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幕が上がる前に
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香蘭劇場は一ヶ月間休み無く公演を続け、二週間程の休みを取る。その休み期間を趣向の違う演目の練習期間に当て、再び公演を再開する。
これが基本のサイクルになっているが、公演内容の人気によっては一月で終わらずロングランになる事もあれば、一月持たず次に移る事もある。
そういった全ては麗子の采配にかかっているのだが、麗子は踊り子達への細かな気配りも忘れない。
人気のある子を目立たせなければいけないのは客商売の為致し方ないが、なるべく彼女達が気持ち良く舞台に立てるよう演目、特に出演回数などに気をつけていた。
『今回は少ない』
『あのこばっかり』
『私、こういうのはイヤ』
等々、彼女達の文句は枚挙に暇がない。
しかし麗子は彼女達の言葉にはちゃんと耳を傾ける。
彼女達のモチベーションを上げ、乗せなければショーはつまらないものになってしまう。客は、お金を出して観に来ているのだ。
客は正直だ。つまらなければ、来なくなる。常連客の存在が不可欠なストリップは客をも乗せなければいいショーなど出来ない。
ベストパフォーマンスが、何よりリピーターを生む事は、麗子自身が一番良く知っていた。
新しい公演は二日後に迫っていた。
†
「みちるちゃんはもしかして、ヴァージン?」
「ええ゛え!」
壁一面鏡張りの広いリハーサル室で練習終わりのストレッチをしている時だった。
ヨガのポーズで目を閉じ深呼吸をする千春の言葉に、みちるはすっとんきょうな声を上げ、隣を見た。
「やだ、やっぱり~」
ゆっくりと座禅のポーズに戻った千春が片えくぼの愛らしい笑顔をみちるに向けた。
「ど、どうして?」
慌てるみちるに千晴はポージングしながら言う。
「みちるちゃん、優雅でとっても綺麗な動きをしているのに、どこか硬いの。最初は、ストリップへの躊躇いかな、って思ったんだけど、みちるちゃんの覚悟も決意も知ってるから、それは違うなぁ、って思ってちょっと考えてたんだけど、もしかしたらと思ったら、やっぱり」
千晴の言葉はあまりにも的確だった。みちるは「はぁ」とだけ応えるしか出来なかった。
千晴と同じポーズを取ったまま考え込んでしまう。鏡に映る自分を見てため息を吐いたみちるに千晴はフフッと笑った。
「大丈夫だよ、色気はあるから。ウブと色が不思議なバランスで同居してる。それも魅力の一つだから、きっとお客さんは喜ぶよ。あたしが保証する」
みちるの顔が微かに明るくなった。
お世辞が入っていたとしても、不安に覆われる今、一番嬉しい言葉だった。みちるの口からは「ありがとう」という言葉が素直に溢れた。
ニコッと笑い、頷い千晴は身体をゆっくり捻りながら息を吐いた。
「ねぇ、みちるちゃん」
千晴は、鏡越しにみちるに問いかける。
「大事な人はいる?」
「大事な、人?」
みちるはストレッチをやめ、千春に身体を向けた。
「そう、大事な人。いるでしょう?」
瞬時にみちるの脳裏を過ったのは、星児と保、そして麗子だった。
「大事な人なら、いるよ。んー、三人、かな。」
「三人?」
「うん」
千晴は目を丸くしてみちるを見た。次の瞬間。
「ちょっと違う~」
カラカラと笑い出した千晴にみちるは首を傾げた。
「違うの?」
千晴は頷く。
「みちるちゃん、恋だよ、恋。みちるちゃん、恋してないの?」
「え、」
暫し、固まる。
こい、恋。
思い浮かべた二人の男は、自分にとってあまりにも遠い。ドキドキと癒しが、何の感情に起因しているのか。
みちる自身、境界線は曖昧なままだった。
恋とはどんなモノなのか。説明のつかない想いは、恋を測る天秤に乗せてどちらかに傾くモノなのか。
何も分からず、ただ無我夢中で生きてきた。そんな中であまりにも自然に、自分の半身を形成するかのような存在となっていた二人の男。
二人を想うと心地よい胸の痛み。これは、何という感情?
分かんない。だって私は二人を好きになってはいけないと思うから。
私はいずれ、二人の元から巣立たなければいけないのだから。
伏し目がちになり黙ってしまったみちるに、千春が優しく声を掛けた。
「みちるちゃんのデビューはまだ先だから、その前に恋が出来るといいね」
みちるのデビューは、次回公演の次に決まっていた。あと一ヶ月半ほどある。
それまでに、何か、起きるだろうか?
「幕が上がる前に」
千晴の言葉は予言のようにみちるの中へと落とされた。
*
幕か上がる前に?
新宿の、夕刻の喧騒の中をみちるは考え込みながら歩いていた。
いつもなら麗子と一緒に帰るのだが、今夜は明後日に公開を控えた新公演の舞台確認があり遅くなりそうだと聞き、みちるは先に失礼する事にした。
『時間もまだ早いし、大丈夫ね。気をつけて帰るのよ』
麗子に送り出され劇場を後にしたみちるは新宿駅に向かう靖国通りに出た。
西陽が隙間なく往来する車に反射している。新宿が夜の街へと姿を変える時間が迫っていた。
夕陽溢れる雑踏の中、人にぶつかりながらみちるはゆらゆらと歩く。
幕が上がる前に、何か? そんな事……。出会いもないのにね。
あり得ない。みちるは肩を竦めた。
考えるのをやめたみちるは、早く帰ろうと、急に走り出し、人に勢いよくぶつかった。
「あっ」
アルタ前の大きな横断歩道の真ん中だった。
「ごめん、大丈夫、君?」
思い切り尻もちを着いてしまったのはみちるだった。ぶつかった相手がスッと手を差し出してくれているのが見えた。
背が高い。みちるが思い切り見上げなければ顔が見えなかった。
夕刻の、茜色の陽光を背に受けて屈むその人は、若い男性だった。
「あ、すみません、私の方こそーー」
ぶつかってしまって、と言いながら立とうとしたみちるは、地面に突いていた手が何かに当たった感触を覚えた。
下を見ると、パスケースだった。この青年がぶつかってしまった時に落としたものと思われた。
「ほら、信号変わっちゃうよ。早く」
「す、すみません」
青年に手を取られ立ち上がる直前、みちるは落ちていたパスケースを拾った。
みちるが立ち上がるとほぼ同時に、青信号が点滅を始めた。行き交う人々が走り出す。
「急ごう。君は駅に向かってたんだよね?」
「え、あ、はい。でもあなたはーー」
アルタ側に行きたかったんじゃ? と言う言葉を口にする前に青年はみちるの手を引き、駅へと走り出していた。
みちるの背後から声がした。
「あれ、津田ー! どこ行くー?」
津田?
振り返ると、大学生らしき数人のグループが向こうへ渡りながらこちらを見て手を振っていた。
「ごめん、先行ってて! 場所は分かってるから、直ぐに追うよ!」
青年は友人達に応え、みちるの手を引き横断歩道を駅側へと走り出した。
握られた手が、たくさんの戸惑いを持ってる。
あなたは、私と同じ名字?
