蛍地獄奇譚

玉楼二千佳

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学園生活篇

24 再会

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 食堂は、生徒達で溢れていた。先に、蛍となずなは席を取る。その間にガラムとみのりが二人の注文をしてくれるみたいだ。

「えっと……蛍くん、ここにする?」

なずなが指定した席は、窓際の方の席だ。蛍は頷いて、椅子を引く。その時だった。

「ちょっとそこ私達が先に取ってたんだから!」

3人ぐらいの女生徒がこちらを睨んでそう言った。

そのグループにはもう一人リーダーらしき女生徒がいた。その女生徒はツーサイドアップで、金髪に近い髪色をしている。

「え……?蛍くん、どうする?」

なずなは何故か顔を伏せている蛍に声を掛ける。

「蛍……?」

シニヨンの女生徒は呟いた。

「……あ、でも隣に席……」
「あっちに行こうよ」

蛍は顔を伏せたまま、なずなの手を引っ張る。

「ちょっと待ちなさいよ!」

少し肩がビクッとして、蛍はゆっくりと後ろを振り向いた。

「やっぱり……蛍ね?」
梔子くちなし……」

しかめっ面で蛍は、梔子と呼んだ女生徒を見る。

「知っているの?」

蛍は口元を抑えたまま頷く。

「知っているも何も私は蛍のなの!」

なずなは開いた口が塞がらない様子で、蛍と梔子を交互に見る。勿論、取り巻きの女生徒も驚いている様子だった。

「違う。決して違う!」

すぐさま、蛍は否定しなずなの身体を揺らした。

「あら……。へえ……」

今度は梔子がなずなを品定めするように、上から下まで見る。

「……身長は私より少し高め、スタイルは悪くないし、美人だけどあなたと蛍は釣り合わないわ!」

梔子が声高らかに、そういうので周りが振り返った。

「あのさぁ……」

蛍が何か言いかけた時、みのり達がやってくる。

「おまたせ!ハンバーガーセット4人前……あれ?」

みのりは梔子たちを見てぽかんとした。

「えっと……D組の子達とええっと」
「誰?このちんちくりん?」

いきなり、ちんちくりんと言われてみのりはムッとする。

「ち、ちんちくりん?!」

確かに、みのりはなずなやほかの女子と比べて少し背が低い。

「……そんな事より、蛍!婚約者がいるのに、そんなデカい女と一緒なの⁈」
「そうよそうよ」

取り巻きの女子達は意味が分かっているのかいないのか……。

「わ、私平均身長なんだけど……デカいって」
「と・に・か・く!蛍は私のなんだから、誘惑しないでよ?」
「ゆ、誘惑?!」

なずなが、蛍を見ると困り果てた顔をしており、近くにいるガラムまで顔が引きつっている。



 結局、ランチは気まずいまま終わり、蛍は授業をサボり、兄・経国つねぐにを訪ねる為、保健室に来た。

「……宋帝王そうていおうの娘か」
経国はやや呆れたようにため息をつく。

宋帝王は、地獄の十王の1人で、死後21日目に裁判をする王。

主に性に関する裁判をする王で、禁忌を犯したものは、男は猫に、女は蛇に責められる。

梔子はその宋帝王の娘で、美しさ気品は申し分ないが、やや勝気であるのが玉に傷である。

「なんであの子がこっちに来てるの?どうにかしてよ!」

蛍は兄に抗議する。

「自分でなんとかしろ。というか、あの娘が来ているという事はなかなかの戦力になるし、丁度いいだろう?」

予想はしていたが、兄の言葉は冷ややかなものだ。

「宋帝王には、事情を聞いておく。……それとネリネがこちらに来ていたそうだが?」

蛍はぎくりとして、椅子から立ち上がる。
まさか、こちらに来ていたことがばれるとは……いや、問題は妖怪にさらわれた事だ。

父も兄もネリネを大変可愛がっており、その事がバレると何をされるか……。

「いや、その……」
「来ていたのか……」

心做しか、経国は寂しそうだ。
蛍は経国でもこんな顔をするのかと、やや関心した。


保健室を出て教室に戻ると、蛍はネリネにたまには経国に連絡しろとメールをしようとポケットを探る。

「あれ?」

スマホがない……?

机の中、カバンの中にもない。

「最悪だ……」

忘れてきた……いや、そんなはずはない。
それにもし、人間の手に渡れば……。

蛍は頭を抱える。

後ろの席で、平井がほくそ笑むのを知らずに……。

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