あれ?気づいたら俺を追放したSランクパーティーが崩壊してて、逆に温かく迎え入れてくれたAランクパーティーがSランクに昇格していたんだが?

taki210

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第十八話

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この人は一体何を言ってるんだ?

そんな表情で、ルーナが首を傾げた。

「今なんと…?」

「聞こえなかったのか?クエストは達成した…だが、素材は捨ててきた」

「…」

ルーナが口をぽかんと開けたまま固まる。

「あの…意味がわからないんですけど…」

「ちっ」

当然の反応をするルーナに、カイルがちっと舌打ちをする。

「トロい受付嬢だな…だから言ってるだろーが!!リザードマンは倒した!だが、素材は捨ててきたんだっ!!いいからクエスト達成の手続きをしろよ!」

「怒鳴らないでください、カイルさん。残念ですが、討伐証明のための素材を持ってきてくれなければ、クエスト達成とするわけにはいきません」

「はぁ!?なんでだよ!!」

「規則ですので」

「俺たちはSランクだぞ!!」

「ランクなど関係ありません。リザードマンの爪がなければ、クエストは失敗となります」

「ふざけるなっ!!!」

ドォンとカイルがカウンターを叩いた。

周囲の冒険者や職員が一斉に注目する。

だが、ルーナは臆さない。

鋭い瞳で、カイルを射抜いている。

「…っ」

針の筵となったカイルはたじろぐ。

額を一筋の汗が流れた。

一方で魔法使いのミシェルはというと…あまりの惨めさに、カイルの後ろで俯いて口を閉ざしている。

「と、とにかく…俺たちはリザードマンを倒したんだ…クエスト報酬はいらないから、クエスト失敗にだけはするなよ…」

「いえ、残念ながらそうさせていだだきます…」

「…っ」

ぎりりとカイルが歯を食いしばる。

思わず受付嬢に殴りかかりそうになるが…そんなことをすれば間違いなくギルドを追放される。

ギリギリのところで留まった。

そんな時だ。

「あー、ちょっといいか?」

「「…?」」

一人の冒険者が間に割って入ってきた。

「カイルさん、嘘はよくないぜ。あんた、森でリザードマンに惨敗したろ。しかも仲間の一人が腕を失ってた。俺は一部始終をしっかり見てたぜ」

その一言で、場が凍りついた。



「どういうことです?」

ルーナとカイルの争いに割って入ってきた冒険者の男。

彼は、つい1時間ほど前に自分が目にした『緋色の剣士』の醜態を洗いざらい告白する。

「俺たちパーティーはついさっきまで森の中で薬草採取のクエストをしててな…そしたら森の中から悲鳴が聞こえたわけよ…それで駆けつけてみたら…『緋色の剣士』の3人とリザードマンが戦ってた…そして、一人が腕を溶かされ、リザードマンに食われてた…そして、『緋色の剣士』は1匹もリザードマンを倒さないままその場から逃げ出したんだ…俺は一部始終を見てたぜ…俺のパーティーはCランクだから助けに入っても瞬殺されるだけだからな」

男がもたらした衝撃の告白。

様子を観察していた周囲の冒険者たちがザワザワとしだす。

「おいマジかよ…緋色の剣士が負けたって…?」

「リザードマンは確かに強いけどよ…1匹も倒せずに惨敗とか…」

「一人は腕を食われたんだって…?大丈夫なのかよ…?」

「Sランクパーティーがそんなんで大丈夫なのかよ?」

冒険者たちの口から、『緋色の剣士』の実力を疑うような声が漏れる。

耐えきれなくなったカイルが叫んだ。

「ふ、ふざけるなぁあっ!!」

真実を告白した冒険者に詰め寄る。

「お前っ、デタラメを吹聴してんじゃねぇ!俺たちが負けただと!?そんなことあるはずないだろうがっ!!」

「で、デタラメじゃないっ。俺は見たままをしゃべったんだっ!事実、あんたらはリザードマンの爪を持っていないじゃないかっ!!」

「…っ」

痛いところを突かれて何も言えなくなってしまうカイル。

そんな中、耐えかねたのか、今までずっと黙っていたミシェルが声を上げた。

「もうやめてよカイル!!」

金切声をあげ、一気に捲し立てる。

「恥の上塗りはやめてっ!!彼のいう通りだわ!私たちは負けたっ!リザードマンを1匹も倒せなかった!クエストに失敗したの!!この事実はどうやったって覆らないわ!!もう嘘をついて惨めな思いをするのはたくさんっ!!いい加減認めなさいよ!!私たちは負けたのよ!!」

「ミシェル…」

カイルが呆然と仲間の名前を呼んだ。

しぃいんと、ひとときの静寂が当たりを支配する。

やがて…

「ギルドはミシェルさんの今の言葉を真実と判断し、『緋色の剣士』の2度目のクエスト失敗を記録します。これで、あと一度の失敗で『緋色の剣士』はSランクから降格となりました。ご留意ください。また、カイルさん個人に、虚偽報告のペナルティを貸したいと思います。次回のクエスト受注時の際に、金貨10枚を収めることをギルドとして命令します」

「…」

受付嬢ルーナの言葉に、カイルは目の前が真っ暗になる感覚に襲われた。


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