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侵入者編
クウガ 死んだ目になる
エルフの名がリーフェンだと知った日からしばらく経った。
「クウガくん。それ結局なんなんだぃ?」
エマが指すのは大量に作ったコンドームもどき。・・・・・・正直に認めます。コンドームだわ、これ。本番で使用できるかわからないけど。今は小さな布袋に敷き詰めている。
黙々と奇妙なものを大量に作る俺は気味が悪かっただろうなあ。だってなんかもったいないじゃん。そのまま捨てるのもさぁ。
「・・・・・・特に意味はないですよ」
でもコンドーム作ってましたとか言えねぇわ。どうせならもっと天然のゴムみたいな感じになってほしかったよ。何故に避妊具作れたし。
俺の答えにエマは納得はいっていないようだが追求はしなかった。
エマに煎れてもらったお茶を飲む。これがエルフにとっては毒だなんて考えもしなかった。ここにきて異世界との違いを思い知らされる。
リーフェンは今は眠っている。やっと安心して眠れているようだ。ルレイドはその監視で部屋の扉の前。よって俺はエマとイスに腰掛けているところだ。
ちなみにエマはこちらを見ているようで視線は俺の上を向いている。ルレイドもそうだが、おそらく俺の能力対策だろう。もし俺が危害を加えようとしたならば、その瞬間に地に伏せられているはずだ。もちろん俺の警護をしているのも確かだから、エイリアンのときには身を挺して逃がしてくれたんだろうけど。
俺は聞くべきか悩んでいることをエマに尋ねる。
「その・・・・・・背中の火傷は大丈夫ですか?」
「まったく問題ないと言ったら嘘だねぃ。剣を扱うと少々痛みが起こるし、動きも鈍くなった自覚はあるさぁ。騎士やめてて助かったぜぃ」
「容赦ないですね、ルレイドさん」
ある程度の期間2人と関わり夫婦として仲睦まじい印象があったから、躊躇なくエマの背中に火をつけたのは未だに衝撃だった。シャリイも青ざめてたし。
だがエマは顔の前で手を振ってそれを否定する。
「いんやぁ、あれはむしろ甘い方さぁ」
「え、そうなんですか?」
「殺されないだけマシさぁ」
にっかりと笑うエマ。笑い事じゃない。
「いや、本当にねぃ。ウチは王国に、それも騎士に逆らう資格はないんさぁ」
「資格って、そんな」
「元々帝国の密偵だったからねぃ」
ギョッとする俺に、エマはイタズラが成功したような顔で笑う。
「実際は両親が密偵で、ウチはこの国で生まれたから生まれも育ちもノンケルシィ王国だけどねぃ」
「それって話していいことなんですか?」
「大声で吹聴されたら困るけど、別に隠していることじゃないさぁ。でも最近の騎士は知らないかもしれないねぇ。この口調も帝国のやつを真似しているだけだしよぅ。下手だけどねぃ」
ケラケラと笑うエマに何も言えない。ってか何を言うべきなのかがわからない。
そしてエマが楽しそうに続ける。
「生まれたときからウチは密偵という存在だったんさぁ。それで騎士団内部の情報を帝国に横流しするために、入隊できる最年少のときに騎士団に入ったんさぁ。ちなみにダグマルとはそこで出会って、今の旦那は入隊時の指導役さぁ」
「そ、それで」
「5年後くらいにウチは帝国と両親を裏切り密偵であることを告白。ウチの行動に気づいた両親はすぐさま自害。ウチも処刑されるところだったのを、ウチの旦那が監視としてつくことで王国に忠誠を誓わせたってわけさぁ。婚姻関係ってのもウチを縛る鎖みたいなもんさぁ」
絶句した。過去が!重い!!
