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盈月
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『なんでなの。なんで巴ちゃんはあの子と居るの……? 巴ちゃんは沙羅の物なのに』
『落ち着きなって』
『巴ちゃんは沙羅の物じゃないから』
盗聴器の場所が良かったのか、彼女達の会話がイヤホンからダイレクトに聞こえてきた。
『殺したい』
『…………』
『…………』
ふざけたように流れていた笑い声が途絶える。顔は見えていないのに、その教室の様子ははっきりと想像できた。
きっと夕陽に染まる空間で、三人ともが狂気を孕んだ目をして彼女を殺す想像に興じている。彼女を殺した輝く未来の幻想を見ている。
『あれ? 安河内さん達勉強ーー』
『ひっ』
突然の第三者。ガタガタと机が乱れた。
『そんなに驚かなくても』
『……たま子先生』
『ど、どうしたんですか?』
『どうって、放課後に残って勉強してるなんて偉いな~って声かけたんだけど、そうでもなかったみたいね。その驚きようは、怪談でもしていたの?』
『そんな……ところです』
『やっぱり? わたしも若い頃はやったわ、そういうの。青春って感じよね。でも、そろそろ帰りなさい。遅くなると本当にお化けに会っちゃうかもしれないから』
そう言って担任の先生は去っていったらしい。彼女達も、言葉に従って帰り支度を始めだす。
そこで私は電源を切った。
「なるほど、瑠璃さんは予想以上に嫌われているようですね」
夜を飛ぶ少女を思い浮かべ、彼女の友人、篠崎巴との様子を思い出す。
「校務員としては、邪魔など入らずに巴さんと仲良く楽しく過ごしてもらいたいもんですがーー」
ポケットから、バッジを取り出して机に置く。二重丸の内側を黒く塗りつぶしたひどく質素な模様。
「団長はどう動くんでしょうね」
俗に"蛇の目"と呼ばれるそれを見つめて、私は彼女の今後に思いを馳せた。
『なんでなの。なんで巴ちゃんはあの子と居るの……? 巴ちゃんは沙羅の物なのに』
『落ち着きなって』
『巴ちゃんは沙羅の物じゃないから』
盗聴器の場所が良かったのか、彼女達の会話がイヤホンからダイレクトに聞こえてきた。
『殺したい』
『…………』
『…………』
ふざけたように流れていた笑い声が途絶える。顔は見えていないのに、その教室の様子ははっきりと想像できた。
きっと夕陽に染まる空間で、三人ともが狂気を孕んだ目をして彼女を殺す想像に興じている。彼女を殺した輝く未来の幻想を見ている。
『あれ? 安河内さん達勉強ーー』
『ひっ』
突然の第三者。ガタガタと机が乱れた。
『そんなに驚かなくても』
『……たま子先生』
『ど、どうしたんですか?』
『どうって、放課後に残って勉強してるなんて偉いな~って声かけたんだけど、そうでもなかったみたいね。その驚きようは、怪談でもしていたの?』
『そんな……ところです』
『やっぱり? わたしも若い頃はやったわ、そういうの。青春って感じよね。でも、そろそろ帰りなさい。遅くなると本当にお化けに会っちゃうかもしれないから』
そう言って担任の先生は去っていったらしい。彼女達も、言葉に従って帰り支度を始めだす。
そこで私は電源を切った。
「なるほど、瑠璃さんは予想以上に嫌われているようですね」
夜を飛ぶ少女を思い浮かべ、彼女の友人、篠崎巴との様子を思い出す。
「校務員としては、邪魔など入らずに巴さんと仲良く楽しく過ごしてもらいたいもんですがーー」
ポケットから、バッジを取り出して机に置く。二重丸の内側を黒く塗りつぶしたひどく質素な模様。
「団長はどう動くんでしょうね」
俗に"蛇の目"と呼ばれるそれを見つめて、私は彼女の今後に思いを馳せた。
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