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カナコ
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昼過ぎに明るくなった空はまた、どんよりとした鈍色の空に変わり、本降りの雨空となった。校門から色とりどりの傘が流れて行く。その中に、立ち止ったまま動かない明るいパステルブルーの傘が見えた。
「夏菜子……」
差した傘を肩に掛けてスマートフォンをいじっていた夏菜子が顔を上げてこちらを見た。
「久々一緒に帰ってあげようかな、と思って待っててあげたのよ」
「……もう少し言い方ってもんはないのか」
グリーンの傘と明るいブルーの傘が並んで歩きだす。
「木戸センセの話ってなんだったの?」
夏菜子が篤をのぞきこんだ。
「要するに、勉強しろってワケなんだな。みなさんに心配していただいて、ボクはなんてしあわせもの」
「棒読み」
吹き出した夏菜子は篤の腕を叩いた。
他愛ない話題を、屈託なく笑いながら話す。それは夏菜子にとってかけがいのない、一番大事な幸せな時間だった。
「夏菜子」
電車から降り、ホームに降り立った時。名を呼ばれ、夏菜子が柔らかな表情で見上げると篤はその、日に焼けた顔をはにかんでみせた。
「この間は……ごめんな」
思いがけない篤の言葉に夏菜子の胸がきゅう……っと締まる。
――この時間がずーっと続けばいいのに!
何か言わなきゃ、と口を開きかけた夏菜子の表情が曇った。改札の外に、篤の妹、美羽が立っていた。
愛らしい容姿は立っているだけで人目を引いた。二人に気づいた美羽は駆け寄って来た。
「あっちゃん、お帰りー! 夏菜ちゃん、こんにちは!」
同性でもクラッときそうな笑顔だった。
「美羽、どうした?」
篤の声が優しい。夏菜子の胸がチクンと痛む。
「駅前の銀行にママのおつかいで来たの。そしたらね、あっちゃんの学校の制服がたくさん見えたから、待ってたらあっちゃん来るかなーって思って」
「そうか」
篤と美羽の会話を聞きながら、夏菜子は目を逸らす。
「ごめん、篤。私ちょっと西友に寄って帰る。また明日ね。美羽ちゃんバイバイ。あ、篤勉強頑張るのよ!」
「余計なお世話だよ! じゃ、またな」
フワリと軽やかに走り去った夏菜子の後姿を見て、篤はハッと思い出した。
「そういや、誠のこと、聞くの忘れていたな」
「夏菜子……」
差した傘を肩に掛けてスマートフォンをいじっていた夏菜子が顔を上げてこちらを見た。
「久々一緒に帰ってあげようかな、と思って待っててあげたのよ」
「……もう少し言い方ってもんはないのか」
グリーンの傘と明るいブルーの傘が並んで歩きだす。
「木戸センセの話ってなんだったの?」
夏菜子が篤をのぞきこんだ。
「要するに、勉強しろってワケなんだな。みなさんに心配していただいて、ボクはなんてしあわせもの」
「棒読み」
吹き出した夏菜子は篤の腕を叩いた。
他愛ない話題を、屈託なく笑いながら話す。それは夏菜子にとってかけがいのない、一番大事な幸せな時間だった。
「夏菜子」
電車から降り、ホームに降り立った時。名を呼ばれ、夏菜子が柔らかな表情で見上げると篤はその、日に焼けた顔をはにかんでみせた。
「この間は……ごめんな」
思いがけない篤の言葉に夏菜子の胸がきゅう……っと締まる。
――この時間がずーっと続けばいいのに!
何か言わなきゃ、と口を開きかけた夏菜子の表情が曇った。改札の外に、篤の妹、美羽が立っていた。
愛らしい容姿は立っているだけで人目を引いた。二人に気づいた美羽は駆け寄って来た。
「あっちゃん、お帰りー! 夏菜ちゃん、こんにちは!」
同性でもクラッときそうな笑顔だった。
「美羽、どうした?」
篤の声が優しい。夏菜子の胸がチクンと痛む。
「駅前の銀行にママのおつかいで来たの。そしたらね、あっちゃんの学校の制服がたくさん見えたから、待ってたらあっちゃん来るかなーって思って」
「そうか」
篤と美羽の会話を聞きながら、夏菜子は目を逸らす。
「ごめん、篤。私ちょっと西友に寄って帰る。また明日ね。美羽ちゃんバイバイ。あ、篤勉強頑張るのよ!」
「余計なお世話だよ! じゃ、またな」
フワリと軽やかに走り去った夏菜子の後姿を見て、篤はハッと思い出した。
「そういや、誠のこと、聞くの忘れていたな」
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