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盈月
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予想をしていなかった事態に、脳は一瞬停止する。しかし、身体は呆けずに開いた扉を勢いよく引き戻した。
「なに閉めようとしてんだよ」
だが、一瞬早く足がドアの間に挟まれた。男が無理に乗り込んでくる。
「何しに来たの」
後ろ手で鍵を締める男から目を離さないようにして後ずさる。
「随分な言い草だな、兄に向かって。自分の家に帰ってきて何が悪い」
そう、たしかに彼は六歳年上の私の兄ーー篠崎昌平だ。だが、こんな男を私は知らない。
不機嫌そうで楽しそうな喋り方、立ち姿、父とそっくりな声、それらを全て知っている。だが、彼は私の知っている兄ではない。
「悪いでしょ。兄貴は勘当されてるんだから」
嘲るように言った。多分、笑い方はそっくりだ。共通点を見つけて嫌になる。彼はもう他人なのに。
「兄貴か……昔はお兄ちゃんって呼んでくれてたのにな」
片時も外されることのない視線は、私を警戒している。油断なんてしてくれない。兄は、私がどんな人間なのかを誰よりも知っている。
「なに閉めようとしてんだよ」
だが、一瞬早く足がドアの間に挟まれた。男が無理に乗り込んでくる。
「何しに来たの」
後ろ手で鍵を締める男から目を離さないようにして後ずさる。
「随分な言い草だな、兄に向かって。自分の家に帰ってきて何が悪い」
そう、たしかに彼は六歳年上の私の兄ーー篠崎昌平だ。だが、こんな男を私は知らない。
不機嫌そうで楽しそうな喋り方、立ち姿、父とそっくりな声、それらを全て知っている。だが、彼は私の知っている兄ではない。
「悪いでしょ。兄貴は勘当されてるんだから」
嘲るように言った。多分、笑い方はそっくりだ。共通点を見つけて嫌になる。彼はもう他人なのに。
「兄貴か……昔はお兄ちゃんって呼んでくれてたのにな」
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