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姉妹
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電話の向こうでスミ子はゆっくりと深呼吸をし、ゆっくりと話し始めた。
「姫花と舞花は、実は腹違いの姉妹でね」
「腹違い?」
訝る星児の声にスミ子は肩を竦めた。意を汲み、静かに話しを続ける。
「そうよ、星児。分かると思うけど、エミーは実の娘と血の繋がらない娘を姉妹として育てたの。姫花がエミーの実の子。舞花は、エミーの友人の子」
ちょっと待て、と星児は思考を整理する。
「腹違い、と言う事は〝種〟は一緒って事だろ」
「そうよ、どちらも父は一緒。エミーは、愛する男を寝取った親友の娘を、自分の娘として育てた」
押し黙る星児にスミ子は寂しそうに笑った。
「エミーも親友も、偶然にも同じ境遇の混血児だった。だから仲も良くなったんだろうけど。親友は、舞花を産んで直ぐに亡くなってしまって、エミーは悩み抜いた末に、舞花を引き取った。
母親二人が混血児だった事もあって、幸い娘達は本当の姉妹のように似ていたわ。周りは誰も、エミーの実の子じゃないなんて思わなかったでしょうね。まあ、エミーは忙しい人だったから、二人の面倒をみたのはほとんどあたしなんだけどね」
その頃、スミ子は町中で小さな美容院をやっていた。二人の姉妹はスミ子の店舗兼住宅で、幼少期のほとんどを過ごしたと言う。
「二人とも私にとってはそれはそれは可愛くて、大事に育ててきたのだけど、エミーはちょっと違った。側から見ると明らかに舞花ばかりを可愛がっていた。あの頃のエミーは、必死だったんでしょうね。実子ではない舞花に寂しい想いをさせまいと。
多分、姫花とは血の繋がりがある分態度で示さなくても愛が伝わると思っていたんだと思う。
でもそれは結局、姫花とエミーの母娘関係を修復不可能な状態まで拗らせる結果になってしまった」
スミ子は一つ息を吐き、気持ちを落ち着けてから続けた。
「これでせめて、姫花が舞花と同等の能力がある子なら良かったんだけど、何に於いても能力の差は歴然だった。舞花は何でも出来る子で、姫花は何をやってもダメな子だった」
星児はそれだけ聞いただけで、この話の先が見えたような気がした。耳に当てる受話器を握り直した。
「舞花は、一言えば十わかるような、打てば響くような子だった。でも姫花は」
スミ子はそこで一旦言葉に詰まったが、星児は黙って次を待った。
「可哀想なくらい、ドンくさい子だった。年が近かった分、姫花はいつも舞花と比べられて。肝心の母は、フォローするどころか舞花ばかりを褒める。特に、一緒にいられる時間が少ないとどうしたって褒める対象にばかり目がいくものだしね。余計に」
スミ子は、でもね、と続ける。
「ここだけの話、あたしは姫花の方が可愛かったな。卑屈な態度なんて一度も見せた事なくていつもニコニコしてて、あたしにベッタリで、ホントに可愛かった」
星児はみちるを想う。
実の母が姫花。育ての母が舞花。
みちるは、母親似だ。間違いなく。
「そんな姫花も成長すれば恋もするし失恋もする。いつもあたしに報告してくれた。でも、どの恋も舞花の影から逃れられなかったのね。高校に入ったばかりで初めてお付き合いしたコは、実は舞花が好きだった、とかね。
そんなのばかり。
それで、さすがの姫花もすっかり自分を失いかけてたから、あたしが思い切って東京から出て、舞花から離れなさいって言った。
それであのコが見つけてきた新しい世界、っていうのが、京都の花街だったのよ」
星児は姫花が舞妓になった経緯を推察する事が出来た。
京の花街は、舞妓志望であっても家出少女など門前払いだ。身元のしっかりした紹介のある娘しか受け入れない。
スミ子が多少なりの人脈を持つ事を、星児は知っている。過去に幾度かスミ子の人脈にあやかった事があったのだ。
