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侵入者編
クウガ つかの間の戯れ
割れるような頭の痛み。そしてのどの奥からせり上がってくる吐き気。
経験したことのない苦痛に、俺は起きあがることすらできなかった。
俺はこのまま死んでしまうんじゃないか。そう思ってしまうほどだった。
「二日酔い、まじ辛い」
俺の言葉にベッドのそばにいたロッドとシャンケは呆れた顔をしていた。
その2人から俺が今横になっているのは、騎士団宿舎のロッドの部屋のベッドだと説明された。どうやら俺は酒を頭から被ったことで酔ってぶっ倒れてしまったらしい。どんだけ弱いんだよ!! 飲んでもいないのに、酒かぶって酔うとかどこのマンガのキャラじゃああああ。
だがそう脳内で叫ぶだけでも頭に響いてくる。
「お前、酒弱すぎだろ」
「クウガが酔いやすい体質ってのはわかってたっぺが、まさかここまでとは」
「う、うるさいな・・・・・・」
頭痛くなけりゃ怒鳴ってたかもしれない。そんな俺にコップを手にしたギュレットがトテトテとやってきて水を差し出してくれた。ううっ、俺子供嫌いだったはずなのに絆されてまう。優しさに人は弱いんだよ。
痛む頭に耐えつつ差し出された水を飲み、俺は2人に説明されたことを頭で整理する。
俺が酔って眠った後、騒ぎは一旦縮小されたらしい。少なくともダイチの嗅覚が把握していた面子と街で確認された分の例の生物は取り込んでいる人間ごと確保したらしい。確保した後はどうにかして人間から取り出すか試したり、あるいはどういう原理になっているのか調べているようだ。
ちなみに酔った俺はそのまま寝落ちたと聞く。最初はサッヴァの家でという流れだったが変更し騎士舎に連れてきたとのこと。ここら辺の経緯はロッドやシャンケも知らないし、もちろん寝てた俺に記憶はない。その後シャンケがアトランの指示で騎士舎に訪れ、強制休暇をとらされているロッドの監視対象がダイチから俺に移ったらしい。
「それでダイチがダグマルさんと一緒に神殿に向かったってわけか」
俺の言葉にシャンケが表情を曇らせる。おそらくシャンケが心配しているのはサヴェルナのことだろう。考えなくともアトランがダイチを神殿に向かわせたということは神官の誰かが取り込まれている可能性があるということだ。
「サヴェルナちゃんに何かあったらどうすっぺ」
「いや、確定じゃねぇだろ」
ロッドがそう否定したがシャンケはオヨヨヨヨと顔を覆っている。
「でも可能性は高いっぺ。だって賢者と接点があるし、貴族とのやりとりもあるから王都に向かってもおかしくない。そんな子を標的にしない理由がないっぺ」
「ーーそれに関して否定はしねぇな。クウガの命と繋がっていることを考えればサヴェルナはやつらにとって使い道の多い人材になるからな。でももしサヴェルナが操られたとしても、あいつなら力でゴリ押しすりゃなんとか倒せるだろ」
「サヴェルナちゃん相手に倒すとか発言するオメーが信じられねっぺ!!」
顔を上げて怒鳴りつけるシャンケ。そんなシャンケにロッドが怒鳴り返そうとするのを感じ、俺は慌てて話に入った。
「サヴェルナのことはわかった。でもそれはサヴェルナに関わらず、誰にだって多少危険性はあるだろ。神官なら貴族と接点持つやつだって多いわけだし。サッヴァさんだってそうだったんだから。むしろサッヴァさんが操られた方がマズいだろ」
「マズいっていうか、それもうこの国の終わりっぺよ。まあ、オラじゃどうにもできねぇっぺからサヴェルナちゃんが無事かどうか祈るしかねぇっぺな」
手を組み力を込めて念を送るシャンケ。ロッドはそんなシャンケに呆れて俺の方に顔を向けた。
「しばらくは俺も指導役から降ろされているし、少なくとも今日明日はクウガの監視は俺になるかもしれねぇな」
そうつぶやくロッドを見て、俺はあれと違和感を覚えた。
ロッドの顔色が良くなっていた。昨日は土色と言ってしまえるほどに顔色が悪かったというのに、今じゃすっかり血色が良くなっていた。一晩休むだけでこんなにも変わるのか?
