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二十七話
しおりを挟む私は見回り班の1人に
盗賊がいたことを軽く伝えて
別行動をすることにした
1人で盗賊の元へ向かうために
大勢で行って逃げられたり
暴れられたら困るからだ
私が盗賊に近づいて行っても
相手は逃げずにその場に立っている
どうやら1人みたいだ
やがて目の前に立った私は
あの時の盗賊、だよね、と声をかけた
「‥そうだね」
彼は私にナイフを振り下ろし
あの場で指示を出してたであろう
盗賊だった
落ち着いた雰囲気を
まとっているように見えるが
相変わらず本心では
何を思っているのか分からず
目の奥が寂しそうな印象を持った
「‥君にまた会えて、嬉しいよ」
フッと笑い、握手を求められた
私は反射的にその手を取り握手をする
「‥へぇ、討伐隊の人って、
なぁーんにも、疑わずに握手とか、
しちゃうんだ?」
「あなたたちが変なことをしないなら
私たちは仲良くしたいと思っているからね」
「‥そうなんだぁ」
手に力が込められた
「‥ナツ、僕たちは、
別に仲良くしたくない訳では、ないんだ」
そして手を離された
「‥君たちが、僕たちの仲間を
言いくるめて、こき使って、
苦しめるから、ダメなんだよ」
「別に言いくるめた訳ではないし
こき使ってる訳でもない、
元々盗賊だった人たちには
働くことによってお金を稼いでもらって
生活を豊かにして過ごしてもらってる
こちらとしても街の中で
働いてもらうのはとても助かっている
勘違いしないでほしい」
さらさらと口から言葉が出る
「‥君が言う、働いてもらうってさ、
こっちとしては、
辞めたくても、辞められないんだよね?
一生、街から出られず、
同じところで、こき使われて
僕たちの仲間は、君の街で
奴隷になっている、
それを、苦にしてる人がいるって気づかずに
いい事してるって思ってるんだよね?
勘違いしてるのは、そっちじゃない?」
そう言うや否や私の腕を掴んだ
私は夢の中の事が一瞬で頭に蘇り
目を見開き、声も出せず、固まった
その様子を見た盗賊が
ふーんと言いながら見つめてきた
「‥前とは別人だね、
ライハにナイフを、突きつけられても、
びくともしなかったのに、
腕を掴んだだけで、固まっちゃうんだ」
盗賊の声にハッと現実に戻った
ライハ?
あのベラベラ喋ってくれた盗賊か
「‥ちなみに僕は、キト
ここで会えたのが、君だったから、
教えとくね
他の人だったら、言わなかったけど」
「どう、して‥?」
意識はしっかりしてるけど、
声が上擦った
「‥どうして?」
そしてニヤリと笑いながら
「‥ナツ、君は
ここの人、じゃないでしょ?」
そう言った
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