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慟哭
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甘く優しく名を呼ぶ声は、何処か切なく懐かしい、私の潜在に眠るもの。
*
デジャヴ? ううん、前にもあった、こんな事。
私、何処に来ちゃったの。
みちるの目の前に拡がるのは、雨に濡れ光るネオンの街だった。ただ、よく知るあの街とは違う街。
眠らぬ街をきらびやかに偽る虚飾と欲望の巣窟。周囲からは耳に馴染みの無い言語が時折聞こえていた。
†
「なにやってんだっ、バカ野郎っ!」
龍吾は耳に当てていた携帯を三十センチ程離し、顔をしかめた。
「てめえっ、聞いてんのかっ!?」
初めて聞く保の怒声だった。龍吾は、大きなヘマをやらかしたのだ。
龍吾は、少々やんちゃな、まだ幼い少年だった。何かやらかす度に星児に殴り飛ばされ、都度、保がいつもフォローしてきた。しかし今回は違った。
「今星児は昼間にあった事故の情報収集に走り回ってていねぇんだよ! もしこの事が星児の耳に入ったらお前、確実に東京湾に沈められるぞ!」
その前に保に殺されそうだ。恐ろしい剣幕で捲し立てる声を聞きながら携帯を持つ龍吾は身を固くし、声も出せなかった。
「いいか、俺も今からそっちに行く! お前はこれから死ぬ気で探せ! みちるはその辺りの地理はからっきしなんだよっ!」
〝みちるは〟の先を言う保の声に悲痛な響きが混ざり合い、龍吾の胸がズキンと痛んだ。初めて、自分がどれだけ重大な失態を犯したか、気付かされた。
「みちるに何かあったら、俺がテメーを沈めてやる!」
返答も待たずにブッと電話が切れた。ツーツーという音が聞こえる携帯を持った龍吾背筋がヒヤリと冷たくなる。
保の言葉を恐れた訳ではない。
みちるさんはこの辺りを全く知らない? マジでやべぇよ、みちるさん!
劇場の事務所を飛び出した龍吾は雨降るネオンの街に出た。
龍吾はみちるの迎えをよく頼まれてはいたが、決められた時間に間に合わない事が最近は度々あった。
〝剣崎星児〟というバックボーンを持つ龍吾は、夜の街でもある程度の事がまかり通った。
星児と保は、龍吾の行為を暴走と見て取った場合にはお灸を据えたが、彼等の中の基準に於いて一定の水準までは大目にみていた。この世界で生きて行く為の、凌ぎでもある、と捉えていたからだ。
しかし、目の届かない部分もあった。
みちるの優しさに甘えるように、龍吾は迎えの時間にルーズになっていった。
『龍吾君はまだ十五歳だもんね。ホントは同じ歳くらいのコはみんな遊んでるよね。なのに私の送り迎え、ちゃんと来てくれるんだもん。君はエライよ!』
眩しい笑顔を見せたみちるは『いつもありがとう』と言い、いたずらっぽく肩を竦めた。
『星児さんや保さんには内緒にしようね』
龍吾は今夜も、甘えてしまったのだ。
ゲームセンターで悪友たちとスロットに興じて時間を費やし、気付けば移動時間を考えると到底間に合わない時刻になっていた。
慌ててみちるのポケベルを鳴らすと、直ぐに携帯に電話があった。みちるはいつもの優しい声で笑っていた。
『今から着替えるから、そんなに急がなくて大丈夫だよ。事務所で待ってるね。気を付けて来るんだよ。ケンカしちゃダメだよ』
まるでお母さんだ、と電話を切りながら苦笑いした、のに。
劇場の事務所にみちるはいなかった。
踊り子達は殆どが帰ってしまった後で劇場は静まり返り、事務所には誰かと電話で話しをする支配人とパソコンで売上の集計をする経理の男しかいなかった。
二人は口を揃えて、みちるは踊り子達と一緒に帰ったんじゃないかな、と言っていたが、龍吾は、それはない、と思った。
みちるさんはここに気を許せるような、一緒に帰るような友人はいない。
夜の街で、必死にみちるを探しながら走る龍吾の脳裏に支配人の言葉が甦った。
『この辺は最近外国人が増えて治安悪いからさ、踊り子達には必ず一人で帰るな、って言ってるんだ』
支配人の言葉を裏付けるように街中には国籍の分からない男達が、所々でたむろしていた。
みちるさん、何処行ったんだよ!