「ロッド。凄く体調良くなったんだな。昨日は本気で心配したからさ」
良かった良かったと素直に喜んだが、ロッドは何故か硬直した。そして隣にいるシャンケは複雑そうな顔でロッドを見ている。
何だよ、その反応は。何があった。
俺がそう聞こうとする前にロッドの方から「問題ないから気にすんな」と言われてしまった。そしてロッドはシャンケを睨みつける。余計なことを言うなという視線にシャンケは黙って頷いていた。
だから何だよ、その反応は。マジで何があったし。聞いても教えてくれないんだけどさ。
「ならいいけどさ。でもあまり無理すんなよ。ブレッドだって心配してただろ。昨日のロッドはマズかったって。1人で背負いすぎると潰れるぞ。俺だって修行してたときはサッヴァさんたちに甘えてたし」
「甘えてたか?」
ロッドが訝しむように聞いてくる。
当たり前じゃああああああ。甘えるに決まってんだろ。むしろ全力で頼ったてたわ。最終的にも大人の手を煩わせまくったわ。ぶっちゃけ魔王戦、レイプされたくらいで何もできてなかったわ。サッヴァさんたちが魔の森までついて来てくれなかったら、初手で詰みだっての。
「甘えてたよ。悲しいほどに俺には戦いの才能なかったし。サッヴァさんたちだけじゃなく、ロッドやシャンケやサヴェルナがいなかったら普通にダメだったよ。もちろんギュレットいなかったら死んでたときもあったし」
ギュレットの頭を手をやれば、オロオロしつつ素直に撫でられていた。子供、苦手だったはずなんだけどなぁ。
甘えるっていうか、頼りきってたよな。絶望的に俺弱かったし。大人から子供にまで助けられて、それで安心できたんだから。俺だけでなんとかできることなんてなかったんだから。
ロッドは俺の話に耳を傾け、そして「悪かった」と頭をかいた。
「確かにそうだな。俺1人でどうにかしないとって思ったのが間違いだった。そのせいで逆に悪い方向に行ってるし。ダグマル副官にも冷静になれってよく言われてたのにな。疲れすぎてたって言い訳にもならねぇけど1人で無理しすぎたわ。頭冷やさないとな」
ロッドはシャンケの方を向く。
「じゃあ早速だが、手伝ってほしいことがある」
「オ、オラに?」
「前にシャンケが俺の魔法についてまとめてくれたことがあっただろ。あの字の綺麗さと作成力を貸して欲しいんだわ。金なら出す」
ロッドは自分の机に向かい、紙の束を取り出し置いた。シャンケがそっちに向かいその中身を確認する。俺が何か聞く前にロッドが、今回の新人たちの情報と進歩具合をまとめたものだと話してくれた。
シャンケは紙をめくる度に眉間に皺を寄せていく。
「オメー、破滅的に字が下手っぺな」
「うるせぇよ」
「しかもまとめ方が雑すぎる。こんなんじゃ後で見直すにも何書いてあるのか自分でもわからないんじゃないっぺか?」
「・・・・・・うるせぇっての」
「頑張りだけは認めるっぺが、これじゃただの紙の無駄っぺよ」
「だからわかってるって言ってんだろうが!」
ロッドの怒鳴り声が部屋に響く。さっきまで頭冷やさないととか言ってたくせに。
でもその紙の束はシャンケの言う通り無駄かもしれないが、ロッドが真剣に取り組んでいる証拠であるということがわかる。
俺も紙とペンを使って魔法陣とか必死に覚えてたなあ。あまり使い道なかったけど。
「とにかく、俺がこういうの苦手ってわかっただろ。だからこれらをシャンケの字でまとめてもらいてぇんだよ」
「・・・・・・魔導師が書いたものを提出できるっぺか?」
「さすがに提出するやつは自分で書く。それとは別の俺個人のためのものだ。本来なら作成する必要はない」
「なるほどっぺねぇ。でもこれオラに見せて大丈夫っぺか?」
「全騎士の情報ならともかく新人の内容なら見られても問題ねぇよ。それに依頼人の仕事内容を話すのは職人の意志に反するんじゃねぇのか、代筆屋の息子」
「今のオラは代筆じゃなくて魔導師っぺよ。でも小遣い稼ぎで似たようなことやってるし、破格の値段でやってやるっぺよ。友達っぺからな」
ロッドはシャンケの最後の一言にキョトンとするが、すぐに歯を見せて笑う。
「それなら無料でやってくれてもいいんじゃねぇの?」
「無料での依頼ほど怖いものはないっぺよ」
「違いねぇ」
そう笑い合った後、シャンケが席につきペンを手に取った。
ロッドが説明しようとするが、「この紙の束を見れば何が書きたいのかくらい想像つくっぺ」と手であしらう。追い出されるような形になったロッドは俺のそばに戻ってきた。
「悪かったな。こっちのことばっか話して」
「気にしないって。俺から言い出したことなんだし。それより俺が酔い潰れた間の状況って何か変わったのか?」
「ダイチが間違ってなけりゃ、街側の騎士の中で取り込まれている人間はいないはずだ。神殿は昨日の騒ぎによる怪我人が運ばれたりしているから、そこに移ったのは考えられるんだよな。ただあまりにも魔導師長の行動が早すぎて驚いてはいる。人手が足りないとはいえダイチとダグマル副官だけで向かえってのもおかしいしな。・・・・・・アトランが既に取り込まれてるっていうことは考えられねぇのか?」
ロッドの最後の一言はシャンケに向けてだが、シャンケはペンを素早く動かしながらも「それは大丈夫っぺ」と返した。にしても書くの速ぇな、おい。流れるようにペンが動くってのが、もう比喩でも何でもない。
「昨晩、狩人の乱入があったから問題ないっぺ」
「いや、むしろその状況のが問題じゃないの」
「そういや、クウガに頼みたいことがあるっぺ」
「え、無視? 俺の言葉華麗に無視? 別にいいけどさ」
何だよ、狩人の乱入って。それ大丈夫なの? 普通にさらっと流していい案件なの? 俺がおかしいの? 違うよね。だってロッドも俺と似たような表情してるし。
でもシャンケは俺たちが言いたげなことをわかっているんだかいないんだか、普通にスルーして用件を言う。
「例の人間を操る生物の名前。クウガに考えて欲しいっぺ」
「俺に? 何でまた」
「固有名詞をつけないと説明するにもまとめるにも難しいっぺ。異世界に住んでたクウガならオラたちが聞き慣れない言葉も知ってるっぺ。それっぽい言葉を選んでくれればいいっぺ。これはリーダーからの言葉でもあるっぺよ」
えー、何その無茶ぶり。名付け親になれと? 確かにココとかハチとか適当な名付けしちゃったけどさ。あれ犬の名前よ? ハチとかデカくなった姿見て、正直犬の名前つけちゃったことに申し訳なさあるのよ。でもこれ拒否れないやつだよね。わかってます、はい。二日酔いで頭痛いのに、キツイことさせないでくれよ。
「人の体内に乗り込んで操る生物だろ? 侵略者的な言葉かあ・・・・・・。インベーダー? エイリアン? あるいは変異体ってことでミュータント? あとはアンドロイドとか・・・・・・あー、でもこれは人間のロボットだったはずだったから違うか?」
「いや、違うかって言われても俺は知らねぇよ」
ロッドに聞いてみたら速攻で拒否された。適当に話合わせてくれたっていいじゃん。
「ギュレットはどれがいい?」
俺が尋ねるとギュレットは「え!?」と慌てながらシャンケを見る。シャンケも「オメーが言いやすいやつでいいっぺよ」と紙とペンから視線をそらさずに言う。ギュレットはしばし迷いながらエイリアンと答えた。どうやらそれが1番言いやすかったようだ。
そして本当に固有名詞は何でもよかったらしく名称はエイリアンに決定された。
「で、そのエイリアンにクウガの能力が効かなかった理由、多分わかったっぺよ」
さっそく使ってるよ。変な感じだわ。
シャンケは書き物を続けながら俺の前に炎の球体を浮遊させる。惚れ惚れするような見事な球体だ。余計な魔力が外に漏れるなどして崩れる様子もない。俺も多少魔法を教わってたからそれが案外難しいということを理解している。それをこちらを見ず片手間で出してしまうことに、シャンケの魔法の上手さがわかる。
「クウガと接触したエイリアンに操られていた人の証言によると、クウガの能力が聞こえてないってわけじゃなかったっぺ。でも体が勝手に操られている状態だから、その命令を無視されてるって言ってたっぺよ」
そう言いながらシャンケは球体の周りに水の膜を作り出す。そしてその水の膜には一部分だけ穴が開いていた。
「火の球を人間の思考や動き、水の膜はエイリアンが人間を浸食している部分。膜に穴を開けたのはエイリアンに操られている間にも人間に自我が残っているから、そのようにしたっぺよ。
おそらくクウガの能力を使用したときに影響が出るのは火の部分、つまり人間の方のみっぺ。エイリアンのやつらは第2の人格として体内に入り、この水のように表面に現れて操っている。だから水の部分に命令するクウガの能力が効かなかった。その可能性が高いっぺ」
ふむふむ、なるほど。つまり俺の能力はエイリアンに操られた中の人に伝わってはいるが、それを操る殻の部分であるエイリアンには効かないということだ。
だがそれよりもシャンケが魔法器用すぎて、そっちに意識が持ってかれる。ロッドも気持ち悪いと言いたげな目でシャンケを見てるし。綺麗な球体を作るのすら難しいのにそれに火と反する水で膜を作るとか。俺がやったら火が水で消えるか、水が火で蒸発する。それ以前に水の膜を作るとか一部分だけ穴を開けるとか、やろうとしたら頭痛くなりそうだわ。
「シャンケ。テメェやっぱ気持ち悪いわ」
あ、とうとうロッドが口に出した。
シャンケが手を止めて「何でっぺよ!」とこっちを向いた。
「さも当然のように魔法技術の差を見せつけやがって。さすが魔導師だわ。魔法の使い方が綺麗すぎて逆に気持ち悪ぃ」
「当然のような罵倒に、いっそ清々しさを感じるっぺ。リーダーの傍にいられるようにがんばった努力のオラの結果っぺよ」
「まぁ今更だけどよ。神官のサヴェルナが好きって時点でおかしいやつって思ってたから」
「サヴェルナちゃんは可愛いっぺ!? 逆にオメーの目んたま何が見えてるっぺ!?」
「魔導師が神官好きになるとか聞いたことねぇよ。がんばって友愛が限度だろ。恋愛対象は無理だろ。魔導師の恋愛観どうなってんだ」
「少なくともオラは魔導師の中じゃ正常の範囲内っぺよ!」
ロッドとシャンケの会話がどんどん明後日の方向に移動していく。エイリアンの下りどこ行った。だが俺も気になったから脱線した内容に加わることにした。
「シャンケは正常の範囲ってことは、他の魔導師の恋愛観変わってんの?」
俺の質問にシャンケはスンッと黙り込んだ。え、何その無言と表情。
「うん・・・・・・別に公言しても問題ない話っぺよね。普通に周囲も知ってる話だし。勝手に広められても気にしない人たちっぺ。でもギュレットには教育上良くないから聴力消させてもらうっぺよ」
そう言った後にギュレットが耳を押さえてキョロキョロとする。さっきの言葉通り聴力を消されたのだろう。シャンケが落ち着かせるように笑いかけると、おとなしく用意されているイスに座るのだった。
「そもそも魔導師のほとんどが貴族ってのは知ってるっぺな? 魔力が高いから魔導師に行った人も多いっぺが、半分くらいは貴族であることを追い出された人が多いっぺ。それがただ追い出されたとかなら同情するっぺが、キュルブ先輩たちを含む人らは追い出されるべき理由が多々あって」
「貴族としての素行不良とかじゃねぇのか? 騎士に来る貴族もそういう輩は多いぞ」
「それもあるっぺがあまりに人間として出来てない人なら、リーダーがあの手この手で潰してるっぺよ。で、残ってる人の多くが良い意味で個性的。悪い意味で変人が多いっぺ。あと性癖がおかしい」
「ーー性癖がおかしい」
思わず声に出して繰り返しちゃったよ。
「クウガが知ってる魔導師ってオラとリーダー以外だとキュルブ先輩ら3人っぺ? あの人たちなんておかしいの筆頭っぺよ!?」
