109 / 158
盈月
100
しおりを挟む
私はあれからずっと浮かれている。もう五時間目なのに、幸福感は消えていかない。
ふわふわとしていて、楽しい。今にでも笑い出したい。
酩酊状態ってこんな感じなのかもしれない。なら、大人達が酒を飲むのも頷ける。
「巴ちゃん、これで決定で良いよね?」
私も含め、みんなで円になるように一枚の紙を囲む。その顔が全て私を見ていた。
「うーん、一応確認だけはしとくかな」
私はその輪を離れ、協調性の無い友の元へと向かった。背後に視線を感じる。表立っては言ってこないものの、みんな、私が瑠璃と関わる事に賛成ではない。
「人気者は辛いね」
口の中で自嘲する。
そして、読書中の少女に向き合った。
さっきよりも心は落ち着いている。いつも通りとまではいかないが、酔ってはいない。
「瑠璃」
「…………」
安定の無視。でも、もう動じない。これは案外、瑠璃の『聞いている』という返事でもあったりする。
「体育祭の競技だけど、バスケで、私と同じ4ピリでいい?」
「体育祭? 宿泊学習終わったばかりなのにまた何かあるの?」
「そりゃあね、高校は行事に溢れてるから」
「ふーん、そうなんだ。別に何でもいいよ」
無茶苦茶な論にツッコミも入れてくれず、流される。予想通りだけど、なんか寂しい。
もう反応してくれない友を残して私は渋々と輪に戻る。
「瑠璃もいいって」
「ありがとう、巴ちゃん」
体育委員の娘がメンバー表を持って教室を出て行った。
ばらばらと崩れ出す円。そこには微かに安堵が見える。
ーーそんなに瑠璃は怖い?
ピンに手を当てる。
私が瑠璃に何かされるとでも思っているの?
視線を教室の端へと向ける。
本に籠る彼女は彫像のよう。謎めいてはいるが、基本的には人畜無害。
でもーー。
私はゆっくり瑠璃を観察した。周りに興味を持たず、静かに佇む。何もいつもと変わらない。普段通りでそこに居る。
でも、何だか少し、彼女に理由の分からない違和感を感じていた。
ふわふわとしていて、楽しい。今にでも笑い出したい。
酩酊状態ってこんな感じなのかもしれない。なら、大人達が酒を飲むのも頷ける。
「巴ちゃん、これで決定で良いよね?」
私も含め、みんなで円になるように一枚の紙を囲む。その顔が全て私を見ていた。
「うーん、一応確認だけはしとくかな」
私はその輪を離れ、協調性の無い友の元へと向かった。背後に視線を感じる。表立っては言ってこないものの、みんな、私が瑠璃と関わる事に賛成ではない。
「人気者は辛いね」
口の中で自嘲する。
そして、読書中の少女に向き合った。
さっきよりも心は落ち着いている。いつも通りとまではいかないが、酔ってはいない。
「瑠璃」
「…………」
安定の無視。でも、もう動じない。これは案外、瑠璃の『聞いている』という返事でもあったりする。
「体育祭の競技だけど、バスケで、私と同じ4ピリでいい?」
「体育祭? 宿泊学習終わったばかりなのにまた何かあるの?」
「そりゃあね、高校は行事に溢れてるから」
「ふーん、そうなんだ。別に何でもいいよ」
無茶苦茶な論にツッコミも入れてくれず、流される。予想通りだけど、なんか寂しい。
もう反応してくれない友を残して私は渋々と輪に戻る。
「瑠璃もいいって」
「ありがとう、巴ちゃん」
体育委員の娘がメンバー表を持って教室を出て行った。
ばらばらと崩れ出す円。そこには微かに安堵が見える。
ーーそんなに瑠璃は怖い?
ピンに手を当てる。
私が瑠璃に何かされるとでも思っているの?
視線を教室の端へと向ける。
本に籠る彼女は彫像のよう。謎めいてはいるが、基本的には人畜無害。
でもーー。
私はゆっくり瑠璃を観察した。周りに興味を持たず、静かに佇む。何もいつもと変わらない。普段通りでそこに居る。
でも、何だか少し、彼女に理由の分からない違和感を感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
殲滅(ジェノサイド)ですわ~~!! ~異世界帰りの庶民派お嬢様、ダンジョン無双配信を始めます~
SAIKAI
ファンタジー
「わたくしの平穏なニート生活を邪魔するゴミは……殲滅(ジェノサイド)ですわ~~!!」
ブラック企業の理不尽な上司に対し、「代わりがいくらでもいるとおっしゃるなら、さっそくその有能な方を召喚なさってはいかが?」と言い残し、颯爽と退職届を置いてきた華園凛音(はなぞのりおん)。
実家で優雅なニート生活を満喫しようとした彼女だったが、あろうことか自宅の裏庭にダンジョンが出現してしまう。
「お庭にゴミを捨てるなんて、育ちが悪くってよ?」
実は彼女、かつて学生時代に異世界に召喚され、数多の魔王軍を「殲滅(ジェノサイド)」してきた伝説の勇者だった。
現代に戻り力を封印していた凛音だが、暇つぶしと「デパ地下のいいケーキ代」を稼ぐため、ホームセンターで購入したお掃除用具(バール)を手に、動画配信プラットフォーム『ToyTube』でのダンジョン配信を決意する!
異世界の常識と現代の価値観がズレたままの凛音がバールを一振りするたび、世界中の視聴者が絶叫し、各国の専門家が物理法則の崩壊に頭を抱え、政府の調査団が土下座で資源を請い願う。
しかし本人はいたって庶民派。
「皆様、スパチャありがとうございますわ! これで今夜は高い方のメンチカツですわ! 最高ですわ~~!!」
これは、本人は至って普通の庶民派お嬢様だと思っているニートが、無自覚に世界ランクをのぼり詰める殲滅の記録。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
【完結】親の理想は都合の良い令嬢~愛されることを諦めて毒親から逃げたら幸せになれました。後悔はしません。
涼石
恋愛
毒親の自覚がないオリスナ=クルード子爵とその妻マリア。
その長女アリシアは両親からの愛情に飢えていた。
親の都合に振り回され、親の決めた相手と結婚するが、これがクズな男で大失敗。
家族と離れて暮らすようになったアリシアの元に、死の間際だという父オリスナが書いた手紙が届く。
その手紙はアリシアを激怒させる。
書きたいものを心のままに書いた話です。
毒親に悩まされている人たちが、一日でも早く毒親と絶縁できますように。
本編終了しました。
本編に登場したエミリア視点で追加の話を書き終えました。
本編を補足した感じになってます。@全4話
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい
有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。
※食事の描写は普通の日本のお料理になっています
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる