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ダグマル+ステン 弟
(ダグマルside)
※これは「クウガ フラグとは折るものである」の後の話。
俺は複雑な気持ちを抱きながら目の前にいる人を呼ぶ。
「兄上」
すると公爵家を継いで間もない兄はニッコリと微笑んだ。
騎士になってからは数えるほどしか踏み入れることのなかった実家の屋敷。元々住んでいた家だというのに居心地の悪さは未だに払拭出来ずにいる。それは慣れということもあるが、過去のトラウマも含んでいるからだろう。
「ダグマル。セグマルには会ったかい? お前はセグマルの1番可愛かった時期を知らないからもったいないと思っているんだよ。だから会えるときには必ず会っておいた方がいい」
「兄上。世間話は結構なのでさっさと用件を進めてよろしいでしょうか?」
こんな堅苦しい言い方はこの家にいるとき、特に兄のいる前でだけだ。こんな口調をクウガや騎士のやつらに見られたら驚かれるだろう。団長やエマといった俺が騎士に入団し始めた頃を知っている連中ならば、まだ言葉遣いが貴族だったときのことを知っているだろうが。
兄は俺の急かした物言いに肩をすくめた。
「兄弟水入らずだというのに連れないな。それに私の前でも砕けた話し方で構わないんだよ。普段はそんな風に話していないんだろう?」
「いえ、今更変えることなど出来ませんよ」
兄を殺しかけてしまう前の、幼い頃の俺だってこの口調だったはずだ。
俺は書類を兄に渡す。クウガと同行する際に必要と思われるものを記したものだ。兄はそれを受け取るとすぐに目を通す。そして「で?」と言いたげに俺を見た。
「この程度の内容ならば、わざわざ直接届けなくても郵送すれば良かっただろう。だというのに私の家まで訪れた理由は? ーーいや、言う必要もないか。お前が一切関わりを持たないよう気をつけていたこの家に、ここ1年で何度も訪れている理由なんて1つしかないからな」
俺は言葉に詰まる。兄の言う通り、数十年の間で片手で足りる程度しか寄ることのなかったというのに、ここ1年だけでその回数は倍以上になった。理由なんてわかりきっている。
「あの勇者のことが、本当に大切なんだな」
しみじみと言われ、居心地の悪さがいっそう激しくなった。
あぁ、そうだよ。クウガのためだよ。クウガがこの兄と何を話していたのか知るためだ。告白したら見事に振られ、その後にクウガが兄の名を出したからだ。絶対にこの人が何か言ったに違いない。
黙りこむ俺に対し兄は複雑そうな顔になった。
「お前が私たちを頼ってくれるのは正直嬉しい。お前がどう思おうとも私とお前は家族で兄弟だ。それを否定されるのは誰であろうと許すつもりはない。だからこうやってお前と会う機会が増えたことを本当に嬉しいと思っている。だが、それが・・・・・・好きな男のためだと思うと、お兄ちゃん凄い複雑だぞ」
「お兄ちゃんとか自分で言わないでいただけますか?」
反応に非常に困る。
だが兄の言い分もわからなくはない。俺自身も自分の行動に開き直ってはいるものの、端から見ればおかしいということは重々承知している。女が理由で身を滅ぼした男は多くいる。だが男が男に惚れて何かしでかしたなど聞いたことがない。そもそも同性相手に恋情を抱くなど、クウガが来なければ考えられなかった。
「私としてはお前が女性と結婚して子を成して欲しかったんだがな。家のことなど気にせず、好いた女と一般的な幸せを掴んで欲しかった。でも結果は女ではなく男を好きになるなど・・・・・・さすがに予想できなかった。娼婦を嫁にすると思っていたのに」
勝手に予想されて落胆されるとか、どう考えてもそっちの勝手だろう。兄が望んでいたというのは重々承知していても、俺は結婚するつもりも子を作るつもりもなかった。俺にその気があろうとなかろうと、兄家族に迷惑をかけることがわかっているからだ。今甥のセグマルに兄弟はいない。義姉の体調が悪いわけではないのだが、どうにも子を授かるまでに至らないらしい。そんな状態で俺に子供ができれば、リッセン公爵家の後継者争いに巻き込まれる可能性は高い。それがわかっていて出来るわけがなかった。それに母親のことを未だに引きずっていて、女相手に深くのめり込む気にはなれなかったのだ。