愚痴らせてくれと言わんばかりにシャンケは叫ぶ。
「キュルブ先輩は妊娠している女性にしか興味ないし」
「おおっと。初っ端からデカいのが来ちゃったよ」
「別に寝取りたいとかそういうのじゃないって説明されても知らないっぺよ。旦那から愛されている体を共有したいとか頭おかしいっぺよ」
「おい、コラ待て。不倫は普通に罪だからな。騎士舎でよくそういうこと言えるな」
「でも現行犯じゃないと捕まえられないっぺ。オラが知らないような抜け道とかいろいろ用意してるっぺよ。聞きたくないけど」
遠い目をするシャンケ。メイシオフィリアとか俺も聞きたくなかった。
ってかキュルブってそうだったのか。あの食えない笑顔の内側そうだったんか。
となると後はジャルザとレグロだっけか。レグロはヒャッハアアアアアと叫んでいる辺りでどっかおかしいんだろうなというのはわかるが、ジャルザは良くも悪くも平凡で口数少ない男だというイメージしかない。
「ジャルザって人は? 俺もあまり深くは関わらなかったけど」
「ジャルザ先輩はクウガと近いような遠いような微妙なところっぺな」
そこで俺の名前が出たところで焦った。え、もしかして同性愛者? この世界にも同性愛者いたの? ゲイいたの?
「ジャルザ先輩は老婆にしか性的興奮できないっぺ」
はい、全然違いました。
ロッドが疲れた顔で「俺は何を聞かせられてんだ」と言っているが、俺も同意する。
「あの人、本来なら良いところのお坊ちゃんだったっぺよ。普通に生きていたらそれこそ貴族でも重要な役職についてたかもしれないっぺ。あの性癖がなければ確実に出世の道歩んでたっぺよ。だけど許嫁の少女よりも80過ぎた老婆に初恋してしまい、周囲が矯正しようとしても老婆以外を愛せなくて、貴族を追い出されることになったっぺ」
「お、おう。そ、壮絶(?)な人生だったんだな」
「真面目で誠実な人で仕事も出来る。オラも魔導師になった頃にお世話になったっぺが、本当に良い人っぺよ。あの性癖さえ邪魔しなければ・・・・・・。『試したことはあるが50代は若すぎる。女を一晩買おうにも店には80代90代がいない悲しみ。別に年齢が若くたって良いんだ。見た目が凄く老けてれば』って真剣な顔で言われたオラの気持ち!」
その年代が若い男とハッスルしたら違う意味で昇天すんじゃねぇの?
そう思いはしたが、悲痛に話すシャンケに何も言えなかった。
「そういう人たちを知ってるからクウガが同性愛者だろうがかなり年上好きだろうが、人それぞれっぺよねで済んでるっぺよ」
「・・・・・・これは俺、喜ぶべきなのか?」
「俺に聞くんじゃねぇよ」
ロッドに尋ねればそう返された。ですよねー。
そしてシャンケの勢いは止まらない。
「ここでキュルブ先輩ジャルザ先輩の性癖がおかしいから、当然レグロ先輩もおかしいと思うっぺ? 普段ヒャッハアアしか言わない先輩で正直いつリーダーが魔導師を追い出してもおかしくないギリギリのところで魔導師でいられる先輩だから、どんなおかしな性癖かと思うっぺ? でもあの人の女性の好みを聞いたら『おとなしく真面目で男を立ててくれるしっかり者の人』って答えやがったっぺよ。何で同じヒャッハアアアする女性を選ばないっぺか? そういう女性は大抵レグロ先輩の通常状態にどん引きしてるっぺよおおおおお」
もおおおおおおお、とシャンケが顔を覆っていた。
これただ単に愚痴りたかっただけだな。
「それを考えたらサヴェルナちゃんを好きな俺は何もおかしくないっぺ!」
あ、違ぇわ。結局はそれが言いたかっただけだわ。
うん、まぁとりあえずはサヴェルナの無事を祈ろう。サヴェルナが心配なのはもちろんだけど、シャンケの精神的安寧のために。でもこれだけは言わせてくれ。
「さっき言えなかったら今言うけど。俺とジャルザさんはまったく違うから。俺はご老体ももちろんいけるけど、10くらい年が離れてれば問題ないから。30代でも50代でも良い味はあるよ」
「わざわざ口にすることじゃねぇだろうが!! ああもうお前らで変態合戦してろや!」
「いやオラは普通! むしろロッド、オメー自分が一般人だと思うなっぺよ! オメーに至っては昨夜ーー」
「それ以上言ったらぶっ殺すぞ、テメェ!」
そんな風に今日は平和に友達との会話のようなものを楽しんでいた。サッヴァさんたちと話しているときとは違う気楽な感じは嫌じゃない。ほら、年上のイイ男が近くにいたら大分マシになったとはいえドキドキしちゃうじゃん。2人とも俺より年上っちゃ年上だけど、そんなに離れてるわけじゃない。性的対象にはならない。
バカなことを言い合って、ふざけて、怒鳴られて。緊張なんてまったくしないやりとりができる。前の世界でも探せばいたんだろうな、こういうやつらが。もう今更だけど。
永遠にとは言わないけれど、ずっと続いてくれればいいな。こいつらだけじゃなくてサッヴァさんもダグマルさんもステンさんもアトランさんも、サヴェルナやギダンなど、俺がこの世界で出会った人たちと変わらずにいられればいいな。
+++
そんな願いは、その日の夜に崩された。
「ーーーーは?」
俺は思わず声を漏らす。昼頃に二日酔いはマシになったはずなのに、脳内で警報が鳴り響くかのごとく頭痛がする。
ダグマルとダイチが帰ってきたのは日が落ちた頃だった。アトランとステンもサヴェルナもいた。どうやらサヴェルナは無事だったようだ。常に複数人で怪我人の対処をしていて気を張っていたおかげで、エイリアンが体内に侵入する暇はなかったようだ。
だが説明された内容に頭が追いつかない。そんな俺にアトランはゆっくりと言い聞かす。
「もう一度言います。サッヴァ先輩はエイリアンに取り込まれたとの報告がありました。現状でこちらが対処できる方法はありません。先輩がダイチくんの召還によって魔力が普段よりも減少している今だからこそ、捕縛ないし殺害できる唯一の機会です」
殺害。その単語に背筋が凍った。おかしいだろ。だって昨日までサッヴァさんは普通で。俺の見ているところで4人そろったの久しぶりに見て。危ないところもあったけど、それでもなんとかなって。
でもそんなこと口にできない。事態はそんな安易な状況じゃなくなっている。
「クウガ。まだ確定したわけじゃない。そういう疑惑があがっているだけだ」
ダグマルはそう言ってくれたが、その表情は硬い。ステンも神妙な顔つきをしてる。
そうまだ確定じゃない。でもそういう悪い予想がたったとき、疑ってかからなくてはいけない。でも、でももし本当にサッヴァさんがそうだったら。シャンケだって言ってただろ、この国の終わりだって。つまりサッヴァが敵側に回るということはそれだけ脅威だということ。
じゃあもし確定してしまったら?
「リーダー。キュルブ先輩たちを狩人たちに向かわせて、街へと入らないようにさせていたなんて僕は聞いていないのですが」
「もし取り込まれても相手に過剰な情報を与えないようにしたのですよ。逆にキュルブたちはシャンケがダイチくんらを教会に向かわせたことを伝えていません」
シャンケはサッヴァさんのことを知らなかったらしい。おそらくアトランも俺たちに伝えていないことがあるんだろう。そしてこのことを俺にも伝えたということは、何かしら意味があるということ。
「さて、クウガくん。気づいているようですが君にも頼みたいことがあります」
「でも俺の能力は」
「そうですね。人間に通じずエイリアンには通じる都合のいい命令が浮かばない限り君の能力は意味を成しません。ですがクウガくんのためならば、協力してくれる人は多いのですよ」
そしてすぐに「ああ、ですがーー」とわざとらしく笑みをこぼした。
「呼んでほしい彼を、『人』と括って良いのかは微妙ですけれど」
アトランが行動に移したのは、それから2日後のことである。
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