62 / 64
第六十二話
しおりを挟む轟音が辺りを支配する。
地面がぐらぐらと揺れ、周囲で村の住居が倒壊する。
ソフィアの魔法をまともに食らったモンスターの群れは、その大部分が爆散し、息絶えた。
その爆心地にいた俺は…障壁魔法で周囲を固め、なんとか爆発の被害を免れていた。
「すげぇな…」
俺は周囲を見渡した。
俺を中心にして周囲に大きな穴があき、クレーターのようになっている。
焼け焦げが地面からは、未だ煙が立ち上っていた。
「よくやった。ソフィア」
障壁魔法を解除した俺は、仲間の元へと戻る。
…と、ガレスが少し怖い顔でこちらへ近づいてきた。
「おい、アルト。お前今何をした?」
「ん?何を、とは?」
「モンスターが一斉にお前の方へ向かって行ったろ」
「もちろんデコイ魔法だが?」
「デコイ魔法…お前、そんな器用なことも出来るのか…」
「いつか役に立つんじゃないかと思ってな。支援職ながら、覚えておいたんだ」
「相変わらず無茶苦茶な…って、そうじゃなくて!!お前なに勝手に行動してんだ!!」
「勝手に…?」
「ああ。モンスターのヘイトを一気に集めて自分ごと魔法で吹き飛ばすとか…正気か!?」
「問題ない。爆発は障壁魔法で防げばいいんだ」
「あのなぁ…」
ガレスがガリガリと頭を掻いた。
俺はガレスが言わんとしていることを理解しかね、首を傾げる。
すると、今度はソフィアが口を開いた。
「アルト。あーゆーのはもうやめて欲しい」
「…?」
「自分ごと私に魔法を撃たせた。あなたが怪我をしたらどうするの?」
「怪我…?まぁ、ソフィアの魔法の威力が俺の障壁魔法を貫通する可能性は確かにあったが…しかし、ああするより他に手がなかった」
「うーっ、そうじゃなくてぇー…」
ソフィアも頭を抱える。
俺はますます首を傾げてしまう。
するとエレナまでもが…
「アルト。二人のいう通りよ。確かにあなたは合理的な選択をとったかもしれないけど…でも、たとえ誰かの命を救うためだったとしても、自分を犠牲にするような戦い方はやめてほしい。私たちはあなたの仲間だから…心配なの。お願いだから、無茶だけはやめて」
「…」
そこまで言われ、俺はようやく彼らが俺のことを心配してくれているのだと気づいた。
「…わかった。もうやらないことにする」
自分のしたことを否定されたわけだが、不思議と嫌な気持ちはなかった。
三人が本気で俺を心配してくれているのが伝わったからだ。
そして同時に、何か温かいものを胸のうちに感じだ。
仲間とはこういうものだったかと、久しく忘れていた感覚を思い出す。
「アルト。俺にはリーダーとして、パーティーメンバーの命を守る義務がある。今後は、お前が一方的に危険になるようなことはしないでくれ。いいか?」
「わかった」
俺が頷くと、ガレスが安心したように破顔した。
…と、そんなときだ。
『モンスターを一箇所に引きつけ、まとめて始末したか…』
『やはり人間ども、侮れない…』
『前回のようなヘマはしない…』
『わかっていればあのような小細工、我らに通用などしない…まとめてここで始末してくれる…』
森の中から4つの人影が現れ、こちらへと歩いてくる。
「「「…っ」」」
側で俺以外の三人が息を呑んだ。
無理もない。
近づいてきているのは、全員紫色の肌と角を有した、魔族だったからだ。
1
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる