今までの功績を改竄され、役立たずのお荷物認定されてギルドを追放されたけど、国一の貴族の令嬢に拾われ無事勝ち組人生

taki210

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第二十八話

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『ブォオオオオオオ!!!』

ミノタウロスによる咆哮。

そして強烈な突進攻撃。

「タンク!!防げ!!」

リーダーの指示で、3度目のミノタウロスの突進をタンクが防ぐ。

ガァンと音がなり、ミノタウロスの突進が止められた。

だが…

「ぐあああああああ!!!」

タンクの1人が声をあげて、地面に倒れた。

見れば、盾を持っていた右腕があらぬ方向に曲がっている。

どうやら盾越しにダメージをもらってしまい、骨が折れたようだ。

そのタンクは比較的最近ギルドに入ってきた若手であり、力をうまく受け流す術を知らなかったようだ。

「治療班!!すぐに彼に回復魔法を」

「「「はっ!」」」

治療班が、すぐにタンクに回復魔法をかける。

そんな中、リーダーが残りの戦闘員に支持を出した。

「今突進攻撃を受けたらお仕舞いだ!!総員突撃!!時間を稼げ!!」

タンク不在でミノタウロスの突進攻撃を喰らえば、たちまち陣形が崩壊してしまう。

そう判断したリーダーは、残った戦闘員全員でミノタウロスに攻撃を仕掛け、突進の余裕を作らせない。

「うおおおおおお!!!」

「らああああああ!!!」

冒険者たちが雄叫びをあげて、ミノタウロスに突っ込んでいく。

『グオオオオオオオ!!!』

ミノタウロスもけたたましい鳴き声をあげながら、応戦する。

巨腕が左右へブゥンブゥンと振られ、その度に冒険者数人が悲鳴をあげて吹き飛んでいく。

「だ、だめか…!」

リーダーが表情を歪める。

パワーが違いすぎる。

総員でかかったとしても足止めが精一杯。

誰1人として、ミノタウロスに有効なダメージを与えることが出来ていない。

やはり無茶だったのだ。

あの2人がいないパーティーで、ミノタウロスに挑もうなどと…

「こうなったら…撤退するしか…」

このままだと死人が出かねない。

幸いまだ、動けなくなるような大怪我を負った者はいないようだ。

死者を出さずに撤退するならいまだ。

リーダーは苦渋の思いでそう判断する。

「総員!!撤退だ!!撤退するぞ!!引け!引けええええ!!!」

ボス部屋ないにリーダーの声が響き渡った。

「撤退だ!!」

「下がれ…!」

「陣形を維持したまま距離を取るんだ!!」

リーダーの指示で、冒険者たちは、撤退の陣形を保ったまま、ミノタウロスから距離を取り始める。

ミノタウロスは、下がっていく冒険者たちを追撃しようとはしてこない。

リーダーは安堵してため息を吐いた。

「これでいい…名声欲しさにメンバーを無駄死にさせるわけにはいかない…」

今回の依頼はただの依頼ではない。

貴族家アルトリアからの依頼だ。

失敗は許さない、必ず達成せよとギルマスからは厳命されている。

おそらくこのまま地上に帰れば、ギルマスは怒り、戦いを指揮した自分はクビにされるだろう。

だが、それでいい。

メンバーの命が助かるなら。

「何してるんだお前ら!!!」

「「「!?」」」

冒険者たちが、注意深くミノタウロスから距離を取る中、怒鳴り声が背後から聞こえた。

治療を受けて、復活したガイズだった。

「何逃げようとしてんだ!?てめーらこれが誰からの依頼かわかってるのか!?貴族家アルトリアだぞ!!成功すれば、俺たちのギルドはどこまでも駆け上がっていけるんだ!!引けるはずないだろ!!!この役立たずどもめ!!」

「「「「…っ!!!」」」」

「全員でミノタウロスに突っ込め!!死人が出てもいい!!なんとしてでも仕留めるんだ!!」

自分が初撃をもらって瀕死になったことを棚上げし、好き勝手に振る舞うガイズに、これまで黙っていたメンバーがついにキレた。

「ふざけんなよガイズ!!」

「てめー好き勝手に抜かしてんじゃねー!!」

「足しか引っ張ってないくせに偉そうにするな!!!」

「やりたきゃお前1人で突っ込め!!」

次々にガイズに向かって罵倒が飛ぶ。

ガイズはこれまで従順だった連中に突然牙を剥かれて、たじろぐ。

「な…お、お前ら!この作戦のリーダーは俺だぞ!!俺の指示に従えっ!!」

「うるせぇ!!誰が従うか!!」

「嫌だね!!こんなところで犬死するつもりはない!」

「というかこうなったのもお前ら運営陣が、アルトさんとアイリスさんを解雇したせいだろうが…!!責任取れよ!!」

ガイズに責任追求の声が集まる。

ガイズは唾を吐いて憤慨する。

「ふざけるな!!この俺に向かってなんだその口の聞き方は!!!てめーら全員クビにしてやる!!」

「はっ、やってみろ!!そうなりゃ青銅の鎧は崩壊だ!!」

「言われなくともこんなギルド、さっさと辞めてやるよ!!」

「おいお前ら!!ここで喧嘩するなっ!!今は撤退だ!!」

そうこうしているうちに、ゆっくりとではあるが、ミノタウロスが彼らに接近していた。

リーダーは慌てて、言い争うメンバーたちを一喝し、ひとまずボス部屋から撤退する。

ボス部屋から出て仕舞えば、ボスモンスターは追ってはこない。

「ふぅ…なんとか死人を出さずに済んだな…」

「くそ…この無能どもが…全員帰ったらクビにしてやる…!」

メンバーたちのことを真剣に考えるリーダーは安堵の息をはき、ガイズは舌打ちをする。

こうしてギルド『青銅の鎧』は依頼を達成することができずに、敗走し、地上へと帰還したのだった。

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