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第2話 - Ⅲ(エイブラハム)
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ーー火星人だ。
操船システムの大部分ーー〈マザー〉以外を掌握した地球外生命体。その鮮明で淀みない答えが、直接彼の脳に突き刺さる。しかし、状況に対する認識との矛盾《ジレンマ》が、その答えを否定する。
先ほどの女はどこへ行ったのだろう? こやつらはどうやってここへ入ってきたのだ? 脳は思考を止めない。答えは可能性の渦に揉まれ、確率論の袋小路へと行き着くだけだ。
エイブラハムは感じていた、抗えない力を。男から溢れ出ている、禍々しいほどの生命の奔流を。
男の火星人が目を鋭く尖らせ、エイブラハムの身体を舐め回すように見つめる。
「おい、ドリーン。食いしん坊も、大概にしてくれよな。お前、またこいつ、食おうとしただろ。さっきので十分だったろ、あんないっぱいいたんだ」
火星人の男が、女に向かって喋りかける。
話せる、と彼は驚嘆とともに心のなかでひとりごつ。彼の記憶のなかに、人語を操る火星人はこれまで存在しなかった。いまのいままでは。可能性の海に、新しい可能性が加わった。彼らが火星人ではない、という可能性だ。火星人のモノマネをしているだけなんじゃーー。
「やい、おっさん。あんたらが、俺たちをなんて呼んでるのか知らないが、俺らはお前たちと違う。ほう、火星人か。あいつらはそんな情報持ってなかったな、ドリーン」
背後で女の声がする。
「ええ、ヴォーグ。あの人たちは私たちの存在を予測することもできてなかったわ」
沈黙。嫌な感じがした。この声だ、俺が昨晩、腐るほど聞いたのは。
操船システムの大部分ーー〈マザー〉以外を掌握した地球外生命体。その鮮明で淀みない答えが、直接彼の脳に突き刺さる。しかし、状況に対する認識との矛盾《ジレンマ》が、その答えを否定する。
先ほどの女はどこへ行ったのだろう? こやつらはどうやってここへ入ってきたのだ? 脳は思考を止めない。答えは可能性の渦に揉まれ、確率論の袋小路へと行き着くだけだ。
エイブラハムは感じていた、抗えない力を。男から溢れ出ている、禍々しいほどの生命の奔流を。
男の火星人が目を鋭く尖らせ、エイブラハムの身体を舐め回すように見つめる。
「おい、ドリーン。食いしん坊も、大概にしてくれよな。お前、またこいつ、食おうとしただろ。さっきので十分だったろ、あんないっぱいいたんだ」
火星人の男が、女に向かって喋りかける。
話せる、と彼は驚嘆とともに心のなかでひとりごつ。彼の記憶のなかに、人語を操る火星人はこれまで存在しなかった。いまのいままでは。可能性の海に、新しい可能性が加わった。彼らが火星人ではない、という可能性だ。火星人のモノマネをしているだけなんじゃーー。
「やい、おっさん。あんたらが、俺たちをなんて呼んでるのか知らないが、俺らはお前たちと違う。ほう、火星人か。あいつらはそんな情報持ってなかったな、ドリーン」
背後で女の声がする。
「ええ、ヴォーグ。あの人たちは私たちの存在を予測することもできてなかったわ」
沈黙。嫌な感じがした。この声だ、俺が昨晩、腐るほど聞いたのは。
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