恐らく、母親であるあのエミコママとケンカ別れでもしたのだろう。姫花は母娘関係を断ち切ってスミ子の伝で祇園に行った。
「姫花は祇園で、全てから解放されたみたいに生き生きしてたみたい。あたしにはいつもお手紙くれて、大変でも楽しくて仕方ないって言ってたわ。
姫花を祇園に送り出して良かったと思ってたのよ、あの頃までは」
スミ子の声のトーンが急激に落ちた。
「あの頃まで?」
受話器を持つ星児は、身構える。
「ある男と恋に落ちて、初めて舞花の変わりではなく、自分自身が愛される幸せに酔いしれていた姫花は、その男によって絶望の淵に落とされた」
星児は目を閉じ眉根を寄せた。
瞼の裏に一人の男が浮かぶ。
ある男。それが群司いや、津田武だ。
星児が御幸に聞かされていた真実は、二つだ。
津田武は姫花が自分の子を身籠っていた事を知らない事。
姫花が敢えてそれ知らせなかった事。
姫花は産むべきか、産まぬべきか、をギリギリまで悩み、結局、臨月の時に交通事故に遭い、お腹の赤ん坊だけ助かった。
でもよ、と星児は御幸の話を隅々まで回顧する。
津田武が姫花を愛していた、という事実は聞いてない。
「その、相手の男は姫花を愛していた?」
「確かにそうだった期間もあるはず。姫花がくれた手紙は幸せに溢れていたから。でも」
スミ子は、違った、と低い声で言った。
「何の因果か知らないけれど、その男は舞花の知り合いだった。舞花に横恋慕していたヤツだった」
ギリと奥歯を噛み締める気配が受話器から伝わってきた。
「その男はきっと、姫花に言ってはいけない言葉を言ったんだわ」
スミ子の耳が今でも覚えてる、鮮明に声色までも思い出せる電話の向こうから聞こえた姫花の最期の言葉があった。
『うちは舞花大好きやのに。なんで神様はうちにこない意地悪すんねやろ。うちはうちでいたいだけやのに。何でうちは、影なんやろ』
†††
「星児さん?」
自宅マンションの玄関の空間に衣擦れの音が響く。
帰宅した星児は玄関のドアが閉まるなり、出迎えたみちるを抱き締め、その存在を、感触を確かめるように腕に力を込め胸に押しつけた。腕の中でみちるは星児の名を呼んでいた。
前にもこんな事あった?
みちるがそっと星児の背に両腕を回そうとした時。フッと力強い腕が緩み、互いの顔が見えた。
星児の右手が、みちるの頬に添えられる。静かに上を向かせ、星児はキスをした。
「……ん……」
星児のキスはいつも激しさと甘さが同居し、痺れさせる。しかし、今夜のキスは少し違う気がした。
包み込み、優しくいたわるようなキスは、保と重なる。絡まる舌が柔らかに掬い上げ吸われた唇がゆっくりと離された。
「どうしたの?」
真っ直ぐな澄んだ瞳が星児を見上げた。
「みちるが、生きてると思ってさ」
「?? 星児さん? 今夜は変ですよ?」
みちるの言葉にハハハと星児は笑い、ガバッと横抱きに抱え上げた。
「星児さん!」
「ベッドに直行!」
「えぇっ?」
愛しているとかいないとか。言葉にしてしまったら全てが薄っぺらなものになってしまう。運命だ、とかそんな陳腐な表現だってしたくない。
「せ……っあ! ん……ん」
躰を隈無く愛撫する手に、みちるは溺れる。
優しいキスから一変。
「ひぁ……っ! や……っ」
ビクッと震え、星児の胸に手を突き逃れる体勢に入ったみちるは捕まえられた。星児が耳元で甘く囁く。
「逃がさねーよ」
「ああ……っ!」
全身に行き渡る媚薬にみちるは理性という意識を手放す。
「星児さん……っ!」
細い腕が星児の首に絡まり、自らその唇を求めた―。
肩で息をするみちるを胸に抱く星児は、優しくその唇にキスをした。
互いの湿る肌が触れ合う感触は、いつも心に高揚感を与える。息を切らせるみちるが言う。
「休憩です……」
「だめ」
「えぇ? ……あっ」
星児がみちるの両腕を掴んだ。
「星児さ……っ!」
白い躰が舞う。
普通の女の幸せを掴ませなければいけない。その為には、俺達の傍にいつまでもいては、いけない!
