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クウガ んんんんんんんん!?
炎の渦が空へと昇り、そして姿を消す。
そんな俺の魔法を見たサッヴァが首を縦に振る。
「大分、前の状態に近づいたな」
そして告げられた内容にホッとした。剣もそうではあるが、やはり空白の期間があると腕は鈍ってしまうのだ。特に魔法に関しては細かい調整などができなくなっていたから焦った焦った。俺の場合、魔力の量も質も平凡以下だから魔法の調整ができないともらった魔力がすぐに枯渇してしまうのだ。俺の左手首には以前サッヴァからもらったブレスレットが装着されている。
「しばらくはこのまま炎魔法のみを鍛えた方が良いだろう。目に見えやすい炎魔法なら攻撃性もあり、調整もしやすい。水は攻撃の際には変化をつける必要があり、風魔法は見えない直接見えない分調節が難しい。最低でも能力変化までは極めた方がいいが、とりあえずは後回しだ」
「最初の頃は一通り教わってましたが?」
「あれはまだクウガに魔法そのものの知識や経験がなかったからだ。滅多にあることではないが、風魔法を出そうとして水を出してしまう可能性もある。それにまっさらな状態であればその分だけ内容も吸収しやすい。だが今は魔法を使ってから期間が開いてしまったため、変な癖がついてしまっている。だから一から基本的なことを教え直さなければならない」
あー・・・・・・教え始めの頃の方がよかったってことか。なまじ経験や知識があるからこそ問題があるということね。あれ、じゃあ魔法に関しては俺能力下がってる? マズいな。ただでさえ無理ゲーに飛び込もうっていうのに、これ以上ダメになったら難易度高すぎだろうが。
俺が黙っていると、サッヴァの手が俺の頭に伸びた。
「心配しなくて良い。真面目なお前ならばすぐに取り戻せる。それに知識や経験があるこそそれが活きることもある。今は調整が難しいとは思うが、以前よりも魔力の消費を抑えることが出来ている。無駄にはなっていない。安心していい」
そう伝えながら俺の頭に手を置き、ぎこちなく撫でるサッヴァ。俺はというとサッヴァの顔を直視できないでいた。精々うつむいて「ありがとうございます」と口にするくらいだ。
何故直視できないか。それはサッヴァが笑いかけてくるからだ。あの、サッヴァが! 笑いかけてくるんだよ!!
笑うといってもニコニコするのではなく、フッって感じの微かな笑顔だけど、あの真面目な顔や怒った顔ばかり見せていたサッヴァが笑うんだよ。いつも笑っているわけではなく、俺に対してのみ向けられるんだよ。もう動揺しないようにするのでいっぱいいっぱいだよね。
俺が街に戻ってきてから、ずっとそんな感じなのだ。罪悪感も相まって何もつっこめない。
「もう少しやれるな?」
俺の頭から手を離したサッヴァは、もう普段通りの顔つきに戻っている。
心臓とポーカーフェイスに悪いんだよな、サッヴァのあの顔。下手に突けば怒鳴られるだろうから何も言わない方が得策ってわかっているけど。
「どうした?」
「いえ、なんでもありません。よろしくお願いします」
頭を下げてサッヴァから距離をとる。
思わず浮かんでくるサッヴァの笑みを、俺は頭を振ることでしか雑念を消すことができなかった。
+++
なんかさ、最近距離が近くないっすか。近くないっすか!?
修行期間なんだよ。魔王倒さなくちゃいけないんだよ。わかる? ここで「やったー。ノンケの男とイチャラブできるぜー」って軽いノリとかできねぇんだよ。堪え忍ぶしかねぇんだよ、忍者でもないのによおおおお。
だってのに、何なの、何なの、何なの本当によおおおおおお。
ステンは自分が性欲の対象として見られるか聞いてくるし。オナニー途中で扱かれて発射しちゃったし。
ダグマルからは告白モドキをさせられるし。・・・・・・召還当初のまだ状況とかがわかっていないときだったらOKしてたわ、クソゥ。
サッヴァは今のところ大きな変化はないものの、前より俺に対して甘くなったというか柔らかくなったというか。真面目で仏頂面の人が微笑むとか何その微笑みの爆弾。ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます! ってか!!?
