42 / 118
第四十二話
しおりを挟む「やべぇ、生徒会長だ…!」
「逃げろ…!!」
その女子生徒が乱入してきた途端に、見物していた生徒たちは蜘蛛の子を散らすようにして逃げていってしまった。
「おい、エンゲル…お前、また問題を起こしたのか?」
「ち、違う…!!俺は…!!」
女に詰め寄られ、あれだけ横柄だったエンゲルがタジタジになる。
「言い訳はいらん…!!いいからお前たち二人もさっさと校舎に迎え!!!」
「ちっ」
「は、はい…!!」
エンゲルは舌打ちを、そして平民の女子生徒は慌てたように返事をして、校門から校舎へと向かっていった。
途中、少女の方は一度だけこちらを振り返って口パクで「あ・り・が・と・う」と言ってきた。
俺が軽く手を上げてそれに応えていると、乱入してきた女が近づいてきた。
腕に、何かの腕章のようなものをつけている。
「お前がアリウスだな?」
「へ…?」
いきなり名前を呼ばれて驚く。
「む?編入生のアリウスではないのか?」
「あ、あぁ…俺がアリウスです。今日からこの学院に通うことになった…」
「やはりそうか。ではこっちへこい」
そういうと女は、俺の手を引いてどんどん歩いていく。
「ちょ、ちょっと待ってください…!いきなりなんですか!?」
引きずられるようにして歩く俺がそう尋ねると、女は振り返らずに応えた。
「私は生徒会長のセシルだ。今日1日のお前の引率を任された」
「生徒会長…?」
「生徒の意見をまとめ上げる特別に設けられた委員のことだ。そのうちわかる」
「は、はい」
これ以上の質問を許さないような口調に、俺は口を閉ざす。
「今からお前をこの学院を取り仕切る理事長に合わせる。その後は、入学のための試験だ」
「理事長!?試験…!?」
色々疑問が渋滞している。
なぜいきなり魔術学院のトップに合わなければならないのか。
そして試験や学費を免除する約束ではなかったのか。
混乱する俺は生徒会長のセシルに質問しようとするが、結局セシルは俺を引っ張って早足に歩くだけで応えてくれなかった。
「ここが理事長室だ」
生徒会長のセシルに引っ張られて魔術学院の中に連れてこられた俺は、魔術学院の内装をじっくりと観察する余裕も与えられないまま長い廊下を歩かされた。
俺を無言で引っ張って歩いたセシルは、一つの重厚に閉ざされた扉の前で足を止めた。
どうやらここが理事長室らしい。
「入るぞ」
「えっ」
俺の心の準備をする暇など当然のように与えられず、セシルはコンコンと扉をノックしたのちに扉を押した。
重そうな扉は案外簡単に開いた。
「来い」
「うおっ!?」
再びセシルに引っ張られて俺は中に入っていく。
そこはたくさんの書類に埋め尽くされた煩雑な空間だった。
奥に立派なソファが据えられていて、そこに髭を地面まで垂らした禿頭の老人が座っていた。
セシルに連れられた俺の姿を認めると、柔和な笑みを浮かべる。
「来たか」
「理事長。連れてきました」
「ご苦労」
理事長と思われる老人とセシルが互いに頷き合った後、老人の方が俺の方を見た。
「初めまして。君の話は王子から聞いたよ。その歳にして付与魔法を使えるんだって?」
「は、はい…一応…ええと…エラトール家のアリウスといいます」
俺は貴族の作法に則って老人に挨拶をした。
「ああ、ああ、ここではそんな堅苦しい挨拶はよしてくれ。私はこの学院の理事長のムンクという。よろしく頼むよ」
「は、はい…」
差し出された手を俺は握る。
ゴツゴツとしてひんやりとした手だった。
「ようこそ、帝国魔術学院へ。アリウス・エラトールよ。三年間、学院で大いに学んでくれ」
「が、頑張ります」
「よろしい。では、セシル。あとは頼んだよ」
ムンクがセシルに目配せをする。
「こっちだ。来い」
セシルが手招きをする。