バクバクと鳴り響く鼓動は治まるところを知らない。雨の中、空気は湿り気を帯びているのに龍吾の喉はカラカラに乾いていく。
頭に思い浮かぶ最悪なケースを必死に振り払いながら龍吾はみちるの姿を求めて走り回った。
それは、一時間程前の事だった。
劇場の楽屋で龍吾との電話を切ったみちるは着替えを済ませ、事務所の前の廊下に立っていた。
ポケベルを確認したが、龍吾からはあの後何の受信も無い。
着替える前に話した電話では、龍吾の背後からは、何処にいるか容易に想像できる騒々しい音響と彼の名を呼ぶ少年や少女達の声が聞こえていた。
必ずここには来るが、到着まではかなりの時間が掛かるだろう。
私は甘過ぎるのかな。みちるは小さなため息をついた。
けれど、自分の為に時間を割いてくれているまだ幼い少年に、強く言う気にはなれなかった。
龍吾君は、龍吾君なりにがんばっているんだから。
終演後の喧騒の中でドアが開けっ放しになっていた事務所の中で点いていたテレビから流れるニュースを、みちるはぼんやりと眺めていた。
昼間首都高で起きた大きな事故が大々的に報じられていた。みちるの目が、そのニュースのテロップに釘付けになる。
え?
死亡した被害者の名前の中に、大事な人の名前が出てきたのだ。
みちるにとって、自分の過去を辿る唯一のキーパーソン。父親の温もりの記憶を呼び覚ましてくれるその人。
うそ。嘘でしょ? 嘘だよね? 右京さん!
〝津田商事専務取締役・御幸右京さん〟、という文字が確かに見えた。
強い力で潰されるような不安に呑み込まれてゆくみちるは胸に息苦しさを覚えた。真っ白になっていく頭ではニュースから流れる言葉の意味が理解できない。
何が、起きてるの?
脳裏に浮かぶ、甘く柔らかな御幸の笑顔。優しく抱き締めてくれた感触が昨日の事のように思い出せた。彼が、この世から消えるなど。
身を乗り出してそのニュースを観ていたみちるの背後から、冷水を掛けるような言葉が聞こえた。
「みちるちゃんは今夜もお迎え待ってるー」
「一人で帰れないなんて、おいくつ? ってゆーか、何様?」
「アハハ! 女王様じゃん? だってぇ、最近はむちゃくちゃカワイイ超イケメン少年がお迎え来るしぃ」
後ろを通り過ぎる踊り子達の聞こえよがしの言葉に、クスクス笑いが混じる。ゾクリとするような冷たい笑いだった。
衝撃の事実はみちるの中に落とされた火種となり、燻り始めていた何かは、追い討ちをかけるような心無い言葉によって弾けてしまった。
唇を噛み締め、拳を握る。今、この瞬間にも足元から崩れてしまいそうな自分を支えてくれる者は、ここには一人もいない。
もう、こんなとこにはいたくない!
締め上げられるような痛みに堪えきれず、みちるは溢れ出した涙をグッと手で拭いそこから逃げ出した。
背後からケラケラという意地の悪い笑い声を聞いた気がしたが、振り向く事なく劇場の外へ走り出していた。
雨のネオン街は、みちるを呑み込むように口を開けていた。
降りしきる雨は、コートを透して身体の芯まで濡らしていく。にわかには信じられない事実は、朦朧とした意識の下で靄に包まれたように揺れていた。
私が見たのは間違いだったんだよね?
時間が経つにつれ現実味が薄れ、あれは幻、とみちるは自分の意識に言い聞かせた。
我に返り、そこが知らぬ場所である事に気付いた。
フラフラと歩くみちるは前髪から滴る滴を手で払う。眩しい明かりは、真夜中にも関わらず賑やかな街を彩り濡れる地面に反射していた。
みちるの中の、彷徨い歩いた夜の記憶がビジョンとなって蘇る。
デジャヴじゃない。私はこうやって、宛てもなく歩いてた。あの時は、生きるのに必死で、何故自分には誰もいないのか、なんて考えた事はなかったけれど。
今は、私は何処から来た何者なのか、ばかり考えてる。右京さん、教えて。
みちるの中にフワリと浮かんだ御幸の姿は、あのニュースを否定しようと湧き起こる意識に阻まれ、霧がかかったようなぼんやりとしたものになってしまった。
立ち止まり思い巡らすみちるの脳裏に、雨降るネオンの街を彷徨い歩いた夜、巡り会えた二人の姿が鮮明に蘇った。
今、自分がここにいて、生きている事。鼓動を肌で、身体で教えてくれる二人。みちるの心が彼等を呼ぶ。
星児さん、保さん!
急激な心細さと寂しさに襲われみちるはハッとした。
いけない、龍吾君!
慌てて辺りを見回したみちるの顔に、フッと影が出来た。不穏な気配に顔を上げると、知らぬ間に、数人の男に囲まれていた。
どの顔も、日本人でもアジア系の造作でも無かった。
眉が太く濃い顔立ちは、みちるには全て同じ顔に見え、彼等が話す聞き取れない言葉に言い知れない恐怖を感じた。
「ヒトリダケ、カ?」
片言の日本語を話す一際濃い顔をした色の黒い男がみちるの腕を掴む。息を吸い込むだけで精一杯のみちるは瞬きも出来ずに身体を強張らせた。
全身を呑み込む恐怖は、声を失わせ心臓の激しい鼓動だけが頭の中で鳴り響く。足が竦み、逃げ出す事も出来ないみちるが身を固くした時だった。
「Hi!」
よく通るハスキーボイスが辺りに響いた。男達が視線を向けた先にみちるも顔を向けると、スラリと背の高いモデルのような女が立っていた。
*
デジャヴ? ううん、前にもあった、こんな事。
私、何処に来ちゃったの。
みちるの目の前に拡がるのは、雨に濡れ光るネオンの街だった。ただ、よく知るあの街とは違う街。
眠らぬ街をきらびやかに偽る虚飾と欲望の巣窟。周囲からは耳に馴染みの無い言語が時折聞こえていた。
†
「なにやってんだっ、バカ野郎っ!」
龍吾は耳に当てていた携帯を三十センチ程離し、顔をしかめた。
「てめえっ、聞いてんのかっ!?」
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龍吾は、少々やんちゃな、まだ幼い少年だった。何かやらかす度に星児に殴り飛ばされ、都度、保がいつもフォローしてきた。しかし今回は違った。
「今星児は昼間にあった事故の情報収集に走り回ってていねぇんだよ! もしこの事が星児の耳に入ったらお前、確実に東京湾に沈められるぞ!」
その前に保に殺されそうだ。恐ろしい剣幕で捲し立てる声を聞きながら携帯を持つ龍吾は身を固くし、声も出せなかった。
「いいか、俺も今からそっちに行く! お前はこれから死ぬ気で探せ! みちるはその辺りの地理はからっきしなんだよっ!」
〝みちるは〟の先を言う保の声に悲痛な響きが混ざり合い、龍吾の胸がズキンと痛んだ。初めて、自分がどれだけ重大な失態を犯したか、気付かされた。
「みちるに何かあったら、俺がテメーを沈めてやる!」
返答も待たずにブッと電話が切れた。ツーツーという音が聞こえる携帯を持った龍吾背筋がヒヤリと冷たくなる。
保の言葉を恐れた訳ではない。
みちるさんはこの辺りを全く知らない? マジでやべぇよ、みちるさん!