アトランに関しては言わずもがなだけどね!!
だが、ここまで美味しい話だと何か裏があると勘ぐってしまう。
これは絶対に俺が手を出した瞬間に、何もかもが失ってしまう展開だろ。俺は知ってるぞ。パーティーでヒロインに囲まれた勇者がヒロインに手を出して、ざまぁされるということを。おっさんたちがヒロインかよってツッコミがあるかもしれないが、俺にとってはヒロインなの!! ゲイで年上好きなんだから仕方ないだろ!! あとついでに言っておくがステンまでおっさん扱いだと、その年齢層辺りからぶん殴られることを覚悟しとけよ!
とにかく、ダグマルのときにも思ったが、これは確実な死亡フラグ。しかも童貞にとってはしんどい死亡フラグ。調子に乗ったら負けるやつだ。
自分に気があると思って手を出して返り討ちにされる上に軽蔑されるパターン。それか変に約束なんかしてしまい、魔王に負けるか相打ちになって、約束は叶うことはなかったエンドになるパターン。あるいは俺が手を出したことで魔王を倒した後に第三者が俺に復讐してきて、ざまぁされるパターン。
これら3つのパターンが考えられる。勇者ざまぁ話多かったし。WEB小説だとざまぁって大人気だったし。俺も読んでたけども、勇者に裏切られたおっさんが逆に勇者をざまぁする話とか読んだけども。
・・・・・・まぁ、3つのパターンでも2つ目以降になる可能性って低いけどな。
そもそも同性愛という概念がない世界の時点で、ノンケからゲイに転身するのは無理だよな。やっぱりリグマルと話したときに褒美として男をあてがってもらうべきだったか。いや、今更後悔したって仕方ないけども。
とにかく真面目にやるしかないのだ。地道なことからコツコツと。
そしたらきっといつか、童貞卒業できる・・・・・・かなぁ?
「クウガさん?」
声をかけられてハッとする。
俺はサヴェルナと一緒に朝食の準備をしていたんだった。俺が振り向けば心配そうな顔をするサヴェルナと目が合った。
「疲れてるんじゃないですか? 少し休まれては?」
「いや、回復魔法かけてもらってるから平気だよ。ちょっと考え事してただけだから」
俺は急いでテーブルを拭いた。
サヴェルナが盛りつけられたサラダを持って近づいてくる。その髪の毛は以前よりも大分短くなっていた。少し時が経って伸びてはいるが、それでも元通りというわけではない。思わず髪の毛を凝視してしまう。サヴェルナはそれに気づいてサラダを置くと自身の髪を指で絡める。短いそれはすぐに指から離れてしまった。
「大丈夫ですよ。髪はすぐに伸びますから」
「うん。伸びたら結ってあげるよ」
「えっ、クウガさん髪の毛縛れるんですか? あ、もしかして妹さんがいらっしゃったとか?」
「違う違う。兄ちゃんはいたけどね。心配性で他人のことが放っておけない人でさ。だから迷子の子とかを見つけるのが上手かったんだ。俺からしたら兄ちゃんも放っておけない人で、兄ちゃんのそばにくっついてたけど。その内に女の子を泣き止ます方法としていつの間にか身についてた」
「あ、だから子供に好かれやすいんですね」
「・・・・・・好かれてるのか、あれは。でもそのせいで子供は嫌いだけどね」
俺がそう言うと、サヴェルナは少し沈んだ顔をした。
どうしたのか尋ねようとする前に、サヴェルナがつぶやいた。
「私が、クウガさんからお兄さんを引き裂いてしまったんですね」
「ーーまあ、無差別で俺が選ばれたんだから仕方ないよ。むしろ選ばれたのがこんなに弱いやつでごめんね。前の勇者までとはいかなくても、もう少し強ければよかったんだけど」
