弟を 雅な公爵令嬢に育てようと思う。

ママさん看護師

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長々とした自己紹介は終わったので、本編が次から始まります(弟、なかなか出てこなくてゴメンナサイ)。

人さらいが白昼堂々やってきたので、バトルに突入します。

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一般的病棟がある方向から、二頭立ての馬車がこちらに向かってくる。

その馬車には、身なりは平民だが、体は傭兵のように屈強な男の馭者が二人乗っていた。

馬にひかれる荷台の中には、布で隠しているが、どうみても檻にしか見えない箱が入っている。

…その檻、何に使うのかな…?。

これから起こる事を予想した私は、げんなりとする。


その馬車が、目の前で止まった。

男二人がそこから降りてきて、声をかけてくる。

「ディルア家の使いの者です。
アーデルハイド・ディルア公爵婦人の命により、ハイド・ゼーゼマン…、いいえ。
本日よりハイド・ディルア公爵令嬢となりました、あなた様をお迎えに上がりました」

公爵家の使いの者のはずが、立場をわきまえずに、無遠慮に話し掛けてくる。

「人違いです」
と、私は間髪いれずに即答した。


…ハイド・ディルア公爵令嬢って、なんだよ。
おい、コラ。勝手に決めんなよ。
そんなこと、聞いてないぞ。

すると男は、足元にあった桶の中の水をいきなりぶっかけてきやがった。

ーーー…バチッ!。
と、反射的に結界を瞬時に張り巡らせ、それを防ぐ。

…しまった…。

結界を張れるのは、神法が使える者のみ。

神職者とディルア家の者以外で、神法を使えるこの辺の住人といったら、私と私の父のみだ。

男達はそれを見ると、悪びれる事もなく、嘘くさい、やたらとへこへこした笑みで近づいてきた。

…おい、おい。
まずは謝りなさいよ。

私は、嫌悪感を露に顔をしかめた。

「ハイド・ゼーゼマン辺境伯爵令嬢ですね?」

「…はい、そうですが…?」

あ、物凄い嫌な予感…。

「ディルア家にて正妻がお亡くなりになり、後妻としてアーデルハイド公爵婦人が正妻となりました。
つきましては、アーデルハイド公爵婦人のお連れ子様でありますあなた様を、正式にディルア家にお迎えする事となりました。
よって、一緒に来て頂きたく存じます」

…ちょっと待て。
アーデルハイド母親よ。
あんた、何を企んでいるんだ!?。


更なる嫌な予感に、後々の事を思った。
ここで知らぬ存ぜぬを通すと、後から厄介事に発展しそうな気がする。

私は胸を張って視線を反らさず、ゼーゼマン辺境伯爵令嬢として、しっかりと対応する事にした。

「何の事をおっしゃっているのか、良くわかりませんわ。
それに、まず、そういうお話であれば、父を通すのが筋と思いますの。
ですので、父にお話を通していらっしゃらないあなた様方を、私は信用できませんわ」

「お話は、既に済んでおります。
それに、たかだか辺境伯爵の人間が、公爵家の人間となれるのですよ。
素晴らしいお話ではありませんか。
あなた様のお父上も、公爵家と縁で結ばれる良い機会となるのですから、まず、断ることはございませんでしょう」
「ええ、そうですよ。ですから、我々と共に来て下さい」

…こいつら…。
絶対に、父に話を通してなんかいないな。

多分、公爵家の人間には、間違いは無いだろうが…。

荷馬車に付いている紋章の旗は、確かに公爵家の紋章だし。
しかし、公爵家の人間が、こんな品のない事をするかなぁ?。

このやり取りは、どう考えても女児誘拐の典型的なやり方だよね?。


「私は、辞退するとお伝えくださいまし」

「はぁ?」

…おや?。
聞き返しの「は?」ではなく、「はぁ?」と言いましたね、今。

「私は、辞退するとお伝えくださいまし。
私は、アーデルハイド公爵婦人の連れ子では、ありませんわ。
私は、産まれてから六年間、ここ、辺境伯爵領で父様の愛情を一身に浴びて生きてきました。
アーデルハイド公爵婦人とは、面識ありませんもの。
そんな、見ず知らずの方の所になど、行きたくありませんわ。
辞退するとお伝えくださいまし」

