巡り合い、

アミノ

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五十八話

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私とシオンでリクを挟み
門の方へと歩き出す

リクは落ち込んだように肩を落とし
眉は垂れ下がり今にも泣きそうな顔を
しているが、これはもちろん演技だ
シオンは一度ごくりと唾を飲み込んでからは
ずっと唇を真一文字に結んでいた
これはきっと演技ではなく、ただの緊張だろう

「お前は確か討伐隊のナツ、だな?
何か用か?」

門の前に着くと
北東の門の夕方の責任者であろう男性が
訝しげに聞いてきた

「‥門の外、に出たいんだが‥」

私も緊張していたのか
喉が張り付いて上手く声が出なかった
空ではカラスが
森の方へ向かっているのが見える

「僕の大事な物が
あのカラスに取られちゃったんだ!
妹にどうしても
プレゼントしたいものなんだけど、
最後の1個だったからもう手に入らなくて‥
この人たちが探してきてくれるって
言ってくれたんだ!」

私が上手く話せないと踏んだのか
リクは空を飛ぶカラスを指差し
男性に向かって捲し立てる

「‥朝方に盗賊が出て怪我人が出てるんだ
そんな物の為に門の外に出るのは
危険だと分かるだろう」

やはりダメかと私が諦めかけた時
勝手に言葉が出てきた

「危険なのは重々承知している
だが、街の人の気持ちと言うものも
大事にしたいのだ
討伐隊や警備隊に対して
権力だけだ、待遇ばかり良い、などと
思われるだけでなく、
常に身近にいてくれる味方となりたい
必ず今日中に帰ってくる
頼みを聞いてはくれないだろうか」

「‥しかしだな」
「たまたま街で会った少年だから
上の者への報告や許可は一切取っていないが
私が全部の責任を負う
そこにいる私の部下と2人で行くから
馬は1頭で十分だ」

警備隊に話はさせず
ひたすら話すナツに
シオンとリクは黙っていた

「馬も連れて行くのか?」

「当たり前だろう
逆に馬を連れて行かなければ
カラスを見失ってしまうじゃないか
カラスは日没近くなると
寝ぐらに向けて移動する
つまり今は移動中
付近で群れを作ったり離れたりを繰り返し、
日没後に寝ぐら入りする
今のタイミングで見つけないと
夜は寝てしまい、寝ぐらの場所も
分からないだろう」

圧倒されたのか男性は黙ってしまった
ナツ、リク、シオンを順番に見つめ
一度目を閉じゆっくりと息を吐いた

「‥何かあれば、
責任はお前が取るんだな?」

「もちろんだ
君たちに迷惑は一切かけないと誓う」

しばらく重苦しい空気に包まれていたが
やがて男性は他の警備隊へ指示を出した

「門を開けて
馬を1頭貸してやれ」

片側だけ門が開き、
早く行けと言わんばかりに顎で促される

「感謝する」

警備隊にそう伝えると
ナツは門を出て馬に跨る
ナツの後ろにはシオンが乗り
腰に手が回されていた

森の方へ向けて出発する
ナツたちを見送った後
家に帰ると告げ、リクは門を離れた

「‥不思議だなぁ」
そう呟く小さな声は
風にかき消され誰にも聞こえなかった

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