どうやら理事長との顔合わせはこれで終わりらしい。
案外あっさりしたものだった。
「これからどこへ?」
失礼しますと断って理事長室を後にしてから、俺はセシルときた廊下を並んで戻る。
「今からお前には試験を受けてもらう」
「試験?免除されるのでは…?」
「試験といっても一般の生徒が受けるそれではない。編入生などそうは入ってこないからな。最低限の魔力確認とか、その程度のことだ」
「わ、わかりました」
セシルに聞くと、試験は非常に簡易的なもので、一時間もあれば済むらしい。
俺はほっと安堵しつつ、セシルについていく。
まるで迷路のように入り組んだ学院内部の廊下をセシルの先導で歩き、何やら用途のわからない道具がたくさん置かれた倉庫のような場所にやってきた。
非常に埃っぽい。
「ごほごほ…えぇ、どこにあったか…?」
セシルは咳き込みながら、埃っぽい倉庫の中を、何かを探して歩き回る。
「あぁ、あったあった。少し古いものだが…これでいいか」
「それは…」
「魔力鑑定水晶だ」
セシルが取り出したのは見覚えのある紫色の水晶。
魔力測定用の水晶だった。
「今からお前の魔力を図る。まぁ、お前に魔法発動に足る魔力が無い、なんてことはないと思うが一応手続き上のものだ。面倒だが付き合ってもらう」
「いえ、構わないですよ」
試験と聞いて少し身構えていたが、この程度のことなら全然構わない。
俺は魔力測定水晶に手を翳した。
直後…
パリン…!!
「…っ!?」
「あ…」
魔力測定水晶が砕けて割れた。
セシルが驚いて飛び退き、俺はしまったと頭を抱える。
魔力を測定したのがあまりに久しぶりで失念していた。
どういうわけか俺の体内魔力は普通の魔法使いの何倍もあるため、普通の魔力水晶では測りきれずに壊れてしまうのだ。
「そ、測定不能の魔力量…」
若干震えた声でセシルがつぶやいた。
「あの…すみません…学院の備品を…」
俺は学院の魔道具を壊してしまったことを謝る。
「い、いや…いいんだ…少し驚いたぞ…魔力水晶が割れるところなんて初めて見たからな」
「本当にすみません」
「気にするな」
そういったセシルは、今度は倉庫内から別の水晶を探し出してきた。
赤、青、黄、緑、茶の全部で5色の水晶だ。
どうやら今度は適属性を調べるつもりらしい。
「次は属性だ。お前の適性のある属性を調べさせてもらうぞ」
「わかりました」
俺はすぐさま5色の水晶に順番に手を翳していく。
最初に火属性の水晶を光らせ、その次に水属性の水晶を光らせた。
「ほぉ…なるほど。お前はダブルなのか…魔力水晶を破壊する魔力量に加えてダブルとはなかなか才覚に溢れて」
「いえ、違います」
いいながら俺は、光属性の水晶も光らせる。
「なぁっ!?」
驚いたセシルが水晶を取り落とした。
パリン!!
「あ…」
地面に落ちた水晶が粉々に砕ける。
魔力測定水晶に加えて適属性鑑定用の水晶まで…
大丈夫なのかと俺が心配している中、セシルがわなわなと震えながら聞いてきた。
「おおお、お前…と、トリプルなのか!?」
「そうですけど…聞いてなかったんですか!?」
「聞いているものか!!!」
よほどの驚きだったのか、セシルが大声を上げた。
~あとがき~
現在新作が公開中です。
モンスターの溢れる現代日本で俺だけレベルアップ&モンスターに襲われない件~高校で俺を虐めていた奴らは今更助けてと縋ってきたところでもう遅い~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/638978238/649699212
ぜひこちらの方もよろしくお願いします。
13
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる