ねぇ、大好きっていって

深智

文字の大きさ
23 / 73

忠告?

しおりを挟む
 夕べは、遼ちゃんの言葉をリフレインしてニヤケちゃって。

 目を閉じるとカッコイイ遼ちゃんの、その……たくさん思い出しちゃって興奮しちゃってドキドキしちゃって、お布団の中でたくさん「遼ちゃん遼ちゃん遼ちゃん」って呟いてた。

 それで、眠れなくて今日は朝からボーッとしてて。

「ひより!? 大丈夫!?」

 茉奈ちゃんがあたしに駆け寄った。

 着替えがモタモタしてしまってみんなにおいてきぼりにされて慌てて走って追いかけて、仔猫ちゃんの鳴き声が聞こえてよそ見したら。

 つんのめって転んじゃいました。

 結構、痛いです。じわっと涙が出てくる。

「もうっひよりいくつなの!? 泣かないで!」

 茉奈ちゃんの喝。

「だってたくさん血が」

 思い切り転んじゃったから手も膝も。

 あたしは、涙こぼしながら茉奈ちゃんに両手を広げてみせた。

「ああ、顔もじゃん! 顔から突っ込む転び方なんて、この年になってしないでしょ、普通。しかも何もないとこで、ってが、なんで鼻じゃなくておでこ?」

 茉奈ちゃん笑い堪えてる。うう。

「だから泣かないでって。保健室に行かなきゃ」

 保健室?

「茉奈ちゃん付いてきて?」

 あたしあの先生苦手なの。

「しょうがないなぁ。もう授業始まっちゃうから、保健室までは一緒に行ってあげるけど私は直ぐにグラウンド行っちゃうからね」

 うん。

「大丈夫だよー、あの先生ゲイだって噂だからさぁ」
「そういう問題じゃなくてね」





「どういう風に転んだらこんなケガできんの~?」

 ホラ、やっぱり。苦手なの、この軽い感じが。

 茉奈ちゃんは言葉通り、保健室ノックしてドア開けて先生に「この子お願いしまぁす」とだけ言い残して授業に行ってしまった。

 髪を赤く染めて明るい色のジャージ着て。ニコニコとしてるけど、よく見るとその端正な顔の中で目は笑ってないの。

「その、顔からころんで……」
「顔から」

 先生は消毒とかガーゼとか絆創膏とか出しながら、吹き出した。

「高校生の女のコが顔から転ぶ姿、見たかったなぁ」

 もう泣くかもしれない。

「泣かない泣かない。ほら、ソコに座って」

 溢れる寸前の涙をグシッと手で拭って先生に差された丸椅子に座った。

「先ずは顔からかな。にしてもおでこって」

 笑いを堪えながらピンセットに挟んだ脱脂綿で消毒。

 鼻が低いんだもん。いたた、シミます、先生。ギュッと目を閉じた。

「なるほどね。平田センセが放っておけない訳だ」
「?」

 一瞬、何の事かわからなかった。

「平田センセが好きなんでしょ、宮部ひよりさん」

 ドキッ! として目を見開いて先生を凝視しちゃった。瞬きも出来ない。

「どうしてそれを? って顔だね」

 ドキドキが止まらない。なんだろう、凄く嫌な感じがした。背筋が冷たくなるような。

 先生は手を休める事なくおでこに大きな絆創膏を貼り、手際よく手と膝も消毒をしてガーゼをテープで貼り付ける。

「僕はね、全校生徒の事みんな知ってるんだよ。よしっ、おしまい」

 屈んで膝のテープを貼っていた先生があたしを見上げた。その目からは先生の感情はわからない。

「ま、宮部さんの事好きなヤツは結構いるみたいじゃん。先生ばっか追いかけてないでさ、他にも目を向けてみな、って話をしたかったワケ」
「???」

 首を傾げるあたしの肩を先生はポンポン、と叩く。

「あたしそんな……」
「今から授業戻れば遅刻扱いにならないよ、きっと。もう転ばないように気を付けてグラウンドまで行くんだよ」

 あたしの言葉は先生の言葉に消され、保健室のドアを開けてくれた先生はニコニコと手を振りながら見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。

