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盈月
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「なんなんだよ、あいつ」
タケシは気味悪がるように吐き捨てた。イチロウの方を見ると、彼も無言の肯定を示している。
俺だって正直不気味だった。窓際奥の席を見やる。夕焼けに染まったそれは、主を模すように無機質に鎮座している。
俺らは、あの翌日から西山瑠璃をいじめた。色々やった。
教科書は全部落書きで埋め尽くしてやったし、上靴は泥水へと突っ込んだ。筆箱にムカデを詰め込んだこともあったし、弁当に消しカスをかけてやったことも、物を隠してやったことだってあった。
挙げきれないほどに多くの嫌がらせを仕掛けた。
それでもあいつは顔色ひとつ変えない。何が起こっても、普段と変わらずに日常を過していた。
感情を持っていないかのように、機械的に。
「あいつ、本当は人形なんじゃねぇか? 人間じゃねぇんだよ、きっと」
幽霊でも見たかのような表情で、太めの少年は言ってくる。怯えた声色は、暗に転校生をいじめることをやめようと訴えていた。
――こんなの、俺の願った展開じゃねぇ。
いじめをやめたがっている二人、ダメージの無い西山瑠璃。なんだか、あいつにいいようにあしらわれている気がした。あの、見下したような目がお前は負け犬だと言っているように思えた。
「はは……」
笑いが漏れる。タケシとイチロウは、気味悪がるような瞳を俺に向けてきた。
「上等じゃねぇか。壊してやるよ、その無表情を、服従させてやるよ」
なんだか笑いがこみ上げてくる。あの少女が泣きじゃくり、俺に許しを請う。そんな状況考えるだけで最高に愉快だ。
「もう躊躇わねぇ、泣いても許さねぇ。どんな手を使ってでも教え込んでやる。俺が上だって、お前が負け犬なんだって」
笑いながら呟く俺は多分狂ってる。でも、それでも俺はあいつを痛めつけたい、壊したい。
――やめるべきだ。そこまでするな。
理性の訴えはなんの効力も持たない。そのまま狂気が俺を飲み込んだ。
「明日が楽しみだな」
「なんなんだよ、あいつ」
タケシは気味悪がるように吐き捨てた。イチロウの方を見ると、彼も無言の肯定を示している。
俺だって正直不気味だった。窓際奥の席を見やる。夕焼けに染まったそれは、主を模すように無機質に鎮座している。
俺らは、あの翌日から西山瑠璃をいじめた。色々やった。
教科書は全部落書きで埋め尽くしてやったし、上靴は泥水へと突っ込んだ。筆箱にムカデを詰め込んだこともあったし、弁当に消しカスをかけてやったことも、物を隠してやったことだってあった。
挙げきれないほどに多くの嫌がらせを仕掛けた。
それでもあいつは顔色ひとつ変えない。何が起こっても、普段と変わらずに日常を過していた。
感情を持っていないかのように、機械的に。
「あいつ、本当は人形なんじゃねぇか? 人間じゃねぇんだよ、きっと」
幽霊でも見たかのような表情で、太めの少年は言ってくる。怯えた声色は、暗に転校生をいじめることをやめようと訴えていた。
――こんなの、俺の願った展開じゃねぇ。
いじめをやめたがっている二人、ダメージの無い西山瑠璃。なんだか、あいつにいいようにあしらわれている気がした。あの、見下したような目がお前は負け犬だと言っているように思えた。
「はは……」
笑いが漏れる。タケシとイチロウは、気味悪がるような瞳を俺に向けてきた。
「上等じゃねぇか。壊してやるよ、その無表情を、服従させてやるよ」
なんだか笑いがこみ上げてくる。あの少女が泣きじゃくり、俺に許しを請う。そんな状況考えるだけで最高に愉快だ。
「もう躊躇わねぇ、泣いても許さねぇ。どんな手を使ってでも教え込んでやる。俺が上だって、お前が負け犬なんだって」
笑いながら呟く俺は多分狂ってる。でも、それでも俺はあいつを痛めつけたい、壊したい。
――やめるべきだ。そこまでするな。
理性の訴えはなんの効力も持たない。そのまま狂気が俺を飲み込んだ。
「明日が楽しみだな」
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