異世界転移したのにチート無し野郎が、チートしかない魔王に立ち向かうとかどんな無理ゲーだよ。本当によう。逆に現実味を感じないから絶望しないんだろうけど。
自分でいうのもなんだが、俺、同性愛と関係がなければメンタル強えな。
「それも、多分私のせいかも、しれないです」
だがサヴェルナは首を横に振って辛そうに告げる。
「私がクウガさんを召還するとき、私は何もかもが怖かったんです。お母さんが死んだことも、お父さんが何をしてしまうかわからないことも、私に召還魔法を強制させようとする大人たちも。それだけじゃなくて母の自害によって前の勇者が死んだことで、この世界がどうなってしまうのかということも」
サヴェルナの顔色は悪かった。
「魔法はイメージです。特殊ではありますが召還魔法だって同じことだと思います。私は願わなければならなかった。強い人を欲しなければならなかった。魔物をすべて屠る強者を望まなければならなかったんです。でもお母さんが召還した前の勇者が怖くて、恐ろしくて、おぞましくて。だから願ってしまったんです。『強くなくてもいい。助けてほしい。私とお父さんを助けてほしい』って」
ほろほろと、サヴェルナの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「だからクウガさんが弱いのは、クウガさんの責任じゃありません。私の責任です。私が臆病で、自分のことしか考えていなかった結果です。クウガさんが苦労しているのも、家族と離れたのも、私が悪いんです。謝って許してもらえるとは思っていません。でもクウガさんは何も悪くないし、本来ならば何も背負うこともなかったんです」
それからサヴェルナはうつむいて、俺に対して謝罪を続けていた。
俺が何を言っても首を横に振って涙を流し続けていた。
チートじゃない理由。確定ではないが、サヴェルナの言ったことでほぼ間違いないだろう。
魔法はイメージといっていたが、その通りで、例えば炎魔法を出そうとするときに余計なことを考えてしまえば炎は弱かったりすぐ消えたり、最悪魔法すら出てこないときもある。
だからサヴェルナが「強くなくてもいい」と願ってしまったなら、俺が召還されたにしては弱すぎるのもうなずける。逆に怪人ミナゴロシが召還されたのも、そしてやつがあまりにもチートだったというのも、召還した人がとにかく力を求めたのだろう。人間性はあまりにも破綻していたが。
でも、まぁ。サヴェルナの話を聞いて、ちょっと安心したこともある。いや、チートがない理由がわかって安心したのとは別にだ。
俺はサヴェルナの頭を撫でた。
「サヴェルナ。俺を召還するとき、本当にさっき言った言葉を思ったんだよね」
「はい・・・・・・、ごめんなさい。ごめんなさい」
「なら、大丈夫じゃないかな」
サヴェルナが願ったのは「強くなくてもいい」ということともうひとつあった。
「俺はサッヴァさんもサヴェルナも助けられるってことだろ。それは、つまり魔王から2人を助けられるってことなんだから。むしろ勇気が湧くくらいだよ」
チートだろうが何だろうが、絶対に抜け穴はあるはずだ。
それに俺だけじゃなくて、ステンもダグマルも一緒にいるはずだ。どんな方法を使ってもいいなら、100%不可能ってわけじゃない。
むしろサヴェルナの言った通りなら、多分俺は助けることができるはずだ。それはつまりなんとかすれば魔王を倒せるかもしれないってことだろ?