 なんだろう、どうしてこんなに不安な気持ちになるんだろ。

 遼ちゃん。





「ひよ!? なんて姿だよー!」

 いつもどおり、お家の窓から遼ちゃんの帰りを待ってたあたしの顔を見上げた遼ちゃん、予想以上の反応。

 そうだよね、顔だもん。おでこは大きな絆創膏に頬にもかすり傷。帰って来たあたしの顔見たママが卒倒寸前でした。

「今日は後でそっちに行くよ」

 遼ちゃんはそう言ってお家に入っていった。遼ちゃん、今日は来てくれるんだね。

 嬉しい。緩む頬を両手で挟む。でも。

『先生ばかり追いかけていないでさ』

 どうしてあの言葉が頭から離れないんだろう。胸に何かかがつかえてる。



「学校で見た。ひよが転ぶとこ」
「えっ!? やだ」

 ベッドに座ってあたしを膝にのせてくれた遼ちゃんが笑った。真っ赤になったあたしの頬に優しく手を添えて、かさぶたになった頬のかすり傷にそっとキスをしてくれた。

 それだけで、胸がキュンとなるよ、遼ちゃん。目の前の笑顔がたまらなく胸を締めつけるの。

「……んっ」

 ちょっと激しく唇を塞がれた。でも、絡めてくる舌は優しくて、甘くて、とろけてしまいそう。

 遼ちゃんの舌、吸っちゃう。お返しに唇を優しく吸われた。

 だいすき。

 離れた唇が首筋へ。

「ふぁぁ……」

 ピクッと身体が震える。


 ベッドに寝かされたあたしはスカートだから、ガーゼが貼ってある膝が直ぐに遼ちゃんの目について、遼ちゃんはそこに優しくキスをしてくれた。

「これ、保健室の川井先生?」
「うん」

 遼ちゃん少し思案顔。

 遼ちゃん?

「何か話した?」
「え?」

 あたしの頭を過ったあの言葉。でも。

「ううん、別になにも。どうして?」
「いや……」

 難しい顔だった遼ちゃんが、パッと表情を変えた。

「ひよが保健室で何かされなかったか心配しただけ。ひよに触れていいのは俺だけだから」

 そう言って遼ちゃんニッコリ。

 遼ちゃん?

「あっ!」

 抱き起こされた瞬間、シャツを思い切り捲られた。ブラの上から胸を揉んで、首筋にキス。

「は……あ……」

 遼ちゃん、今日はいつもと違うよ?

 いとも簡単にホックを外されたブラはいつのまにかどっかいっちゃった。先を捉えられて吸われる。

「ふぁっ! ぁんっ」
「ひよ……シッ」

 遼ちゃんが口の前に人差し指を立てる仕草をした。

「今日はひよの家だからね」

 え? え? え? うちだから?

「遼ちゃ……んっ!んんーっ」

 さっきまで胸を揉んでた筈の手が、下に……遼ちゃんの指が。

「フ……うー……」

 ダメだよ……遼ちゃんー! ギューッと目を閉じて遼ちゃんにしがみつく。

 ゆ、指が……。

「ひよ、声ださないでイッて」

 へ? 遼ちゃん……?

「もうすっごく濡れてるから」

 あ、あれ? いつの間にショーツ、ああっ……また……っ。

「ンうっ……んっ」

 指があたしのナカに――! 胸、吸われてるし!

「んんんん――……!」

 声出さないって、無理無理無理むり――――!

「っあ」

 一声上げた瞬間、唇塞がれた。今日はちょっぴり激しいキス。

「んん――……」

 ああ、もうあたま、まっしろ――。

「ひよ……ごめんな……」

 腰を抱いてあたしの顔を覗き込んで、あやまる遼ちゃん。涙拭いながら、コクンと頷く。

 ちょっと恐かったよ?

 泣いちゃったら、遼ちゃんが優しく抱き寄せてくれた。

 大好きな遼ちゃん。

 あたしの不安。

 遼ちゃんも何か不安なの?

 あたしは遼ちゃんの顔を見上げた。いつもと変わらない笑顔があたしを包み込んでくれた。また優しいキス。

「遼太ーっ! 来てるんだったら一杯付き合え――――!」

 階下からパパの声。

「……パパ」
「おじさん、帰って来たな」

 遼ちゃんが苦笑いした。

「遼太――――!」
「はいー! 付き合わせていただきます!」

 首を竦めた遼ちゃんはあたしの頭を撫でる。

「直ぐに行かないと何か勘繰られるな」
「うん」
「ひよ……」

 遼ちゃんは慌てて服を直すあたしの長い髪を手グシで優しくすきながら言った。

「俺はね、ひよが大好きだよ。でもね、今は少し……距離を置いた方がいいのかもしれない」

……え?

「りょ、遼ちゃん?」
「このままだと俺、ひよを傷つけてしまうような気がしてならないんだ」

 わかんない、遼ちゃんの言ってる意味が、ぜんぜんわかんない。

「やだよ、そんなの……」

 遼ちゃんに触れたい。本当は毎日、ううん、一日中触れていたいくらい。

 なのになんで?

「なんでそんな事言うの?」

 ポロポロと溢れる涙が止まらない。あたしが子供だから? だからダメなの?

 遼ちゃんが、ギュッと抱き締めてくれた。

「ごめん、ひよを泣かすつもりはなかったんだ。今言った事、忘れて」

 遼ちゃん、あたしの顔を見て頭を撫で撫で。

「今日はひよに謝ってばっかだな」

 何かが今までと何かかが変わろうとしてるの? 遼ちゃんの気持ちがやっとわかったのに、心のモヤモヤが晴れないのはなんでなのかな。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...