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二章 元おっさん、帝国へ

25 元婚約者相手

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ファルモーナス帝国———。

正しくはファルモーナス魔導帝国。

魔導の力で国が動いているくらい、ファルモーナス帝国では、魔導が主流である。
存在する学院も、帝宮も騎士団も。全てが魔導の力で動いている。王国のリルモスよりも面積はあまり大きくは無いが、その代わりの領地はほとんど皇帝のものとなる。皇帝に認められた貴公子が、その領地の領主となるのは、ファルモーナス帝国の主流となる。
皇帝に認められるのは、貴族の息子たちが主であり、学院内やその他の成績で決められる。

それは、貴族の間では名誉ある称号だと言われている。

そしてファルモーナス帝国の第三皇子。その人物には1人の妹がいる。誰からでも愛され、愛想が良く、慕われる人物———と言うのは、裏の顔。


♢♢♢

ランスとアンナさんと一緒に、俺は王国を出ていく。王宮に訪れてから、3日後のことだった。馬を上手に扱えれるように、訓練する必要があり、3日間のうちに馬を上手に乗りこなせるよう、時間を費やした。
そして、いよいよ上手くなれるようになったのが、王宮訪れてたからの、3日後と言うわけであった。

俺が乗っている馬は、黒鹿毛の種類である。馬には疎く、どのような種類で、どのくらい走るのか。それは全く検討がつかない。

「ティーナ。ヴィーゼをよろしくね」
「ぶるる(もちろん)」
(ティーナと言うのか。女の子?)

俺はティーナの背中に乗り、手綱を掴む。ファルモーナス帝国は、遠くもなく近くもない。約2日でたどり着けるらしく、その間のローズとカメリアは王宮に居る。ランスの友人であれば、大丈夫だろうとアンナさんが提案してくれた。
何気に王国以外に行く場所は初めてともなる。それに、3日前に言っていたあの言葉。10歳のところでは貴族界隈なら、普通の事だろうと思うようにするが、
それが気がかりであった。

準備もしっかりと整え、いつ戦闘があっても良いようにはするが、できる限り道中に現れて来る魔物は、使役しておきたい。沢山の魔物使役をしたら、魔物たちが住めるような場所を作り、人間界からひっそりと暮らせるような。そんな場所を作ろう。

…で、いつか。魔物界隈の中でも最強と評されるドラゴンを、使役できるぐらいまでは強くなりたい。
ギルドカードは常に持つようにし、いつでもステータスを見れるようにはしておこう。それと、ヘイルテさんが言っていた、想像しただけでステータス画面が表示される理由は、バグなのか、はたまた魔法的なものなのか。

それが何なのかは考えてもキリがない。そっち方面の方は疎く、文系だ。もし日本のように科学が進歩しているのであれば、まだ話は分かる。そうじゃないのだとしたら…。

ダァーーー!!一旦考えるのはやめよう。頭がパンクしそうだ。

「ヴィーゼ、そろそろ行くわよ」
「…了解」
(ひとまずは集中だ。アンナさんが俺に護衛役を命じたのは、何かあるからか? そうだとしたら、重要なポジションになりそうだ…)

気を引き締め、いよいよ持ってそのファルモーナス帝国が存在する、西の方面へと馬を走らせる。ティーナがひと時のパートナーのようだ。

俺は黒鹿毛であるが、ランスは白馬。白い毛並みで、手入れがされているのか、サラサラのように見える。王族ならではの象徴なのか、ランスの乗っている馬には金色のような装飾品が施されていた。手綱も、鞍も。それに堂々と座って、真っ直ぐと遠くを見ているランスは、初めて見る。
いつもは子供のようにはしゃぐ姿ばっかり見るが、こんな風な王女らしい肝が座った表情は、何となく新鮮な気持ちがする。

アンナさんの馬は栗毛。栗色の色をした馬に乗る、甲冑防具を着たアンナさん。アンナさんもその馬の子もすごく仲良さげに見える。
それはランスもそうだった。乗馬をする人は、馬との信頼関係も必要としているのだろうか。それなら、俺も早いとこティーナとの信頼を深めなければならない。

「では、出発よ。ファルモーナス魔導帝国へ」

ランスのその言葉で、俺たちは手綱を引き、馬を発車させる。3日間で叩き込んだが、やはり不慣れなことは早々は慣れない。ちょくちょくと慣れていけばいいのだろう。

♢♢♢

一方、ファルモーナス帝国 帝宮では。

「え、ランスが?」
「はい、今からこちらに向かって来るそうです」
「そうか、あのランスが……」

そう呟くのは、何色にも染まらなさそうな、黒色の髪をし、瞳は吸い尽くされそうな青目。身長は高くもなく、小さくもない。1人の少年が居た。
少年の名前は、グロウ・ファン・ファルモーナス。ファルモーナス帝国の第三皇子。2人の兄を持ち、2つ年下の妹を持つ存在。
ランスの元婚約者であったが、心のどこかでは未だにランスの事を思っていた。

そして書庫にいるのはグロウともう1人。グロウ専属の執事である、ファウスティノはランスが来ている現状を伝える。

ランスより確実に年上であるグロウは、確実に不満を抱いていた。

(何故、今更……)

なぜ婚約破棄してから3年経った時点で、再びグロウの祖国にやって来るのか。考えてもキリがない。思考がぐちゃぐちゃになる程、混乱する。

#何を求めているのか?____#


グロウの脳裏には、そんな言葉が張り巡らされる。

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