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暴走
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窓から射し込む朝の陽光の眩しさに、みちるは目を覚ました。ベランダで囀ずるスズメの声が心地好く耳に届く。
仰向けだったみちるは少しだけ寝返ろうと身を捩ったが、動けない事に気付く。両端に眠る星児と保の腕が身体に絡み付き、巻き付き、身動き一つ出来ないくらいに拘束していた。
えっと……。
クリーム色の天井を見詰め、みちるは昨夜の事を思案する。
あのまま、寝ちゃったんだ。
握られていなかった空いた手でそっと二人の腕を交互に撫でた。
どちらの腕も筋肉が形よく隆起する。いつも抱き締めてくれる、優しい腕。
今更ドキドキと加速する鼓動に恥ずかしさを覚えたみちるは星児と保の腕を外そうと試みたが。
……外れない。
んーっ、と、もがき始めたみちるの耳に、フッと息が吹き掛けられた。
「ぁは……ぁっ」
フルッと身体を震わせたみちるの口から思わず吐息が漏れ、拘束する腕が一層固くなった。
「逃がさねーよ」
えぇえっ⁉︎
「あっ、朝だよっ」
星児の甘ったるい囁きに、みちるの声が裏返った。
「そんなのコイツには関係ないんだろ」
「た、保さんも起きて……あっ!」
星児から引き剥がすように保がみちるを抱き締めた。
「他人の事言えんのか……よっ」
「きゃあぁっ」
ガバッと起きた星児がみちるの腕を掴み細い腰に手を掛け引っ張り起こそうとしたが。
「させね――っ!」
保がそれを阻止するようにみちるを脇から抱え込んだ。
「星児さん、保さんっっ!!」
愛しいさから生まれる感情は時にエスカレートし、暴走する。
†
「みちるのビンタは効いたな」
「二人とも子供みたいだからですっ」
「こんなエロいガキがいるかよ……」
カウンターキッチンの向こうで、朝食の準備をしながらみちるはプリプリと怒っていた。
星児はリビングで煙草を吸いながらみちるの平手が飛んだ頬を擦り、ダイニングの椅子に座る保はコーヒーを飲みながら苦笑いしていた。
起き抜け、半ば強引にみちるを抱いた星児と保の、奪い合うようないつもと違う激しさに、、みちるはちょっぴり怒ったのだ。
『もうダメですっ』
細くしなやかな手が二人の頬を同時に打ち、小さな乾いた音を立てた。
キッチンのカウンターにみちるの作った朝食のプレートが二人分載せられた。
「はい。星児さんも保さんも、今日もがんばってください」
「はい、分かりました」
プレートを受け取る保の笑顔に答えるようにみちるも微笑んだ。星児も優しく笑い、煙草を灰皿で消し、ダイニングのテーブルに着いた。
†
星児と保が出かけると、みちるは食器を片し、ダイニングの片付けを済ませて自室に入った。
ドレッサーに置かれた、まだ封をしたままだった御幸からの手紙を手にする。住所と宛名が書かれ封がされていた。
恐らく、あんな事にならなければ切手が貼られて投函されたのだろう。
何が書かれているのかなど分からなかったが、中を見るには勇気がいった。
心が沈まり落ち着いた時に開けよう、そう思っていたのだ。
今なら開けられる。
ゴクリと固唾を呑んだみちるは、ハサミで丁寧に封を切った。取り出した手紙を広げると、チケットが一枚ヒラリと床に落ちた。
拾いながら見たみちるは小さな声を上げた。
「これ――」
その時、リビングの電話が鳴った。
「龍悟君! 謹慎は解けたの?」
「余計なお世話だ」という元気な声が返って来て、みちるは安堵する。
「アハハ、相変わらず元気で安心したよ。うん、でもこの前のは私も悪かったから」
「みちるさん、分かってんじゃん。そうだよ、みちるさんが全部悪い!」
「え~っ、龍悟君、全然反省してない~」
ハハハハハッという笑い声が電話の向こうから聞こえた。冗談を交えた会話を一頻り交わし、みちるは龍悟に今日の予定を伝えると電話を切った。
御幸の事故があったあの日から星児と保の計らいで休んでいたが、今日から劇場も変わり心機一転、踊り子業を再開する。
手紙に目を通した彼女は少し思案し、ドレッサーに置き顔を上げた。
鏡に映る自分と視線を合わせる。
大きな黒い瞳に今までよりほんの僅かだが、強い光が挿していた。
何か吹っ切れたような、強さだ。
