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第二十三話
しおりを挟む「はい?なんです?」
門番らしき男たちに突然道を塞がれて、裕也はに首を傾げる。
男たちは何かを催促するように手を出した。
「街に入るには通行証を提示するか、通行料が必要になる。出してもらおうか」
「え、そうなのですか?」
「当たり前だろう」
「誰でも通すわけにはいかない」
「お前たちみたいな怪しい集団を通さないために」
「俺たちがいるんだから」
門番たちはそう言って、訝しむような視線を裕也たちに向けてくる。
「そうですか…困ったな」
裕也はガイドスキルの春樹を見た。
春樹も予想外の事態に目を白黒させている。
「ねえ、斎藤くん。君のスキルで解決できない?」
ガイドスキルは、ただ道を示すのみならず、やんわりとではあるが、するべき行動などを指定したりしてくれるのだ。
が、今回ばかりはガイドスキルを持ってしてもカバーできなかったのか、春樹がぶんぶんと首を振った。
「ご、ごめん有馬くん…僕のスキルには何も…」
「そっか…」
裕也は腕を組んで考える。
当たり前だが、この世界に来たばかりの裕也たちは、通行証も通行料となるお金も持っていなかった。
ガイドスキルを頼りにここまでやってきたが、万能ではないらしい。
この問題は彼ら自身で解決する必要があった。
「あの~…カテリーナさんから何か聞いてませんかね?」
迷った挙句に、裕也は一つの可能性に行きあたる。
それはカテリーナがあらかじめ、街の門番などに裕也たちのことを話している可能性だ。
望み薄だが、今はなんでも試してみるべきだろう。
そう思って尋ねた裕也だったが…
「カテリーナ…?誰のことだ?」
「ひょっとしてカテリーナ王女のことを言っているのか?なんであの方のお名前がなぜここで出てくる?」
どうやらカテリーナからは何も伝えられていないようだった。
裕也は、こういったトラブルもカテリーナが与えた試練の一つなのだと捉えた。
「さて…どうするか…」
背後を仰げば不安げな表情を浮かべたクラスメイトたち。
何かを期待するように裕也を見ている生徒もいる。
これまでのように裕也からの指示を与えられるのを待っているのだろう。
「くそ…スキルの弊害か…」
カリスマスキルは、自分に少しでも好意のある人物を意のままに操ることのできる強力なスキルだ。
しかし弱点もある。
それは支配対象から自発性が失われるということだ。
カリスマスキルによって支配下に置かれた人間は、主である者の指示なしではほとんど動かなくなる。
故に、このまま待っていてもクラスメイトたちから何かこの場を切り抜けるアイディアが出る望みは薄い。
つまりこの場を切り抜けるのに頼れるのは裕也自身のみとなる。
「スキルは…だめか」
裕也は一度門番の二人に自らのカリスマスキルを使ってみることを試みたのだが失敗の終わった。
あらかじめ少しは好意を持ってなければならないという前提が必要のカリスマスキルを、初対面の人間に対して使うのには無理があった。
「困ったな…」
裕也は頭を抱える。
門番たちの目つきはますます厳しくなる。
やがて時間はどんどん過ぎていき、裕也が一度撤退することも考え出した、まさにその時だ。
「有馬くん…!ちょっといいかな?」
手をこまねいている裕也の元に、一人の生徒が歩み寄ってきた。
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