男を好きになることにあまり抵抗はない。今のところクウガ以外でそういう気になった男は1人もいないが。
「兄上の気持ちはよくわかっているつもりです。ですがもうどうしようもないくらいに大切なんですよ、彼が」
「そうなんだろうな。私に頼ることに一切抵抗がないくらいなのだから。そもそも私が口出しする権利もない。だがセグマルから話を聞いたときはショックだったぞ。お前が勇者に対して甘いというのはわかっていたが、まさか男同士でそういう理由だとは思わないだろ。卒倒しかけたぞ」
兄の言葉に、俺は頭を下げて謝罪するしかなかった。
ギダンとティムが王都に入ってしまったとき、まさかセグマルや殿下と接触するとは想像できなかった。いつか兄にバレるだろうとは思っていたが、まさかセグマルの方からバレるとは思っていなかった。帰ってきた2人から話を聞いたときは、しばらく頭痛に悩まされていた。後ろめたいことはないのだが、衝撃を与えてしまったのは確実だっただろう。
「ダグマル、本当に気の迷いということはないのか? あるいは遊びとしてなら」
「それならば逆にここまで悩んでいません」
確かに最初はクウガから聞かされた同性愛ということに興味を持ち、それなら俺の境遇にも問題がないと考えた。そしてクウガが同性愛者だと聞かされて、これは都合がいいと思った。だがそれがここまで本気になるとは思わなかった。
あいつ、可愛いんだよなぁ。なんかこう、わしゃわしゃしたくなるというか。本当は戦いなんて向いてないだろうに一生懸命頑張ってるところとか、周囲の嫌悪や期待に押し潰されないところとか、俺に手を出したいって気持ちを耐えているところとかが、無性に可愛がりたくて仕方なくなる。これが庇護欲を誘うというんだろう。クウガからしたら嫌な気になるかもしれないしロッドからも苦言されるとわかっていても、止められる気がしない。
「随分と楽しそうだな」
呆れたような兄の声に、思わず崩れてしまった表情を引き締める。
兄は呆れた表情に若干の笑みを浮かべて俺を見つめていた。
「お前がそこまで楽しそうにしているのならば、私がとやかくいうべきではないのだろうな」
その言葉にばつが悪く、頭をかいた。その様子も兄にとってはおもしろかったのか、笑みの割合が広がった。
「クウガくんとは一度だけ会ったが良くも悪くも平和な男だったな。表情には出にくいが裏表がないと言ってもいいだろう。というよりも素直というか愚直というか、貴族には向かない男だ」
「策略とかは出来ないでしょうね。クウガは本来戦いとは無縁の世界にいたようですから。何故呼び出したのが彼だというほどに」
そこでハッと気づき、兄に問いかけた。
「そういえばクウガに何か変なこと言ってないですよね。どうも、そのーー様子がおかしいのですが」
「様子がおかしい? 具体的に説明出来ないのか?」
兄に聞かれるも言葉に詰まる。クウガに付き合わないかと言ったら、速攻に断られたなど言えるわけがない。そもそもあれは断られたというよりも本気にされていなかったと言ってもいい。
兄はしばし過去のことを思い返していたようだが、ぽんと手を打った。
「ああ。もしやとは思うが、彼に交際を申し込んだのかい?」
「・・・・・・何故そう思ったのですか?」
「お前に言われたら拒否するように言ったからな」
「何故!?」
思わず語気を強めてしまった。
だが兄は当然だという顔をして腕を組んだ。
「当然だ。お前が結婚する気がないとして、仮にもリッスン公爵家の血を継ぐ者であり、同時に王家の血を受け継いでいる。それが遊びで男に手を出したなど悪評にしかならん。といっても、お前を含めて勇者に関わる男は彼に絆されていると既に揶揄されているがな」
「俺は、遊びのつもりはないのですが」
「だとしても向こうはお前に対して何も思っていないぞ。いや、何もというのは違うな。あくまで性別として意識しているだけで、本気でお前とどうこうなりたいという気概があの勇者には一切感じられなかった。拒否するように言ったときも、普通に了承していた」
頭を抱えたくなった。
そんな気がしてた。クウガにとって俺は、俺も含む全員だろうが、クウガにとって恋愛対象に入っていないんじゃないだろうかって。性的対象ということで意識はされているだろうが、それ以上にならない。性欲が薄いわけではないのだろうが理性が強すぎるんだろう、必要以上に踏み込もうとしない。鈍感という部類なのかもしれないが、クウガがこの世界に来た環境が悪かった。なんせ前の勇者が好き勝手した後の勇者ということで、クウガに対しての当たりが激しかったからだ。意識的か無意識かは関係なく、クウガが性欲的なものを抑えつけてしまったのは確かだ。
だからこそ、魔王を倒し終えたらって前置きをして告白したんだがな。
言葉に詰まるのは何度目だったか。だが今が1番凹んでいる。
だというのに、俺を言葉で攻撃した兄は何でもなさそうに言う。
「悲観しているようだが、それはお前がそこまで本気でなかったということだろ?」
「何を言って」
「そうだろう? 彼がお前に意識を持つようなことをお前がしなかっただけじゃないか。惜しいな、ダグマル。お前は騎士に染まりすぎたようだ。貴族は大事なものほど抱えてばかりではいられないというのに」
そう言われ、俺はしばし無言で兄を注視する。
その内容を何度も脳内で反芻する。
「なぁ、兄上」
「何だ?」
にやにやと楽しそうにする兄の考えが理解出来ない。
「それは、欲しいものは奪えと?」
「別にそうとは言っていないさ。だが私がお前の立場ならば、黙って指くわえて待つつもりはないがな」
「ーーーーあなたは、俺に賛成なのか。反対なのか」
「私がどうこう言って意見を変えるのか? それならば私は今だってお前が騎士をやるのも、貴族を捨てようとするのも、結婚しないのも反対だが」
ああ、くっそ。
この人に勝てる気がしない。
そうだよな。俺は決めただろうが。クウガを俺のものにするって。捕られてたまるかってな。
魔王のこともある。今すぐは無理だ。だが終わったらそうじゃないよな。絶対に魔王のやつ、ぶっ倒す。クウガを死なせないのはもちろんだが、俺自身も死ぬわけにはいかない。元々死ににいくつもりはないが、死ぬ可能性が高い戦いに対して生にしがみつく覚悟が出来た。兄のことだ。俺がこう思うのも考慮しているんだろう。そして俺がこの戦いに勝てれば、俺の立場が良くなるというのも計算している。おそらく俺が貴族に戻れるように、騎士のままでも地位を高められるようにしているのだろう。家族の情も確かにあるだろうが、貴族としての打算も多分に含まれている。
上等だ。この人がそれでいいというなら、本気で落としてやる。
「全部終わったら覚悟しておけ」
俺がクウガの耳元でささやけば、クウガは瞠目して俺を見つめていた。
俺は笑ってクウガを見下ろした。
逃がす気はないからな。
+++
(ステンside)
クウガが魔王のもとへと向かうまであと1ヶ月を切った。
オレはというと最大の難関というか窮地に立たされていた。未だに解決できない問題があった。
「姉さんにいつ言えばいいんだ・・・・・・」
家の中で1人つぶやいた。朝食を終え街へと向かう前ではあるが、オレはこれ以上ないほど悩んでいた。
姉にまだクウガの旅に同行すると告げていない。そんな現実に全力で目をそらしたくなるが、そらし続けた結果が今の状況である。何をやってんだお前と言われたら、何も言い返せない。オレが行ける前提でいるだろうに、今更話せていないとか言えるわけがない。いや、絶対について行くし、行かないわけがないんだが。
ダグマルにもサッヴァにも、あの魔導師のアトランってやつにも言えない。クウガになんて尚更バレるわけには行かない。あれだけ大きなことクウガに言っておいて、こんなことバレたら幻滅されてもおかしくない。大人になろうって決めたってのにこれだからな。
「というより、言う必要ないんじゃないか」
そもそもオレ20代半ばだぞ。姉にゴチャゴチャ言われる筋合いはないはずだ。わざわざ姉に許可とらずとも、独断で行動したっていいはずだ。いい、はずなんだ。
だがオレの脳内に浮かぶのは手をポキポキ鳴らし、無表情でオレを見つめる姉の顔。違う、無表情じゃない。笑ってはいる。目だけが笑っていないんだ。
オレは確信した。五体満足で魔王を倒したとしても、その後姉によって粛正される。確実だ。間違いなく殺される。
「だが、どうやって説明する?」
オレは頭を抱える。
~~~妄想中~~~
「姉さん。オレ、クウガが魔王を倒すのについて行くつもりだ」
オレの言葉に姉は目を見開いて青ざめた。
「何、言ってるの? 馬鹿げたことはやめなさい」
「馬鹿げたことなんて言ってない。本気だ。クウガのためだからってわけじゃない。オレ自身のためにも、あの魔王に勝たなきゃいけない。死んだ義兄さんのためにも、それにこの村や、姉さんやティムのためにも。あいつを倒さなくちゃ、何もかもが滅茶苦茶になる」
姉の顔を真っ直ぐ見つめ、オレはきっぱりと伝えた。
「だからオレは守りたいんだ。だからこそオレは魔の森に向かう」
姉は何か言い足そうに口を開き、だが諦めたように首を振る。
「アンタの決意は固いようね。私がゴチャゴチャ言っても無駄みたい」
「ごめん、姉さん」
「ふっ。いいのよ。アンタももう大人なんだから。姉だからって何から何まで言う資格なんてないのよね」
姉は真剣な顔でオレを見た。
「いい? 絶対に戻ってくるのよ。アンタが無事ならそれでいいんだから」
その言葉にオレはうなずいた。
~~~妄想終了~~~
よし、いける。大丈夫だ。
オレは気合いを入れて立ち上がると家を出た。目指すは姉のいる家。早く行かなくてはと思いつつ、向かう足は遅くなる。だがそんなに距離が離れているわけではないので、すぐに目的地には着いてしまう。
漏れ出そうになるため息を堪えて、オレは扉をノックする。そして中に入り姉の姿を目にした瞬間、背中に大量の汗が流れた。言える気がしない。
「何、ステン。どうしたの?」
「え、あ、いや」
やっぱり明日にしよう。いや、もうこのまま黙っていよう。
思わずそう決意しかけたが、姉はオレを見つめている。オレが何か言うのを待っている。この人は気づいている。オレが何を言うかまではわからないだろうが、何か重要なことを話そうとしているのを。
ここで言わなくてはいけない。むしろこの機会を逃したら多分言えない。
オレは深く息を吐いて落ち着ける。
「姉さん、クウガが勇者として魔の森に向かうって知ってるよな?」
オレの問いに姉がうなずいたことを確認して言葉を続ける。
「オレも、それに同行するつもりでいる。姉さんが止めたとしても、オレは・・・・・・」
ため息を吐かれ、オレは口を閉ざした。
そして姉が口を開いた。
「遅い」
「・・・・・・は?」
姉は呆れとも怒りともとれる表情でオレを見つめていた。
ポカンとするオレに姉は「ははははは」と乾いた笑いを浴びせる。その声には怒りが含まれていた。
「遅いって言ったのよ。アンタは私に言うのにどんだけ時間かけるつもりなのかしら。こっちはとっくにそのこと知ってるっていうのに」
「え、あ、な、何で」
「クウガくんがね、教えてくれたの。クウガくんが街に戻ってから4ヶ月後くらいかしら。『スイムさんはステンさんから聞いて、もう知ってると思うんですけど・・・・・・』って前置きをされてからステンが旅に同行するってこと話されたのよ。『ステンさんを巻き込んですいません』って頭下げたのよ。私、あのとき初耳だったんだけど、全力で誤魔化したわ。それからずっとアンタが話してくれるのを待ってたのに、やっとかい!! どんだけ時間かけるつもりだ!」
姉の怒号に、体が跳ねた。ティムがその騒ぎに慌てて近寄ったが、母である姉の様子を見てすぐ逃げた。確かにオレも第三者だったら近寄らない。
「クウガくんは悪くないってわかってるわよね。まさか4ヶ月も経ってるのに、アンタがまだ一言も告げてないなんて思ってるわけないもの。クウガくんが魔の森に向かう日はもう1ヶ月もないっていうギリギリで伝えるとか、アンタ私をナメてんのかしら?」
「い、いえ、滅相もありません」
「どうせ私が何言ったって関係なく行動する気なんでしょう? じゃあせめて何かしらの説明なりなんなりしなさいよ。アンタの口は何のためについてんだ」
「あ、あの姉さん」
「今まで言えなかったんだから、怒られるって自覚があったってことよね? この根性なしのインポ野郎」
「待ってくれ姉さん。インポではない。ちょっと・・・・・・見せにくいだけで、インポではないから」
「そんなのはどうでもいい。要は男が決めたのなら、ごちゃごちゃ考えてないでさっさと話せって言ってんのよ。だってのにいつまで待てども来ないわ、期限は近づいてるわ。まさかこのまま黙って行く気じゃねぇだろうなボケ、という言葉を飲み込んでいたのよ」
姉は青筋を立てていた。もう土下座するしか、この場を乗り切る方法はないんじゃないかと思ってしまった。だがここで土下座なんてしようもんなら、その頭を踏みつけられるのがオチだ。
「姉さん、悪かった」
だからオレは姉の目を見ながら謝罪する。
「でも姉さんが知ってるなら話が早い。オレはクウガと共に魔の森に行く。クウガを助けたいのはもちろんだが、オレはあの野郎をぶっ倒したい。オレたちにはその恨みがあるはずだ。だからオレは魔の森に向かい魔王のやつと戦わなくちゃならないんだ」
オレの物言いに何かを感じ取ったのか、姉は怒りを静めて黙って耳を傾けてくれている。姉は怒ったら怖いが道理がわからない人ではない。さっき怒鳴っていたのはオレがずっと黙っていたからだろう。話していても多分怒鳴られていたとは思うが。
「簡単に勝てるとは思っていない。むしろ勝率があるかすらもわからない。それでも可能性はあると思ってる。クウガの能力なら立ち向かえるし、そばにいるやつらの腕や力に不足はない。それにオレたちが使う弓矢が合わされば、大きな戦力になるはずなんだ。だからオレは行く。例え姉さんが反対してもだ」
そう言い切ると、しばし場に沈黙が続く。そして姉が腰に手を当てて深く息を吐いた。
「クウガくんが初めて村に来たときに言われたのよ。『お母さんに似てる』って。あれを聞いたときは衝撃的だったわ。ああ、この子にもちゃんと親がいたんだって。それもちゃんと思いやってくれる家族がいた子だったんだって。ステンが嫌っているとしても、私は味方でいてあげようってね」
次に姉はいつもの笑顔を見せた。
「だと思ったら、ステンったら意外とクウガくんに懐くのが早くてビックリしたわ。かと思ったらクウガくんのこと好きだと言い出すし。あのときはクウガくんが男が好きってのを知らなかったから、暴走したアンタが何かしでかさないか心配したわよ。実際は腑抜け野郎で何も出来ず仕舞いだけどね」
「ね、姉さん」
「いい? 絶対に死んではダメよ。あと魔の森に行ったら私たちのことは考えなくていい。自分とクウガくんたちのことだけを考えなさい。余計なことを考えたら死ぬわよ」
姉は近づいて、オレの肩を叩いた。
やっぱりオレはガキだと自覚する。どれだけ年をとってもこの人には迷惑をかけっぱなしだ。一生、オレはこの人に頭が上がらないのだろう。
「アンタは私の家族なんだから。馬鹿な弟の尻拭いは慣れっこよ」
「ごめん、姉さん」
オレは心の底から姉に謝罪した。
そして姉はにっこりと笑みを深くする。
「まぁ、それはそれとして」
そう前置きをしたかと思いきや、
ドゴウゥゥゥッ
という音と共にオレの腹に拳がめり込んだ。
あまりの痛みに白目になり、その場にうずくまる。
姉の顔にもう笑みはない。あるのは怒りだけだ。
「怒らないとは言ってないわよ。この馬鹿野郎が。拳1発で許してあげるんだから感謝しなさいよね」
姉の言葉にオレは痛みで何も返せない。
近くで様子を伺っていたティムがヒイィィと悲鳴をあげていた。
一生、オレはこの人に頭が上がらないのだろう。
改めてそう思った。
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