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三十話
しおりを挟むその日の夜、
私はベッドに横になっていたけど
なかなか眠れなかった
眠たいのに眠れない
少し散歩でもしてみようと思い
部屋着の上に薄いストールを羽織り、
部屋の外へ出た
懐中電灯の明かりをつけると
部屋の少し前に人影が見えた
こんな時間に私以外にも
起きてる人がいるんだ、なんて
呑気に思ってたら
懐中電灯の明かりに気づいた人影が
こちらへ振り返った
顔があまり見えなかったので
近づいて行くとはっきり顔が見えた
「あっ、ユナ?」
「‥ぁっ!?」
ユナはすごくびっくりした顔をし
声にならない声を出した
「ごめん、驚かせちゃって
私ナツだよ、お化けとかじゃないから
大丈夫だからね」
「‥お化けとか信じていません、
ナツさんだから驚いたんです‥」
「あっ、ごめんね?」
なんか反射的に謝ってしまった
しばらく沈黙が続いたが
なんとなくお互いその場からは
離れなかった
私が少し中庭にでも出てみないかと
提案をしたら、頷いてくれたので
2人で中庭へ移動した
その間ももちろん沈黙が続いていたけど‥
中庭へ着いてベンチに腰掛けると
失礼しますと言いながら
ユナは私の隣へ座ってくれた
その日は星がとても綺麗だった
夜空を見上げながら
星を眺めていると隣から声が聞こえてきた
「‥すみません、でした」
「え?」
私はびっくりして夜空から視線を外し
ユナを見つめる
何か謝られるようなことされたっけ?
考えているとユナが話し出した
「討伐の時の、救護用の物資‥
ナツさんは分けるように言ってくれたのに
私は、それを聞かなかった‥」
‥あぁ、あの時私が諦めた時のことだ
「あの時、ちゃんと分けていたら
物資が全部取られることも
なかったかもしれない‥
首席だって自慢げに言ったくせに
実際は馬から荷物を外すことも
出来なかった」
最後の方は声が震えていた
下を向いているから表情は見えないが
きっと泣くのを堪えながら
話しているのだろう
「馬も、荷物も全部、奪われて、
しまったのは、私のせいです
本当に、すみません、でした」
一言一言震えながらも
はっきりと伝えようとしてくれていた
「ずっと、ナツさんに直接
謝りたいと思ってたんです
部屋の前まで行くんですけど、
そこからはなかなか勇気が出なくて‥
今日も謝りたくて、あそこにいたんです
でも夜中だし、と思って
帰ろうと思ったら、ナツさんがいて‥」
ナツさんだから驚いたんですって
そういう事だったのか
私はユナの頭を撫でた
「ユナのせいじゃないよ、
ずっとそう思ってたの辛かったでしょ?
そんなこと思わなくても大丈夫だよ、
気にする事なんてないんだよ」
そう伝えた、
どちらかと言えばユナのせいではなく
私のせいだ
私が諦めず説得してたら
変わったかもしれないことだから
「私の方こそごめんね、
ユナにそんな思いさせてたなんて
気づかなくて」
ユナはズズッと鼻をすすりながら
「‥お金も、補給する時間も
またかかってしまって‥」
言い終わると顔を上げ、私を見つめた
「それなら大丈夫、
救護用の物資なんだから
誰かを助けてるだろうし、
お金は補給することによってまわる、
何も気にするようなところ、ないよ」
タリアが言ってた言葉を借りた
「‥はい」
少し笑顔が見れた
「次、頑張りますので
よろしくお願いします」
そう言いながら
頭を少しペコっと下げてくれた
「こちらこそ、よろしくね」
そう言って私も微笑んだ
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