どん引きしている俺だが、エマはなんてことないような様子だった。
「だから、ウチは絶対に王国に刃向かえない。それがどんな理由であったとしても王国を害することになれば問答無用で処刑される。それどころか王の気分次第で殺されてもおかしくはないんさぁ。そんな存在だからウチに嘘や隠し事は許されない。
少しクウガくんと似た立場かもしれないねぃ」
そこでエマの表情が穏やかな、そして達観しているともいえ、だがどこか哀愁を含んだようなものに変わる。
「君が同性愛者だと私に知られてしまったことは、君にとっては不幸だったのかもしれない。今以上に疑いを向けられていた当時、君を庇うということは許されなかった。あれがダグマルやロッドだったら、おそらく秘密にできただろう。でも私の立場であの状況になってしまった時点で、君を庇うことは許されなかった。改めて申し訳ない」
エマの口調が堅いものに変わる。だがむしろ流暢に話すそれは、もしかしたらこっちの方が素なのかもしれないと思わされた。
「話がそれてしまったな。それで私の旦那のことだが、本来私は処刑されるはずだったのを監視するという立場になることで救ってくれたのだ。それに監視目的とはいえ婚姻関係まで結ぶ必要はなかった。この国では重婚は認められていない。それをわざわざ裏切り者と結婚することで私の立場を守ってくれたのだ。
背中の火傷の件もあのまま私が騎士や一般の人たちを傷つけるようなことがあれば、如何なる理由があろうと処刑されるのは免れない。操られていたなどの言い訳は効かないのだ。だからあのルレイドの行動は1番私にとって良策だった。むしろ優しすぎるくらいだ。あの人は、いつも私に甘いんだ」
最後は惚気るように微笑んだ。やっぱり仲がいいと思ったのは間違いじゃなかったんだ。ただ2人の、特にエマの立場がそれだけでは許してくれないんだろう。
「だからクウガくん。私もルレイドも徒に君を拘束するのでもなく、傷つけたいわけでもない。ルレイドには過去に殺されかけた経験もあっただろうが今は君を守ることに力を尽くしている。ルレイドは本来命を尊重する人間だ。団長という立場だった頃は被害を最小にするためにあえて犠牲を払っていたが、私すら妻にするような優しい人間なんだとわかってほしい。妻としては夫に悪感情を抱かれるのはあまり良い気分じゃないからな」
「盛大な惚気ですね」
「ははっ、違いないねぃ」
俺のからかい混じりの発言にエマは口調を戻して笑った。
ふとエマの過去に疑問を抱いた箇所がある。
「あの、答えなくてもいいんですが。エマさんが密偵だと告白した理由ってあるんですか? もちろん言わなくてもいいですよ」
少し気になった。親を裏切っても貫くことがあったのだろうか。
・・・・・・サッヴァを救うために睡眠姦した俺みたいに。
「ん? あぁ。ダグマルに惚れてたからさぁ」
意外なほどあっさり話したエマ。そのこともだが、その内容に開いた口が塞がらなかった。
「懐かしいなぁ。旦那と婚姻関係結んだときは、まだダグマルのこと好きだったから罰になったと言やぁその通りだけどねぃ。あー懐かしいぜぃ」
「え、あの、それって言って」
「え? 別に昔のことだしよぅ。今は当然旦那が好きだぜぃ?」
「そ、そうですか」
俺はそう返すので精一杯だった。
た、確かに昔のことかもしれないけど。堂々と言われてビビったというか。えええ、そんな好きだったとか簡単に言えることなの?? そういうもんなの? 俺の恋愛レベル低すぎてわっかんないんだけど?
何を聞こうか言おうか出てこず、持っていたお茶をすすることで誤魔化した。
そうしてるとエマの方から話してくれた。
「ダグマルもあんときは若かったからねぃ。訳ありでも貴族出で、顔も良かったんだぜぃ。ウチだけでなく女性騎士はこぞってダグマルに惚れてたって。街を歩きゃ女たちから告白されることなんて日常茶飯事だったしよぅ。それが今じゃオッサンだからねぃ」
「ーーエマさんも告白したとか?」
「いんや、してないよぃ。あいつ女性苦手だって雰囲気でわかるだろぃ」
「え、」
「・・・・・・あいつも報われねぇなぁ。とにかくウチは男友達みたいな同期で十分だったからねぃ。下手に距離とられる方が嫌だったし、告白する気なんてなかったさぁ」
「そう、ですよね」
そりゃ距離とられるくらいなら普段通りのポジションにいた方がいいよなぁ。これに関してはゲイとか関係ないか。でもゲイの場合は周囲バレする可能性あるしなぁ。俺の場合は既に周知の事実ではあるけども。
「男女でも大変なんですね」
「男だとか女とか関係ないさぁ。その人その人の関係は人によって違うからねぃ。簡単に結ばれる縁と結ばれない縁があるってことさぁ」
「・・・・・・そういうもんですかね?」
「そういうもんさぁ」
それなら俺も、結べる縁ってのはあるんだろうか。同性愛者だとしても。
・・・・・・強姦した俺にその資格あるんかなぁ(遠い目)。
エマが立ち上がった。どうやら来訪者らしく、ここにいるよう指示されてエマは玄関に向かった。しばらくしてエマと一緒にダグマルが現れる。
「ダグマルさん?」
「よぅ」
「オメーよぅ。エイリアン問題解決してねぇのに来んじゃねぇよぃ」
「だから休みとって複数人兄のところから借りてきたんだろうが。単体で来ねぇよ」
「こんなとこ来るのにわざわざ休みとるとか暇だねぃ」
「暇じゃねぇよ! 街ならまだ気楽に行けるが、ここまで来る時間とるのにどんだけ貴族におべっか使ったと思ってんだ! ああああくそう、前の役職に戻りてぇ!!」
俺に笑いかけてくれたが、エマとの会話で疲れ切った表情を見せていた。
それにしても先ほどのエマの話があったからか、ダグマルとエマを見ていると複雑な感じが・・・・・・。嫌悪とかではなく、変に意識して普通に見れないというか。
エマはダグマルの茶を煎れるために少し離れた。ダグマルは適当なイスに座る。
「久しぶりだな」
「はい。あの騒動以来ですかね」
「あのときのクウガは見てられなかったからな。今は大分落ち着いたか」
ダグマルの言葉に心臓が痛んだ。リーフェンの件で多少誤魔化していたが、どうしてもサッヴァの件は重くのしかかってくる。
「サッヴァが目を覚ましたことは知っているみたいだな」
返答できずにいると、ダグマルの方から察したようだった。
サヴェルナからの手紙でサッヴァが目を覚ましたことを知っている。でもそれは俺がしてしまったことを突きつけられているようだった。もしかしたらアトランなどは感づいているかもしれない。いや、他の人だって。サッヴァ本人だって。
うつむいていると俺の頭に何かが乗っかった。ダグマルの手だ。
「何かあったかはわかってる」
その一言に体が震えるが、ダグマルはわしゃわしゃと俺の頭を撫でた。
「1人で抱え込むなよ。少しは周りを頼れ」
「頼りまくってますけど」
「生活面じゃなくて、精神的なこともだ。頼られないってのも辛いんだぞ」
前にロッドに言ったことと似たようなことを言われてしまった。ブーメランだ。
どう返答すればいいのかわからずにいたら、エマがちょうど戻ってきた。
「それにしてもダグマルの話をしたら、その本人が来たとか笑えるぜぃ」
突然投げかけた言葉に俺はギョッとする。対するダグマルは「何の話だ?」と当然尋ねてきた。待って、言うの!? 言っちゃうの!?