劇場の事務所を飛び出した龍吾は雨降るネオンの街に出た。
龍吾はみちるの迎えをよく頼まれてはいたが、決められた時間に間に合わない事が最近は度々あった。
〝剣崎星児〟というバックボーンを持つ龍吾は、夜の街でもある程度の事がまかり通った。
星児と保は、龍吾の行為を暴走と見て取った場合にはお灸を据えたが、彼等の中の基準に於いて一定の水準までは大目にみていた。この世界で生きて行く為の、凌ぎでもある、と捉えていたからだ。
しかし、目の届かない部分もあった。
みちるの優しさに甘えるように、龍吾は迎えの時間にルーズになっていった。
『龍吾君はまだ十五歳だもんね。ホントは同じ歳くらいのコはみんな遊んでるよね。なのに私の送り迎え、ちゃんと来てくれるんだもん。君はエライよ!』
眩しい笑顔を見せたみちるは『いつもありがとう』と言い、いたずらっぽく肩を竦めた。
『星児さんや保さんには内緒にしようね』
龍吾は今夜も、甘えてしまったのだ。
ゲームセンターで悪友たちとスロットに興じて時間を費やし、気付けば移動時間を考えると到底間に合わない時刻になっていた。
慌ててみちるのポケベルを鳴らすと、直ぐに携帯に電話があった。みちるはいつもの優しい声で笑っていた。
『今から着替えるから、そんなに急がなくて大丈夫だよ。事務所で待ってるね。気を付けて来るんだよ。ケンカしちゃダメだよ』
まるでお母さんだ、と電話を切りながら苦笑いした、のに。
劇場の事務所にみちるはいなかった。
踊り子達は殆どが帰ってしまった後で劇場は静まり返り、事務所には誰かと電話で話しをする支配人とパソコンで売上の集計をする経理の男しかいなかった。
二人は口を揃えて、みちるは踊り子達と一緒に帰ったんじゃないかな、と言っていたが、龍吾は、それはない、と思った。
みちるさんはここに気を許せるような、一緒に帰るような友人はいない。
夜の街で、必死にみちるを探しながら走る龍吾の脳裏に支配人の言葉が甦った。
『この辺は最近外国人が増えて治安悪いからさ、踊り子達には必ず一人で帰るな、って言ってるんだ』
支配人の言葉を裏付けるように街中には国籍の分からない男達が、所々でたむろしていた。
みちるさん、何処行ったんだよ!
バクバクと鳴り響く鼓動は治まるところを知らない。雨の中、空気は湿り気を帯びているのに龍吾の喉はカラカラに乾いていく。
頭に思い浮かぶ最悪なケースを必死に振り払いながら龍吾はみちるの姿を求めて走り回った。
それは、一時間程前の事だった。
劇場の楽屋で龍吾との電話を切ったみちるは着替えを済ませ、事務所の前の廊下に立っていた。
ポケベルを確認したが、龍吾からはあの後何の受信も無い。
着替える前に話した電話では、龍吾の背後からは、何処にいるか容易に想像できる騒々しい音響と彼の名を呼ぶ少年や少女達の声が聞こえていた。
必ずここには来るが、到着まではかなりの時間が掛かるだろう。
私は甘過ぎるのかな。みちるは小さなため息をついた。
けれど、自分の為に時間を割いてくれているまだ幼い少年に、強く言う気にはなれなかった。
龍吾君は、龍吾君なりにがんばっているんだから。
終演後の喧騒の中でドアが開けっ放しになっていた事務所の中で点いていたテレビから流れるニュースを、みちるはぼんやりと眺めていた。
昼間首都高で起きた大きな事故が大々的に報じられていた。みちるの目が、そのニュースのテロップに釘付けになる。
え?
死亡した被害者の名前の中に、大事な人の名前が出てきたのだ。
みちるにとって、自分の過去を辿る唯一のキーパーソン。父親の温もりの記憶を呼び覚ましてくれるその人。
うそ。嘘でしょ? 嘘だよね? 右京さん!
〝津田商事専務取締役・御幸右京さん〟、という文字が確かに見えた。
強い力で潰されるような不安に呑み込まれてゆくみちるは胸に息苦しさを覚えた。真っ白になっていく頭ではニュースから流れる言葉の意味が理解できない。
何が、起きてるの?
