13 / 158
盈月
5
しおりを挟む――あぁ、疲れた。
帰り道。人気の無い暗闇を車のライトで切り裂き、ため息をつく。
結局、佐々木警部に仕事を貰ったせいで、いつもと同じ時間まで帰ることができなかった。
「まったく……」
高校からの腐れ縁なせいなのか、武田といると、時々学生みたいに、はしゃいでしまうことがある。
失敗しない為には、あのヘラヘラ野郎と関わらなければいいんだろうけど、離れられないのが腐れ縁ってやつなのだ。
「はぁ」
げんなりする。あいつのことを考えると更に疲れが増した気がした。
「ただ~いま」
吐息のように挨拶を吐きだす。なんか眠たい、すぐ寝たい。
「おかえり、帰ってきたんだ」
返った声に少し驚く。慌ててそっちを見ると、瑠璃は一心に本を読んでいた。
「目、悪くするぞ」
電気をつける。薄暗かった部屋は一気に白さを増した。
「っ……」
瑠璃は腕で目を覆い、光を避けるようにソファーに顔をうずめる。
――多分まだ、光が苦手なんだろうな。
いつ帰ってきても、彼女が灯りをつけていたことは一度も無かった。
『闇が落ち着く』
その感覚は、多分今でも瑠璃の中に巣食っている。
――なんとかしてやれないかな。
そう考えてから、ゆっくりと首を振った。焦るな、時間をかけて少しずつだろ? 言い聞かせる。おれはいつも慌てすぎている。
そのまま、思考を振り払うようにして自室へ向かうが、途中で思いついてキッチンを覗いた。そこは使われた形跡が無く、ゴミ箱にはコンビニ弁当のゴミが数多く突っ込まれている。
「…………」
おれは何も言わずに自室へと向かった。
「瑠璃」
箸を進めながら呼びかけた。
「ん?」
返ってくるのは生返事。少女にとってはおれより野菜炒めのほうが重要なようだ。
――案外、大食漢だよなぁ。
小柄な身体に似合わず、彼女はよく食べる。既にコンビニ弁当を食べているらしいのに、俺の夕食である野菜炒めはどんどんと無くなっていった。
「なに?」
満足したのか、黒い瞳がこちらを向く。
「いや、料理を習うつもり無いかなって。今回みたいに、おれが長く家空けることもあるし、コンビニ弁当じゃバランス悪いしさ」
「いい、別に気にしないから。ごちそうさま」
彼女は、興味の欠片も見せないで立ち上がる。
「おやすみ」
自室へ向かうのは拒絶かな。せっかく久しぶりに帰ってきたんだし、もう少し気にしてくれても良いのに。おれを蔑ろにする態度に毎回、地味に心は傷ついていた。
「瑠璃、遊園地とかどっか出かけないか?」
引き止めるための悪あがき。
「行かない」
返ってきた鈴の音は、予想通りの答えを紡いだ。
0
あなたにおすすめの小説
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
【完結】親の理想は都合の良い令嬢~愛されることを諦めて毒親から逃げたら幸せになれました。後悔はしません。
涼石
恋愛
毒親の自覚がないオリスナ=クルード子爵とその妻マリア。
その長女アリシアは両親からの愛情に飢えていた。
親の都合に振り回され、親の決めた相手と結婚するが、これがクズな男で大失敗。
家族と離れて暮らすようになったアリシアの元に、死の間際だという父オリスナが書いた手紙が届く。
その手紙はアリシアを激怒させる。
書きたいものを心のままに書いた話です。
毒親に悩まされている人たちが、一日でも早く毒親と絶縁できますように。
本編終了しました。
本編に登場したエミリア視点で追加の話を書き終えました。
本編を補足した感じになってます。@全4話
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい
有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。
※食事の描写は普通の日本のお料理になっています
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる