あれ?気づいたら俺を追放したSランクパーティーが崩壊してて、逆に温かく迎え入れてくれたAランクパーティーがSランクに昇格していたんだが?

taki210

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第二十七話

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ゴブリンの巣穴の中を、四人の冒険者が走っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ…くそおおおおおおお!!!なんで俺がゴブリン如きにっ」

「きゃああっ!?」

「嫌…もう、冒険者なんて…やめたい…」

「…っ」

四人とも、出口へ向かって全力疾走。

その背後から、大量のゴブリンが押し寄せる。

『グギギギギギ!!!』
『グギャギャギャ!!』
『グギーッグギーッ!』

ゴブリンたちは君の悪い鳴き声をあげながら逃げ惑う冒険者たちを追い回す。

「…(なんだこれ…この人たち…最高峰の冒険者じゃなかったのか…?これがあのSランクパーティー『緋色の剣士』の姿…?)」

最後尾を走るケルトは、逃げ惑う『緋色の剣士』の背中を見ながら、そんなことを考えていた。

ゴブリン如き匂い回されて、逃げ回る彼らの姿は、ケルトが想像していたSランク冒険者のものとはかけ離れていた。

Sランク冒険者。

それは各冒険者ギルドに一つしか存在しない、最高峰のパーティー。

数ある冒険者パーティーの頂点に立ち、災害級の魔物を打ち倒し、村や街や、国を守る英雄たち。

それが、Sランクパーティーに対する一般的なイメージだった。

だが、実際はどうだ。

こうしてゴブリンの巣穴一つ満足に潰せず、敗走している。

これではAランクの実力すらあるのか怪しい。

ケルトの頭の中に、つい先ほどまでのゴブリンと『緋色の剣士』の戦いの光景が蘇る。

「くそっ…なんだこいつらっ!すばしっこいぞ!!」

相変わらずゴブリン相手に手間取っているカイル。

攻撃を何度も躱されて、ついには怪我までしてしまう。

「痛ってぇ!?この、クソゴブリン!!」

『グギギ!!』

ゴブリンの錆びた剣に斬りつけられた脇腹から血が流れる。

それを見てケルトは呆然とした。

全冒険者の憧れであるSランクパーティーが、最弱モンスターゴブリンとの戦いで血を流している。

夢でも見ているような気分だった。

「ミシェル!早く回復しろ!!」

「わ、わかったわよ!」

魔法使いによる回復魔法。

カイルの傷口が光に包まれ、癒される。

Sランクパーティーの魔法使いの回復魔法なのだから、ゴブリンに受けた傷ぐらい瞬時に直せる。

そう思っていたが、次の瞬間目を疑うようなことが起きた。

「あ、あれ…?おかしいわね…」

なんと、一度の回復魔法で傷が完全に癒えなかったのだ。

ケルトは思わず目をゴシゴシと擦って二度見してしまった。

一度回復魔法をかけられたカイルの傷は、まだ完全に治りきっていなかった。

あの程度の傷、自分だって一発で直せるのに。

「ミシェル!!治ってねーぞ!真面目にやれ!」

「や、やってるってば!!」

再度の回復魔法。

これでようやく傷口が塞がった。

「…」

ケルトは絶句する。

Sランクパーティーの魔法使いが、ゴブリンに受けた傷を治すのに2度も回復魔法を使うとは何事だろう。

これでは、Bランクパーティーの回復役にも劣るではないか。

『グギ、グギギ…!』

『グゲゲ…!』 

『グギギギギ…』

そうこうしているうちに、ゴブリンの数が増え始めた。

ここはゴブリンが繁殖する巣穴。

スムーズに敵を倒さなければ、すぐに物量で押し返されてしまう。

だが…カイルやミシェルはどうやら役に立ちそうもない。

ケルトは救いを求めるように細剣使いと思われる、もう一人の少女を見た。

「やだ…怖い…無理…」 

「え…」

少女は、自分の身を抱えてブルブルと震えていた。

今にも左手に持った細剣を取り落としてしまいそうになっている。

