浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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好感度99999

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本屋が多いところが気に入って引っ越したところ、独特の文化というのがそこにはあった。
それも気に入ったので、まるで昔から住んでいるかのように、嗜んでいたら、いつしか声をかけられるようになる。
「そっちは仕事は終わったのかい?」
「仕事は嫌いなので前倒しで終わらせてますよ」
「それは…また変わってるね」
「仕事は嫌いなんです」
「そこと有能さが共存するとはね」
興味を持ってきたこの人は、学生時代にこの地に来てから、そのまま居続けているそうだ。
「だから変な人間と思われてるよ、最低限の交流は世間とは持っているが、それでも時間の使い方が他の人とは違うから、ようやく僕と時間の流れが同じぐらいの人間に出会った」
「なんですか?それ」
「誉め言葉だぜ」
「誉め言葉に聞こえませんよね」
「そうか?それはがっかりだ」
くだらない話で時間を潰し、店がオーダーストップになるまでいた。
それは営業妨害じゃないかって?あぁそれならば大丈夫、我らがいるこの店は不動産など多角経営で利益を出している。
「やはり土地を持っていると強いものだよ

「確かに」
「でも世の中には金持ちに向かない人というのがいるものだよ」
「へぇ、どういうことです?金から嫌われているとか?」
「金自身は感情などは持たないよ、金を運んでくる人間が誰なのか、どう付き合ったらいいのかわからないんだよ」
「本当に色んなことを知っていますね」
「それでお呼ばれすることもある」
「世の中には変わった人を好む人もいるんですね」
「結構そういう人は多いよ、良く言うだろう、自分の無いものに惹かれるって」
「あなたの変な部分を補給したいってことですかね」
「補給!上手いこというね、補給か、それならば僕はずっと変わっていなきゃダメだね」
「あまり道を踏み外すのもどうかと、外しすぎるとやはり理解できないのではありませんかね」
「そうだな」
「実感しているじゃないですか」
「僕にとっては普通だが、世間にとったはちょっと違うというか」
「あぁ、そのズレは決定的ですね」
「知ってるかい?欠点も努力すれば魅力に変わるって」
「そこまで努力できるかは別問題でしょ」
「そうなんだけどもね、そういうのが現実的な妥協なわけだよ」
「その現実的な妥協も、他の人からすると、うわ…なんでしょ」
「そのいい方は傷つくな、君は友達じゃないか」
「いつの間に友達になったんですか?」
「出会って三日目ぐらい」
「二日目まではなんだったんです?」
「僕は人見知りだから」
「うわ…」
「もうその反応が傷つくんだよ」
「他にお友だちはいないんですか?」
「それはそっちだって、どうなんだよ」
「話が合わないので」
「それならやっぱり僕らは友人だね」
「心を許したつもりはないのにな」
「オープンユアハート!」
本当に時間があればバカな話をしていた。

それでも忙しくて時間が合わない時はある。
「最近どう?コーヒー飲みに来ないの?」
連絡先を教えてくれと言われたから、教えてた。店で馬鹿話をしているときはメッセージなんてこなかったが、寂しくなったのか、こんな感じで送られてくる。
「明日は行きますよ」
「本当!あのさ、美味しいシュークリームがあるんだ、マンダリンを使ったもので、どうしても君に食べてほしいんだけども」
「はいはい、では明日」
たぶん向こうは遠足の前の日ぐらいソワソワしているのではないか。
「なんかわからないが、今日は早起きしたよ」
やっぱり。
なんか納得して苦笑した。
「会えなくて寂しかった」
「もっと友達作りましょうよ」
「一人いればそれで良くないかな」
「同じ話ばかりでも飽きるでしょ」
「それは…そうかもしれないけどもさ」
「色んな人と話たりはしないんですか?」
「ちょっと恥ずかしいし」
「レッツトライ」
「ノートライ」
「なんでそういうときだけ人見知り出ちゃうんですか?」
「ルーティンでなんとかなるなら、僕はルーティンでかまわない、新しいことなんてしたくはないの!」
こういう人なのでアンティークとか凄く好き。
「じゃあ、面白い建物でも見に行きます?」
「えっ?何、どこかお金持ちの別荘とか?そういうの好きよ」
「あれ?知りません?個人で借りることはできるけども、本当に知られてないので、検索しても写真が出てこないって館がありまして」
「そんなところがあるの?」
「知らなかったようですね、これですよ」
そういって検索しても本当に写真が出てこないこと、しかし持ち主、企業所有なのだが、個人に貸し出しはしている。なんだったら、年に何回か演奏家を招いてコンサートしたりするから、その近所の人は知っているというやつ。
「凄く気になります」
「カメラとおやつのバナナは忘れないようにしないと」
「バナナはおかわりできますか?」
「悪くならないようにケースに入れていくといいんじゃないですかね」
そんな感じで二人で珍しいものを見に行ったりした。

