この夏をキミと【完結】

深智

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それぞれの想い3

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「ライト――――!」

 篤の打った打球が綺麗な軌道を描き、外野、右方向へ飛んで行く。

「はいっ!」

 ライトの守備位置にいた二年生が飛んで来る球を見、落球地点を予測しながら走って行った。手を挙げると、そのグラブに落ちてきた球が納まった。

 篤は今日の練習、二年生のベンチ入りレギュラー部員達の、守備練習のノックを任されていた。たった今捕球したライトの二年生にノック用バットの先を向け、篤は声を張り上げた。

「お前、何年外野手やってんだ! 球がバットに当たった瞬間飛ぶ方向予測しろ! 飛んで来てから走るな! スタメンポジション欲しくないのか!」
「欲しいです!」
「次!」

 この様子を見ていた二年生以下の部員達がグローブ片手に戦々恐々とした表情で順番を待っていた。

「緒方先輩、今日はどうしたんだろう……」
「いつも厳しいけど、今日は一段と怖いな」


 これから始まるフリーバッティングに備えて素振りをしていた三年生の室橋が、同じ三年の倉元に話しかけた。

「篤、荒れてんじゃん」
「ああ、さっき教室で木原となんかやってたな」

 倉元はバットを小脇に抱え、バッティンググローブをはめ直しながら答えた。室橋は素振りをしながらフンッと鼻で笑った。

「痴話喧嘩か」
「よくやるよな、あいつら」

 ゆっくりとフォームを確認しながらバットを振り始めた倉元がクックと笑った。

「篤、野球以外の事はからっきしだ」
「木原のことだろ? 篤のヤツ、何にも気づいてないんだぜ。傍からみても丸わかりなのによ」

 倉元の言葉に同調するように室橋が言った時、監督の木戸が後ろでに手を組みながらやって来た。バッティング指導の為、素振りをする三年生部員達の間を回っていた木戸は、思い出したように室橋に聞いた。

「エースはどうした?」
「うちのエースは昨日120球以上投げましたから、今日はランニング等のスローっすよ。これって……監督の自身の指示っすよね」
「……そうだったかなあ」

 腕を組み、とぼけた表情で答える木戸に、倉元がため息まじりに呟いていた。

「ボケるのは引退してからにしてくださいよ」



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