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麗子からみちるへ2
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明るくとも艶っぽさを含む麗子の声は、相手が女であってもドキリとさせる魅力がある。
「はい。お暇です」
明るく応えたみちるに麗子はフフフと笑う。
「今日は私、お休みなのよ。身体を動かしに来ない?」
「ヨガですか?」
麗子は自宅マンションの一室でヨガ教室も開いていた。
「それもあるけど、ちょっと。みちるちゃんに教えてあげたい事がたくさんあるの」
麗子の言葉はどこか意味深な響きを含んでいた。
動きやすい恰好で家に来てね、と言い、麗子は電話を切った。
みちるは電話を持ったまま少し考えるように首を傾げていたが、着替える為に立ち上がった。
†††
麗子のマンションの、フローリングの1室は壁一面鏡張りになっていた。八畳の部屋の隅にマットが重ねて置かれている。
スポーツブランドのウェアに身を包んだ麗子は、ウェーブのかかったライトブラウンの長い髪をクリップでアップにしながら部屋に入って来た。
「今日は、そうね」
「はい、先生」
マットを準備しながら先生、と楽しそうに呼ぶみちるに麗子は優しい笑顔を投げ掛けた。
ヨガ教室、とは言っても、麗子の友人や劇場の踊り子達がリフレッシュの為にやって来るのみの小さな教室だった。
教室日も、週に一、二日程度の不定期だ。教室、というよりも〝サロン〟に近い。
みちるが十八になった頃、麗子は暇そうにしていた彼女を捕まえて参加させた。それから続けている。
そこでみちるは数人の踊り子と友達になった。
踊り子、つまり、ストリッパーだ。麗子より少し若いくらいのベテランから、みちるとあまり変わらないくらいの子まで年齢層は広かった。
皆、麗子を慕い頼り、ここに来ていた。
話しをしてみれば、ファッションの話、アイドルやタレントの話、友達の話、恋の話――。
彼女達は明るく可愛らしい普通の女の子だった。
『みんな、いい子でしょ』
麗子はみちるに微笑んでいた。
『昔は、ストリッパーはお金の事情を抱えた女の子ばかりだったかもしれないけれど、今は自己表現の為にこの世界に飛び込んで来る子が結構いるのよ。
でも、今でもお金の為に泣く泣く、って子もいる。
ホントにハードな世界だし、女の世界だから妬み嫉みも多い。
それぞれの事情を抱えながら彼女達はギリギリの精神力で闘ってるのよ。
そんな時に、心を緩められる空間があったらいいな、って思って、こんな事を始めたの』
麗子の言葉を聞きながら、みちるは星児と保に拾われる前にいた世界を思い返した。
明るく笑って未成年でありながらお酒を煽り、お客に媚びる。
幼い女の子が好きな男客達は、質の高い接客サービスなど望まない。
みちるはその中に、そこにどうしても馴染めなかった。
テーブルに付いても話せない。他の女の子達のようにはしゃげない。そんなみちるを憐れに思った、店長だった源さんが店から裏方へ回して面倒をみてくれたのだ。
私はまたあの街に戻らなければいけないのに。どんな仕事に就いたらいいの?
幸せで、穏やかに過ごした日々に埋もれ、記憶の中に封印しかけていた、大事な〝約束〟。
『この街で堂々と働ける歳になるまで守ってやるから』
そう、私は大人になってしまった。
「みちるちゃん」
人差し指を顎に添え思案顔をしていた麗子に呼ばれ、みちるは顔を上げた。
立ったまま、軽く腕を組み、考え事をしていた麗子がみちるを見ると。
みちるはちゃんと準備したヨガマットの上でチョコンと正座をし、こちらを見上げていた。
その姿に麗子は思わず「ぷ」と吹き出しそうになり口を押さえた。
かっ、かわいい! まるで小動物、ウサギさんみたい――!
