にわかっていただける、何しろ同類ですから」
二人はハッハッハッと笑っていたら。
「なんですか?お二人とも楽しそうですね、何か良いことでもあったのですか?」
「これは、これは奥様、今回の話の功労者が来てくださってくれた」
そう役人がいうと、領主はニコニコしてる。
あっ、これは自分の奥さんが誉められて嬉しいやつだ。
「どういうことですか?」
「すいません、はしゃいでしまって、ええっとですね、奥方様、私、健康診断の再検査がありましてね、数値が全て正常値になりました」
そういうと。
『へぇ~』
冷たいへぇ~は刃物を首筋に当てられたかと類似の効果があります。
のっそり役人はその反応にさすがに止まった。
領主は何度かそれは見たことはあるが、いかん、もう力関係が確実に決まっている。
「お話を詳しく聞かせていただきますか」
役人は自分のこれまでの話と、結果を聞かせた。
「なるほど、よくわかりました」
「すいません、その~以前調査をしてましたから、ご領主が健康診断がみんな良くなったよ!って嬉しそうにいった話は、私も知っておりました。そして奥様をはじめとする、ご家族の方々からすごい叱られたと、それを聞いて私も、なんであんなことをしたのかなと当時は思っていましたが…」
自分がそうなってみると、これは誰かに言ってしまいたくなる。
その衝動にかられた。
誉めてもらいたいとかじゃない、ただ言いたい、ただし解説しなきゃならない相手ではなく、聞いてすぐにわかるような人間に!
「そこで旦那様に」
「はい、ご領主ならば確実にわかっていただけると」
「ずっと黄色信号で、食べるのも控えたり、おかわりも迷ったりしたけども、なかなか変わらなくて、いつしかそれが当たり前に、それがね、いきなり正常値になった、また悪いのかなって思って、書類を見るだけに、喜びは大きいものなんだよ」 
領主の説明に、役人もうんうん、そうなんですよってなっている。
「後ね、奥方様には悪いのですが、信じていなかったのも大きい。はたしてこんなもので変わるのか、こんなものっていう言い方はおかしいですね、でもそのぐらい旨かった、私の常識では旨いものを食べて、健康を維持するというのはどうも結び付かなかった、あなたはそれをやってのけたのだなって」
「本当に美味しいんだよね」
「それは旦那様が美味しいものを食べるのが好きだからですよ」
これは食事を変えるのは相当大変だぞと。
「お酒も好きなんですから」
「そういえばお酒も控えているとか?」
「僕は彼女に酔っているので、他のもので酔うわけにはいかないし…まっ、代わりに面白いものをいただきましたから、それを愛飲していますよ」
領主の年齢と同じ年月かけてわき出たミネラルウォーターを、これを奥さんが用意したら、水の美味しさもあってか、よく飲んでいる。
「その水で酒を作るとも聞きましたから、まあ、これでいいかなと」
すると三男執事はスッとそのミネラルウォーターを用意した。
「こちらがそれになります」
「…なんです?この水、かなり旨いような…」
「でしょ?ちょっとさすがにビックリですよね、こんなに旨いし、お値段も安いし、彼女にしてやられたんですよ」
「探すのは大変でしたけどもね」 
この水源がダメでも、他にも美味しい水、比較的手に入れるのが容易なものを探しているため、そこも領主が飽きずに飲み物を変えられた理由である。
「ご領主も私も、奥様には胃袋を握られているというか、血管を握られているようなものですね」
二人のコレステロール値は奥様の手にかかっている。
「だいたい何を食べれば下がるってわかったんですから、卒業して独り立ちしてくださいよ」
「うちの妻はこんなこというんだよ」
「奥方様には申し訳ないが、奥方様がいなければ私たちはまた医師に生活改善を指導されてしまうでしょうね」
「大袈裟な」
「麺類が罪悪感なく食べれるんですよ」
「えっ?」
「前までは食べたい、でもな…っていう葛藤と戦ってから食べていた、しかし奥方様がご領主のためにメニューを考えて、シェフと試作したものは違う。ただ最初は確かにためらいましたよ、だって見た目はそう変わらないですからね」
本当に食べていいのか?
まあ、付き合いでと思っていたのだが。
「次の日浮腫まないんですよね」
「あ~わかる、僕も面会がある前日は塩分の強いものは食べないでくださいねって注意されていたから」
領主は浮腫むほう。
「証明写真を撮影するときとかってやっぱり気にはしますからね」
「しばらくその写真でいなきゃならないものね」
体重とか数値はどうであれ、それならば悪くないぞで食べていった。
「奥方様の食事はそれこそ信じるものは救われるみたいなものですから、ゆっくりと効果が出るから、そこまで続けられた人間はスゴさがわかるというか、テンションがどんどん上がった来ますからな」
疲れにくくなるとか、肩凝りが減るとか。
「わかる~それで三食みんな変えようとしたら怒られちゃった」
「三食変えるとたぶん体重落ちすぎるから、四食とか食べなきゃならなくなりますよ」
「うっ、ダメなんですか」
「なんで旦那様と同じような間違いをするんですか、いいですか?人間は一日に必要な栄養素が決まっているんですからね、一気に全部変えてもね、もっと良くなるとかじゃないんですよ」
『ごめんなさい』
「正常値に戻ったら、今度はそれを維持しながら、食べるものとか楽しんでくださいね」
奥様はそういって退出し、しばらく反省した二人はそのまま無言であったが、役人はそこで本来の目的を忘れていることに気づいた。
封書を領主に差し出す。
「これは?」
「私のコレステロール値が正常範囲におさまったこと、その成功報酬というやつです」


奥様はお茶の準備をしようとしていた。
「奥様、私がやりますよ」
メイドがそういったが。
「ちょっと気分転換も兼ねているから、私にやらせて」
といって茶器を用意していた。
すると領主がその様子を覗いてから。
「それは僕の分もあるかな?」
「お客様はお帰りになられたのですか?」
「そうね、でもあそこであんなことをいうとは思わなかった」
「そうですな、口うるさいですね」
少なくともそこはそういわれたとしても譲らないらしい。
「君もそんな性格をしている」
「そこは今に始まったものではありませんよ」
もしここで領主が生活習慣病にでもなったら、よりはマシだから。
二人でお茶とする。
良い香りがした、茶葉を煎ったのだろう、煎りたての香りはものが違う。
「それでさ、話は君の実家のことなんだけどもさ」
「ずいぶんと急ですね」
「こっちとしては急ってほどではないよ」
「また何かやらかしましたか?」
「いいや、君が知らないことがわかったからの報告だよ」
そういって役人がもってきた封書を差し出す。
「それでは拝見させていただきます」
一枚目を見始めてすぐに、表情が無になった。
「最初に要約で全体がわかる書類ってやっぱり便利だよね」
これで時間の短縮が可能になる。
「…」
奥様は言葉がでない。
「…」
領主は妻の言葉を待つ。
「…私は別にいらなかったんですね」
「…」
すぐに彼女にかける言葉が思い付かない。
「それならば自由にしてくだされば良かったのに、そうしたら私はこのような気持ちになることもなかったのに」
「…」
あふれでる感情はまずは言葉として吐き出させなければならない、まずはそこからだ。
「どうして…」
「それは誰にもわからなかったんじゃないかな」
その言葉をかけられたら、なんか納得してしまった。
「ええっと、そのぐらい先のことも考えず、感情的に動いてたってことですか」
「それで腑に落ちたの?」
「計画性が本当にない、説明してもわからないんですよね」
そういう人たちだからこそ。
「だからあぁ、なってしまったのか」
「財産が無限に、資産家というわけでもないのに、存続できてた理由は、誰かをずっと犠牲にしていたからだね、それこそその誰かは犠牲または死ぐらいの二択で管理していたんじゃない」
「管理…」
その言葉使いにショックを受ける。
「使えなくなったら他に行く、使えるうちは離さないっていうのかな、そういう感じなのかなって、だから君は向こうのターゲティングからハズレても、今も苦しいわけじゃん、向こうのことを理解できてないから、まっ、あれは理解してはいけないけどもね」
理解すると、人間としての大事なものが汚されるシステム。
「いわゆる知らなくてもいいことなわけよ、だからこそ、苦しむというね、苦しませる気はないけども、結果的に良くできてしまったからこそ、長らく愛用している手慣れた方法、ただし、消費されるはMPではなく人間性とか、倫理観っていうのかな、しかも回復はしない、そんな方法は選択肢に出てもセレクトはしない。ただこれの怖いことは一度それを選んでしまうと、次からその選択肢が一番最初に浮かんじゃうっていうところだね。君のすごいところは、あんなに側にいても、それを選ばなかった、嫌悪感わいちゃったところだろうね」
「そのせいで、私は自分が好きになることは決してないですよ」
「君の憂いは僕の好み、ただちょっと憂いのバランスが多いから、笑顔の量を増やしたい、そこが僕的な君のベスト」
領主のもう別名義パンセ・リヴィエルが顔をだしているぞ。
「あなたは本当に変わっている」
「世の中は広いからね」
「そういう意味では本当にそうですね、実家にいたときは、旦那様のような人は想像はつかなかった」
「ふっふっふっ」
笑った後に。
「僕もね、君に会って良かったと思ってる。もっとビジネスライクなお嬢さんが来るのかな?君を見てからもそういう人なのかなって思っていたからね」
話としては、奥さんが実家を出てからの親代わりの人たちともかなり良好というか。
「いい養女として振る舞っているとも違うんだよなった、愛想だけの人間と並べてみると、ようやくわかるんだよ。けど小悪魔とか悪女でもないわけ、君さ、さっきもそうだけども、理詰め、理詰めで、周囲からもそういう人間に見られているぐらい理詰めでやってくるのに、その動機が物凄く感情的なものだったりするんだよね。普通はさ、僕の健康状態があまりよくないならば、既存の食べ物で減らすとか我慢させるとかで対応するのに、そうであっても美味しいものを食べてもらいたいっていう理由で、現実に則って変えにくるんだもん、そこまでわかったら、君のことが面白くなったんだよね」
「それは私の仕事でもありますから」
『へぇ~』
領主は椅子を持って妻に近づいてきた。
このへぇ~は奥様の首筋に刃物のへぇ~とはまるで違うものだ。
なんというか、首筋に熱が絡まるようなというか。
「ちょっとその言い方はないんじゃないの?」
その言葉の後、本当に首筋に絡み付くものがあったという…
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