…おぉ。
頑として首を縦に振らない私の態度に、男達の笑顔の仮面が、だんだん剥がれてきた。

「そうはいきません。
ディルア家は、代々聖女を輩出する家系にございます。
アーデルハイド公爵婦人が公爵婦人となれたのも、聖女の力を持つあなた様をお迎えする事が、条件の一つでもありますゆえ」

…ってことは、何か?。
あの人アーデルハイドは、自分が公爵婦人の座に収まるために私を売ったのか!?。

「…うわぁ、最っ低…」

「泣いて下さっても、喚いてくどさっても構いません。
もう、決まった事です、からっ!!」

と、言うが速いか、男達は私を捕まえに飛びかかってきた。

…やっぱり、力業できたか。

私の聖女云々の噂を知っているのなら、私の力量の噂も知っていても良さそうなのに…。

見た目に騙されるなんて、…愚かだなぁ。

「何度も言いますが、辞退するとお伝えくださいまし」

私は飛び上がり、男達の手を避ける。
そのまま真後ろに降り立つと、二人の尻…尾てい骨ケツの尾っぽ骨を爪先で蹴りあげた。

メキョっと、鈍い音がする。

「んがあぁっ!!」
「ごあぁぁっ!!」

二人とも、もんどりうって倒れた。

倒れたままの姿勢でケツを押さえて、動けないでいる。

…むしろ、その姿勢の方が痛いんじゃないかな?。

「なっ!。何をしやがるっっ!?。うぅ…っ、俺達は、公爵家の者だぞ!!」
「こんなことしやがって、ぐぅ…っ、ただで済むと思っているのか!?」

どう聞いても、公爵家の人間ではなく、三下の捨て台詞にしか聞こえない。

「正当防衛ですので、恨まないでくださいましね?」

私は嫌な顔をしながら、尻の肉に挟まれた感触の残る足を、地面にザリザリとこすり付けて不快感をやり過ごした。


尾てい骨。
もとい、尾骨びこつは骨盤の一部で、左右一対の寛骨かんこつ、その間にある仙骨、その仙骨からチョロリとしっぽみたいに出ている所が尾骨だ。

恥骨や腸骨の周りの筋肉と尾骨周囲の筋肉は、くっついて骨盤底筋こつばんていきんと呼ばれている。
この骨盤底筋は、排便時にいきんだり、内蔵を持ち支えている筋肉だ。

その骨に、ヒビを入れたのだ(折らなかったのは、せめてもの情けだ)。
この骨は、太さがさほどないから簡単に折ったりヒビを入れやすい(折れた骨を更に押し込めば、直腸を貫通させる事もできる/やらないけどネ☆)。

この骨を折ったりヒビ入れたりすると、やったばかりは激痛で暫くは動けなくなる。

痛くて立てない。
立とうとすると激痛が走る。
うずくまる。
すると、また痛みが走る。
そのスパイラルは、けっこーキツイ。

動かなければ、痛みはさほど出ない。
ヒビだから、そこまでは酷くはならないだろうけど、数週間は痛い。
毎回排泄時には痛みを伴い、立ったり座ったり…つまり、腹に力を入れる動作の時に、筋肉が動いて痛みを伴うのだ。

もちろん、馬には乗れない。
帰りの馬車は、きっと苦行となることだろう。

「…さて、あなた方二人。どういたしましょうか…?」

そのまま転がして置くのも邪魔なので、どうしようかと思案していると、バタバタと駆け寄ってくる足音が聞こえた。

私の幼なじみの男の子、ジョリーだった。

「ハイド!、大変だ!!。すぐに一般病院に来てー…って、また、人さらいかよ!?。
まぁ、そんなのどーだっていいから、すぐに来い!!」

…どうやら、こっちよりも向こうは、えらい騒ぎになっているらしい。

私はとりあえず、その内誰かがこの粗大ゴミを回収してくれるだろうと思い、二人の人さらいをそのまま放置して、その場を後にした。
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