Tシャツにジーンズというラフなスタイルだが、さり気なく羽織るサマージャケットが品を漂わせている。微かに、いい香りがした。
二人が渡り切ったところで、信号が変わった。パラパラと走って来た人が渡り終え、車の往来が再開した。
「あの、すみません」
おずおずと言ったみちるに青年は優しく笑いかけた。
「ケガは無い?」
みちるは、驚く。
ぶつかって行ったのは自分なのに。
無いです、と応えようと青年を見上げて息を呑んだ。
横断歩道で手を引かれ走って来る間は気付かなかったが、改めて真正面から向き合い、知る彼の姿。育ちの良さが滲み出る洗練された美青年だった。
思わず見惚れそうになったみちるは手の中の感触に我に返った。
「あ、あの、ありがとうございます。ぶつかったのは私なのに。私は大丈夫です」
それは良かった、と微笑む青年にみちるの胸が跳ねた。内心で、フルフルと頭を振る。
「それとっ、やっぱりコレ、あなたのですね」
首を傾げた青年にみちるはパスケースを差し出した。
落ちていたパスケースに気付いた時、定期券の名前が見えたのだ。
〝ツダ タケアキ〟
友達が「津田」と呼んでいた。これは多分、この青年のもので間違いない。
青年は、ああ、と笑った。
「ありがとう、拾ってくれていたんだ」
柔らかな笑みと共に受け取った青年はいたずらっぽく肩を竦めた。
「駅の改札から出てきて、手に持ったままだったところに予想外の方向から衝撃があってね。いや、ホントにビックリ」
ひゃああ、とみちるは両手で顔を挟む。
「す、すみませんっ」
みちるの反応に青年は、アハハと笑い出した。
「ごめんごめん。嘘だよ、あくまで僕の不注意」
みちるは、えーっ、と眉を下げた。
もしかして、お茶目な人? 困った顔をしたみちるだったが、屈託無く笑う青年に、思わず一緒に笑い出してしまった。
笑うみちるに青年は柔らかな笑みと共に言う。
「よかった、君が拾ってくれなかったらコレは今頃車に轢かれてた。ありがとう」
そんな……、と戸惑うみちるに青年はフワッと微笑む。
「じゃあ、信号変わったから僕は行くね。考え事もいいけど、気をつけて歩かないとダメだよ」
「え……」
みちるが何か応えようとした時にはもう青年は、青に変わった横断歩道へと走り出していた。
一度だけ振り向き、みちるに軽く手を挙げ挨拶した青年はあっという間に雑踏に呑まれ見えなくなった。
ツダ、タケアキさん。
定期は、渋谷から三田、となっていた。それだけでは何も分からない。なのに、何故こんなに気になるのだろう。何故こんなに、胸がドキドキするのだろう。
広く人が溢れる東京の街。多分、もう二度と会う事などない。なのに何故ーー。
**
俺達は何故、みちるが誰かに恋をする日が来る事を予想しなかったのだろうーー。
舞姫【後編】に続く
これが基本のサイクルになっているが、公演内容の人気によっては一月で終わらずロングランになる事もあれば、一月持たず次に移る事もある。
そういった全ては麗子の采配にかかっているのだが、麗子は踊り子達への細かな気配りも忘れない。
人気のある子を目立たせなければいけないのは客商売の為致し方ないが、なるべく彼女達が気持ち良く舞台に立てるよう演目、特に出演回数などに気をつけていた。
『今回は少ない』
『あのこばっかり』
『私、こういうのはイヤ』
等々、彼女達の文句は枚挙に暇がない。
しかし麗子は彼女達の言葉にはちゃんと耳を傾ける。
彼女達のモチベーションを上げ、乗せなければショーはつまらないものになってしまう。客は、お金を出して観に来ているのだ。
客は正直だ。つまらなければ、来なくなる。常連客の存在が不可欠なストリップは客をも乗せなければいいショーなど出来ない。
ベストパフォーマンスが、何よりリピーターを生む事は、麗子自身が一番良く知っていた。
新しい公演は二日後に迫っていた。
†
「みちるちゃんはもしかして、ヴァージン?」
「ええ゛え!」
壁一面鏡張りの広いリハーサル室で練習終わりのストレッチをしている時だった。
ヨガのポーズで目を閉じ深呼吸をする千春の言葉に、みちるはすっとんきょうな声を上げ、隣を見た。
「やだ、やっぱり~」
ゆっくりと座禅のポーズに戻った千春が片えくぼの愛らしい笑顔をみちるに向けた。
「ど、どうして?」
慌てるみちるに千晴はポージングしながら言う。
「みちるちゃん、優雅でとっても綺麗な動きをしているのに、どこか硬いの。最初は、ストリップへの躊躇いかな、って思ったんだけど、みちるちゃんの覚悟も決意も知ってるから、それは違うなぁ、って思ってちょっと考えてたんだけど、もしかしたらと思ったら、やっぱり」
