溺れる月【完結】

9白濁

　美夕の中を白濁させた楊のソレが、出ていく。

　意思と反して、〝彼〟を離したがらず掴むように吸い付く感触が膣内にあった。

　心から離れて淫らに乱れる躰に、美夕は堪らず顔を目を閉じた。

「そんなに惜しまなくても、もう一度挿れてあげるから」
「そんなことっ」

　言いながらも陰部が反応するのが分かった。

〝挿いれて。もっと挿れて〟。

　美夕の意思から離れ独立の器官と化したそこは、口を広げ、涎を垂らし続けて待っている。

「いやっ、いやっ」

　首を振る美夕の躰を楊が抱く。

　足の長い楊と繋がる為に浮きあがっていた美夕の身体が下ろされ、足が床に着いた。

「美夕、そこを掴んで」

　楊は、戸惑う美夕に低めの洗面ボウルを掴ませ、背後に立った。

　スカートを捲り上げて露わにさせたそこは、待ち構えるかのように肥大した花弁が蜜を溢れさせていた。

「すごいな、美夕」
「んんっ、んっ」

　指でなぞられ、美夕は躰を震わせた。次の瞬間。

「んくあっ、ああっ、はぁっん」

　後ろから一気に貫かれて尚、乳首を弄りながら乳房を激しく揉む手に、美夕は嬌声を上げた。

　楊は、衰えを知らない。

「いやっ、んん、あああっ、は、あっ」

　片方の腕を後ろ手に掴まれ、美夕の動きが完全に封じられる。

　美夕は、突き抜ける快感と悦楽の波に呑み込まれていく。

　楊は美夕のそこに腰を打ち付け突き上げながらも顔色一つ変えず、クスッと笑った。

「美夕、そんなに必死に掴まなくても僕は離れないよ」

　恥ずかしさと情けなさに美夕は止まらぬ涙に頬を濡らし、喘ぎと嬌声を漏らし続けた。

「ちがうの、ちがうの……」

　楊は美夕の顔を振り向かせ、喘ぎを漏らす唇を塞いだ。



　肩で息をしてぐったりとする美夕を腕に抱く楊は、手にしたバイブを睨みつけていた。

「このバイブの仕掛け、解いたね」

　美夕は肩をビクッと震わせた。

「美夕じゃないよね？」

　顔を上げると、楊の視線とぶつかった。

　涼し気で美しい目は、いつも妖艶な色を含んでいる。

　見つめられると美夕はゴクリと固唾を呑んでしまう。

　目を見開いたまま何も言えずにいる美夕に、楊はフワリと、でも冷たい笑みを見せた。

「じゃあ、誰が？
と聞きたいところだけど、今は敢えて聞かないよ」

　楊はバイブを手の中で握り締め、静かに言った。

「美夕。滉は騙せても、僕は騙せないよ」

　美夕は知る。楊が気付いている事に。

　楊の目は、ここにはいないあの〝男〟に挑むような強さを湛えていた。

「アイツだけは、認めたくない」

　独り言のように呟いた楊は、美夕の頬に優しく触れ、そのまま長い髪の毛を梳くと、唇を重ね、長いキスをした。