「楽しい、君とだったら不老不死も悪くないよ」
「なんで好感度が100になってるんですか」
「100どころじゃないよ、99999だよ」
「1をどっかに忘れている」
「忘れるぐらいがちょうどいいんだよ。でもちょっと悔しいな、結構こっちは長いつもりだったけども、全然知らなかったんだ」
「興味がなければわからないものですよ」
「そうだけども、君はそういうのを見つけるのが上手いな」
「仕事のコツみたいなもんですよね」
「有能だね、そんな有能な君を放置しておくなんて」
「あぁ、向こうから好かれたいとはあまり思わないので、後は利益が何かわかってないから、しょうがない」
「どういうところいるのさ、いや、僕がいうのはなんだけどもね」
「結構…わかってもらうために提案とか、企画書とか作ったんですかね、それ全部跳ねられたりしまして」
「それは…辛かったね」
「いや、そうでもないですよ。副業の種にそれがなりましたから」
「うわ…しっかりしてる」
「まだまだじゃないですか?甘いなと自分で感じるところはありますから」
「完璧主義者は疲れない?」
「完璧主義者に見えます?」
「いや、気さくだね、神経質には見えない」
「適当な人間ですよ、それで上手くやっていくっていうのが大事なので」
「そんな適当な人間が考えた有能なアイディアなら、とんでもないことになりそうだ」
「ま~そこは想像にお任せしますよ、全部細かく説明しなければならないし、聞いている人を楽しませれるほど、会話も上手くない。それにあなたはそういう話は本来は好きじゃないでしょ」
「…君の話ならば聞きたいよ」
「そういってくれるのは嬉しいですが、やはり堅苦しい話になるし、そっちの話をするならばいつもの調子ではいけない」
「あぁ、君は元来お堅い世界の人間だったね」
「そうなんですよね、あぁいうのは肩が凝るから向いてないが、だからこそこっちは気に入ってる、何しろ時間の流れがゆっくりとしていいわけだし」
「確かにね、忙しくなると、自分のことなんて考えれないし、それを考えると退屈を大事にしなきゃならないのかもしれないね」
「そうですよ、この退屈、物足りなさを大事にしなきゃならない、失えば二度と返りませんから」
「それは嫌だな、僕が気まぐれにそれを失っても、君は平然と一人で珈琲を飲んでそうで」
「なんです?道連れにしますか?」
「そういうんじゃないよ、思い出して、寂しいなにもならないのがちょっと嫌だなって思うんだ」
「やっぱり貴方はお見合いでもしなさいよ、人生の伴侶を見つけた方がいい」
「ええ、そんな」
「寂しがり屋なのがバレバレですからね」
「君は本当にズバズバいうな」
「そんなに言うなら友達やめますか?」
「それはイヤ」
「これはチラつかせているんじゃなくて、危ういからこそ言ってるんですよ。どこぞの娘さんに勘違いして、あの子は自分に気があるとか思ったら、破滅しますよ」
「そういうのはちょっとだけわかる、気質的にあるからさ…じゃあ、君の方こそどうなんだい?恋とか愛とかはしてきているのかい?」
「いいな…という人はいますよ、気が多いってわけでもないんですがな」
「何それ、上級者じゃん」
「そういうわけでもないんですが、なんとなく一緒にいて、当たり前になって、関係性が出来たみたいな」
「そんな…そんなことを当たり前にできるなんて、僕は勝手に人付き合いがあまり上手じゃない、仲間なんだなって思っていたのに」
「えっ?」
「バカー!」
そういって帰っていった。

「でさ」
それで次の日にはケロっとしているのが、引っ越し先に住んでから出来た未だに時間があればくだらない話をしている友達。
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