星児は、白い肌の隅々まで口付けをした。
グッタリとうつ伏せになったみちるからは寝息が聞こえた。
みちるの傍で、星児は煙草をくわえ、反対の手でみちるの艶やかな黒い髪をそっと撫でる。
星児はスミ子に姫花の妊娠を知っていたかそれとなく聞いたが、詳しい事情は聞かされていなかったようだった。
スミ子は、芸舞妓の置屋であるお茶屋のおかあさんに、姫花の事は後見人である自分ではなく母親であるエミコに報告してあげてくれ、と頼んでいたという。
姫花が妊娠の事実を話したのは、御幸だけか? 最期まで芸妓として生きたらしいからな。
〝お茶屋のおかあさん〟とやらも知っているだろう。
じゃあ、エミコママもか?
灰皿を取った星児は大して吸っていない煙草を揉み消した。
やはり、御幸か。
ベッドから下りた星児が、部屋から出ていこうとした時だった。
「行かないで……」
小さな声に振り向いた。
「みちる……?」
「星児さん、何処か行っちゃうんでしょ?」
今は午前0時。みちるは今夜は休みだった。
一人で夜を過ごせるようにはなっていたが、肌を重ね触れ合ってしまった夜は、もう一人にはなれない。
余韻を残す躰に襲いかかる急激な寂しさは、必要以上に胸を締め付ける。
「何処もいかねーよ」
もう一度みちるの傍に来た星児は、優しく抱き締めキスをした。
星児さん。
そっと唇を離し、みちるはその胸に顔を埋め、目を閉じた。
「じゃ、シャワー、一緒に」
「浴びません」
†
「姫花と舞花は、実は腹違いの姉妹でね」
「腹違い?」
訝る星児の声にスミ子は肩を竦めた。意を汲み、静かに話しを続ける。
「そうよ、星児。分かると思うけど、エミーは実の娘と血の繋がらない娘を姉妹として育てたの。姫花がエミーの実の子。舞花は、エミーの友人の子」
ちょっと待て、と星児は思考を整理する。
「腹違い、と言う事は〝種〟は一緒って事だろ」
「そうよ、どちらも父は一緒。エミーは、愛する男を寝取った親友の娘を、自分の娘として育てた」
押し黙る星児にスミ子は寂しそうに笑った。
「エミーも親友も、偶然にも同じ境遇の混血児だった。だから仲も良くなったんだろうけど。親友は、舞花を産んで直ぐに亡くなってしまって、エミーは悩み抜いた末に、舞花を引き取った。
母親二人が混血児だった事もあって、幸い娘達は本当の姉妹のように似ていたわ。周りは誰も、エミーの実の子じゃないなんて思わなかったでしょうね。まあ、エミーは忙しい人だったから、二人の面倒をみたのはほとんどあたしなんだけどね」
その頃、スミ子は町中で小さな美容院をやっていた。二人の姉妹はスミ子の店舗兼住宅で、幼少期のほとんどを過ごしたと言う。
「二人とも私にとってはそれはそれは可愛くて、大事に育ててきたのだけど、エミーはちょっと違った。側から見ると明らかに舞花ばかりを可愛がっていた。あの頃のエミーは、必死だったんでしょうね。実子ではない舞花に寂しい想いをさせまいと。
多分、姫花とは血の繋がりがある分態度で示さなくても愛が伝わると思っていたんだと思う。
でもそれは結局、姫花とエミーの母娘関係を修復不可能な状態まで拗らせる結果になってしまった」
スミ子は一つ息を吐き、気持ちを落ち着けてから続けた。
「これでせめて、姫花が舞花と同等の能力がある子なら良かったんだけど、何に於いても能力の差は歴然だった。舞花は何でも出来る子で、姫花は何をやってもダメな子だった」
星児はそれだけ聞いただけで、この話の先が見えたような気がした。耳に当てる受話器を握り直した。
「舞花は、一言えば十わかるような、打てば響くような子だった。でも姫花は」
