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指を絡めて
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光が差し込まないに狭い路地で、密かに重ねた会瀬は、ほんの短い時間でも指を絡めて唇を重ねる幸せな時間だった。
〝凛花には決して手を出すな〟というのは、この街の暗黙のルールだった。
剣崎の警告を忘れた訳ではない。凛花と会話を交わしたあの日から、龍吾の中で警鐘は鳴り止む事はない。
それでも龍吾は、踏み込む決意をした。
「凛花」
唇をゆっくり離して凛花の潤んだ瞳を見る。暗闇の中、白い肌が薄明かりに映えていた。
むき出しのコンクリートの壁を背に寄りかかる凛花を見、龍吾は壁に突いていた手を離し長い指でゆっくりと髪の毛を鋤いた。
凛花の細い腰を抱く腕が少し緩むと、龍吾の唇が首筋に触れた。
「……ん」
凛花はフルッと震えて目を閉じた。快楽という痺れに吐息と嬌声が漏れる。
「龍吾」
顔を上げると龍吾の優しい瞳があった。
「凛花、愛してる」
初めて感じた幸せに、凛花の頬を涙が伝った。
龍吾が指で優しく頬を拭うと、凛花は腕を伸ばして龍吾の首に絡めてしがみついた。
「私を奪って、奪って逃げて!」
涙が溢れる瞳に龍吾の胸が締め付けられた。
逃げたい! 出来ることなら奪って逃げたい!
瞬間、龍吾の脳裏にフラッシュのように剣崎の姿が浮かんだ。
出来ないんだよ、凛花!
龍吾が苦し気に凛花を強く抱き締めた時だった。
「りんか――」
大通りから、同じ店で働くキャバ嬢の呼ぶ声が聞こえた。
「なんじゃお前! 凛花と一緒にいたんじゃないんかい!?」
ドスの効いたダミ声に、凛花はビクリと怯えた。
「知らないわよー。私は凛花と別に仲良くないものぉ。さっきまで私らの後ろにいたんだけどぉ」
「チッ!使えねーっ!」
腕の中で震える凛花を強く抱き締める龍吾は静かに囁いた。
「何事もないように落ち着いて出ていけばいい。大丈夫だ」
不安気に振り向く凛花の背中を優しく押した。
「私はさっきからここにいたわよ」
ネオンの灯る大通りに出ていった凛花はもう、龍吾の腕の中で震えていた彼女ではなかった。
安堵した龍吾はそこを静かに立ち去ろうとしたが、視線を感じ息を殺した。
ここは明るい表通りからは見えないであろう暗がり。だが、凛花を探していた男の視線はまるで龍吾の姿をその目で確認したかのように動かない。
バレたか?
緊張が全身を駆け抜けた。
早鐘を打つような心臓の鼓動と共に龍吾が身構えると、男の視線がフッと外れた。
立ち去った気配に凍るような空気が緩み、全身の緊張は解けたが、同時に新たな不安が彼に襲いかかった。
凛花は大丈夫なのか?
龍吾は壁に寄りかかったまま、凛花の身を案じ、目を閉じた。
〝凛花には決して手を出すな〟というのは、この街の暗黙のルールだった。
剣崎の警告を忘れた訳ではない。凛花と会話を交わしたあの日から、龍吾の中で警鐘は鳴り止む事はない。
それでも龍吾は、踏み込む決意をした。
「凛花」
唇をゆっくり離して凛花の潤んだ瞳を見る。暗闇の中、白い肌が薄明かりに映えていた。
むき出しのコンクリートの壁を背に寄りかかる凛花を見、龍吾は壁に突いていた手を離し長い指でゆっくりと髪の毛を鋤いた。
凛花の細い腰を抱く腕が少し緩むと、龍吾の唇が首筋に触れた。
「……ん」
凛花はフルッと震えて目を閉じた。快楽という痺れに吐息と嬌声が漏れる。
「龍吾」
顔を上げると龍吾の優しい瞳があった。
「凛花、愛してる」
初めて感じた幸せに、凛花の頬を涙が伝った。
龍吾が指で優しく頬を拭うと、凛花は腕を伸ばして龍吾の首に絡めてしがみついた。
「私を奪って、奪って逃げて!」
涙が溢れる瞳に龍吾の胸が締め付けられた。
逃げたい! 出来ることなら奪って逃げたい!
瞬間、龍吾の脳裏にフラッシュのように剣崎の姿が浮かんだ。
出来ないんだよ、凛花!
龍吾が苦し気に凛花を強く抱き締めた時だった。
「りんか――」
大通りから、同じ店で働くキャバ嬢の呼ぶ声が聞こえた。
「なんじゃお前! 凛花と一緒にいたんじゃないんかい!?」
ドスの効いたダミ声に、凛花はビクリと怯えた。
「知らないわよー。私は凛花と別に仲良くないものぉ。さっきまで私らの後ろにいたんだけどぉ」
「チッ!使えねーっ!」
腕の中で震える凛花を強く抱き締める龍吾は静かに囁いた。
「何事もないように落ち着いて出ていけばいい。大丈夫だ」
不安気に振り向く凛花の背中を優しく押した。
「私はさっきからここにいたわよ」
ネオンの灯る大通りに出ていった凛花はもう、龍吾の腕の中で震えていた彼女ではなかった。
安堵した龍吾はそこを静かに立ち去ろうとしたが、視線を感じ息を殺した。
ここは明るい表通りからは見えないであろう暗がり。だが、凛花を探していた男の視線はまるで龍吾の姿をその目で確認したかのように動かない。
バレたか?
緊張が全身を駆け抜けた。
早鐘を打つような心臓の鼓動と共に龍吾が身構えると、男の視線がフッと外れた。
立ち去った気配に凍るような空気が緩み、全身の緊張は解けたが、同時に新たな不安が彼に襲いかかった。
凛花は大丈夫なのか?
龍吾は壁に寄りかかったまま、凛花の身を案じ、目を閉じた。
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