パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

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学校指定の青ジャージ姿で、瑠璃がせっせと荷物をリュックに詰めている。その顔に楽しさは無く、いつも通りに無表情。

ーーいや~な予感がするよな……。

絶対当たるであろう感覚を言葉にする。

「瑠璃、頑張れよ」

「やだ。面倒くさい」

ーーやっぱり。

今日は、体育祭だ。瑠璃の高校は体育祭を一大行事として取り扱っていて、保護者や地域の人が見に行くことを前提としている。
彼らは垂れ幕や応援歌など、あらん限りの情熱でクラスを応援し、会場は、さながらプロ野球の様な盛り上がりを見せるらしい。
それ故に体育祭で大活躍をする事は最大級の栄誉で、この日に取り組む生徒達の気迫も尋常ではない筈なのだがーー。

我が娘は、見ている様子からして練習にもろくに参加しておらず、本番も面倒くさいと吐き捨てている。

どうしたもんか……。

せめて見られる程度には動いてもらわないと、今後の彼女の立場的にも、見に行くおれの気持ちとしても良いものではない。

「おれが休みまで取ってるんだからさ、良いとこ見せようとか思わないのか?」

瑠璃はちらりとこっちを見る。

「思わない」

しかし、何事もなかった様に切り捨てた。

どうしようか、もうそろそろ家を出る時間が迫っている。
おれは手がかりを探して視線を泳がす。
テレビ、ソファ、テーブル、キッチン、青ジャージ、スポドリ、リュック、うなぴょん……!?

これだ!

「瑠璃、こないだの宿泊学習の時、お金が足りなくて"うなぴょんハンドパペット"が買えなかったって言ってたよな?」

頷く。

「体育祭にちゃんと取り組んだら、それ買ってやるよ」

「!」

瑠璃の目がこっちを向いた。『本当?』そう聞いている。

「約束だ。頑張ったら、買ってやる」

念を押す。彼女はしばらくおれを見つめると、

「分かった。約束」

そう了承した。

ーーよし、勝った。

彼女を動かすには物で釣るのが一番だ。これで瑠璃の頑張る姿が見られる。

「じゃあ、もう行く。行ってきます」

瑠璃は淡々とそう言うと、振り返りもせず出て行った。

「ふふっ」

瑠璃は運動神経良いのかな? それとも運動音痴? 瑠璃が真剣にやる。想像するととても楽しかった。







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