そう思って慰めたつもりだったのだが、逆にサヴェルナは膝から崩れて泣いてしまった。ええええええ、励ましたつもりだったのにさらに泣いちゃうのかよ。両手で顔を覆って泣いてしまっているので、能力を使って泣き止ますこともできない。サヴェルナくらいの年齢の女の子が泣いている現場にいたことがないから、どうやって泣き止ませるのかもわからない。
どうすべきか悩み、キョロキョロと周囲を見回す。
すると部屋の扉が開いていてサッヴァがいることに気づいた。
朝食の準備ができておらず、さらに号泣するサヴェルナのそばにいる俺。
あ、ヤバい。これサヴェルナを泣かせたって誤解される案件だ。いや、誤解もなにも泣かせてしまったのは事実だけども。
冷や汗が流れる俺に、サッヴァはしばらく黙った後に
「サヴェルナ。少し部屋に戻って休め」
そう告げる。サヴェルナは父の言葉にうなずいて立ち上がると扉を出て行ってしまった。残されたのはサッヴァと俺。
サッヴァはまだできあがっていない食卓を見た。
「朝食はあと何が残っている?」
「え、あとはパンとスープぐらいですが」
「それなら私がスープを温める。それ以外のことは任せて良いか?」
そう言ってサッヴァが台所に入っていった。サッヴァが台所に入るのは初めて見たが、スープはサヴェルナがほとんど作っていたため後は温めるだけでいい。サッヴァが余計な味付けをしなければ問題はない。
俺はサッヴァに言われるがままパンと食器などの準備を行い、サヴェルナがいなくてもとりあえずは朝食の場ができあがった。
そしてサッヴァと2人きりの食事会と相成った。だがサッヴァが話しかけることはなく俺も進んで話を展開しようという気はないため、どうしても食事をする音がその場に響くばかりだ。
サヴェルナを泣かせてしまった罪悪感もあってどうにも居心地が悪い。さっさと朝食を食べてダグマルのところへ行こうと思った。そして早めに食事をとり、席を立とうとしたときだった。
「クウガ。少し話をしても良いか?」
そう言われてしまえば俺に断る道は残されていない。
それならばせめて怒られる前に謝ろうと、俺は頭を下げた。
「サッヴァさん、すいません。俺別にサヴェルナを泣かせようとしたわけではなくて・・・・・・」
「いや、その話ではない。娘とは何の関係もない」
へ? 俺が頭を上げると、眉間にしわを寄せて何かを悩んでいるようなサッヴァが目に映った。どうやらサヴェルナとは別の話題のようだ。あれか。魔王の話かな。
俺はサッヴァの言葉を待つが、サッヴァはよっぽど言い難いのか低い声でうなっていた。そんなに話しにくいのなら、別に今話さなくてもいいのだが。
「サッヴァさん。言いにくいのなら次の機会にしますか?」
「ーーいや、サヴェルナがクウガに謝罪していたのが聞こえてしまってな。クウガに謝罪するのならば今しかないと思ったのだ」
謝罪? サッヴァが俺に何を謝罪するというのか?
俺は首をかしげながらサッヴァの言葉に耳を傾ける。
サッヴァは目を閉じながら深く息を吐く。
「私は召還されたばかりのクウガを信用していなかった」
そりゃそうだ。サッヴァの言葉に納得する。だってあの怪人ミナゴロシが勇者じゃしょうがない。むしろ俺を家に泊まらせてくれて魔法を教えてくれたサッヴァには感謝しかないのだ。
「別に当然のことだと思いますよ。それでもサッヴァさんは俺に優しくしてくれたじゃないですか」
「それはお前に何かあれば娘の命に関わるからだ。以前も言ったが、もしクウガが前の勇者のような人物であれば精神を壊すつもりだった。そしてそれを確かめるために、私はお前に対して禁忌の魔法をかけてしまった」
「禁忌・・・・・・?」
そんな魔法があるなんて初めて聞いた。そりゃ禁忌っていうくらいだから使ったらマズい魔法なんだし、知らなくたっていいけどさ。
ってか俺そんな魔法かけられてたの? 体だって問題なしの健康体としか感じられなかったが。
思わず体を叩いてしまった俺に、サッヴァは右手で額を押さえた。
「読心術。ーーーー人の心を読む魔法だ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(思考停止中)。
「す、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ」
俺はイスを倒すように飛び降りてからダイナミック土下座の形をとった。
待て待て待て待て待て待て、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。いかんいかんいかんいかんいかんいかんいかん。俺の心の中ってもちろん妄想も入ってますよね。はい、死んだああああああああああ。俺死んだあああああああ。
「すいません、ごめんなさい。気持ち悪いものを見せてしまいました。切腹でしょうか。いえ、ハラキリですね。とにかく命を持って償いますので」