スミ子はそこで一旦言葉に詰まったが、星児は黙って次を待った。
「可哀想なくらい、ドンくさい子だった。年が近かった分、姫花はいつも舞花と比べられて。肝心の母は、フォローするどころか舞花ばかりを褒める。特に、一緒にいられる時間が少ないとどうしたって褒める対象にばかり目がいくものだしね。余計に」
スミ子は、でもね、と続ける。
「ここだけの話、あたしは姫花の方が可愛かったな。卑屈な態度なんて一度も見せた事なくていつもニコニコしてて、あたしにベッタリで、ホントに可愛かった」
星児はみちるを想う。
実の母が姫花。育ての母が舞花。
みちるは、母親似だ。間違いなく。
「そんな姫花も成長すれば恋もするし失恋もする。いつもあたしに報告してくれた。でも、どの恋も舞花の影から逃れられなかったのね。高校に入ったばかりで初めてお付き合いしたコは、実は舞花が好きだった、とかね。
そんなのばかり。
それで、さすがの姫花もすっかり自分を失いかけてたから、あたしが思い切って東京から出て、舞花から離れなさいって言った。
それであのコが見つけてきた新しい世界、っていうのが、京都の花街だったのよ」
星児は姫花が舞妓になった経緯を推察する事が出来た。
京の花街は、舞妓志望であっても家出少女など門前払いだ。身元のしっかりした紹介のある娘しか受け入れない。
スミ子が多少なりの人脈を持つ事を、星児は知っている。過去に幾度かスミ子の人脈にあやかった事があったのだ。
恐らく、母親であるあのエミコママとケンカ別れでもしたのだろう。姫花は母娘関係を断ち切ってスミ子の伝で祇園に行った。
「姫花は祇園で、全てから解放されたみたいに生き生きしてたみたい。あたしにはいつもお手紙くれて、大変でも楽しくて仕方ないって言ってたわ。
姫花を祇園に送り出して良かったと思ってたのよ、あの頃までは」
スミ子の声のトーンが急激に落ちた。
「あの頃まで?」
受話器を持つ星児は、身構える。
「ある男と恋に落ちて、初めて舞花の変わりではなく、自分自身が愛される幸せに酔いしれていた姫花は、その男によって絶望の淵に落とされた」
星児は目を閉じ眉根を寄せた。
瞼の裏に一人の男が浮かぶ。
ある男。それが群司いや、津田武だ。
星児が御幸に聞かされていた真実は、二つだ。
津田武は姫花が自分の子を身籠っていた事を知らない事。
姫花が敢えてそれ知らせなかった事。
姫花は産むべきか、産まぬべきか、をギリギリまで悩み、結局、臨月の時に交通事故に遭い、お腹の赤ん坊だけ助かった。
でもよ、と星児は御幸の話を隅々まで回顧する。
津田武が姫花を愛していた、という事実は聞いてない。
「その、相手の男は姫花を愛していた?」
「確かにそうだった期間もあるはず。姫花がくれた手紙は幸せに溢れていたから。でも」
スミ子は、違った、と低い声で言った。
「何の因果か知らないけれど、その男は舞花の知り合いだった。舞花に横恋慕していたヤツだった」
ギリと奥歯を噛み締める気配が受話器から伝わってきた。
「その男はきっと、姫花に言ってはいけない言葉を言ったんだわ」
スミ子の耳が今でも覚えてる、鮮明に声色までも思い出せる電話の向こうから聞こえた姫花の最期の言葉があった。
『うちは舞花大好きやのに。なんで神様はうちにこない意地悪すんねやろ。うちはうちでいたいだけやのに。何でうちは、影なんやろ』
†††
「星児さん?」
自宅マンションの玄関の空間に衣擦れの音が響く。
帰宅した星児は玄関のドアが閉まるなり、出迎えたみちるを抱き締め、その存在を、感触を確かめるように腕に力を込め胸に押しつけた。腕の中でみちるは星児の名を呼んでいた。
前にもこんな事あった?