顔は青ざめていて、どうやらゴブリンを見て恐怖しているようだった。

しかも、なぜか頑なにフードの中から右腕を出そうとしない。

「…」

ケルトは戦慄した。

Sランク冒険者が、最弱のモンスター相手に恐怖している。

何かの冗談だと思った。

そして、そうこうしているうちにゴブリンはどんどん数を増やしていった。

『グゲーッ!』

『グギギ!!!』

『グギギギギギギギイイイ!!!』

巣穴を埋め尽くすほどに群がるゴブリン。

こうなってくるともう打つ手がない。

全体攻撃の魔法を撃とうにも、一方間違えれば巣穴が崩壊して生き埋めとなる。

「くそっ、一旦引くぞ!!」

結局、四人の上級冒険者は、ゴブリンの群れを前にして撤退を余儀なくされたのだった。





「はぁ、はぁ、はぁ…」

「なんとか助かったわね…」

「よかった…私、生きてる…」

「…」

なんとかゴブリンの巣穴を脱出した四人は、近くの木陰に座り込んで息を整えていた。

ゴブリンたちは、巣穴を出ると追いかけて来なくなった。

『緋色の剣士』の3人が無事を安堵する中、ケルトはポカンとして3人を見つめていた。 

Sランクパーティーがゴブリンに敗走した事実に、二の句が出てこなかったのだ。

そんな中、不意にカイルが立ち上がり、ケルトの胸ぐらを掴んだ。

「てめぇ!覚悟は出来てんだろうな?」

「へ…?」

唐突のことにケルトは固まる。

カイルは憎しみのこもった目でケルトを睨んだ。

「お前、マジでなんの役にも立たなかったな!お前のせいでゴブリン如きに負けたじゃないか」

「…」

ケルトはあまりに謂れのないカイルの批判に、一瞬思考を停止してしまった。

だが、すぐに言葉の意味を理解して、今度こそ真っ向から反抗する。

「ふざけないでください!!」

「あぁ?」

カイルが凄むが、ケルトは恐れることなくカイルを睨み返す。

「なんで僕のせいなんですか!?責任転嫁しないでもらえますか!?」

「なんだと!?」

「ゴブリンに負けたのは僕のせいじゃありません!僕はしっかりと支援魔法であなた方をサポートしました!」

「うるせぇ!雑魚のくせに俺に口答えするんじゃねぇ!!」

「雑魚はどっちですか!!あなた、ゴブリンすらろくに倒せないじゃないですか!!それでよくSランクを名乗れますよね!!恥ずかしくないんですか!!」

「なっ」

カイルの目が大きく見開かれる。

一方で、ケルトはここぞとばかりに畳みかける。

「あなた方、Aランクのクエストすらクリアできずに、よくSランクに上がれましたね!!ギルドに金でも積んだんですか!?」

「て、てめぇ…言わせておけば…Sランク冒険者を侮辱させたこと、後悔させてやるぜ」

「はっ。後悔?いいですね、させてみてくださいよ」

そういうと、ケルトは自らの胸ぐらを掴むカイルの手を掴んで捻り上げた。

「あだだだだだ!?」

情けない声をあげて、体を捩るカイル。

ケルトが手を離すと、掴まれた箇所を押さえて地面に蹲った。

「なんて弱さだ…カイルさん…あなた、Bランク冒険者くらいの実力しかないですよ…」

「…っ!?」

ついにケルトが決定的な言葉を口にする。

カイルが、今度こそ本気でキレた。

「死ねやああああああ!!」

全力の拳をケルトに向かってはなつ。

だが…

「遅すぎます」

「なっ」

パシッ、と。

拳は簡単に受け止められてしまった。

「ほら」

「うおっ!?」

ケルトがちょっとカイルの体を押すと、カイルは簡単に押し負けて、尻餅をついた。

そんなカイルを見下しながら、ケルトはいった。

「残念です。憧れで目標だったSランクパーティーが、こんなに弱かったなんて…僕はもう行きますね…クエスト失敗報告。よろしくお願いします」

ケルトはそういって踵を返し、歩き出した。

「…っ…くそがあああああああああ!!!」

力の差を完全にみせつけられたカイルは、叫び声を上げることしか出来なかった。



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