千晴の言葉はあまりにも的確だった。みちるは「はぁ」とだけ応えるしか出来なかった。
千晴と同じポーズを取ったまま考え込んでしまう。鏡に映る自分を見てため息を吐いたみちるに千晴はフフッと笑った。
「大丈夫だよ、色気はあるから。ウブと色が不思議なバランスで同居してる。それも魅力の一つだから、きっとお客さんは喜ぶよ。あたしが保証する」
みちるの顔が微かに明るくなった。
お世辞が入っていたとしても、不安に覆われる今、一番嬉しい言葉だった。みちるの口からは「ありがとう」という言葉が素直に溢れた。
ニコッと笑い、頷い千晴は身体をゆっくり捻りながら息を吐いた。
「ねぇ、みちるちゃん」
千晴は、鏡越しにみちるに問いかける。
「大事な人はいる?」
「大事な、人?」
みちるはストレッチをやめ、千春に身体を向けた。
「そう、大事な人。いるでしょう?」
瞬時にみちるの脳裏を過ったのは、星児と保、そして麗子だった。
「大事な人なら、いるよ。んー、三人、かな。」
「三人?」
「うん」
千晴は目を丸くしてみちるを見た。次の瞬間。
「ちょっと違う~」
カラカラと笑い出した千晴にみちるは首を傾げた。
「違うの?」
千晴は頷く。
「みちるちゃん、恋だよ、恋。みちるちゃん、恋してないの?」
「え、」
暫し、固まる。
こい、恋。
思い浮かべた二人の男は、自分にとってあまりにも遠い。ドキドキと癒しが、何の感情に起因しているのか。
みちる自身、境界線は曖昧なままだった。
恋とはどんなモノなのか。説明のつかない想いは、恋を測る天秤に乗せてどちらかに傾くモノなのか。
何も分からず、ただ無我夢中で生きてきた。そんな中であまりにも自然に、自分の半身を形成するかのような存在となっていた二人の男。
二人を想うと心地よい胸の痛み。これは、何という感情?
分かんない。だって私は二人を好きになってはいけないと思うから。
私はいずれ、二人の元から巣立たなければいけないのだから。
伏し目がちになり黙ってしまったみちるに、千春が優しく声を掛けた。
「みちるちゃんのデビューはまだ先だから、その前に恋が出来るといいね」
みちるのデビューは、次回公演の次に決まっていた。あと一ヶ月半ほどある。
それまでに、何か、起きるだろうか?
「幕が上がる前に」
千晴の言葉は予言のようにみちるの中へと落とされた。
*
幕か上がる前に?
新宿の、夕刻の喧騒の中をみちるは考え込みながら歩いていた。
いつもなら麗子と一緒に帰るのだが、今夜は明後日に公開を控えた新公演の舞台確認があり遅くなりそうだと聞き、みちるは先に失礼する事にした。
『時間もまだ早いし、大丈夫ね。気をつけて帰るのよ』
麗子に送り出され劇場を後にしたみちるは新宿駅に向かう靖国通りに出た。
西陽が隙間なく往来する車に反射している。新宿が夜の街へと姿を変える時間が迫っていた。
夕陽溢れる雑踏の中、人にぶつかりながらみちるはゆらゆらと歩く。
幕が上がる前に、何か? そんな事……。出会いもないのにね。
あり得ない。みちるは肩を竦めた。
考えるのをやめたみちるは、早く帰ろうと、急に走り出し、人に勢いよくぶつかった。
「あっ」
アルタ前の大きな横断歩道の真ん中だった。
「ごめん、大丈夫、君?」
思い切り尻もちを着いてしまったのはみちるだった。ぶつかった相手がスッと手を差し出してくれているのが見えた。
背が高い。みちるが思い切り見上げなければ顔が見えなかった。
夕刻の、茜色の陽光を背に受けて屈むその人は、若い男性だった。
「あ、すみません、私の方こそーー」
ぶつかってしまって、と言いながら立とうとしたみちるは、地面に突いていた手が何かに当たった感触を覚えた。
下を見ると、パスケースだった。この青年がぶつかってしまった時に落としたものと思われた。
「ほら、信号変わっちゃうよ。早く」
「す、すみません」
青年に手を取られ立ち上がる直前、みちるは落ちていたパスケースを拾った。
みちるが立ち上がるとほぼ同時に、青信号が点滅を始めた。行き交う人々が走り出す。
「急ごう。君は駅に向かってたんだよね?」
「え、あ、はい。でもあなたはーー」
アルタ側に行きたかったんじゃ? と言う言葉を口にする前に青年はみちるの手を引き、駅へと走り出していた。
みちるの背後から声がした。
「あれ、津田ー! どこ行くー?」
津田?
