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盈月
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しおりを挟む「なぁ、転校生、降伏するなら今だぜ」
翌日、太陽の光が届かない体育館裏、部活の声が遠くに聞こえるその場所に転校生を連れ出し、俺は彼女に詰め寄った。
「誰も助けに来ねぇぜ。泣いて謝れば許してやるぞ」
威圧するように、あと1センチ程の距離まで顔を近づける。それでも少女の瞳は俺を見ない。石ころでも見るように俺の姿を映さない。
「そうか、分かったよ」
少し残っていた、殴る前に降参して欲しいという気持ち、そこまでやってはいけないという理性が綺麗に消え去る。こいつは痛めつけるべきだ。
「タケシ、イチロウ、絶対離すなよ」
俺の指示に、二人は転校生の腕を拘束する手に力を込めて壁に押しつけた。
「覚悟しろ」
拳を握り、力強く腹へとそれを叩き込む。
「っ……」
鈍い手ごたえ、漏れる呻き。それは気分を高揚させた。
「ははっ」
気持ちに任せて脇腹、肩、脚、あらゆるところに拳をぶつけ、蹴りつけた脳の一部がぴりぴりとして、人を殴る感覚が興奮へとすり替わり、気持ちの高ぶりで暴力が更に強力になっていく。俺は今、こいつを支配している。俺の意思一つでこいつは傷ついていく。熱に浮かされたように意識が快感へと溺れていく。
「タケシ、イチロウ、もう押さえてなくていい。お前らも殴れ」
もっと傷つくのが見てぇ。生意気な瞳を屈服させてぇ。狂ったように身体は動く。少女に苦痛を与え、その肉体を壊すために。
「やれよ!」
躊躇っている奴らに怒鳴った。何やってんだよ。俺らは強者だろ? なら、逆らった罰を与えようぜ。こいつを壊そうぜ。
「ちくしょー」
「このっ」
タケシとイチロウは俺の声に触発されてヤケクソ気味にリンチに加わる。さっきまでより早く傷つく身体、滴り落ちる赤。
「ふふっ」
笑いを漏らして狂気の世界へと身を任せた。打撃音、呻き声、肉の感触……全てが強さの証明。俺は最強だ!
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