脳裏に浮かぶ、甘く柔らかな御幸の笑顔。優しく抱き締めてくれた感触が昨日の事のように思い出せた。彼が、この世から消えるなど。
身を乗り出してそのニュースを観ていたみちるの背後から、冷水を掛けるような言葉が聞こえた。
「みちるちゃんは今夜もお迎え待ってるー」
「一人で帰れないなんて、おいくつ? ってゆーか、何様?」
「アハハ! 女王様じゃん? だってぇ、最近はむちゃくちゃカワイイ超イケメン少年がお迎え来るしぃ」
後ろを通り過ぎる踊り子達の聞こえよがしの言葉に、クスクス笑いが混じる。ゾクリとするような冷たい笑いだった。
衝撃の事実はみちるの中に落とされた火種となり、燻り始めていた何かは、追い討ちをかけるような心無い言葉によって弾けてしまった。
唇を噛み締め、拳を握る。今、この瞬間にも足元から崩れてしまいそうな自分を支えてくれる者は、ここには一人もいない。
もう、こんなとこにはいたくない!
締め上げられるような痛みに堪えきれず、みちるは溢れ出した涙をグッと手で拭いそこから逃げ出した。
背後からケラケラという意地の悪い笑い声を聞いた気がしたが、振り向く事なく劇場の外へ走り出していた。
雨のネオン街は、みちるを呑み込むように口を開けていた。
降りしきる雨は、コートを透して身体の芯まで濡らしていく。にわかには信じられない事実は、朦朧とした意識の下で靄に包まれたように揺れていた。
私が見たのは間違いだったんだよね?
時間が経つにつれ現実味が薄れ、あれは幻、とみちるは自分の意識に言い聞かせた。
我に返り、そこが知らぬ場所である事に気付いた。
フラフラと歩くみちるは前髪から滴る滴を手で払う。眩しい明かりは、真夜中にも関わらず賑やかな街を彩り濡れる地面に反射していた。
みちるの中の、彷徨い歩いた夜の記憶がビジョンとなって蘇る。
デジャヴじゃない。私はこうやって、宛てもなく歩いてた。あの時は、生きるのに必死で、何故自分には誰もいないのか、なんて考えた事はなかったけれど。
今は、私は何処から来た何者なのか、ばかり考えてる。右京さん、教えて。
みちるの中にフワリと浮かんだ御幸の姿は、あのニュースを否定しようと湧き起こる意識に阻まれ、霧がかかったようなぼんやりとしたものになってしまった。
立ち止まり思い巡らすみちるの脳裏に、雨降るネオンの街を彷徨い歩いた夜、巡り会えた二人の姿が鮮明に蘇った。
今、自分がここにいて、生きている事。鼓動を肌で、身体で教えてくれる二人。みちるの心が彼等を呼ぶ。
星児さん、保さん!
急激な心細さと寂しさに襲われみちるはハッとした。
いけない、龍吾君!
慌てて辺りを見回したみちるの顔に、フッと影が出来た。不穏な気配に顔を上げると、知らぬ間に、数人の男に囲まれていた。
どの顔も、日本人でもアジア系の造作でも無かった。
眉が太く濃い顔立ちは、みちるには全て同じ顔に見え、彼等が話す聞き取れない言葉に言い知れない恐怖を感じた。
「ヒトリダケ、カ?」
片言の日本語を話す一際濃い顔をした色の黒い男がみちるの腕を掴む。息を吸い込むだけで精一杯のみちるは瞬きも出来ずに身体を強張らせた。
全身を呑み込む恐怖は、声を失わせ心臓の激しい鼓動だけが頭の中で鳴り響く。足が竦み、逃げ出す事も出来ないみちるが身を固くした時だった。
「Hi!」
よく通るハスキーボイスが辺りに響いた。男達が視線を向けた先にみちるも顔を向けると、スラリと背の高いモデルのような女が立っていた。
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