「麗子さん?」
みちるが首を傾げ、見上げている。麗子は慌てて表情を繕った。
「ごめんね、せっかくマット出してもらって悪いんだけど、今日はちょっと違う事、しましょう」
「違う事、ですか?」
より首を傾げるみちるに、麗子は軽く首を竦めて見せた。
「優雅でしなやかで、ちょっぴり妖艶な魅惑的な所作よ」
妖しげで艶っぽいトーンの言葉は、まるでみちるを柔らかく絡めとるように、意味深に響いた。
「はい。お暇です」
明るく応えたみちるに麗子はフフフと笑う。
「今日は私、お休みなのよ。身体を動かしに来ない?」
「ヨガですか?」
麗子は自宅マンションの一室でヨガ教室も開いていた。
「それもあるけど、ちょっと。みちるちゃんに教えてあげたい事がたくさんあるの」
麗子の言葉はどこか意味深な響きを含んでいた。
動きやすい恰好で家に来てね、と言い、麗子は電話を切った。
みちるは電話を持ったまま少し考えるように首を傾げていたが、着替える為に立ち上がった。
†††
麗子のマンションの、フローリングの1室は壁一面鏡張りになっていた。八畳の部屋の隅にマットが重ねて置かれている。
スポーツブランドのウェアに身を包んだ麗子は、ウェーブのかかったライトブラウンの長い髪をクリップでアップにしながら部屋に入って来た。
「今日は、そうね」
「はい、先生」
マットを準備しながら先生、と楽しそうに呼ぶみちるに麗子は優しい笑顔を投げ掛けた。
ヨガ教室、とは言っても、麗子の友人や劇場の踊り子達がリフレッシュの為にやって来るのみの小さな教室だった。
教室日も、週に一、二日程度の不定期だ。教室、というよりも〝サロン〟に近い。
みちるが十八になった頃、麗子は暇そうにしていた彼女を捕まえて参加させた。それから続けている。
そこでみちるは数人の踊り子と友達になった。
踊り子、つまり、ストリッパーだ。麗子より少し若いくらいのベテランから、みちるとあまり変わらないくらいの子まで年齢層は広かった。
皆、麗子を慕い頼り、ここに来ていた。
話しをしてみれば、ファッションの話、アイドルやタレントの話、友達の話、恋の話――。
彼女達は明るく可愛らしい普通の女の子だった。
『みんな、いい子でしょ』
麗子はみちるに微笑んでいた。
『昔は、ストリッパーはお金の事情を抱えた女の子ばかりだったかもしれないけれど、今は自己表現の為にこの世界に飛び込んで来る子が結構いるのよ。
でも、今でもお金の為に泣く泣く、って子もいる。
ホントにハードな世界だし、女の世界だから妬み嫉みも多い。
それぞれの事情を抱えながら彼女達はギリギリの精神力で闘ってるのよ。
そんな時に、心を緩められる空間があったらいいな、って思って、こんな事を始めたの』
麗子の言葉を聞きながら、みちるは星児と保に拾われる前にいた世界を思い返した。
明るく笑って未成年でありながらお酒を煽り、お客に媚びる。
幼い女の子が好きな男客達は、質の高い接客サービスなど望まない。
みちるはその中に、そこにどうしても馴染めなかった。
テーブルに付いても話せない。他の女の子達のようにはしゃげない。そんなみちるを憐れに思った、店長だった源さんが店から裏方へ回して面倒をみてくれたのだ。
私はまたあの街に戻らなければいけないのに。どんな仕事に就いたらいいの?
幸せで、穏やかに過ごした日々に埋もれ、記憶の中に封印しかけていた、大事な〝約束〟。
『この街で堂々と働ける歳になるまで守ってやるから』
そう、私は大人になってしまった。
「みちるちゃん」
人差し指を顎に添え思案顔をしていた麗子に呼ばれ、みちるは顔を上げた。
立ったまま、軽く腕を組み、考え事をしていた麗子がみちるを見ると。
みちるはちゃんと準備したヨガマットの上でチョコンと正座をし、こちらを見上げていた。
その姿に麗子は思わず「ぷ」と吹き出しそうになり口を押さえた。
かっ、かわいい! まるで小動物、ウサギさんみたい――!
「麗子さん?」
みちるが首を傾げ、見上げている。麗子は慌てて表情を繕った。
「ごめんね、せっかくマット出してもらって悪いんだけど、今日はちょっと違う事、しましょう」
「違う事、ですか?」
より首を傾げるみちるに、麗子は軽く首を竦めて見せた。
「優雅でしなやかで、ちょっぴり妖艶な魅惑的な所作よ」
妖しげで艶っぽいトーンの言葉は、まるでみちるを柔らかく絡めとるように、意味深に響いた。
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