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第四十六話
しおりを挟む「困ったな…どうするか…」
カイルからミノタウロス討伐の任を受けたその翌日。
俺はダンジョンの入り口で立ち往生をしていた。
「期限は今日限り…たった一人じゃ無理があるよな…」
ミノタウロスを一人で倒すこと自体は、おそらくわけないだろう。
しかし、ミノタウロスが出現するのは、二十階層のボス部屋のみであり、たった一人で潜って一日で帰ってくるのはほぼ不可能に近い。
十中八九、道中の雑魚モンスターの討伐に足を取られるだろう。
さらに言えば、ミノタウロスの素材も、一人で持ち運ぶのは至難の業だ。
収納魔法のような便利な魔法を持っていれば話は別だが、あいにく俺は収納魔法は持っていないし、マジックバッグのような高価なアイテムも持っていなかった。
『青銅の鎧」から支払われていた給料が安すぎてそんなアイテムを買う余裕なんてなかった。
ふむ…
カイルからの命令だからとつい二つ返事で引き受けてしまったが、しかし、これはなかなか厄介だぞ。
「他のギルドに助っ人を頼むか…だが、それにはお金がかかるし、交渉にも時間がかかる…うーん…一か八か一人で潜ってみるか…?」
俺がダンジョンの入り口で迷いあぐねていると…
「アルト!!アルトではないか!!」
「…ん?」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「久しぶりだな!!」
「アイリス!」
ばったり出くわしたのは、『青銅の鎧』のメンバーだったアイリスだった。
表情を輝かせてこちらへ駆け寄ってくる。
「アイリスはこれからクエストか?」
「ああ、そうだ」
「もしかして、ソロ、なのか?」
「あ、あぁ…当分はソロでやっていこうと思う」
「あれ…?でも前ギルドと交渉中だと言ってなかったか?」
「や、やっぱり入らないことにした!ソロの方が気楽でいいからな!!」
「そ、そうか…」
「べ、別にあれだぞ…!?アルトが騎士をやめてまた冒険者に戻ってきた時に、二人で組めるかな?とかそんなことを考えてのことじゃないからな!?勘違いするなよ!?」
「いや、そんな具体的な勘違いどうやってするんだよ」
「…っ」
かああ、とアイリスが顔を真っ赤にして俯く。
「アイリス?」
俺が肩を触ると、ひゃっ!?と声をあげてバッと飛びのいた。
「どうかしたのか?」
「な、なんでもないっ…そ、それより、アルト…!お前はなぜここにいる!?まさかアルトリア家の騎士を辞めてきたのか…!?も、もしまた冒険者として活動するのなら、わ、私が組んでやらんことも…」
「違う違う。ここには任務できたんだ」
俺はミノタウロスを討伐することになった経緯をかいつまんで説明する。
「そ、そうか…任務か…」
話を聞いたいアイリスはちょっとがっかりした感じだった。
「そう、任務だ。悪いが騎士はやめるつもりはないな」
「い、いやっ、別にやめて欲しいとかそういうことではないのだ!かつての仲間として、アルトの成功は…う、嬉しいぞ…?」
「そうか。ありがとう」
「それじゃあ…私はこれで…」
「あっ、ちょっと待ってくれアイリス」
俺はそんなアイリスを呼び止める。
「どうかしたか?」
「いいところに来てくれた。お礼はなんでもする。実は頼みがあるんだ…」
これも天の思し召し。
俺はアイリスにミノタウロス討伐の手助けをお願いしてみることにした。
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