振り返ると、大学生らしき数人のグループが向こうへ渡りながらこちらを見て手を振っていた。
「ごめん、先行ってて! 場所は分かってるから、直ぐに追うよ!」
青年は友人達に応え、みちるの手を引き横断歩道を駅側へと走り出した。
握られた手が、たくさんの戸惑いを持ってる。
あなたは、私と同じ名字?
Tシャツにジーンズというラフなスタイルだが、さり気なく羽織るサマージャケットが品を漂わせている。微かに、いい香りがした。
二人が渡り切ったところで、信号が変わった。パラパラと走って来た人が渡り終え、車の往来が再開した。
「あの、すみません」
おずおずと言ったみちるに青年は優しく笑いかけた。
「ケガは無い?」
みちるは、驚く。
ぶつかって行ったのは自分なのに。
無いです、と応えようと青年を見上げて息を呑んだ。
横断歩道で手を引かれ走って来る間は気付かなかったが、改めて真正面から向き合い、知る彼の姿。育ちの良さが滲み出る洗練された美青年だった。
思わず見惚れそうになったみちるは手の中の感触に我に返った。
「あ、あの、ありがとうございます。ぶつかったのは私なのに。私は大丈夫です」
それは良かった、と微笑む青年にみちるの胸が跳ねた。内心で、フルフルと頭を振る。
「それとっ、やっぱりコレ、あなたのですね」
首を傾げた青年にみちるはパスケースを差し出した。
落ちていたパスケースに気付いた時、定期券の名前が見えたのだ。
〝ツダ タケアキ〟
友達が「津田」と呼んでいた。これは多分、この青年のもので間違いない。
青年は、ああ、と笑った。
「ありがとう、拾ってくれていたんだ」
柔らかな笑みと共に受け取った青年はいたずらっぽく肩を竦めた。
「駅の改札から出てきて、手に持ったままだったところに予想外の方向から衝撃があってね。いや、ホントにビックリ」
ひゃああ、とみちるは両手で顔を挟む。
「す、すみませんっ」
みちるの反応に青年は、アハハと笑い出した。
「ごめんごめん。嘘だよ、あくまで僕の不注意」
みちるは、えーっ、と眉を下げた。
もしかして、お茶目な人? 困った顔をしたみちるだったが、屈託無く笑う青年に、思わず一緒に笑い出してしまった。
笑うみちるに青年は柔らかな笑みと共に言う。
「よかった、君が拾ってくれなかったらコレは今頃車に轢かれてた。ありがとう」
そんな……、と戸惑うみちるに青年はフワッと微笑む。
「じゃあ、信号変わったから僕は行くね。考え事もいいけど、気をつけて歩かないとダメだよ」
「え……」
みちるが何か応えようとした時にはもう青年は、青に変わった横断歩道へと走り出していた。
一度だけ振り向き、みちるに軽く手を挙げ挨拶した青年はあっという間に雑踏に呑まれ見えなくなった。
ツダ、タケアキさん。
定期は、渋谷から三田、となっていた。それだけでは何も分からない。なのに、何故こんなに気になるのだろう。何故こんなに、胸がドキドキするのだろう。
広く人が溢れる東京の街。多分、もう二度と会う事などない。なのに何故ーー。
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俺達は何故、みちるが誰かに恋をする日が来る事を予想しなかったのだろうーー。
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ありがとうございます😊
後半は来週くらいに更新出来たらと思います🎶
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ともあきさんの作品、意味なく長々じゃないので、気にしないでください‼️
とってもとっても楽しみに読ませて頂きます✨
なんて嬉しいお言葉…😭💕ありがとうございます❣️
頑張って更新していきますね❗️
嵐の前の静けさ感、半端ないです😱
みちるちゃんも、色々大丈夫なのかな〰️😅
だけど、気持ちわかりますよっ👍
星児と保、どちらかなんて選べない❗️😁
でも、麗子さんがちょっと可哀想ですよね😣
何も事件は起きてないのに、毎回ハラハラドキドキしてます😅
これからの展開、とっても楽しみです🐹
うさぎさん、ありがとうございます❣️
長い長いお話なんです😣💦
この先、色々動き始めるはずなんですが、すみません、ダラダラで😭
それぞれの想いがこんがらがって、そこにまた……となっていきます。
だんだんと展開早くなっていきますので、楽しんでいただけますように❣️😊