みちるがそっと星児の背に両腕を回そうとした時。フッと力強い腕が緩み、互いの顔が見えた。
星児の右手が、みちるの頬に添えられる。静かに上を向かせ、星児はキスをした。
「……ん……」
星児のキスはいつも激しさと甘さが同居し、痺れさせる。しかし、今夜のキスは少し違う気がした。
包み込み、優しくいたわるようなキスは、保と重なる。絡まる舌が柔らかに掬い上げ吸われた唇がゆっくりと離された。
「どうしたの?」
真っ直ぐな澄んだ瞳が星児を見上げた。
「みちるが、生きてると思ってさ」
「?? 星児さん? 今夜は変ですよ?」
みちるの言葉にハハハと星児は笑い、ガバッと横抱きに抱え上げた。
「星児さん!」
「ベッドに直行!」
「えぇっ?」
愛しているとかいないとか。言葉にしてしまったら全てが薄っぺらなものになってしまう。運命だ、とかそんな陳腐な表現だってしたくない。
「せ……っあ! ん……ん」
躰を隈無く愛撫する手に、みちるは溺れる。
優しいキスから一変。
「ひぁ……っ! や……っ」
ビクッと震え、星児の胸に手を突き逃れる体勢に入ったみちるは捕まえられた。星児が耳元で甘く囁く。
「逃がさねーよ」
「ああ……っ!」
全身に行き渡る媚薬にみちるは理性という意識を手放す。
「星児さん……っ!」
細い腕が星児の首に絡まり、自らその唇を求めた―。
肩で息をするみちるを胸に抱く星児は、優しくその唇にキスをした。
互いの湿る肌が触れ合う感触は、いつも心に高揚感を与える。息を切らせるみちるが言う。
「休憩です……」
「だめ」
「えぇ? ……あっ」
星児がみちるの両腕を掴んだ。
「星児さ……っ!」
白い躰が舞う。
普通の女の幸せを掴ませなければいけない。その為には、俺達の傍にいつまでもいては、いけない!
星児は、白い肌の隅々まで口付けをした。
グッタリとうつ伏せになったみちるからは寝息が聞こえた。
みちるの傍で、星児は煙草をくわえ、反対の手でみちるの艶やかな黒い髪をそっと撫でる。
星児はスミ子に姫花の妊娠を知っていたかそれとなく聞いたが、詳しい事情は聞かされていなかったようだった。
スミ子は、芸舞妓の置屋であるお茶屋のおかあさんに、姫花の事は後見人である自分ではなく母親であるエミコに報告してあげてくれ、と頼んでいたという。
姫花が妊娠の事実を話したのは、御幸だけか? 最期まで芸妓として生きたらしいからな。
〝お茶屋のおかあさん〟とやらも知っているだろう。
じゃあ、エミコママもか?
灰皿を取った星児は大して吸っていない煙草を揉み消した。
やはり、御幸か。
ベッドから下りた星児が、部屋から出ていこうとした時だった。
「行かないで……」
小さな声に振り向いた。
「みちる……?」
「星児さん、何処か行っちゃうんでしょ?」
今は午前0時。みちるは今夜は休みだった。
一人で夜を過ごせるようにはなっていたが、肌を重ね触れ合ってしまった夜は、もう一人にはなれない。
余韻を残す躰に襲いかかる急激な寂しさは、必要以上に胸を締め付ける。
「何処もいかねーよ」
もう一度みちるの傍に来た星児は、優しく抱き締めキスをした。
星児さん。
そっと唇を離し、みちるはその胸に顔を埋め、目を閉じた。
「じゃ、シャワー、一緒に」
「浴びません」
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