パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

100

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私はあれからずっと浮かれている。もう五時間目なのに、幸福感は消えていかない。
ふわふわとしていて、楽しい。今にでも笑い出したい。
酩酊状態ってこんな感じなのかもしれない。なら、大人達が酒を飲むのも頷ける。

「巴ちゃん、これで決定で良いよね?」

私も含め、みんなで円になるように一枚の紙を囲む。その顔が全て私を見ていた。

「うーん、一応確認だけはしとくかな」

私はその輪を離れ、協調性の無い友の元へと向かった。背後に視線を感じる。表立っては言ってこないものの、みんな、私が瑠璃と関わる事に賛成ではない。

「人気者は辛いね」

口の中で自嘲する。
そして、読書中の少女に向き合った。

さっきよりも心は落ち着いている。いつも通りとまではいかないが、酔ってはいない。

「瑠璃」

「…………」

安定の無視。でも、もう動じない。これは案外、瑠璃の『聞いている』という返事でもあったりする。

「体育祭の競技だけど、バスケで、私と同じ4ピリでいい?」

「体育祭? 宿泊学習終わったばかりなのにまた何かあるの?」

「そりゃあね、高校は行事に溢れてるから」

「ふーん、そうなんだ。別に何でもいいよ」

無茶苦茶な論にツッコミも入れてくれず、流される。予想通りだけど、なんか寂しい。

もう反応してくれない友を残して私は渋々と輪に戻る。

「瑠璃もいいって」

「ありがとう、巴ちゃん」

体育委員の娘がメンバー表を持って教室を出て行った。

ばらばらと崩れ出す円。そこには微かに安堵が見える。

ーーそんなに瑠璃は怖い?

ピンに手を当てる。

私が瑠璃に何かされるとでも思っているの?

視線を教室の端へと向ける。

本に籠る彼女は彫像のよう。謎めいてはいるが、基本的には人畜無害。

でもーー。

私はゆっくり瑠璃を観察した。周りに興味を持たず、静かに佇む。何もいつもと変わらない。普段通りでそこに居る。

でも、何だか少し、彼女に理由の分からない違和感を感じていた。






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