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盈月
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「はぁ、はぁ……」
息が切れて、腕も脚も全身が重い。どれだけリンチを続けたかは分からないが、気づいたら、俺は転校生を踏みつける格好で立っていた。俺らのやったことだけど、転校生の有様は酷かった。制服は所々擦り切れ、黒タイツは原型を成さず、砂と血とでグチャグチャになった身体に赤黒い痣が点在している。
「死んでねぇよな?」
オドオドとしたタケシの声が空気に溶け込み静かに広がった。それは俺らを我に返して不安を煽る。動かない少女、ハッキリとした暴力の感触。俺は一気に怖くなる。
「おい、転校生、 起きろ!」
足をよけ、身体を揺すった。生きていてくれ。祈りにも等しい思いが頭の中に溢れ出す。
「起きてる」
返ってきた起伏のない声。それに呼応するように彼女はゆっくりと立ち上がり、状態を確かめるように自分の身体を見回した。
ゾクッ
得体の知れない恐怖が全身を駆け巡った。転校生に変わったところは一つも無かった。流れるような動きも、晴れ上がった顔に浮かぶ無表情も。
――こいつ、本当に人間じゃねぇのか?
殴った感触は残っている。彼女は見るからに満身創痍。それでも、西山瑠璃は何事も無かったようにそこに佇んでいる。じわじわと畏れが心を蝕んでいく。背中を流れる汗は、動いたからだけじゃなく、冷たいものも混じっていた。
「怯える獣か」
突然、人形の口から呟くように言葉が洩れた。
ーー怯える……?
意味は分からない。でもそれは聞き捨てならない言葉。
「俺は、怯えてなんかいねぇ」
怒鳴る。馬鹿言うな、強者の俺が怯えるはずが無いだろ。
「目を逸らしてるだけ。あなたはいつも怯えてる」
それでも、静かな瞳は俺を見透かし、容赦なく核心に触れていく。
「うるせぇ!」
自分でも驚くほどの大声が出た。何も言うな、聞きたくねぇ。俺は、俺は――。
「まぁ別に、どうでもいいけど」
耳元で声がして、ひとつの影が脇をすり抜ける。熱くなった俺と対照的に冷たく、静かに……。
息が切れて、腕も脚も全身が重い。どれだけリンチを続けたかは分からないが、気づいたら、俺は転校生を踏みつける格好で立っていた。俺らのやったことだけど、転校生の有様は酷かった。制服は所々擦り切れ、黒タイツは原型を成さず、砂と血とでグチャグチャになった身体に赤黒い痣が点在している。
「死んでねぇよな?」
オドオドとしたタケシの声が空気に溶け込み静かに広がった。それは俺らを我に返して不安を煽る。動かない少女、ハッキリとした暴力の感触。俺は一気に怖くなる。
「おい、転校生、 起きろ!」
足をよけ、身体を揺すった。生きていてくれ。祈りにも等しい思いが頭の中に溢れ出す。
「起きてる」
返ってきた起伏のない声。それに呼応するように彼女はゆっくりと立ち上がり、状態を確かめるように自分の身体を見回した。
ゾクッ
得体の知れない恐怖が全身を駆け巡った。転校生に変わったところは一つも無かった。流れるような動きも、晴れ上がった顔に浮かぶ無表情も。
――こいつ、本当に人間じゃねぇのか?
殴った感触は残っている。彼女は見るからに満身創痍。それでも、西山瑠璃は何事も無かったようにそこに佇んでいる。じわじわと畏れが心を蝕んでいく。背中を流れる汗は、動いたからだけじゃなく、冷たいものも混じっていた。
「怯える獣か」
突然、人形の口から呟くように言葉が洩れた。
ーー怯える……?
意味は分からない。でもそれは聞き捨てならない言葉。
「俺は、怯えてなんかいねぇ」
怒鳴る。馬鹿言うな、強者の俺が怯えるはずが無いだろ。
「目を逸らしてるだけ。あなたはいつも怯えてる」
それでも、静かな瞳は俺を見透かし、容赦なく核心に触れていく。
「うるせぇ!」
自分でも驚くほどの大声が出た。何も言うな、聞きたくねぇ。俺は、俺は――。
「まぁ別に、どうでもいいけど」
耳元で声がして、ひとつの影が脇をすり抜ける。熱くなった俺と対照的に冷たく、静かに……。
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