「ウチが十代の頃、オメーが好きだったって話」
言ったあああああああああああああああ。
告白する気なかったと聞いていたその後にぶっちゃけたよ、この人。
ほらああああ、ダグマルも口あんぐりしてんじゃん。
「お、お前。それって」
「何キョドってんさぁ。もう何十年も前のことだろぃ。あれか、昔俺のことを好きだった女は今でも自分のことを想ってるとか幻想抱いてる質だったかぃ? んなわけあるかいバーカ」
ブハハハハハとダグマルを指して大笑いするエマに、呆然としていたダグマルも眉間にシワを寄せだした。そしてシッシッと虫を払うような仕草でエマを追い出す。
「んなこと思ってるわけねぇだろうが。それよりも久々にクウガと話できるんだから気を利かせて2人っきりにさせろよ」
「なんだよぃ。ウチとだって久々なんだから、同期の話とかしたっていいんじゃねぇのかぃ?」
「そんな馬鹿騒ぎするなら他のやつらと酒交えてやるわ」
ダグマルの物言いにエマは嫌な顔はせず「お、いいねぃ」と自分が使っていた茶を持ってルレイドのもとへと立ち去っていく。今度こそダグマルと2人きりになってしまった。
ダグマルはエマが去っていった方をしばらく見ていたが、深いため息をついた。
「冗談なのか本気だったのかわかんねぇな」
「俺もさっき聞いて驚いて」
「ーーだとしたら、昔のあいつに悪いことしたな」
少し沈んだ声で語るダグマルの目は過去を思い出しているようだ。
「昔の俺は告白してきた女には近づこうとしなかったからな。告白されてたら今みたいに馬鹿な話で盛り上がることはできなかったろうな」
「エマさんからは女の人が苦手だって」
「まぁな。今は慣れたが十代の頃は正直女ってだけで避けてたときもあったくらいだ。エマは見た目が中性的だったのもあって男と同等に見てた。戦場の前後に性欲発散で娼婦に手を出してからは、度々女を抱くことはあっても恋人や妻を作る気にはなれなかったな」
ダグマルは俺を注視する。
「おそらくこの世界に同性愛が普通に存在していたら、俺は確実にそっちだった」
その目は焦がすかのように熱い。
「なぁクウガ、聞きたいんだが。もしあのとき、倒れたのがサッヴァじゃなくても同じことしたか?」
その問いに答えられない。
するとダグマルはイスから立ち上がって俺に近づいてくる。
「サッヴァじゃなくてステンやアトランだとしても・・・・・・俺だとしてもお前は抱いたのか?」
固まる俺の顎をダグマルは掴み自身へと向ける。ダグマルの視線が俺を射殺すかのようで、俺はどう返答すべきか悩んだ。そう問われてしまうと戸惑う自分がいたのだ。
だってサッヴァは俺の行動が遅かったせいでああなって。あのままじゃ死ぬって聞かされて、それでヤるしか方法がなくって。ーーいや、ダグマルが言いたいのはそういうことじゃない。俺が「男なら」ヤれるのかって言いたいんだ。誰であってもそういう目で見るのかって言いたいんだ。
「ーー多分、そうだと思います」
俺は重い口を開いた。
「俺は、男を抱けます。きっとサッヴァさんじゃなかったとしても、ああいう状況下になれば俺は・・・・・・ダグマルさんでもしていたでしょうね。ごめんなさい。気持ち悪くて」
たまたまあのときサッヴァだった。男なら誰でもいいというわけではないが、ダグマルの言う通り、俺はあのときサッヴァじゃなくても同じように悔やんで同じ行動をとっていただろう。改めて最低だな、俺。
ダグマルの顔が見れなくて視線を下げてしまう。
「勘違いしてないか?」
「へ?」
だがそんな返答に俺が視線をダグマルへと戻す。
「んむぅ!?」
顎を掴まれたまま、キスされた。
は!? はああ!? はあああああああ!!? という某はぁはぁ3兄弟のような叫びが脳内を占めた。驚愕で見開いた俺の目とダグマルの目が合う。ダグマルの目はまっすぐ俺を見つめていた。ダグマルはゆっくりと唇を離したが離れる前に俺の唇を舐め、その感触にゾワッとする。
「サッヴァが特別なのか、聞きたかっただけだ」
ダグマルは俺の唇を親指でなぞる。
「なんのために同性愛の話題を出したと思ってるんだ。忘れたか? 本気で口説くって言ったこと」
「あ、あああ、あのッ、だぐ、ダグマルさささ」
「あーあー、可愛い顔してんなぁ。休みもぎ取って来た甲斐があった」
ダグマルの目が少しだけ和らぎ、ダグマルの両手が俺の頬を包みモニモニしてくる。何、何が起きたの。今の夢? 白昼夢的なあれ? そんな「状態:混乱」な俺にダグマルは額にキスを送ってきた。ちょっ、待。
「そんなにサッヴァのことで追い詰めるな。ハジメテに拘るわけじゃねぇが、他のやつのことばかり考えられたらさすがの俺だって嫉妬するぞ」
ダグマルの声が! 顔が! 息が! 近い!!!!
「ずっと忙しかったり、そういうこと言える状況下じゃなかったからおとなしくしていたが、俺は黙って指くわえてる人間じゃない。他のやつのことを忘れてやるくらい俺で満たしてやりたい」
ほわあああああああああああ。どこの恋愛ドラマの台詞だあああああああああああ。
ってか慣れてる!? 慣れてるよね!? 女苦手だって言ってたけど、絶対口説きなれてるよね!? そんなことポロッて言えるくらいに慣れてますよね!?
そう叫びたくなるが叫ぶ言葉すら出てこない。
「なぁ、ーークウガ」
た・・・・・・たったああああああああ。何がって? ナニがだよ!!
低音ボイスが耳に触れた瞬間にそっ・・・・・・と股間に手を置いたわ! 声だけで勃起させやがったよ、この人!!
「あ、あぅ・・・・・・ぁ」
心は叫びたがってんのに俺から出るのはそんな情けない声。イスに座っててよかった。立ってたら絶対に腰抜かしてた。
だというのにダグマルはにやにやとした笑みを隠そうとせず、俺の頬やら首やらを撫でてきた。この人、絶対おもしろがってやがる。俺の股間のことも気づいてるのかもしれない。でもそれに踊らされてる俺も俺だけどね!
ダグマルの口が耳たぶに触れた辺りで俺の体が跳ねたときだった。
「何をしているのデスカ!」
怒りか羞恥かはわからないが、顔を赤くしたリーフェンが部屋にズカズカと入ってきた。ダグマルは残念だというように俺から身を離した。対する俺はうつむいたまま動けない。主に手を置いている股間の問題で。
そんな俺の様子にリーフェンの機嫌は降下していった。
「あなたもあなたデス。なんですかその情けない姿ハ」
「・・・・・・不可抗力です。あるいは男の性です」
「男の性だというのナラ、何故ボクには反応せずその男に反応するのデス!?」
「ならゲイの性だよ! 俺男が好きって言ってるじゃん!」
「ボクも男デスガ!?」
「チンチンがついてても美少女に興味は持てない・・・・・・」
「ですからその美少女というのをヤメナサイ!」
男の娘にー、興味はー、ないのー。二次元では見たけどー。
そういう目で見られたら嫌なくせに、見られなかったら見られなかったでイライラするのやめようぜー。
でも正直、ホッとしている自分もいる。あのままだったら心臓もたなかった。俺の股間も暴発したかもしれない。冗談抜きで。
「随分と気が置けない仲になったんだな」
「なってイマセン!」
俺らの様子を見てのダグマルの発言だが、リーフェンには全力で否定された。そこまで否定しなくてもいいじゃん!
