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盈月
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しおりを挟む「それで、何の用?」
テーブルを挟んで向かい合わせのソファーに座る。最初の言葉がそれだった。
「別に用は無いけど、瑠璃元気かな~? って思って」
「ふぅん」
気のない返事。彼女の右手はテーブルに伏せてあった本へと伸びる。
ーー…….……。
何も言えなかった。私は瑠璃と話がしたい。本を読んでは欲しくない。でも、彼女はきっとそうではない。用も無いのに家まで押しかけてくる私はきっと、ただの邪魔者だ。
「その本面白い?」
「別に。面白くも面白くなくもない」
消えない静寂。
いつからだろうこの静けさに満足できなくなったのは。いつからだろうただ隣にいるだけでは寂しいと感じるようになったのは。
「瑠璃……」
私の事どう思ってる?
そう続けようと思った。なのに、続けられなかった。
瑠璃は不思議そうにこっちを見ている。
「瑠璃って本の虫だよね。そんなに読書って楽しい?」
いたたまれなくなって違う問いをかける。そんな事が聞きたい訳じゃないのに。
「別に楽しくはない」
「じゃ、なんでそんなに読んでるのさ」
予想外の答えに陰鬱とした気は少し疑問に上書きされる。
「代替行為……かな。それに、読んでる間は余計なことを考えなくて済むから」
「…………」
代替行為? なんの? それに、余計なことってーー。
思考は一気に動き始める。私の感情なんて何処へやら。速度を緩めず進んでいく。
「巴」
「え?」
我に返った。次第に焦点が合ってくる。瑠璃は本から顔を上げてこっちを見ていた。
「どうしたの。急に押し黙って」
「ん~、ちょっと考え事。大したことないから気にしないで」
「ふ~ん、まぁいいや。ところで、見舞いの品とかは無いの? わたしが元気か見に来たってことはそれくらいあるでしょ」
「……はい。購買のゼリーで良ければ」
さも当然という風に土産を催促する少女に餌付けする。彼女はそれに反応してゆったりと滑らかな動作でゼリーを食べ始めた。
ーーなんなんだろ、ほんとに。何なんだろう……。
呆れる。無駄に悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきた。
「瑠璃、宿泊研修には来るんでしょ?」
「多分」
「楽しもうね」
ゼリーから視線も上げない少女に語りかけた。答えは無い。でも、今はそれで良い気がした。
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