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夏が終わりを告げる時
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雲一つない真夏の青空から降り注ぐ正午の太陽の容赦ない日射はフィールドを熱し、陽炎を立ち上らせていた。クライマックスを迎えた試合、スタンドのボルテージは最高潮に達し、応援のブラスバンドの音が抜けるような青い空に響き渡っていた。
ネクストバッターサークルで自らの打席を待っていた緒方篤はスポーツ仕様の銀縁メガネを外し、ユニフォームの袖で汗を拭いながら、バカにしやがって、と唇を噛みしめた。
夏の全国高校野球大会埼玉地区予選準々決勝。一点差の九回裏、ツーアウト二、三塁。前打者は、篤の目の前で敬遠されたのだ。
篤は二年生にしてこの大会から初めて正捕手のポジションについていた。一年の時からベンチに入り、代打としてはそれなりの仕事をしてきた篤だったが、扇の要、キャッチャーというポジションの重圧は半端ではなかった。
フィールド内でただ一人前を向くキャッチャーは、全てを見なければいけない大事なポジションだ。その重責は気持ちを浮つかせた。バッティングどころではなく、篤はここまでノーヒットと抑え込まれていた。相手バッテリーがこの試合、二本のヒットを打っている打者を敬遠して篤でゲームセットにしようと考えるのは至極当然のことだった。
メガネを掛け直した篤は、バッターボックス手前で目一杯バットを振った。
気合は充分。
しかしその気合が完全に空回りであった事に気付くのには、時間はかからなかった。
打席に入り、構えた篤が見た初球は、恰好のコースに見えた。ここだ! と当てにいったバットが、手元で微妙に変化した球に芯を外された。高く打ち上げられた打球はいとも簡単にキャッチャーのミットに収まり、ゲームセットとなった。
その瞬間、篤が一年生の時から共に戦ってきた先輩達の高校野球は終わりを告げ、自身の二年生の夏も、終わった。
勝利の歓喜に沸く相手チームの選手が行き交う中、天を仰いだまま動かない背番号二の背中を見つめる少年と少女がいた。少年はベンチで、少女はスタンドで、それぞれの想いと誓いを胸に抱き。
ネクストバッターサークルで自らの打席を待っていた緒方篤はスポーツ仕様の銀縁メガネを外し、ユニフォームの袖で汗を拭いながら、バカにしやがって、と唇を噛みしめた。
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気合は充分。
しかしその気合が完全に空回りであった事に気付くのには、時間はかからなかった。
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