そしてリーフェンに続くようにルレイドとエマも現れた。
「ダグマル、久しぶりだな。元上司に挨拶するよりも口説く方が先とは、とんだすけこましになったじゃないか」
「あー・・・・・・お久しぶりです。ルレイド元団長」
さすがのダグマルもかつての上司には弱いようだ。頭をかきながら視線をそらしていた。そこで机の上の布袋に気づいたらしい。止めようとしたが間に合わず、なんだこれ、と中を覗かれた。俺が言うよりも先にエマによってエルフの植物から作ったものだと説明された。
「どういう目的のものなのか。クウガくんに聞いても教えてくれなくてよぅ」
そしてわざとらしく肩をすくめた。
ダグマルはそれを聞きジッと俺を見る。ダグマルだけじゃない、他の3人もだ。
ううう、視線が痛い。これ正直に言わないといけないやつだ。ええええ、言うの? コンドーム作ったって言うの? 異世界に来てコンドーム作ったって言うの? なんかセックスしたいって言ってるようで嫌なんだが。
「あの、作りたくて作ったわけじゃなく。たまたま出来上がったってだけで。本当に使えるかはまだ試してなくって」
しどろもどろになりながら説明するが、少し嘘ついた。
オナニーのとき試したら上手くいきました。少しサイズきつめだったけど、結構質が良かったです。多分某ネット通販だったら星4以上の評価ついてたかもしんない。
「それで、これなんだ?」
「コンドームです」
とうとうダグマルに問われて白状しました。別に頑なに黙認することでもないし。
だが俺の言葉にダグマルたちは不思議そうな顔をする。あ、そうか。コンドームって名称がないのか。
「すいません。俺がいた世界の単語でしたね。避妊具ですよ。人為的に妊娠しないようにするアレです」
そういえばこの世界、避妊具見たことないなあ。
だが何も反応がないことが変に思った俺はダグマルたちの様子を伺った。
ダグマルは目を開いて俺を凝視し、リーフェンは口を開けてポカンとしていた。ダグマルとエマは神妙な顔で布袋に視線を向けていた。どうしたのかと尋ねようとするよりも先にダグマルが口を開いた。
「これで、どうやって避妊になるんだ?」
「へ? 男のアレに被せてですけど。あれ、もしかしてこの世界って避妊とかそういうのないんですか?」
「ないわけじゃないが、この世界じゃ避妊といえば女性の体に魔力が溜まらないように体を構築するんだ。娼婦がそれだ。だがそれは一生子供が作れないようになってしまうし、何より体の負担が大きく短命になる」
「初めて聞きましたけど」
「これ、どうやって作った?」
ダグマルの問いはとても真剣みを帯びていた。
エルフのことをペラペラしゃべるのもどうかと思ってリーフェンの方を見れば、それを察したようでリーフェン自らが説明してくれた。その説明の後、ダグマルは顎に手を当ててブツブツとつぶやいている。
「これは公爵よりも義姉の家の力を借りて作るべきか・・・・・・。下手な貴族に知られて独占されれば問題だ・・・・・・。となると早めに手を打つ可能性も・・・・・・」
そして1人で納得したかと思えば、リーフェンに視線を向ける。咄嗟に身を堅くするリーフェンにダグマルが交渉を始めた。リーフェンとダグマルの会話を呆然と聞いているとエマとルレイドの会話が耳に入る。
「珍しいねぃ。あいつが貴族よりの会話をするなんて」
「新しい事業になるかもしれないからな」
・・・・・・・・・・・・うん、まぁ、この世界のためになるならいいのかな。
俺は遠い目をしながらそう考えた。
それにしても・・・・・・。俺はダグマルをチラッと見る。
どこまで本気なのかわからん。言ってることは真剣なんだろうけど。本気にしていいのか? でもそれを聞くのも戸惑われた。ダグマルが同性愛者だったかもしれないという言葉も、俺の中で燻ぶっている。
もし本気だったとしたら・・・・・・、俺はどうすればいいのか。サッヴァの件もあるのに悩みだけが増えている気がするんですけど(死んだ目)
後日、ダグマルの義姉の実家の伯爵家がコンドームの開発と販売を始めた。それは宿屋を中心に爆売れしたという。
見事リーフェンは公爵家との取引によりその身の安全と他のエルフの捜索と保護、その後の復興までの手続きを踏むことができたらしい。
よかったね、リーフェン。うん、本当によかった。
でももっと、かっちょいい前世知識による発明をしたかったぜ(やっぱり死んだ目)
~~~~~~~~~~~~~~~
普通に考えてコンドームの発明って画期的だと思うんですけどね。
ただ異世界転生して最初に発明したのがコンドームだと複雑な気分になるかなと(苦笑)
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