うん、大丈夫。頑張れるよ。
心の中の自分に言い聞かせ、みちるは鏡から視線を切った。
「支度しよっと」
†††
仰向けだったみちるは少しだけ寝返ろうと身を捩ったが、動けない事に気付く。両端に眠る星児と保の腕が身体に絡み付き、巻き付き、身動き一つ出来ないくらいに拘束していた。
えっと……。
クリーム色の天井を見詰め、みちるは昨夜の事を思案する。
あのまま、寝ちゃったんだ。
握られていなかった空いた手でそっと二人の腕を交互に撫でた。
どちらの腕も筋肉が形よく隆起する。いつも抱き締めてくれる、優しい腕。
今更ドキドキと加速する鼓動に恥ずかしさを覚えたみちるは星児と保の腕を外そうと試みたが。
……外れない。
んーっ、と、もがき始めたみちるの耳に、フッと息が吹き掛けられた。
「ぁは……ぁっ」
フルッと身体を震わせたみちるの口から思わず吐息が漏れ、拘束する腕が一層固くなった。
「逃がさねーよ」
えぇえっ⁉︎
「あっ、朝だよっ」
星児の甘ったるい囁きに、みちるの声が裏返った。
「そんなのコイツには関係ないんだろ」
「た、保さんも起きて……あっ!」
星児から引き剥がすように保がみちるを抱き締めた。
「他人の事言えんのか……よっ」
「きゃあぁっ」
ガバッと起きた星児がみちるの腕を掴み細い腰に手を掛け引っ張り起こそうとしたが。
「させね――っ!」
保がそれを阻止するようにみちるを脇から抱え込んだ。
「星児さん、保さんっっ!!」
愛しいさから生まれる感情は時にエスカレートし、暴走する。
†
「みちるのビンタは効いたな」
「二人とも子供みたいだからですっ」
「こんなエロいガキがいるかよ……」
カウンターキッチンの向こうで、朝食の準備をしながらみちるはプリプリと怒っていた。
星児はリビングで煙草を吸いながらみちるの平手が飛んだ頬を擦り、ダイニングの椅子に座る保はコーヒーを飲みながら苦笑いしていた。
起き抜け、半ば強引にみちるを抱いた星児と保の、奪い合うようないつもと違う激しさに、、みちるはちょっぴり怒ったのだ。
『もうダメですっ』
細くしなやかな手が二人の頬を同時に打ち、小さな乾いた音を立てた。
キッチンのカウンターにみちるの作った朝食のプレートが二人分載せられた。
「はい。星児さんも保さんも、今日もがんばってください」
「はい、分かりました」
プレートを受け取る保の笑顔に答えるようにみちるも微笑んだ。星児も優しく笑い、煙草を灰皿で消し、ダイニングのテーブルに着いた。
†
星児と保が出かけると、みちるは食器を片し、ダイニングの片付けを済ませて自室に入った。
ドレッサーに置かれた、まだ封をしたままだった御幸からの手紙を手にする。住所と宛名が書かれ封がされていた。
恐らく、あんな事にならなければ切手が貼られて投函されたのだろう。
何が書かれているのかなど分からなかったが、中を見るには勇気がいった。
心が沈まり落ち着いた時に開けよう、そう思っていたのだ。
今なら開けられる。
ゴクリと固唾を呑んだみちるは、ハサミで丁寧に封を切った。取り出した手紙を広げると、チケットが一枚ヒラリと床に落ちた。
拾いながら見たみちるは小さな声を上げた。
「これ――」
その時、リビングの電話が鳴った。
「龍悟君! 謹慎は解けたの?」
「余計なお世話だ」という元気な声が返って来て、みちるは安堵する。
「アハハ、相変わらず元気で安心したよ。うん、でもこの前のは私も悪かったから」
「みちるさん、分かってんじゃん。そうだよ、みちるさんが全部悪い!」
「え~っ、龍悟君、全然反省してない~」
ハハハハハッという笑い声が電話の向こうから聞こえた。冗談を交えた会話を一頻り交わし、みちるは龍悟に今日の予定を伝えると電話を切った。
御幸の事故があったあの日から星児と保の計らいで休んでいたが、今日から劇場も変わり心機一転、踊り子業を再開する。
手紙に目を通した彼女は少し思案し、ドレッサーに置き顔を上げた。
鏡に映る自分と視線を合わせる。
大きな黒い瞳に今までよりほんの僅かだが、強い光が挿していた。
何か吹っ切れたような、強さだ。
うん、大丈夫。頑張れるよ。
心の中の自分に言い聞かせ、みちるは鏡から視線を切った。
「支度しよっと」
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