ねぇ、大好きっていって

深智

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衝撃

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 今日は土曜日です。

「ひよちゃん、お買い物!」

 昨日の夜からワクワクしてたママとあたしは、池袋までお買い物に来ました。

 ママとたくさんお買い物して、ランチして、夕方まで楽しく過ごして帰る頃。

 ICカードを持っていないママが切符を買っているのを待っている時、改札近くのデパートの入口のところに遼ちゃんを見つけた。

 向こうからはこちらを見ていない後姿だったけど、あたしが遼ちゃんを見間違うはずない。

 背が高くて人目を引く。

 ショート丈コートのポケットに手を突っ込んで立つ足の長い後姿は、あたし、すぐに見つけられる。

 遼ちゃん!

 嬉しくて嬉しくて、呼んじゃおうかな、って思ったけど、あたしは、あれって思った。

 遼ちゃん、誰かを待ってるみたいだったから。

 遼ちゃん、誰を待ってるの?

 やっぱり気になる!

 遼ちゃん、って声に出そうとした時だった。

 改札から出てきた、綺麗な女の人が、

「遼太!」

 って呼んで、遼ちゃんの腕に絡みついた。

 腕に、しがみつくみたいに。

 あたしは、瞬間、頭が真っ白になった。

 遼ちゃん、拒むわけでもなく、そのまま腕を組んでその人と歩き出して、駅の外に出て行って、見えなくなった。

 遼ちゃん?

 あたしは、遼ちゃんと、手を繋いで歩いたこともなくて。

 まして、遼ちゃんの腕に、自分の腕絡めて、歩いたことなんて、ないよ。

 遼ちゃんの隣は、あたしの場所じゃなかったんだ。

 緩やかなウエーブの長い髪がすごく似合う、綺麗な人だった。

 上品で、大人の雰囲気が、遠くから見てもよく分かって。

 あたしなんかと、全然違うの。

 遼ちゃん、ひどいよ。あたしもう、どうしていいか、わからないよ。

 その後、ママと、どんなお話しをして、どうやって帰ってきたか、あんまり覚えてない。

 夕ご飯前に、お部屋に一人でいる時に、ボロボロ泣いてしまった。

 声を上げて泣いたら部屋の外に聞こえてママが心配しちゃうから、あたしは枕に顔を押し付けた。

 遼ちゃん。

 なんで?

 考えれば考えるほど、分からなくなって。

 スマホを見たけど、連絡なくて。

 うぅ。

 画面に指滑らせて、ストップ。

 あたしからなんてしてあげないもん!

 机の上に放り投げたら、手帳型ケースのポケット部分から紙が一枚はみ出してるのが見えた。

 あ、これ。

『何か困った事があったらーー』

 優しくて柔らかくて、ちょっぴり甘い声が聞こえた気がした。

 緒方さん……。




 電話の向こうの緒方さんは、すごく優しかった。

 あたしが、突然電話をしたのに。

 困ったりすることなく。

 心に染みる優しい声を聞いていたら、我慢していたものが堪えきれなくなってしまって、電話を持ったままあたしは泣き出してしまった。

「ひよりちゃん、泣いてるだけじゃ、分からないよ。ゆっくりでいいから話してごらん」

 話してごらん、って言ってくれたのに、あたしはしゃくり上げてしまって声が、言葉にならない。

 何も言わずにあたしが落ち着くのを待ってくれていた緒方さんは、静かにフッと笑った。

「遼太、なんか悪い事したかな」

 聞く人の心を軽くしてくれる声って、存在するんだ、って思った。

 あたし、今、とってもいけない事考えてしまいました。

 緒方さんなら、電話を通してでも、女の人を一瞬で落とせますよ。

 違う!

 違う違う。

 あたしはブンブンと頭を振った。

 色々と落ち着かなきゃいけません。

 あたしは、遼ちゃんに怒ってるんです。

 怒って?

 ううん、悲しい。

 悲しいんです。

 遼ちゃん、あたしに「信じろ」って言ったのに。

 泣きながら、支離滅裂だったけど、一生懸命説明した。

 あとから、告げ口みたいで、とっても嫌な子かもしれない、って思ったけど。

 これ以外、どうする事も出来なかったんだもん。

 誰にも聞けない、話せない。

 遼ちゃんの気持ちも分からないんだもん。

 うんうん、って優しく相槌打って黙って聞いていてくれた緒方さん、あたしの話を聞き終えて。

「そんな事があったんだ。それはひよりちゃん、辛かったね。でも、感情的になって遼太に電話したりしなかったのは、偉いよ」

 あ、それは考えなかったです。

 だって。今のグチャグチャの気持ちをぶつけても、会えないから。

 遼ちゃん、困らせるだけだから。

 それに今は、遼ちゃんのお声聞く方が辛いって思ったんだもん。

 緒方さん、うんうん、と優しく相槌して。

「じゃあ、僕がちょっとだけ、力を貸そうね」
「え?」

 緒方さんが、クスッと笑った。

「お灸を据えてあげよう」

 え?
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