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第二話
しおりを挟む「これからどうすっかなぁ…」
ギルド青銅の鎧を理不尽な理由でクビにされた俺は、街中をふらついていた。
現状俺に残された選択肢は二つだ。
一つは、他のギルドに入れてもらうこと。
この街には青銅の鎧の他にもたくさんのギルドがあって、もし入れてもらえればそこで冒険者として活動できる。
しかし、そう簡単に他のギルドに迎え入れてもらえるかは正直微妙なところだ。
一度ギルドをクビになった冒険者が他のギルドに入るのは難しいとされている。
『何かしらのトラブルを起こしてギルドをクビになった冒険者』というフィルターがかかってしまうからな。
ではもう一つの選択肢はというと、それはソロの冒険者として活動すること。
稀にだが、ギルドに所属せず、依頼を探すところから報酬を受け取るところまで全て自分でやる冒険者が存在する。
ソロの冒険者のいいところはギルドに報酬の何割かを差し引かれることなく全て自分の懐に入ってくるところだ。
けれど、難点もあって、それは依頼を探すのに時間がかかると言うことだ。
ソロの冒険者にこなせる依頼というのは少なく、そもそも依頼が継続して受けられないと言う事態が発生する。
だから結局はギルドに所属するのが冒険者にとって最適だという結論に至るのだ。
「はぁ…他のギルド探すか…」
だめもとで他のギルドホームを一件ずつ周り、頭を下げるか…
そんなことを考えていた矢先の出来事。
「きゃああ!?やめなさい、離して!!」
「げへへ。捕まえたぜ、アルトリア家のお嬢さん!!」
「攫って身代金をせしめてやる!!」
近くの裏路地から聞き捨てならない声が聞こえてきた。
これは走って路地へ入っていく。
「やめなさい!無礼者!!」
「大人しくしろ!」
「あんまり暴れると奴隷として売り飛ばすぞ!!」
前方で2人の男が、白いドレス姿の少女に組みついていた。
「お前ら何してんだ?」
「あ…?」
「誰ただてめ…ぶへ!!」
俺は出会い頭に少女にのしかかっているうちの1人に飛び蹴りを喰らわせた。
「ぐはっ!?」
壁に激突し、そのまま気絶する男。
「や、野郎!」
もう片方が、腰の短剣を抜いて俺に飛びかかっていた。
「遅いな」
男のスピードは、俺にはほとんど止まって見えるようなものだった。
普段から強いモンスターと戦ってると、人の動きってものすごく遅く見えるんだよな。
「おら!」
「ぶほぉ!?」
俺は男のナイフの一撃を余裕で交わし、その腹に右拳をお見舞いした。
「かっはっ」
男は口から血を吐いて、悶絶する。
しばらくは動けないだろう。
「ほら、立てるか?」
「あ、ありがとう…」
俺は尻餅をついた少女に手を差し伸べる。
少女はお礼を言いながら、俺の手を取った。
「とりあえずここを離れよう」
「は、はい…!」
俺は少女と共に路地裏を後にした。
「あんた貴族だろ。あんま人気のないところには立ち寄らない方がいいぞ」
表通りに出た俺は、助けた少女にそう言った。
「すみません、不注意でした」
貴族と見られる少女は、丁寧な所作で俺にお辞儀をした。
「助けていただいてありがとうございます。あなたは騎士様なのですか?」
「騎士?違う違う。俺は冒険者だ」
「冒険者、なのですね…。荒くれ者が多いと聞きましたが、あなたような紳士もいるのですね」
「紳士ってほどでもないけどな」
「ええと…後日俺にお伺いしたいので、ギルドの名前を教えてもらってもいいですか?冒険者はギルドに所属するものだと聞きました」
「あ…いや、ギルドは…」
「ギルドには所属されていないのですか?」
咄嗟に頬を掻いた俺に、少女はキョトンとして首を傾げる。
俺は自嘲気味に笑いながら言った。
「実はたった今ギルドをクビになったところでね…はは…」
「く、クビ…?何があったのですか?」
「俺は役立たずなんだとよ」
「や、役立たず…!?あなたのような強いお方がですか…?」
「俺もそれなりに頑張ってたつもりなんだけど、評価されなかったみたいだ」
「そ、そうなのですか…冒険者の世界は厳しいのですね…」
「まぁ、そう言うわけだから、お礼とかはいいや。ともかく次からは気をつけろよ。じゃ」
「お待ちください!」
歩き出そうとした俺の服の裾を、少女が掴んだ。
「も、もし良ければ、私の屋敷に来ていただけませんか?」
「屋敷に…?なんで?」
「あ、あなたを騎士として雇います」
「は、はい…?騎士…?」
思ってみない提案に俺は目を丸くする。
騎士ってのは貴族なんかに仕えている先頭要因の者たちのことだ。
屋敷の護衛や身辺警護が仕事で、毎月定額が支払われるという。
冒険者に比べたら安定した職業だが、慣れるのはほんのひと握りの実力者だ。
そんな騎士に、俺が…?
「あなたのような強い人なら雇うことをお父様も納得してくださいます。どうか来てくれませんか?」
「うーん…」
俺は迷ったが、しかしこの後に何か食べていく策があるわけでもない。
「わ、わかった。そう言うことなら…」
「ええ。是非いらしてください」
結局俺は、渡りに船だと、少女についていくことにした。
「そうだ。名前、聞いてもいいか?」
「私はニーナ。ニーナ・アルトリアです。あなたは…?」
「アルトだ。家名はない」
「アルト様、ですね。心に刻みます」
「いや、別に刻まなくてもいいぞ?というかアルトリアってあのアルトリアか…?」
「あのがどのかは分かりませんが…家名はアルトリアで間違いありませんよ」
「まじか…あんたすごいところのお嬢様なんだな…敬語使った方がいいか?」
「いいえ、その必要はありません。ラフな口調の方が好ましいです。硬い喋り方には飽き飽きしているので」
「…そうか」
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