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盈月
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辺りに並ぶビルとはそぐわないファンシーな建物。黄色い外装、赤い屋根、ゆるい感じの看板……。ヘンデルとグレーテルが食べはじめそうなそれに、私はしばし言葉を忘れた。
風が雲を運び、薄っすら影を持って来る。人が後ろを通り過ぎ、私の身体に滾っていた熱も冷たさに上書きされていく。
「……さ、行くか」
ーーここに居てもしょうがない。
小さな吐息を漏らして
"うなぴょんショップ"
私はそう書かれたお菓子の家の扉を開いた。
ーーえーと、瑠璃は……。
中もファンシー! とにかくファンシー! な店内できっとそこに似合わない少女を探す。
ーー居た。
うなぴょんのマークのついたカゴを左腕にかけ、二つのストラップを見比べている。
「る……」
その友人に声をかけようとして、突然、何故だか私は言葉を止めた。声をかけることが躊躇われた。身体が拒否を示していた。
「巴」
「え? うわぁ」
気がつくと目の前には瑠璃が居た。足音も無く当たり前のようにそこに居る。
「どっちがいいと思う?」
そして、ずいっと何かを顔に近づけられる。
「ん、何さ」
手に取って見比べてみる。ウサギの着ぐるみを着たうなぴょんとパンダの着ぐるみを着たうなぴょんのストラップ。
正直に言うとどちらも可愛くない。
「……ウサギかな?」
そっちの方がまだまともな気がする。
「分かった」
瑠璃は大人しくウサギをカゴに入れるとパンダを元に戻しにいく。
彼女はいたって普通だった。何もいつもと変わらない。何も声を掛けるのを躊躇う要因は無い。
「…………」
ーーなら、なんで?
心はどこか釈然としなかった。
辺りに並ぶビルとはそぐわないファンシーな建物。黄色い外装、赤い屋根、ゆるい感じの看板……。ヘンデルとグレーテルが食べはじめそうなそれに、私はしばし言葉を忘れた。
風が雲を運び、薄っすら影を持って来る。人が後ろを通り過ぎ、私の身体に滾っていた熱も冷たさに上書きされていく。
「……さ、行くか」
ーーここに居てもしょうがない。
小さな吐息を漏らして
"うなぴょんショップ"
私はそう書かれたお菓子の家の扉を開いた。
ーーえーと、瑠璃は……。
中もファンシー! とにかくファンシー! な店内できっとそこに似合わない少女を探す。
ーー居た。
うなぴょんのマークのついたカゴを左腕にかけ、二つのストラップを見比べている。
「る……」
その友人に声をかけようとして、突然、何故だか私は言葉を止めた。声をかけることが躊躇われた。身体が拒否を示していた。
「巴」
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気がつくと目の前には瑠璃が居た。足音も無く当たり前のようにそこに居る。
「どっちがいいと思う?」
そして、ずいっと何かを顔に近づけられる。
「ん、何さ」
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正直に言うとどちらも可愛くない。
「……ウサギかな?」
そっちの方がまだまともな気がする。
「分かった」
瑠璃は大人しくウサギをカゴに入れるとパンダを元に戻しにいく。
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「…………」
ーーなら、なんで?
心はどこか釈然としなかった。
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