「落ち着け! 頭を上げろ! イスに座って話を最後まで静かに聞け!!」
サッヴァに怒鳴られて俺は恐る恐る頭を上げ、イスに腰掛ける。さっきの食事中とはまったく違う意味で居心地が悪い。断罪のお時間ですね。おしおきですね。モノ○マアアアアアアア。
「クウガ。多分お前が考えているようなことは起こらん」
「はっ、そうか。サッヴァさんは心が読めるんだった!」
「今は読むことが出来ない。効果はとうの昔に切れていたからな。だがなんとなく突拍子もないことを考えているということは予想出来る」
そしてサッヴァが頭を下げる。それこそテーブルに頭がつくのではないかというほどに。
「クウガ、すまなかった。もっと早くに言うべきだったが、今日まで躊躇してしまい黙っていた。言ったところでお前が混乱するのはわかっていたが、娘が謝罪したというのに私が何も言わずにいるわけにはいかなかった」
「サッヴァさん、あの、頭を上げて」
「だからお前が同性愛者だというのは初日からわかっていた」
サッヴァの言った内容に、俺の口から「ヒウッ」と声が漏れる。
ですよねえええええ。バレてないわけなかったよねえええええええ。普通にサッヴァや他の人で妄想してたもんねええええええ。ポーカーフェイス関係ないよねええええ。むしろ変態なことばっか考えてたのにお世話おかけいたしました。すいません。
「だからクウガが同性愛者であり、男同士がどういう性交をするかというのも早い段階で知ることになった」
「サッヴァさん。もういいですから。もうやめませんか。このやりとり」
誰も得しない。むしろ俺の胃が、胃があああああああ。
キリキリする胃に耐える俺に、サッヴァは追撃をしかけてきた。
「だからダグマルやステンに対しても、そういう目で見ているのもわかっている」
「ぐはっ」
「そしてかつてステンの、ア・・・・・・アナニーというのか、それに関してクウガが心底悩んでいるというのもわかっている」
やめてえええええ。サッヴァの口からアナニーとか聞きたくなかった! 聞きたくなかった!!
サッヴァは頭を下げたままで表情が伺えない。
「クウガが耐えていて、しかしそれが我慢出来ない状態になったからこそ、私はダグマルとステンに同性愛者であることを告げてしまった」
「うぐうううっ」
「本当に申し訳ない」
もうやめて、とっくに俺のライフはゼロよ!
胃が痛い! うおおおおっ、俺、この世界来てチートはないのに胃痛持ちになったぜチクショウが!!
そっか。ダグマルもステンも知ってたのは、こういうことだったのね。
「あの、もう、もう勘弁してください」
思わず両手で顔を覆ってしまった。ポーカーフェイスなんぞできるかああああああああああああああわわわあわわわわわっわわわわわ。
「それでだな、クウガ」
「まだあるんですか・・・・・・」
サッヴァは頭を下げて、俺は両手で顔を押さえて、互いに互いの顔が見れない状態で会話が続けられようとしていた。もういいよ。もうやめてくれよ。妄想はしてたけど、無理矢理なんてしてないもん。未だに俺童貞なんだぞ。ぶっちゃけ童貞卒業しようと思えば出来ちゃったイベントを耐えて耐えて未だに童貞なんだぞ。うわあああああああああ。
「クウガが、その、私に対しても妄想していたのは知っている」
「あの、本当に、気持ち悪くてすいません」
「クウガが謝ることなど何もない。禁忌を使った私がすべて悪い。クウガは決して自分を責めてはならん」
俺だって俺を責めたくねぇよ! でも責めちゃうに決まってんじゃん!!
結構俺妄想の中でやっちまったもん!! や っ ち ま っ た も ん!! 現実は童貞だけどな!!!
「そしてーー・・・・・・」
まだあるの!? 今度は何!!?
最早サッヴァを止める元気などない。俺はもう聞くしかない。
サッヴァはうめき声をあげながら、ボソリと、しかし俺に届くぐらいの声で言う。
「嫌ではなかった」
ーーーーん?
「その、クウガに、妄想されるのは、そこまで嫌ではなかった」
ーーーーんんん?
「クウガにそういう目で見られることに、悪い気はしないのだ」
ーーーーんんんんんんん?
疑問符が浮かんで俺が何も考えられない内に、サッヴァがガタンと立ち上がって部屋を出て行った。俺は顔を覆っていたから、イスから立ち上がる音と部屋の扉が開閉する音しか聞こえなかったが。
んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!?
~~~~~~
「なんか、凄い嫌な予感がした」
「なに、いってんの? ステン兄ちゃん」
「なんか、凄ぇ嫌な予感がした」
「何言ってるんですか、隊長」
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