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第八十六話
しおりを挟む冒険者たちを駆逐したエラトール軍がついにカラレスの陣地まで進軍してきた。
「行け行けぇええええ!!!」
「止まるなぁあああ!!突撃だぁああ!!」
「カラレス兵どもを追い払えぇええ!!」
「1人も逃すなぁあああ!!」
エラトールの騎士たちは逃げるカラレス兵たちを1人も逃すまいと追い詰めていく。
カラレス兵は多人数に追い詰められ、見る間に数を減らしていった。
ことここに至るともはや戦いではない。
カラレス側が完全に戦意を喪失して逃げ惑っているため、ほとんど殲滅戦の様相を呈していた。
「終わりましたね」
「そうだな」
「た、助かりました…」
役目を終えた俺とエレナ、ルーシェはクロスケたちの背中から降りてため息を吐いた。
もう俺たちに出来ることはない。
あとはエラトール軍が全てやってくれるだろう。
「燃やせぇええええええ!!」
「こっちに武器庫があったぞ…!!」
「食糧庫も抑えた!!」
「ははは!!どうしたカラレス軍!!エラトール領を責め堕とすために来たんじゃないのか!?」
「情けないぞカラレス兵!!冒険者たちは最後まで勇敢に戦ったぞ!!」
「お前たちが背を向けて逃げてどうする!!」
「二度と俺たちの土地に来るんじゃないぞカラレスのクソどもが!!」
エラトールの騎士たちは、敵の武器庫や食糧庫を抑え、テントを燃やし、陣地を破壊していく。
そんな様子を横目に、俺は戦いに参加してくれたクロスケとクロコにお礼を言う。
「ありがとうなクロスケ。クロコ。助かったぞ」
『クゥン…』
『ワフッ!!』
褒められて嬉しいと言うように二匹は尻尾を振って当たりをぐるぐると回る。
「く、クロコちゃん…ありがとう!!」
『ワフッ!!』
ルーシェがお礼を言うと、クロコは嬉しげに尻尾を振ってでかい頭をルーシェに擦り付ける。
「わわっ!?」
この短い間にルーシェにすっかり懐いてしまったようだ。
「こちらはクロスケ、と言うのですか?」
それを見たエレナもクロスケに近づいていく。
「ああ。そうだ。俺がつけた名前だけどな」
「クロスケ。あなたのおかげで助かりました。一緒に戦ってくれてありがとう」
『ヴァフッ!』
「お手」
『ヴァフッ!!』
「おいっ!?」
エレナが差し出した手に、クロスケがお手をする。
だが、あまりに前足がデカすぎて、結局エレナの頭にお手をする羽目になってしまった。
「だ、大丈夫かエレナ…?」
クロスケが前足を退ける。
「なかなか強烈なお手ですね」
頭からつーと血を流しながら、エレナが言った。
『ヴァフッ!?クゥウン…』
それを見たクロスケが、驚いたように飛び上がり、謝罪をするように頭を低くして甘い声を出す。
「謝ることはありません。このくらいなんともないですから」
そう言った直後には、自身に回復魔法によってエレナの傷は完全に癒えていたのだった。
「結局ガレス・カラレスはきてなかったのか?」
「どうでしょう?案外その辺に倒れているかもしれません」
役目を終えたクロスケとクロコを俺は解放した。
「今度会うときには二匹にご褒美を用意するからな」
『ヴァフッ!!』
『ワフッ!』
二匹は了解した!と言うように頷いて、森の中に帰っていった。
その後俺たち三人は、もしかしたら戦場ですでに命を落としているかもしれないガレス・カラレスを探して周囲を散策した。
「う…」
血生臭い周囲の光景にルーシェが顔を顰める。
「…大丈夫か?」
「な、なんとか…」
俺はルーシェを気遣いながら、チラリとエレナを見る。
「少し虐めすぎたでしょうか。ぐちゃぐちゃになって顔がわからない者もたくさんいます。これではどれがガレス・カラレスなのかわかりませんね」
「…」
ルーシェは表情ひとつかえず、死体を軽々踏み越えながら歩いていた。
さすが、元帝国魔道士団所属の魔法使いだけある。
これくらいの修羅場はお手のもので特に驚くこともないと言うことなのだろう。
いつかエレナに帝国魔道士団での日々を根掘り葉掘り聞いてみたい気もする。
多分に機密事項を含むと思うので安易には教えてくれないだろうが。
…そんなことを考えていたときだった。
「が、ガレス・カラレスが見つかったぞおお!!」
「た、大変だ!!ガレス・カラレスが領民を人質に…!!」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
俺とエレナ、ルーシェは互いに顔を見合わせる。
「これは…」
「嫌な予感がするな」
「…い、行ってみましょう」
三人は誰からともなく騒の方向に向かって走り出した。
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